私が妖精になるのは絶対間違ってる   作:ZeroRain

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長くなりそうだなぁ()


神会(デナトゥス) 前半

 次の日、朝早々にベルの昇格(ランクアップ)が行われ、私は何故かその部屋内でポツンと待機させられた。

 

「—————発展アビリティは“幸運”っと。…………はい、ベル君、終わったよ」

「えっ!? 今のでですか?」

「そうなんだけど、なんか気にしてるのかい?」

「え、あっいや……なんか思ったの違うなぁって」

「か、身体中に力が溢れる!! とでも想像したのかい?」

「あ、あははは……はい……」

「そんな事やりたいならキミの魔法を使えば一発で味わえるぜ」

「いや、それとこれは違うって言うか……」

「まあ、確かにね。でも安心するといいよ、ちゃんと昇格してる(上がってる)よ、ほら」

 

 そう言ってヘスティア様は一枚の紙をベルに渡した、ベルがその紙を受け取るとじーっと紙を見つめていた。

 

「…………おめでとうベル君、念願のスキルが発現したよ」

「…………ッ!? ほ、ほんとだ! やった!! やりましたよ!」

 

 初めてのスキル(二つ目のスキル)が発現したと喜んだベルは私とヘスティア様の顔を少しだらしない顔で見ていた。

 

「…………それにしても英雄願望(アルゴノゥト)ねぇ、キミらしいって言うか……」

「…………へ?」

「まあ、もう14歳になっても子供みたいに英雄に成りたいと言うキミの強い願いがそれを発現させたんだろうね」

「…………あっいや、こ、これ、そ、その」

 

 ヘスティア様にからかわれたベルは顔を真っ赤になった。

 

「ふふっ、ベル君ってほんと可愛いね」

「か、神様ァ!!」

 

 そう叫びながらベルは掛け布団を被り、閉じこもっている。

 肝心のヘスティア様はベルをからかった後、直ぐにベッドから降りた。

 

「じゃあ、ボクは準備して来るね」

「結局私は何の為にここに呼ばれたかのかな?」

「あぁーベル君がキミに自分の昇格(ランクアップ)した姿を見せたいって言うから」

「そ、そうなんだ」

「それじゃ、ベル君ボクが帰るまでに機嫌直しておいてくれよ?」

「…………多分すぐ直りますよ」

「なら心配ないね」

 

 ニッコリと笑った後ヘスティア様は部屋から出た、私もそんなヘスティア様の後に続いた。

 今日は神会(デナトゥス)、三ヶ月に一度の神々が集まる日。

 そして昇格(ランクアップ)をした子が二つ名を貰う重要な日でもある、つまり今日で私とベルの二つ名が決まる。

 準備を済ませたヘスティア様は玄関に立ち、見送る私達に話し掛ける。

 

「それじゃあベル君、レフィ君、リリ君。ボクは行くよ、あの戦場(デナトゥス)に!」

「はい…………」

「レフィ姉……なんでそんな緊張した顔で見送るの?」

「物凄く切迫詰まってる顔ですね」

「…………気にしないで」

「……レフィ君、安心してボクは……絶対に勝ち取ってやるよ! ではみんな、行ってくる!」

「「「いってらっしゃい!!」」」

 

 決意に満ちたヘスティア様を見送る私に出来る事は無事を祈るだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………痛くない二つ名を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神会(デナトゥス)の会場を目指し次々と到着した神々の中にヘスティアは真剣な顔で歩いている。

 そんなヘスティアの肩をそっと触れた神物が居た。

 

「—————貴女がそんな真剣な顔なんていつ振りかしら?」

「ッ!!」

 

 ヘスティアが振り返るとそこには神友であるへファイストスが立っていた。

 

「へファイストス!! キミも来てたのかい!?」

「ええ、そうよ。っていうか今日はいつもより参加者が多いのよね」

「……ボクは今日が初めてだからそんなのわからないけれど、そうなのかい?」

「ふふっ、その原因は貴女にあるって言うのにわからないって」

「げ、原因はボク!?」

「まあ、それだけ言えばわかっているでしょ?」

「……ベル君とレフィ君の昇格(ランクアップ)が原因なんだね……」

「そう、その話を聞いたオラリオの神々の大半が今日来ているわ、そしてさっきからみんなは貴女の顔をチラチラと見ていたのよ?」

「…………もし、ベル君達を渡せって言われたらどうすればいいかな?」

「そんなのロキと私がサポートするわ、それと言ってやればいいんじゃないかな」

「……何を?」

「あの子達ってここに居る全てのファミリアから門前払いされたから貴女の所に来たって事を」

「それもそうだね」

「後もう一つ」

「ほぇ?」

 

 へファイストスは真剣な表情でヘスティアを見つめた。

 

「私やロキが盾になってもそれでも尚、貴女の所にちょっかいを掛ける神は居る、そんな時はしっかりしなさい」

「!!」

「警戒すべきなのはイシュタル……そしてアポロンかしらね」

「アポロン…………」

 

 その名前を聞いてヘスティアは苦痛の表情を浮かべた。

 

「ごめんなさい、貴女に嫌な事を思い出させるの」

 

 ヘスティアの表情を見て、すぐに謝ったへファイストス。

 

「気にしないでくれ、もう昔の事なんだ」

「と言う割にはまだ根に持ってるのね」

「…………アレを消滅させないだけマシだと思う」

貴女(善神)にそれだけ言わせた彼はほんと凄いと思う…………」

「…………それに”ウチ“の文化ってほんと頭おかしいと改めて思うよ」

「…………否定しないわ」

 

 そんな話をしている間に二柱の女神は目的の場所についた。

 会場に着いたヘスティアは周りを見渡した。

 その中には既に居たロキの他に優雅に紅茶を飲んでいるフレイヤ、真剣な顔で腕を組んだ神友であるタケミカヅチ、何故か次々と男神を踏みながら歩いているイシュタル。他にもヘルメスやディオニュソスの様な同郷も居た、あとは次々とポーズを取っているガネーシャ。

 

 しばらくすると、ロキが立ち上がった。

 

「—————よし、そろそろ皆揃ったやろ? じゃ初めるで!」

 

 その一言で周りの神々が「イェ──ーイ!!」と叫び始めた。

 

「第ン千回の神会(デナトゥス)を開かせてもらいます」

 

 ロキはペコっと軽く頭を下げ、再び言葉を続けた。

 

「んで今回の司会進行役はウチ、ロキや。皆よろしくなー」

 

 ロキがそう言うと周りの神々のボルテージが更に上がった。

 

 それを見たヘスティアは呆れ半分にロキを見ながらポソっと呟く。

 

「…………彼女、眷族(こども)達が居ないからって張り切りすぎないかい?」

「…………アレは半分最近溜まったストレスの発散らしいわ」

「…………ああ、なるほど」

 

 ロキのストレス原因が少なからず自分の眷族(こども)にあると感じたヘスティアは彼女に差し入れを贈ると心に決めた。

 

 —————悪いんやけど、ウチとしてはもうコレには関わらない方がええと思うが“アッチ”はそうはさせんやろうな。

 

 レフィーヤが重体で運ばれた時にロキが言っていた事を思い出すとヘスティアは短いため息を吐いた。

 

「それじゃ、まずは情報交換や! なんか面白いネタを持ってる奴はおるか?」

 

 ロキがそう質問すると周りの神々が「はいはいはい!」と手を挙げた。

 

「ソーマ君のファミリアがギルドから警告を食らった、団員が沢山逮捕された上で趣味の酒造りが没収されました!!」

「マジで!?」

「って事はもうソーマ飲めねえのかよ!?」

「俺もそれ聞いたわ! 今、ホームの隅っこで指を咥えて泣いてたって聞いたぞ」

「俺慰めて来るわ!」

「絶対煽りたいだけだろ!」

「空気読まずに申し訳ないが王国(ラキア)がまた攻めて来るらしい」

「ハハハ! マジで空気読んでねえな!」

「っていうかソーマ君のってロキと関係あるじゃないの?」

「マジでか!?」

「ソーマ君、ロキにちょっかいを掛けたのか…………南無」

「ロキは乳ないけど権力はあるからなー」

 

 わいわいと騒ぎ出した神々。

 

「あーソーマはそうだったな、ウチの眷族(こども)が目の前で新人を襲ったの見てたから告発させて貰ったわ。王国(ラキア)の件はギルドから通達来ると思うからその時はよろしくなー。後は最後の…………これ終わったらわかるな?」

「すんませんしたー!!!」

 

 一連の流れを見ていたヘスティアは周りのテンションにドン引きしていた。

 

「聞いてはいるけど、ここまで酷いとは…………」

「ふふふ、いつもの事よ」

 

 彼女の隣にいるへファイストスがクスクスと笑いながら答えた。

 

「あっ! オレはもう一個面白いの知ってるぜ!」

「なんだなんだ?」

「あの九魔姫(ナインヘル)を超えた魔法の数が使えるエルフの子が居るってよ」

「ああ、俺も聞いたわ」

「私も聞いたね」

「ここ最近よく聞くよなぁ〜」

「って言うか…………」

「……だよなぁ?」

 

 周りの神々が一斉にヘスティアを見た、視線に晒されたヘスティアは背中に冷たい汗が流れたのを感じた。

 

「はいはい、それは後や! ウチからも報告があるで—————」

 

 神会(デナトゥス)はまだまだ始まったばかり。





ここまで読んで頂きありがとうございます。

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