私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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のんびりとした雰囲気。


ピンポンダッシュ ※

 —————キミの魔法アビリティが0になっている。

 

 そんな事実を告げられてから、一晩が経った。

 私はと言うとベッドの上で座っていた、改めて見ると殺風景な感じであるけれど、それは後からでも出来るって事で自分を納得させた。

 そして何より、私の手には一枚の紙が握られている。

 

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 レフィーヤ・ウィリディス

 レベル2

 力 I 34 → I 63

 耐久 G 242 → D 534

 器用 E 420 → C 601

 敏捷 I 35 → I 87

 魔力 SSS 1420 → I 0

 発展アビリティ

 神秘: H

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「…………考えても仕方ないかぁ」

 

 魔力限定ではあるがアビリティが初期値に戻るのって冒険者からすれば絶望としか言えない。何たってアビリティを上げるにはそれだけの努力が必要だから。

 一応、非常識って言われている私の呪術契約書(ギアススクロール)で限定的に半減に出来たとしても初期化までは至らなかった。それだけ初期化は異常である。

 言わなかったイフリートには少し怒るけど、でもまあ、文句言っても仕方ないし、結局あの“力”を使ったのは私自身の意志でもあるからね。

 

「…………よし、朝食の準備をしょう」

 

 思考を切り替え私は部屋から出てきた。

 外はまだ少し暗いので一階に降りても誰も居なかった。

 

「よし、パンの生地はいい感じになったね」

 

 昨晩は殆どエイナさんとリリちゃんがやってくれたので出番はなかったけど。朝食は私の出番って事で。

 

「食パンにコーンスープにサラダを少々っと、後は実家で作ったジャムを…………ってあれ? もうこれしか残ってないんだ…………」

 

 手に取ったのは村で作った林檎ジャムにラズベリージャムの瓶。こちらに来た時はそれなりな量と種類を持ってきたがとうとうこれだけになってしまった。

 

「お爺ちゃんに手紙を出して、送って貰おうかな……」

 

 勿論、オラリオでも沢山美味しい物があるのだけれど、なんだかんだ村の味が恋しくなる時があるからね。

 

「それにしても長期保存瓶なんて魔道具があるなんて知らなかったなぁ…………この間買って正解だったかも」

 

 魔道具は高価で貴重、それは“神秘”を持っている人自体が希少だからと言う面はある。

 それでも稀に冒険者向きではなく一般人向きな魔道具を作っている人もいる、この長期保存瓶はその一つ。

 私も作ってみようかなぁ、冒険者とは関係ない魔道具……例えば、掃除機とか? それとも食器洗浄機とか? あとは商売向けの精算機とか? 

 うーん、アイデア自体はあるけど、今はそんな余裕はないから後回しかな、もし出来たら掃除機はうちでいいとして精算機と食器洗浄機は【豊穣の女主人】に試して貰うってのもいいかも知れないね! 

 それか、家事手伝いをしてくれる魔道人形とか作ってもいいかもね! 出来るかはわかんないけど! 

 

「…………ってなんでまったく料理と関係ない事を考えたのかな、しっかりしないと」

 

 パンやコーンスープの完成を待っていると玄関からコンコンと小さく扉を叩いた音が聞こえた。

 

「…………お客さん? こんな時間に?」

 

 私はそのまま玄関の扉を開けるとそこには誰もいなかった。

 

「…………悪戯かな?」

 

 そのまま扉を閉めようとしたら地面にはレフィーヤとベルへと書いてある木箱が置いてあった。

 

「…………うん?」

 

 木箱がを応接室まで持っていき、ゆっくり開けるとそこには様々な作物や肉そしてジャムなどが入っていた、最後には—————。

 

「…………手紙」

 

 木箱の底には何通かの手紙が入っていた。

 手紙は村に住んでいた私やベルの友人達やお爺ちゃんから来ていた。

 友人達からは近況報告やお爺ちゃんの被害に遭ったなど様々な事が書かれている。

 

 —————もう皆寂しがってるからたまには帰ってね! 

 

 うん、帰れる時には帰ると思うけど、村を出てから半年どころか三ヶ月もなっていないけどね? 

 

 お爺ちゃんからはそろそろ持っていった手製ジャムが切れる頃だから追加で送っておいたぞ! ついでにこの間作った燻製の鹿肉も入れておいたとのことらしい。

 

 —————あんまり無理するんじゃないぞ、お前さん達が元気で過ごす事がワシの願いじゃからな。

 

 お爺ちゃん、ありがとう…………でも覗きはダメだからね? 帰ったら絶対ぶん殴ってやるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらくすると起きた人達が降り、最後にヘスティア様が降りてくると全員が集まった。

 客人であるエイナさんは混ざってもよかったの? って聞いてくれたので私は勿論! と笑顔で返した。

 

「ふぅ〜、美味しかったよ、レフィ君」

「「「ご馳走様」」」

「はい、お粗末様です」

 

 私の代わりにベルとリリちゃんが食器を片付けると、私はベルに話し掛けた。

 

「ベル、お爺ちゃんからの荷物が来てるよ」

「えええ!? 本当!?」

「うん、手紙もあるから後で読んでおいてね」

「あっ、うん。わかった」

 

 お爺ちゃんから手紙が来たと喜んだベルにみんなは「よかったね」と温かい目でで見守っていた。

 

「それでみんなの予定はどうするんだい? ボクはバイトの予定があるから家にいないけど」

「リリはレフィ様とエイナさんと一緒に買い物に行く予定です」

「リリちゃんから聞いての通り、買い物です」

「……僕はどうするかな」

「ベルはランクアップ申請を出さないといけないじゃないの?」

「あっ、そっか! ついでにレフィ姉のも出そうか? ドタバタで出せなかったよね?」

「うん、それじゃあお願いしょうかな」

「それじゃあ、ヘスティア様とベル様だけ別行動って事でいいですか?」

「うん、そうだね」

 

 ベルはにっこりと笑う、一方ヘスティア様の方は少し頬を膨らませながら愚痴をこぼした。

 

「ボクもみんなと買い物行きたかったなぁ」

「……だったら別にもうバイトしなくてもいいとリリは思いますが?」

「いや、バイトの金で少しでも足しになればいいかなって思うんだ」

「いえ、それじゃあ全く足しにもなりませんよ?」

「うぐっ、ボ、ボクはお小遣いは自分で稼ぐんだ!」

「ヘスティア様のお小遣いぐらいファミリア資金から取っても誰も文句言わないと思いますよ?」

「い、威厳の問題だよ……」

「はぁ、そうですか……」

 

 リリちゃんとヘスティア様のやり取りを見て私とベルはくすくすと笑う。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい」

 

 けどそんな雰囲気に呑まれない者が約一名存在した、それはエイナさんです。

 

「レフィちゃんがレベル2になったのは知っているよ? けどその一週間後にベル君まで!?」

「はい! そうです!」

「いい笑顔で非常識な事を言わないで!? あの”剣姫“でさえ一年掛かったんだよ!? そんな記録を圧倒的な速さで抜いたって自覚があるの!?」

「「うんうん」」

 

 ヘスティア様とリリちゃんがコクコクと小さく首を縦に振る。

 

「……レフィ姉は僕より早いのに何も言われてないよ?」

「君達2人の事言ってるのよ!!」

「私にとばっちり!?」

「いえ、事実ですよね?」「ああ、事実だよリリ君」

 

 こうして私達の賑やかな朝食が幕を閉じた。




ここまで読んで頂きありがとうございます。

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