【ヘルメス・ファミリア】が泊まっている宿に着くと私は他の団員達に歓迎された。彼らみんなは助けてくれた事や倒れた私を心配してくれた事を話した。
しばらく世間話をした後、他の団員達はそれぞれの予定に戻り、残されたのは私とアスフィさんだけとなった。
「我々がもっと御礼出来れば良いのですが…………」
アスフィさんはそう呟いた。
「あの件ならフィンさんから既に貰いましたし、アレで十分ですよ?」
「いいえ、そう言うわけには行かないのです、一応【ロキ・ファミリア】経緯で渡しましたがそれでも足りません」
やんわり断るとアスフィさんが答えた。
「えっと、つまり、気持ちの問題ですか?」
「はいそうです、どう言う形であれ。貴女は私達の命を助けた、それなのに御礼があの程度で済ませるのは私自身が許せません」
「アスフィさんは気にしすぎだと思いますよ、それにあの依頼から報酬を貰いましたし、アスフィさん達からも貰いました。もう、それで十分ですよ?」
かなりの額を貰い、結構借金返済の足しにはなったからすごくありがたかった。
「…………そうかも知れないですね、ですがやはり——————」
「んもー、そんなに気にするんだったらさ、アスフィの
「ルルネ!?」
「ほぇ!?」
アスフィさんの話を遮るのは同じ【ヘルメス・ファミリア】団員のルルネさんだった。どうやら戻って来たみたい。っていうかアスフィさんって
「アスフィさんの
「あのですね…………」
「あたしだって、あんな少ない金で自分の命と引き換えるのは嫌なんだけどさ、本人はいいって言ってるから何も言えないでしょ? だからそれで納得する様にしてある。それでもアスフィは納得していないのであれば、アスフィが用意できる物を贈ればいいんだよ! そしてアスフィと言えば
「ですがアレは——————」
「他のみんなと上限金額を決めてそれ相応の
「それはいいね!」
宿の正面玄関が開き、そこには“見覚え”のある胡散臭い男が立っていた。
「あ、あなたは!?」
「「ヘルメス様!?」」
「アスフィ、ルルネただいま。そして久しぶりだね、レフィーヤちゃん」
そこに立っていたのは村に居た時、たまたま知り合ったお爺ちゃんの知人もとい神、ヘルメス。
あの日、覗きに来たお爺ちゃんを退治する時にたまたま出会った彼でしたが、あの時聞いてしまった彼らの会話が未だ脳内に深い印象を残した。
—————「のう、ヘルメスよ。孫のレフィーヤについて調べたい事があるんじゃ—————」
あの時、お爺ちゃんが喋り切る前に私が姿を表した為、話自体があやふやになった。
その後、何度かお爺ちゃんにその話を聞き出そうとしたが何度聞いても「大した事ない」と主張した為、結局未だに何も聞けなかった。
だけど今ここにその話を知っている神物がいる、あの日お爺ちゃんが私について調べたい事は…………聞けるかも知れない。
「「知り合い!?」」
「はい…………前は祖父と一緒に村娘達の水浴びを覗いた変態さんですね」
「「へぇー」」
「ちょっ、ちょっと待ってくれないか!? 俺たちの間に誤解がある!?」
「ヘルメス様、弁明はそれだけでしょうか?」
「アスフィ! 落ち着いてくれ!? 誤解なんだ!」
「…………誤解ですか?」
「そ、そうだぞ! 俺はたまたまあの場にいるだけであって別に覗いてるわけじゃないさ!」
「「信用できません!! (できない!!)」」
それでも尚、胡散臭いヘルメス様は白を切るつもりでした。
「そうですか…………じゃあ、あの場の居るのは?」
「ああ、そうさ! アレはただの勘違いなんだよ」
「「絶対嘘です! (だ!)」」
「二人とも、俺を信じてくれよ。俺は今まで君たちに嘘をついた事はないだろ?」
「かなりしました」
「ええ、ほぼ毎日ですね」
怒っている二人はヘルメス様を追い詰めた。
けれど私は聞きたい事があるのでこのチャンスを見逃すわけにはいかない!
「お二人とも、ヘルメス様に個人的な話を聞いてもいいでしょうか?」
「この神に話を聞いても恐らく誤魔化されるだけだと思いますが……」
「うんうん、アスフィの言う通りだよ! この神は胡散臭いからね!」
「でもずっと気になっている事があるのでどうしても聞きたいんです、いいですよね?」
「…………貴女がそう言うのなら、ルルネもいいですね?」
「う〜ん、……お仕置きはその後からでもいいから別にいいよ」
「お二人共、ありがとうございます」
二人に礼を言って、私はヘルメス様の前に立った。
「レフィーヤちゃん、この俺に聞きたい事ってなんだい?」
「…………私が聞きたいのは……あの日、あなたがお爺ちゃんとの話した内容についてです」
「ああ、またそんな事か、残念だが俺が言えるのは君の祖父と同じだよ? “君が気にする程の大した事じゃない”ってね」
本当にそうかな?
どうして私の事なのに隠すのかな?
もしかして私って良くない存在なのかな?
「そんな顔をしないでくれ、本当に“君”が気にする程“大した事じゃない”から、これは俺の名に誓ってもいい」
「……そう……ですか」
予想はしたがやっぱりそう簡単にお爺ちゃんと話した事を教えてくれないんだね……。
ならば—————。
「……ならば報酬は変えます、
私は真っ直ぐとヘルメス様を見つめた、ヘルメス様は表情を変えずにただ私を見た。
「そう言ってもねぇ……俺があのご老人と話したのは村娘達の発育良さの事ばっかりだよ? 例えば地味で大人しそうな顔をしているのに凶悪な胸を持った娘の事や活発な俺っ子なのに身体はあの中だと一番女らしい子の事とかね?」
「「「サイテー!!」」」
「な、ナイスピンタ(ビンタ)だよ、ガールズ」ガクッ
本当信じられない!? こっちは真剣に聞いてるのに!!
「…………変態の事はルルネに任せましょう、とりあえず許可は貰ってるので今から貴女に贈る
「…………はい」
「ルルネ、そこの変態主神は任せます」
「はーい」
私はそのままアスフィさんの作業場に向かうのでした。
まったく…………ゼウスよ、貴方の孫娘は好奇心の塊なのか? このままだと恐らく、彼女はまたこの話を聞きに来るのだろうな……。
まあその時は貴方と約束通り。もしその時、彼女が十分成長した場合あの話を話してもいいんだよね?
「…………まあ、現実を受け入れられるのかは別としてだけどね」
「何ブツブツ言ってるの、変態様」
「いやぁ〜、君達は容赦ないなって」
「当たり前でしょ!?」
「アハハハハ」
あの日、ゼウスの依頼で様々なエルフの里を調べ、結果見つけた情報は…………
ウィーシェの森に住んでいるレフィーヤ・ウィリディスと言う少女は8歳の時にオラリオの“学区”に向かう途中、彼女を乗せたキャラバンが野営している間に凶暴な
だが問題は他の搭乗者の遺体はあるにも関わらず、彼女の遺体だけ全く見つける事が出来なかった。
そしてそんな彼女はオラリオからは全く正反対の位置にある森に唐突に現れた、それも全く同じ夜に…………、まるで転移したかの様に。
本当に……レフィーヤちゃん、君は一体…………何者なんだい?
ここまで読んで頂きありがとうございます。
いつもいつも誤字脱字報告ありがとうございます!