艦娘たちの意外な側面を見ることができることから、なるべく多くの艦娘たちに行わせることが強く推奨されている。
しかし、この研修の真の目的を知る者は、海軍の最高幹部以外誰もいない・・
プロローグ 提督代理研修(上)
「あ~あ、今度私が提督代理研修なんだよね・・」瑞鶴は困ったような声を出していた。
「大丈夫よ。あなたならできるわよ。しかも、いざとなったら提督がいるんだから・・」
「それが問題なのよ。提督さんがいなけりゃ、ここぞとばかりに加賀さんに命令してやれるのに・・」
「フフフ・・加賀さんに命令するのがあなたの夢だもんね・・」
「そうよ。あの鉄仮面をギャフンと言わせるまたとない機会なのに・・」
「提督が文句を言えないような内容にすれば?」
「・・翔鶴姉、それ、私以外に言わない方がいいよ。ものすごく腹黒く聞こえるから・・」
「そうかしら?」
「自覚がないのが翔鶴姉らしいんだけど・・それに、私バカだから、そんな難しいこと考えられないし・・」
「どこの世界に詩を詠むバカがいるの?・・あなたは
「翔鶴姉は、私の評価が高すぎるよ・・そもそも、詩を詠むって『秋は終わりの季節・・』のことを言ってるんだと思うけど、あんなのは詩と呼べたもんじゃないよ・・」
「いいえ、加賀さんは、あなたがそれを言ったということを知ったら、ものすごく驚いていたわ。『意外な側面が見られた』と・・」
「うわっ、寒気がしてきた・・」
「・・まあ、いいわ。どちらにしても提督がいらっしゃるし、秘書艦の経験もあるんだから、そんなに心配しなくて大丈夫よ」
「うん、そうだね・・」
……………
「提督さんの椅子に座ると、気持ちが引き締まるね・・」
「まあ、気楽に行こうや。・・ところで、何をしたいのか考えてきたのか?」
「まず、秘書艦を加賀さんにお願いした・・」
「・・こき使う気か?」
「・・加賀さんにも同じこと言われた。・・でもそんなことはしない。嫌味なしで加賀さんと話がしたいだけなんだ」
「・・提督代理、加賀、参りました」
「あっ、加賀さん・・秘書艦の件ですよね?」
「秘書艦引き受けてもいいわ。・・でも、私は提督に対してもいろいろ意見を言うのよ。きっと小うるさいと思うから、変えるなら今よ」
「・・正直、断られるんじゃないかと思ってた。引き受けてもらえてうれしいよ。さっそく秘書艦席にお願いします。・・あと、今日だけは嫌味なしでお願いします」
「提督代理に嫌味は言いませんが、意見は言わせてもらいます。・・さっそく提督代理、何から始めますか?」
「『意見は言う』って普段とあまり変わりないように思えるんだけど・・まあ、いいか。・・うちには正規空母が6人そろってるんだけど、大規模作戦のときには、正直心もとないなって思ってるんだ。そこで、正規空母狙いで建造したいと思ってるんだけど、大淀さん、どうかな?」
「通常建造では、現状、新たな正規空母の誕生は望めません。となると大型建造となりますが、各資材を大量に消費します。『作れるか、作れないか』と尋ねられれば『作ることはできる』と答えますが、残量をどう見るかについての判断はしかねます」
「加賀さんはどう思う?」
「・・提督代理の提案に同意します。空母の修理には時間がかかります。バケツには限りがある上、一人前とは言えないまでも、それなりに任せられる空母とするには相当な時間を要しますから、今のうちから空母を育成することは良いことと思います。・・ただし、建造は1回勝負。何が出てもしばらくは空母狙いの大型建造は避けるべきです」
「さすがに空母が出るまで建造しようとは思ってないよ。・・提督さん、無理聞いてもらえるかな?」資材管理の観点から、入渠を除き、資材使用には提督の同意が必要とされていたのであった。
「う~ん・・提督代理がきちんと考えた上で出したプランだ。資材の残量がやや少なくなるが・・やってみるか。資材については、駆逐艦娘たちに遠征を頼むとするか・・」
「ありがとね。遠征に行った駆逐艦娘たちには私が直接おごるからさ・・」
この言葉に提督と加賀は、ひそかに感心していた。
「それでは提督代理、建造ボタンをどうぞ・・」
「これ、責任重大だね・・」
「提督に無理聞かせて、空母が出なかったらしばいてあげる・・」
「うわっ、加賀さん怖い・・」
「冗談よ・・」
「冗談に聞こえないんだってば・・ええい、どうにでもなれ・・って、建造時間6時間40分?」
「おいおい、やってくれたな・・大鳳確定だ!」
「はぁ~良かった。これで命がつながったよ・・」
「瑞鶴・・」
「はい!!」
「さすが幸運艦ね。お手柄よ・・」
「加賀さんに褒められた・・明日、いや、今夜雪かもしれない・・」
「今、しばいてあげる・・」
……………
「提督さん、今日○○フェスティバルに出るって聞いてなかったよ・・」
「いや、昨日の夜になって、いきなり出てくれって頼まれたんだ・・」
「どうするのよ?戦闘があったら?」
「フェスティバル会場は谷間だから電波は届かないし、仮に連絡がついたところで、町中が大渋滞になるだろうから、緊急車両を使ってもここに戻るまでに相当時間がかかる。そのときは、お前と加賀、大淀、それに長門で決めるんだ」
「私、提督さんの編成案に意見したことはあっても、最初から編成したことなんかないよ・・」
「それは皆同じだ。取りあえずお前が編成案を作れ。それをあとの3人と相談すれば、いつもと同じになるじゃないか」
「え~、加賀さんに『ここはダメ、そこが足りない』ってコテンパンにやられそう・・」
「俺は、いつもそうやってお前らに言われている・・」
「・・提督さんの苦労が少しは分かったよ」
「ハハハ・・じゃあ、この研修も意味があるな。だが、お前らのおかげで、この辺りは平穏そのものだ。慢心は禁物だか、戦闘はまずないだろう」
「うん。でも、慢心だけはしない・・」
「・・実は、お前が加賀を秘書艦にしたとき、5分も経たずに大げんかを始めるだろうと思っていた。だが、今日の加賀は、求めない限り意見すら言わない。それを必要とすら感じさせないからだろう・・お前には人の上に立つ器量があるのかもしれないな・・」
「褒めても何も出ないよ。・・それに、加賀さんはあきれて物も言えないだけかもしれない・・」
「加賀に限ってそれはない・・」
「言い切っちゃうんだ・・でも、確かに私も何も言われないから、薄気味悪いなとは思ってたんだ・・」
「・・私を何だと思ってるの?」
「うげっ、加賀さん・・」
「瑞鶴、覚悟なさい・・」
「ひ、ひと思いにやってください・・」
「あら?勝負するんじゃないの?いつも『勝負はしてみなけりゃ分からない』って言っているのに・・」
「何だか分からないけど、今日は勝てる気が全くしないんだ。それなら、ひと思いにやってもらった方がいいや・・」
「・・何だか調子狂うわ。それに提督代理に手を出したら、上官傷害で処分されるかもしれないから、今回だけは勘弁してあげる・・そのかわり、次はないから気をつけるのよ」
「・・今日の2人は何か違うな。このまま2人を見られないのは残念だ」
「もう、見世物じゃないんだから・・さっさと行ってらっしゃい!」
「はい、はい・・じゃあ、留守を頼んだぞ」そう言いながら提督はフェスティバル会場へと向かっていったのであった。
「あれっ、この瑞鶴、どこかで聞いたことがあるようなセリフ言ってるな・・」と思われた方、正解です。
次回、真相が明らかになります(本当か?)