どの競技なら書けるかいろいろ考えた上、ボクシングにしてみましたが、作者にはボクシングの経験もなく、見聞きした知識のみで書いたため、表現が稚拙です。あまり期待せずに読んでください。
また、R指定にする必要はないと思いますが、「血がにじむ」シーンがあります。苦手な方、「ボクシングなんてありえない!!」という方はブラウザバック願います。
「遂にこのときが来た。私は挑戦者。失うものは何もない。思い切ってやるだけ。・・でも、相手は加賀さん。認めたくないけど、その強さは本物。もし私が一発でやられても、翔鶴姉だけは笑わないでね・・」瑞鶴は、セコンドを務める翔鶴に話しかけていた。
「誰が笑うものですか。チャンピオンになったときから全て1ラウンドで相手を沈めた加賀さんに挑むその勇気だけでも大したものよ。胸を借りるつもりで頑張りなさい。でも、あなたのそのパンチ、加賀さんにお見舞いできれば、分からないわよ・・」
「うん、ありがとね。無様な試合だけはしないよ。負けるときは大の字でぶっ倒れるまで!!」
「今回の相手は油断できないわよ・・」セコンドの赤城は加賀につぶやいていた。
「ええ、新進気鋭の挑戦者。彼女はこれまで全てKOかTKO勝ち。あのパンチには要注意ね・・」
「スピードもあるし、勘もいいみたいだから、こちらのパンチがなかなか当たらない上、結構打たれ強いわ。あの長門と打ち合って勝っちゃうんだから・・」
「ええ、私もあれには驚いたわ。いい試合ができそうね・・」加賀は久しぶりの試合、しかも骨のありそうな相手であることに喜びを感じていた。
試合が始まる前、グローブを突き合わせる2人。
「強い・・油断したら確実に負ける・・」
「さすがにチャンピオンはすごい・・」
これだけで相手の強さを感じる2人はただ者ではなかった。
「カーン!」1ラウンド開始のゴングが鳴る。
瑞鶴は挑戦者らしく思いっきり突っ込んでいった。
「速い!!」加賀はそのスピードに驚いていた。加賀もスピードのある方であったが、瑞鶴はそれを確実に上回っていたからであった。
「来る!!」瑞鶴のパンチを全身でかわす。
瑞鶴の右ストレートが加賀に直撃する・・と思われたが、紙一重のところでかわしていた。しかし、頬の皮がかすかに切れ、うっすら血がにじんでいた。
「何てパンチなの!あんなのまともに食らったらひとたまりもない・・」加賀はこれまで感じたことのない恐ろしさと・・楽しさを感じていた。
今度は加賀がカウンター気味にパンチを繰り出す。瑞鶴も紙一重のところでパンチをかわしたが、瑞鶴の頬からもうっすら血がにじんでいた。
「うわっ、これがチャンピオンのパンチ!こんなの一発でも食らったら終わりだ・・」瑞鶴も加賀と同じ気持ちになっていた。
それから2人はお互いに警戒し、ジャブの応酬に終始したため、両者とも相手に大したダメージを与えられぬまま、あっという間に1ラウンド2分が終了した。
「はぁ、はぁ・・」わずか2分の攻防にも関わらず、瑞鶴は肩で息をしていた。
「一瞬でも油断したら終わる・・やっぱり、加賀さんは強いなぁ・・」瑞鶴は、拳を交えたチャンピオンの強さをひしひしと感じていた。
「どうするの?続ける?」翔鶴が心配そうに尋ねた。
「うん。ここでやめたら、私と戦ってくれる加賀さんに申し訳ないよ」疲れた表情を浮かべながら、瑞鶴の闘志はいささかも失われていなかった。
「あなた、加賀さんのことが気に入ったのね・・いいわ、思い切りやってらっしゃい!!」翔鶴は瑞鶴の肩をポンと叩いた。
「1ラウンドで終わらなかったのはいつ以来かしら・・」加賀も肩で息をしていた。
「彼女にはフルラウンド戦った実績があるし、その上、若いわ。ラウンド数が重なるとあなたの方が不利よ・・」
「赤城さんのいじわる・・でも、確かにそうね。早いラウンドで勝負をつけるべきね・・」
「どう?勝てる?」赤城をここまで心配させた相手は、かつていなかった。
「正直分からない。でも・・」
「でも?」
「ボクシングってこんなに面白いんだってことを思い出させてくれた彼女に感謝しなくちゃ。全力で勝負するだけよ。そうじゃなくちゃ彼女・・いえ、瑞鶴に申し訳ない・・」
「加賀さんがこの時点で名前で呼ぶなんて・・いい子が挑戦してくれたのね」赤城は、瑞鶴たちの方をみて目を細めていた。
「ええ、瑞鶴は間違いなく、いいチャンピオンになるわ。・・でも、今は渡さない・・」加賀の闘志もみなぎっていた。
「カーン!」2ラウンド開始のゴングが鳴った。
ここで加賀は右腕を少し伸ばし、「来い来い」とばかりに瑞鶴に挑発のポーズを取った。
普段の瑞鶴なら、その挑発にすぐ乗るところであったが、どういうわけか瑞鶴は動かなかった。
その慎重な態度に、翔鶴や赤城、そして加賀の方が驚いていた。
「根っからのファイターだと思ったのに、こんな分かりやすい挑発に乗ってこないなんて・・この子、意外とクールだったの?」加賀は肩すかしを食ったような気分になっていた。
実は、瑞鶴は
普段であれば罠が仕掛けられていても、それを吹き飛ばしてしまうだけの自信と実力を持っていた瑞鶴も、加賀の優雅なまでの挑発に、その自信が失われてしまったのであった。
・・そして、その感覚はおそらく正しいのであった。ここは、そういう感覚が持てた瑞鶴が褒められるべきであった。
瑞鶴は、慎重に間合いを計りながらジャブを繰り出していった。パンチそのものは加賀のガードに阻まれていたが、加賀の腕はみるみる真っ赤に染まっていった。
「何て重いジャブなの!!このままじゃ、ジャブだけで腕が使い物にならなくなる・・」次第に腕の感覚がなくなり、ガードがさがっていく。
それを待っていましたとばかりに、瑞鶴がフックやストレートを放ち、ガードを突き崩そうとする。・・次第にダメージを受ける加賀。
「このままじゃ、ジリ貧になる・・危険だけど、打ち合って勝機を見いだすしかない・・」加賀は打ち合いで勝負をつける覚悟を決めた。
加賀はクリンチし、一旦距離を取った。
加賀がクリンチで逃れたのはチャンピオンになってから初めてのことであった。
加賀は、パンチを立て続けに放った。一発で倒すことはできないが、手数を重視したのであった。
そのパンチが瑞鶴にヒットする。効いているのか効いていないのか分からなかったが、やめるわけにはいかなかった。
瑞鶴も手数を重視したパンチを繰り出し、打ち合いとなっていた。
瑞鶴のパンチが加賀にヒットする。
「すごいパンチね。クラクラしてるわ。でも私は負けるわけにいかない・・」加賀もパンチを返す。
「加賀さんのパンチすごい!意識ごと吹っ飛ばされそうだけど、負けない!!」瑞鶴も負けずに打ち返す。
パンチが決まるたび、男子顔負けの重い音が鳴り響いていた。
そこに瑞鶴の左フックが加賀のボディーに突き刺さる。
「うっ・・」加賀の顔はゆがみ、かすかではあったが苦しそうな声をあげ・・ガードもがら空きになってしまった。
・・このチャンスを瑞鶴が見逃すはすがなかった。
「私のパンチが効いてる・・ここで決めなきゃ私に勝ち目はない・・」したたかにダメージを受けていた瑞鶴は渾身の右ストレートを放った。
「すごいのが来る・・ダメ・・これは避けきれない・・それなら・・」こちらもボロボロになっていた加賀もカウンターの右ストレートを放つ。
同時に強烈なパンチが2人の顔面をとらえた。たまらずダウンする2人。
・・ワン・・ツー・・スリー・・カウントが取られ始める。
「どちらも完全に決まった。立った方が勝ちね・・」赤城はそう見ていた。
「瑞鶴はカウンターだったから、おそらくもう立てない・・あとは加賀さん次第・・」翔鶴は祈るように見守っていた。
翔鶴は1秒でも早く終わらせるため、すぐにでもタオルを投入したかったのであったが、瑞鶴に「テンカウントを聞いたなら仕方ないけど、タオル投入では納得できない。例え私が死んだと思っても、タオルだけは投入しないで・・」と懇願されていたため、涙をのんで見守っていたのであった。
・・フォー・・ファイブ・・シックス・・
加賀が立ち上がろうとする。瑞鶴は・・動かなかった。
・・セブン・・エイト・・
加賀はフラフラと立ち上がり、ファイティングポーズを取ろうとする。
「・・ああ、負けた。でも瑞鶴、無敵のチャンピオンを相手に一歩も引かずによく戦ったわ・・お姉ちゃんは誇らしいわ・・」翔鶴は姿勢を正し、赤城に対し勝利を祝福しようとしたその瞬間、加賀は苦痛の表情を浮かべて片膝を着いてしまった。
・・ナイン・・
「ここで脇腹が悲鳴をあげるとは・・ダウンしてなお私を苦しめるなんて本当に恐ろしい子・・」加賀はリングにうつぶせに倒れたままの瑞鶴に顔を向けてほほえんだ。
・・瑞鶴のあの左フックが、最後の最後に加賀の勝利に対する執念を打ち破ったのであった。
・・テン!!
「カン、カン、カン!!」試合終了のゴングが打ち鳴らされると当時に医療スタッフがリング内に駆け込む。
2ラウンド1分58秒 両者ノックアウトであった。
……………
「今回は引き分けだったけど、次はきっちり勝ってみせるわ・・」全身ミイラのような姿で加賀は隣のベッドにいる瑞鶴に声を掛けていた。
当初、加賀と瑞鶴は別々の病室にいたのであったが、加賀が断られること覚悟で瑞鶴に同室を申し込んだのであった。
瑞鶴も同じことをしていたらしく、あるとき何も言われないまま同室になった2人は、うれしいやら恥ずかしいやらで顔を赤らめたが、すぐに打ち解けることができた。
病院側からあらかじめ意向を聞かれていた赤城と翔鶴も、2人の目まぐるしく変わる顔色を見て笑い合い、こちらもすっかり打ち解けたのであった。
「・・いえ、あのとき私は気を失っていて、立ち上がろうとすることさえできませんでした。私の負けです・・」瑞鶴もこれまたミイラのような姿であった。
「変な謙遜はしないで。最後のパンチはカウンターだったから、あなた自身の力が加わっているのよ・・そんなこと言われたら、あなたのパンチだけで結局立ち上がれなかった私の立場はどうなるのよ・・」
「はぁ・・」
「生返事なんかしちゃって。・・もっと励みなさい。強くなったあなたをリングに沈めてあげるから・・」
「いえ、さらに強くなってチャンピオンの座を頂きます」
「強気のあなた、嫌いじゃない・・」
「はい。強いチャンピオンを倒してこその挑戦者ですから・・」
「あなた、私以外に負けたら承知しないわよ・・」
「チャンピオンの方こそ、私以外にその座を渡さないでくださいね・・」
入院中にこの2人は無二の親友となった。そしてこの2人はお互いをさらに高めあっていく・・
長門ファンのみなさん、なにげに申し訳ございません・・