ダンジョンは決して優しくはない……。
次の日、私達全員はバベルの入口前に集まっている。
これからダンジョンに入る私達4人の他にはヘスティア様も居る。
バイト行く前にわざわざ私達の見送る為にやってきた。
「いいかい? 無理と判断したら直ぐに帰る様にするのだよ?」
『はい!!』
「それに今日はキミ達の初めての中層だ、今までと勝手が違うから何が起きるのかわからない……」
『はい』
「ベル君、キミは他のみんなを守る役目がある。大変だけど、頼んだぞ」
「はい、神様」
「レフィ君、あんまり無茶をして怪我をしない様に頼むよ? 毎度キミが怪我だらけで帰ったの見ると生きた居心地がしないんだ」
「はい……善処します」
「リリ君、他の二人はキミよりレベルが高いが、ダンジョンに潜る経験はキミが一番多いんだ。もし違和感を感じたらベル君達に助言を頼んだぞ?」
「はい! お任せください!」
「最後はヴェルフ君。同じファミリアじゃないけれど、キミも無茶をしない様に頼むよ? もし万が一キミに何かがあったらへファイストスに合わせる顔がないんだ」
「はい…………」
ヘスティア様は私達の顔をもう一度じっくりと確認した。
「それじゃ、行ってらしゃい」
『行ってきます!!』
ヘスティア様に見送られながら私達は出発した。
さあ、中層へ行こうか!
そして、13階層階段前。
「それにしてもあっさりと来れたな」
「ベル様とレフィ様のお陰ですね、普通はこんなに早く12階層に来れるものじゃないですよ?」
リリちゃんはじーとこっちを見ながらそう言う。
私とベルは苦笑いしながらそれを返す。
「まあ、こいつらがいるからこそ出来る芸当なのがよーくわかった。んで? 行くだろ?」
「はい、これから突入します。突入後は予定通り前衛はヴェルフ様、中衛はリリで後衛はレフィ様。ベル様は臨時応変で頼みます」
「と言っても結局いつも前衛だけどな」
「今からはそのいつものじゃないですから」
「うん、わかってる。でも基本はスキル無し魔法無しで前衛だよね?」
「はい、緊急性がない限り基本はそれでお願いします」
「任せて!」
「よし、俺は相変わらず肉壁だな」
ニカっと笑いながらヴェルフさんはサムズアップしている。
「ソウデスネー」
「おいこらリリ助! 文句あるのか!?」
「アリマセンヨー」
「ぜってぇーあるだろそれ!?」
「いえ、本当にないです。だってこっちに来る前に敵が倒されるので」
「言うなよ、悲しくなるから」
「「ごめんね?」」
「「謝るぐらいなら少しはこっちにも敵を回して下さい!! (回せ!!)」」
みんなでわちゃわちゃしていた後、リリちゃんは私を見つめる。
「レフィ様には一番負担を掛けますが、本当に大丈夫ですか?」
「うん、マジックスクロールより私の方が感知範囲広いからね、スクロールは万が一の為に取っておきなさい」
「最悪の場合、僕が使うよ。この間スクロールを試したら感覚を覚えたから」
「それは保険の保険ね」
えへへと笑うベル、本当この子って出来る弟だね!
「なぁ、リリ助。魔法ってそんなもんで覚える物なのか?」
「いいえ、全世界中探しても恐らくあの二人だけですよ」
「本当……頭おかしい姉弟だよなぁ」
「それは今更ですよ?」
「…………そうだったな」
リリちゃんとヴェルフさんは何やら失礼な事を言っている。
「はい、そこの二人! そろそろ行きましょう!」
「あいよ」「はい!」
「えへへへ」
「「「ベル? (ベル様?)」」」
「ごめん……でもなんだか凄くワクワクしているんだ」
「ハハハハ! そうか! そうだよな! 俺もそうだぜ! 男ならワクワクしないわけないよな!?」
「ヴェルフはわかってるくれるの!?」
「当たり前だろ!」
「やっぱりそうだよね!」
「ああ、そうだ!」
なんか急に意気投合し初めている…………。
「何バカな事を言ってるのですか…………」
リリちゃんはやや呆れた顔を浮かべた。
「おいおい、リリ助にはわからないのか!? 男の浪漫は!? …………ヘブッ!?」
「リリは女性です!!」
リリちゃんの右ストレートがヴェルフさんの顔にクリーンヒットした。
「いてぇな!?」
「今のはヴェルフさんが悪いですよ? リリちゃんはこんなに可愛い女の子なんだよ?」
「いや、それは言葉の綾って奴だろ!?」
「あはははは…………」
「…………」プイ
リリちゃんは中層突入に緊張しているみたいだから今は冗談にも通じないだろうね…………っていうかいつ行くのこれ!?
「今度こそ行きましょう? ほら、リリちゃんも機嫌直して?」
「はい…………」
「ヴェルフさんもリリちゃんに謝ってね?」
「お、おう。わりぃなリリ助」
「…………いえ、リリも悪かったのでお互い様です。本当にごめんなさい……」
「じゃあ、これで仲直りね?」
「ああ」「はい」
「じゃあ、行きますか!」
「「「おぉ!!」」」
私にとって二度目の中層が今始まった。
中層にもなると一度のエンカウントに現れる
「ベル! 右前方からヘルハウンド8匹追加!」
「もう!?」
「そっちは私が殲滅するからそこに居る同胞に集中して!」
「いや、コイツらは同胞じゃないよ!?」
「いや、どう見てもベルだろ?」
「ええ、紛れもなくベル様ですね」
現れたヘルハウンド達を素早く数本の『ウォーター・ランス』で対処した。
その後はヴェルフさんとリリちゃんの援護に回る。
ベル? あの子は基本一人で十分な戦力を持っている、寧ろここで私が横槍を入れると逆に彼の成長を妨げる結果になる。
だってほら? 今、彼は容赦なく
でも勿論命の危険に関わると判断したら速攻で援護するけどね。
「ふぅ…………こっちは終わったよ!」
「ああ、こっちもだ」
「周囲に敵の反応無し、みんなお疲れ様。リリちゃん、回収お願いね?」
「はい! 魔石を回収してきます!」
遠くにある魔石は魔法で寄せ付けよう、『おいで!』。
魔法で寄せ付けた魔石は次々と私の前に集まる、リリちゃんはその魔石を黙々と鞄に詰め込む。
「…………相変わらず魔法の無駄遣いだ」
「あははは、レフィ姉らしいや」
「リリとしては回収が楽になるのでとっても助かりますよ」
一通り作業が終わると私達はお昼を挟む事にした、周囲に警戒を怠らない為に常に感知魔法を発動させる。
「おぉー、今日のベルの弁当はまともだな?」
「まとも……かな?」
「変な色だけど臭いは普通に焼き焦げた臭いだぜ?」
「ねえ、リリちゃん。それって普通って言えるのかな……」
「前回のは見た目は普通なのに臭いが薬品みたいでしたから、普通なのでは?」
「なんでそうなったのかなぁ……」
「いやいや、アレの方が凄かっただろ? 見た目も臭いもハンバーグなのに味がたこ焼きだぜ?」
「どうしてそうなるのだろうね…………」
「れ、レフィ姉……」
「そんな事でしたら、見た目がミートボール、臭いがチョコレート、味がカレーのお弁当も負けてませんよ?」
「…………どうしてそうなるのだろうね」
「二人とも、レフィ姉がダメージを受けるからもうそこまでにして」
『一番喰らってるのベルでしょ!? (お前だろ!?)(ベル様でしょ!?)』
「いや、まあ、僕はまあ……平気だから……ミアハ様の薬もあるし」
何故それで平気って言えるのかな!?
「ベル様……凄いです……」
「お前漢だ……ベル」
はい、そこ感動しない!
もう……帰ったらまたちゃんとシルに言い聞かせないと……。このままじゃベルの胃に穴が開くよ……。
すると突然に感知魔法が反応した、どうやら範囲内に
その反応は数人の冒険者と信じられないぐらいの数の
それもこっちに向かって。
「みんな、休憩してる所悪いけど、お客さんが群れで来たよ」
『!?』
「レフィ姉、敵の数は?」
ベルの声を答えて私はざっと反応を数えた。
「多いね……軽く数えても50体は居るね……」
「なっ!?」
「ど、どうしてそんな数の
「この反応を見るとどうやら他の冒険者がその群れから逃げているのよ、それで私たちはちょうどその進路に居るって事」
「最悪だな……なぁレフィーヤ、今から撤退しても逃げ切れるか?」
ヴェルフさんは私に質問した。
「出来なくはないけど……後ろの通路は更に下へ行く道だから14階層に突入する形になると思う…………」
「じゃあ、なんでアイツらがこっちに逃げているんだ?」
「恐らくだけど、私達と同じく初めてじゃないかな……」
「チッ…………ちゃんと準備しろよ…………」
「いえ、リリが思うには彼らも念入りの準備をしたと思いますが……中層での勝手が違いすぎてトラブルが起きたと思われます」
リリちゃんは状況分析を行う。
「なんでそう言えるんだ?」
ヴェルフさんがリリちゃんに質問をした。
「初めての中層でここまで来れるのはそれなりに準備をしてある証です、ただ予想外のトラブルで皆がパニックになっているかと……」
まあ、ここは14階層の入口の近くだからね、初めてでここまで来るのそれなりに準備が必要なのもわかるなぁ。
「ねぇリリ、この場合はどういう感じになる?」
「…………十中八九擦りつけられるのでしょうね。一応、共闘と言うパターンもありますが」
「共闘になる……といいな……」
敵が来る方向を見ながらベルは呟く。リリちゃんとヴェルフさんは険しい顔で同じ方向を向いている。
「…………来るよ! みんな戦闘準備!」
『はい!!』
みんなは準備を終えて、各々の武器を構え出す。
「ベル、作戦は?」
「遠慮は要らないから僕達は即時殲滅する方針で行くよ!」
「わかった!」
「リリとヴェルフはペアを組んで漏れた敵の対処に当たって欲しい! スクロールを使ってもいいからね!!」
「「了解!!」」
「行くよ、みんな!」
「いつでも!」「お任せください!」「任せろ!」
私、リリちゃん、ヴェルフさんがベルの声に応えた。
『燃え上がれ!
炎を纏ったベルは先陣を切った。
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