われながらタイトルの昭和感が半端ない・・
赤城のドッキリ大作戦
「それでは、みなさんいいですか?」私は、加賀さんだけを除いた艦娘たちに声を掛けます。
「みなさんもご存じのとおり、加賀さんは瑞鶴さんの顔を見るたびにケンカを仕掛けています」
「そうだよね~」
「瑞鶴さんも大変だよね~」
「でも、それって瑞鶴さんが言い返しちゃうことも原因なんじゃない?」
「それは否定しないけど、私から仕掛けているわけじゃないし・・」瑞鶴さんは困った顔をしています。
「確かに、瑞鶴さんからは仕掛けてないね」
「そこで、提督が『加賀の真意を知りたい』と言っています」
「どういうこと?」
「『瑞鶴のことが好きならそれでいい、でも本当に嫌いなら編成を考えなければならない』とのことです」
「ふ~ん。それでどうするの?」
「瑞鶴さんが撃沈したことにします」
「・・なるほど。それで加賀さんの反応を見るのね」
「それで、私たちはどうしたらいいの?」
「特に皆さんにやって頂くことはありません。ただ、どこでバレてしまうか分からないので、こうやって皆さんにお話ししています」
「分かったよ。それじゃあ、せいぜい悲しそうな顔をしておくよ。・・ところで、誰が一緒にいたことにするの?その艦娘だけでも瑞鶴さんが撃沈したときの状況を合わせておかないとまずくないかな。何と言っても相手は加賀さんだし・・」
「それはそうですね。それでは、・・・さんと・・・・・さんは残ってください。打ち合わせをします」
「は~い。せいぜい瑞鶴さんらしい最期にしてやろうね・・」
「何か変な感じ・・」瑞鶴さんは表情に困っています。それもそのはず。自分が撃沈する様子が話し合われるんですから。
「あくまで、それっぽくするだけだから。気にしない、気にしない・・」
「それでは、みなさんお願いします」
提督立案のとおり、加賀さんにあたかも私たちが出撃したかのように見せかけます。その後、鎮守府中の軽巡洋艦以上の艦娘たちが加賀さんの動きをそれとなく監視し、加賀さんの注意が港から離れたところを見計らって瑞鶴さんに港に戻ってもらって戦艦艦娘の寮に隠れてもらったり、私たちがいかにも戦闘で負傷したかのように偽装して準備を進めます。
そして、私たちはわざとらしく外洋から帰還し、ご丁寧に入渠までしたのです。
私は「バケツ」を使ったことにして、加賀さんを空母控室に呼び出し、「重大事実」を伝えます。
空母控室には巧妙に隠しカメラや隠しマイクが設置され、私たちのやり取りは鎮守府どこでも確認できるようになっているのです。
私は、さも神妙な顔をして加賀さんに伝えました。
「空母瑞鶴が撃沈した」と。
「えっ、今何て言ったの?」加賀さんの表情が固まりました。
やりました。ドッキリだと感づかれた様子は全くありません。
「・・空母瑞鶴、撃沈です・・」入渠中に泣ける映画を見て感情を高ぶらせていた私は、泣きそうな声で言いました。
「あ、赤城さん、今日はエイプリルフールじゃないのよ。うそなんかついたらいけないわ・・」加賀さんの声は震えています。順調です。
「いいえ、うそではありません・・」私の目から涙が自然とこぼれ落ちてきました。われながら名演技です。
「そ、そんな・・殺しても死なないような顔をしていたあの子が・・」
「・・私たちは深海棲艦の急襲を受けてしまいました。瑞鶴だけは何とか戦闘機を出し、制空権を回復しようとしましたが、多勢に無勢でどうすることもできませんでした。・・次々と傷つく私たちを見て、瑞鶴は撤退を具申したのですが、自らはそのまま敵に突っ込んでいってしまいました・・」私たち5人で考えた瑞鶴さんの最期。瑞鶴さんの性格が反映されていて、それっぽい内容になっています。
「うそよ、私は信じない・・」あの加賀さんが体を震わせています。「
「瑞鶴が別れ際に『これを加賀さんに返して欲しい』と・・」加賀さんにそれを見せると、加賀さんの表情は明らかに曇りました。
瑞鶴さんに、何か加賀さんとの思い出の品はないかと尋ねたら、彼女は初陣のとき、加賀さんから渡されたというお守りを大切に持っていました。出撃のときは必ず身につけているというお守りは色が黒ずみ、そしてボロボロになっていました。
「これは使える」と確信した私は、渋る瑞鶴さんを説得して半ば強引に借り受けたのです。
やはり加賀さんが、自分で瑞鶴さんに与えた品を忘れるはずがないのです。
「・・何が幸運艦よ。私を置いて先に逝ってしまうなんて・・」あの加賀さんが人目をはばからず涙を流しています。・・瑞鶴さん、あなた加賀さんにここまで思われて幸せね・・
「・・それで、敵は何人で瑞鶴を袋だたきにしたの?」加賀さんの目が危険な輝きを放っています。
「えっ?」私には加賀さんの質問の趣旨が全く分かりません。
「あの瑞鶴が1対1の戦いで後れを取るなんてあり得ない。何人で寄ってたかって袋だたきにしたの?それとも姫?鬼?・・どちらにしても生かしてはおけない」
「加賀さん、それは・・」加賀さんが過激な方向に進もうとしています。これはまずい・・
「・・弔い合戦よ。瑞鶴の仇を取ってあげなきゃ・・」ああ、やっぱり・・そうなってしまうのね。
「そんなことをしても瑞鶴は戻らないし、瑞鶴も喜ぶとは思えない・・」加賀さん、そんな敵はいません。これはドッキリで、加賀さんが瑞鶴さんをどう思っているか確認しているだけなんですから。何とかして思いとどまらせなければ・・
「いいえ、これは私の問題です。・・私の後を継げるのは瑞鶴しかいないと思っていたのに・・その瑞鶴を沈めた奴が、この世でのうのうと生きていることが許せない・・例え差し違えてでも、その首を瑞鶴に捧げなければ・・」
「・・提督のお許しが頂けなくとも、私は征くわ」加賀さんは今にも出撃しそうな勢いです。もう万事休すです。
「・・こんなことになるなんて。翔鶴さん、どうしましょう?」私は翔鶴さんに助けを求めました。
加賀さんは「何を言っているの?」という顔をしています。当然よね・・
たまらず翔鶴さんが瑞鶴さんを連れて現れました。
誰?瑞鶴さんに「ドッキリ大成功」と書かれた看板を持たせたのは?
あれじゃあ火に油を注ぐようなものって・・ああ、瑞鶴さんが加賀さんに派手にビンタされてしまいました。
ごめんなさい、瑞鶴さん。あなた提督や私たちの指示に従っただけなのに・・後で間宮で何かおごってあげますから、許してくださいね・・
……………
「誰?こんなつまらないこと考えたのは?」加賀さんは怒っています。まあ、そうなるな・・って日向さんのマネをしてどうなるのでしょう。
瑞鶴さんの頬にはそれは見事な手形が残されています。
それでも、瑞鶴さんがうれしそうな顔をしていることだけが救いです。
「瑞鶴と顔を会わせればケンカばかりしている加賀さんが、実際のところ、瑞鶴をどう思っているのか知りたいと提督が・・」翔鶴さんがおそるおそる説明をしています。提督、事実なんですから後でどうなっても知りませんよ・・
「そう、提督が・・確かに提督が絡まなければ、ここまではできない・・」加賀さんは呆れたようです。
「私、うれしいです。・・加賀さんがここまで言ってくれたこと後悔させません!頑張ります!!」瑞鶴さん、よほどうれしかったのね。長年コンビを組んでいる私ですら、あそこまで言ってもらえるか分からないのですから。
「せいぜい励みなさい。・・それにしても、初陣のときに渡したお守りをまだ持っていてくれたのね・・」加賀さんたら、この期に及んでまだ突き放すかのようなことを言っちゃうんだから・・
「これがあるから、私は『幸運艦』でいられるんです・・」瑞鶴さん、ナイス!
リップサービスではなく、本心から言っていることが明らかだから破壊力抜群!!これならさすがの加賀さんも・・
「さすがに、これじゃあ、効力切れよ。今度一緒にお参りに行きましょう・・」そう、加賀さんも瑞鶴さんに素直な気持ちをぶつければいいのよ・・
「はい、よろこんでお供します」瑞鶴さんの最大の魅力は、その素直さ!これで加賀さんも陥落間違いなしね・・
・・後日、提督が艦載機に爆撃されたわ。・・外部からの攻撃の兆候は全くなく、それは見事な
でも、死にそうで死なないギリギリのところで止めたことを提督自身がお認めになったから、敢えて犯人捜しはしないみたい・・
赤城が一番悪いんじゃないか疑惑・・