艦これの余白   作:夢幻遊人

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第7話 そして未来へ

 深海棲艦の連絡事務所に到着した瑞鶴が、案内された部屋で待っていると、ほどなく中間棲姫が現れた。

 

「ズイカク、逃ゲズニヨク来タ」

 

「あなたに東京まで来させたことは謝るけど、『逃げない』って言ったでしょう。・・後は停戦期間だけは守ってね」

 

「貴様ガ約束ヲ守ッタ以上、私モ約束ハ守ル。・・ダガ貴様ノ覚悟、気ニ入ッタゾ。ドウダ、私達ノ仲間ニナラナイカ?最高幹部ヲ約束シヨウ」

 

「・・私は、何度生まれ変わっても、例え深海棲艦になっても絶対に人間の味方になるよ。それでよければ・・」

 

「フン、可愛ゲノナイ奴メ。・・ダガ安心シロ。貴様ノ行動ニ免ジテ、苦シマズニ殺シテヤル。最後ニ何カ言イ残スコトハナイカ?伝エテヤッテモイイゾ」

 

「恩に着るわ。じゃあ、お言葉に甘えて。『私は、総理を務めさせてもらえて本当に幸せだった。もし、過去に戻ってやり直せると言われても、また総理を務めさせてもらう』と・・」瑞鶴は手を合わせ、静かに目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瑞鶴の命の炎が消えようとしたまさにそのとき・・

 

 

 戦艦レ級が青ざめた顔をして部屋に飛び込んで、中間棲姫に耳打ちをする。

 最初、邪魔が入ったことに苛立ったような顔をした中間棲姫も、すぐに驚愕の表情を浮かべた。

 

「もしよければ、何があったか教えてもらえる?」中間棲姫の表情の変化に疑問を持った瑞鶴が尋ねた。

 

「貴様ノ君主ガ来タ・・」中間棲姫の声は、かすかではあったが、確実に上ずっていた。

 

「えっ、陛下が?・・まさか、これに合せて呼んだの?」

 

「イヤ、事前通告ナシダ。コチラモ驚イテイル」深海棲艦にも感情があるのか、どう見ても予想外の出来事に戸惑っているようにしか見えなかった。

 

 

……………

「中間棲姫、どうか瑞鶴の命を助けてもらえないだろうか」陛下は中間棲姫に頭を下げていた。

 

「陛下・・」瑞鶴は、悲鳴に似た声を出していた。

 このやり取りを見て、中間棲姫は影武者などではなく、本物の天皇が来たことを確信したようであった。

 

「・・瑞鶴、申し訳ないが、口出ししないでもらいたい」陛下の口調は丁寧であったが、反論を許さない強さがあった。

 

「ズイカクニハ何度モ戦局ヲヒックリ返サレタ。ズイカクノ命ヲ望ンダノハ総理ヲ務メタコトヨリ、ズイカクサエ葬レバ後顧ノ憂イヲ除ケルカラダ」

 

「もちろん、こちらもタダでとは言わない。もし、卿が望むのなら、卿に朕の命を預けてもよい」

 

「!!」

 瑞鶴は、すぐにでも話に割って入りたかったが、他ならぬ陛下に口出しを禁じられてしまったため、中間棲姫に視線を送ることしかできかなった。

 もっとも、凄まじいまでの殺気が含まれていたが・・

 

「自分タチが作ッタ艦娘ニ何故ソコマデ?」

 

「艦娘がわが国と国民のために戦っている以上、艦娘はわが赤子(せきし)。その赤子の1人も守れないとあっては、何のための天皇か・・」

 

「タカガ10年ノ停戦ノタメニ自ラの命ヲ差シ出ストイウノカ?」

 

「瑞鶴がそうしたのなら、朕もそうしよう。また、『たかが10年』と言うが、既に戦争は7年を超えている。これ以上、国民や艦娘に犠牲を強いるくらいなら、例え1年であっても平和の方が幾万倍も良い・・」

 

「ズイカク・・」ずっと陛下の目を見つめていた中間棲姫が瑞鶴に声を掛けた。

 

「何?」

 

「貴様ノ君主は、王者ダナ・・」

 

「・・」瑞鶴にとっては当たり前すぎることであったので、かえって返す言葉が見つからなかった。

 

「陛下、ズイカクノ命ハ、オ返シシマス」これまでと異なり、中間棲姫の声には敬意が含まれていた。

 

「それでは停戦はどうなる?」

 

「変更シマセン」

 

「何か代わりに用意するものは?」

 

「不要デス。タダシ、停戦期間内ニ人類ノ行動変容ガ認メラレナイトキハ、マズ最初ニズイカクノ命ヲ頂キマス」

 

「・・承知した」陛下と中間棲姫は握手を交わした。

 

 

 

 瑞鶴が再び元いた鎮守府に戻ると、中間棲姫より恐ろしい鬼と化していた翔鶴と加賀から、それはそれはこってり絞られたという・・

 

……………

「うわっ。マイクロチップやプラスチックごみがこんなに・・ここまで海洋汚染が進んでいたなんて・・これじゃあ、中間棲姫が怒るのも無理ないよ・・」瑞鶴は海洋清掃活動に従事していた。

 

 世界の海の面積の約半分を占める太平洋海域での停戦は、当然のように他の海域に及び、人類と深海棲艦との全面的な停戦が実現したのであった。

 

 艦娘たちは「はぐれ」との散発的な戦闘以外からほぼ解放され、海上清掃活動に回ることが可能になったのであった。

 

 瑞鶴は、自分の行動が事の発端となったことから、積極的に海洋清掃活動に取り組んでいた。そして艦娘たちや政府ばかりでなく、様々な企業、団体、そして個人がヒト、モノ、カネを出し合っていた。

 

 そして意外にも、予想通りにも思えたことであったが、加賀が積極的に瑞鶴に協力するようになった。「一航戦の誇りは清掃まで及ぶのよ」などと、もっともらしいことを言いながら。

 

 

 

「・・さあ、10年なんかあっという間だよ。この間に人類の本気を見せてやろう。私たち艦娘も頑張るから!」瑞鶴が共に働く人たちに声を掛ける。

 

 すると周囲から一斉に「おー!」と返事が返ってくる。

 

 これなら大丈夫。きっと人類は、この危機を乗り越えて、このまま生き残るにふさわしい種族だと証明することができるであろう。

 

 

 

 

 

 ・・瑞兆をもたらす白い鶴が人類の行くべき道を指し示してくれるのだから。




作者:「敢えてこの表現を使わせて頂きます。『総理、お疲れ様でした』」
瑞鶴:「作者さんもお疲れ様」
作者:「本当に連載は難しかったです」
瑞鶴:「見切り発車だったのよね」
作者:「ええ、連載開始時に第4話までは骨子ができていたので、大丈夫だと思ったんですが、それから先が苦しかったです。でも、これ以上は単なる言い訳に過ぎないので、言いません。」
瑞鶴:「それでどうなの?悔いはない?」
作者:「はい、これ以上は無理です」
瑞鶴:「それなら、いいんじゃない。・・それで、これからどうなるの?」
作者:「元のオムニバス形式に戻します。この『内閣総理大臣瑞鶴』も何かまたアイディアが浮かんだらエピソードなり、外伝なりを追加するかもしれません」
瑞鶴:「だから話がガバガバなのね?」
作者:「・・いえ、それは単に私の力量不足です」
瑞鶴:「・・正直なのは褒めていいのよね?」
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