「さて、私のわがまま聞いてもらえたから、今度はほかの艦娘のために何かしてあげなきゃって思うんだけど・・う~ん何をすればいいだろう?加賀さんどう思う?」提督の椅子に座っていた瑞鶴は、加賀に問いかけていた。
「心がけはいいんだけど、中身を丸投げしない・・」加賀の言い方はそっけなかったが、それでも普段に比べればかなり角が取れた言い方であった。
「やっぱりそうなるか・・」
「提督代理!!」大淀が真っ青な顔をして提督室に駆け込んできた。
「大淀さん、何事?」
「遠征に向かった駆逐艦娘たちから緊急電!『ワレ、敵ト遭遇ス。救援ヲ乞ウ。
「まずい!遠征部隊の武装は海賊対策程度だから、深海棲艦相手に戦闘なんかできない!すぐ救援部隊を結成して向かわせなきゃ。大淀さんは周辺海域の地図を出してください。加賀さんは館内放送で長門さんを呼び出してください!」
「分かったわ・・」客観的に見れば、瑞鶴の指示に加賀は黙って従ったのであったが、それに気付いた者は本人らを含めて誰もいなかったのであった。
「・・日の入りの時間まで1時間余り。ダメだ・・敵への攻撃はギリギリできたとしても、すぐに夜になって戦果が見込めない上に、帰還ができなくなるから航空部隊は出せない・・水雷部隊中心で行くしかない・・」
「続報によれば、敵には16インチ砲を積んだ戦艦がいるらしいとのこと。いくら夜戦とはいえ、戦艦抜きの編成にするわけにはいかないわ」
「16インチ砲?・・大和さんたちは応援に出ているから、対抗できるのは長門さんたちしかいないじゃん。でも、長門さんは、その・・装甲が薄く、重い主砲を積んでいない私と違って・・」
「気を使わなくていい。はっきり『足が遅い』と言え。・・だが、大丈夫だ。確かに私の表面上の最高時速は25ノットだが、30ノット近くまでなら何とか出せる。それなら、金剛たちとあまり変わらん」
「それじゃあ、長門さんの機関に負担が・・」
「私は、艦娘代表だ!仲間の危機に際し、ただ指をくわえて見ていることなどできぬ!!それに自分の体のことだ、機関不調でたどり着けないなどという間抜けなことはしない!!『あの戦争』でも、最高速度が私より速い大和が全速力で航行しても、私は遅れずについていった実績もある*1!!こうしている間にも、遠征部隊は必死に逃げている。迷っている暇はないぞ、提督代理!!」
「加賀さん、大淀さん・・」瑞鶴が加賀と大淀の方を見ると、2人とも首を縦に振った。
「分かった・・長門さんと陸奥さんの出撃をお願いします。あとは川内さん、神通さんの二水戦の出撃を命じたいと思うんだけど、どう思う?」
「川内は夜戦バk・・じゃなかった、夜戦のプロだから分かるとして、なぜ川内の一水戦でなく、神通の二水戦を選んだの?」
「神通さんたちの二水戦は、ものすごく鍛えられている。個の力なら川内さんの方が上かもしれないけど、神通さんの冷静な判断力とそれに従う駆逐艦たちの結束は固い。味方にとって頼もしいなら、敵にとってみたらイヤなんだろうなと・・」
「驚いたわ。コテンパンにしてやろうと思って聞いていたんだけど、ケチのつけようがない・・」
「私も異議ありません」
「私も異議なし・・それでは提督代理!私たちに命じてくれ!!」
「・・長門さん、救援部隊出撃、お願いします」
「了解!!提督・・いや、提督代理に勝利を!!」
「・・加賀さん、後詰めの準備を・・」長門たちの出撃を見送った瑞鶴は、加賀に声を掛けていた。
「夜明けと同時に航空部隊を出撃させるのね・・」
「さすが加賀さん。皆まで言う必要ないね。長門さんたちが決めてくれると思うから、そこまでしなくていいと信じたいんだけど・・」
「フフフ・・」
「・・私、何かおかしなこと言った?」
「いいえ、準備しておくにこしたことはないわ・・それにしても、今日のあなた、冴え渡っているわ。実は中身が鳥海なり霧島だってオチじゃないわよね・・」
「さすがにそれはない・・でも確かに、自分でも出来すぎだと思う・・」
「・・本当に調子が狂うわ。いつもならすぐ調子に乗るくせに・・」
「何か、ゴメン・・」
「ホントどうしたの?あなたは私に弱みを見せたくないんじゃないの?大丈夫?」
「・・どんなに考え直しても最善と思えるメンバーを組めたはずなんだけど、万が一があるんじゃないかと怖くて怖くて・・自分が戦った方がどれだけ気が楽か・・提督さんって毎回こうだったんだと思うと・・今更ながらすごいなって・・」
「私だけじゃなく、大淀や長門も含めて検討したんだから、大丈夫よ。万が一、本当に万が一のことがあっても、それは私たちの連帯責任よ。決してあなただけに責任は負わせない。約束するわ。・・それとも私なんかの約束じゃ物足りない?」
「ううん、加賀さんの約束なら
「提督が帰ってきたら、うんと説教してあげる・・ここまで瑞鶴を追い込んだ罪、見逃すわけにいかない・・」
その夜、瑞鶴と加賀、そして大淀は一睡もせず、戦況を見守り続けた。
ようやく提督が未明に鎮守府に戻ってきたときには、既に戦闘は終わっていた。
救援部隊、遠征部隊ともに満身創痍となりながら、誰一人欠けることなく、敵部隊を全滅させていたのであった。
加賀は、瑞鶴が止めるのを聞かず、提督を正座させて延々と説教し、瑞鶴がおごることになっていた遠征部隊に救援部隊を加えた上で、その費用を提督に支払わせたのであった。
……………
「大臣、大変です!!」
「次官が大声を出すなんて珍しいな。何事だ?」
「遂に・・遂に提督代理研修で満点をたたき出した艦娘が現れました!!」
「何!一応確認するが、それの意味することは分かっているな?」
「もちろんです。総理たりうる者が見つかったということですから・・」
「それは誰だ?」
「『壁に耳あり・・』と申します。この資料をご覧ください・・」
「どれどれ・・何と、あの小うるさい加賀を秘書艦にして、さらに意見を言わせなかっただと?フムフム・・駆逐艦娘たちに対する配慮もできる。極めつけは○○沖遭遇戦を指揮しただと?提督に言われていたとは言え、独善は避けつつ、迅速かつ的確な編成をしてるじゃないか・・この内容、間違いないのか?」
「はい、その日提督は○○フェスティバルの招待を受け、その時間帯は県や市の幹部たちと会合を行っていたことに間違いありません」
「・・空母としての戦果もある。運もトップレベル・・これなら総理として押し頂く理由もつく!!・・よし、遂に私たちは総理となり得る艦娘を見いだした!!・・だが、艦娘を総理にしようとすれば、どのような妨害工作が起きるやもしれぬ。ず・・いや、具体的な艦娘の名前を出すのは最後の最後としよう。・・これで海軍は本腰を据えて艦娘内閣実現に向けて各方面に働きかけることができる。・・だが、これはあくまで海軍の利益を図るためではない。このままでは戦争継続など夢物語に過ぎなくなるからだ。そうなれば、わが国土と国民は・・口に出すのもはばかられることになる。・・国土と国民があって初めて軍も成り立つという当たり前のことすら分からん奴が多すぎていかん。物量に劣るあまり、精神論に頼りすぎたか・・」海軍大臣は悔悟の言葉を出していた。
彼の名前は、米内光政という・・
後出しジャンケンですが、次回からこの「提督代理研修」をプロローグとした新章に移行します。