私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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こいつ、いつダンジョンに行くんだ?


夜空に見守られて。

 夜が更け、オラリオは静粛さに包まれた。明日のダンジョン攻略に不安と興奮があるためなのか、私は眠れずに居た。眠れない私は教会のベンチに座りながら夜空を見上げていた。

 

(改めて思うとこの教会はもうやばいね、天井に穴空いてるし。纏まったお金が出来たらリフォームをすべきね)

(明日からダンジョンに入れる、今までゴブリン 程度なら倒した事があるとしてもやっぱり不安だなぁ。それに……四大元素魔法かぁ……)

 

 私が手に入れた魔法、頭の中に小さな火の玉を想像しながら魔法を発動してみた、すると私の手のひらにはメラメラと燃える小さな火の玉が出来上がる。“自分次第で効果が変わる”破格の魔法。

 

(強そうに見えたこの魔法は……、いや……間違いなく強いよね。けどやっぱり……)

 

 テストに疲れ眠っている弟が近い未来に現れるレアスキルに比べたら。どうしても……この魔法とスキルだけではあの英雄に憧れた少年と将来的に肩を並べるのは力不足と感じてしまう。

 

「眠れないのかい?」

 

 そんな私の考えを断ち切った優しい声が聞こえた。先程まで同じベッドで眠っていたはずのヘスティア様がそこに居た。

 

「ヘスティア様……その、少し魔法の事を考えてました……」

「そうか……キミの心次第で形が変わる魔法。それも四つの属性でだ。実際に見たボクでも未だに信じられないさ。だって、”四つの魔法“ってわけじゃなく”一つの魔法”として現れたからね」

「はい……やっぱりこう見るとおかしな魔法ですよね……」

「ボクは魔法とかには詳しくないけど、これだけは言える。キミの魔法はオラリオに居る魔導師たちに喧嘩を売っている様なものだ。はっきり想像出来ていれば詠唱不要なんて聞いたことないよ……」

「でも詠唱すればイメージが固まってより完成度の高い魔法が撃てます」

「逆に慣れてしまえば、今まで詠唱ありの魔法が無詠唱で撃てる様になる。違うかい?」

「それは……はい……」

 

 慣れてたら言葉を発さずに魔法が撃てる。それだけでもこの魔法の価値がどれほどのものか私にはわからない……。でも慣れた頃にはベルはきっともうずっとその先に居るんだろう……。

 

「それとも不満かい?」

「えっ?」

 

 ヘスティア様が放った言葉の意味が一瞬理解出来なかった。

 

「キミのそれは欲張りだよ、そしてその欲はきっと身を滅ぼす」

「欲……張りですか?」

「今は焦る必要はないさ。なんせ子供達はすぐに変わってしまうからね、不変なボクらと違って」

「……」

「それにキミの可能性はまだ始まったばっかりさ。そしてきっと明日から変わり続けるだろう。……だから無茶をしてボクとベル君を置いて死ぬ事だけはやめておくれよ?」

「……はい」

「ボクらはもう家族だ。もしこれから悩みがあったら相談して欲しいんだ」

「……はい」

「そろそろ寒くて堪らないんだ。ベッドに戻って明日のために眠ろうか」そう言ってヘスティア様は私に手を差し伸べた。

「はい!」

 

 差し出されたその手を握って私たちは寝室に戻った。そして同時にこの女神と弟を悲しませる様な事はしないと心に誓った。





ここまで読んで頂いてありがとうございます。

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