艦これの余白   作:夢幻遊人

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「私は、何度生まれ変わっても、例え深海棲艦になっても絶対に人間の味方になる・・」これは、本編第7話で瑞鶴が言ったセリフです。

 筆者的には、いかにも瑞鶴が言いそうなセリフであり、自分でも気に入っています。しかし、船としての壮絶な最期を知る私としては、瑞鶴が逆に人間にたてついたとしても全くおかしくないと想いました。(艦娘全般に言えることかもしれませんが)
 そこで、なぜ瑞鶴がこう言い切れたのか自分なりに理由付けしてみたいと思いました。

 今回はそういったわけで、これまでの私からすれば、いろいろな意味でかなりキツい表現があります。苦手な方はブラウザバック願います。


闇と光(上)【残酷な描写】

「男爵、聞いてもらいたい話があるんだけど・・」瑞鶴は、鈴木男爵に話しかけた。

 

「私でよければ、何なりと・・」

 

「ほら、私って建造されたときからこの姿で、海軍の中でもほんの一部のことしか知らないんだ・・人として生まれたなら自然と知ることのできる情の意味や、他の世界の知識がない・・これじゃあ、人にとって本当に必要なこととか、大切なことをまるで無視した交渉をしてしまうかもしれない・・それは絶対に避けなきゃいけないと思うんだ・・」

 

「・・総理がご懸念されていることは分かりました。こういったことは、ご自身で体験されるのが一番手っ取り早いのですが、総理の顔は知れ渡っておりますからな・・女性の場合、化粧や髪型を変えれば、かなり印象が変わることがありますが、総理ほどのお若さとお美しさだと、なかなか心配ですな・・」

 

「私が美しいって・・翔鶴姉ならともかく、そんなことないよ・・」

 

「いやいや、この(じじい)もあと50歳若ければと思うくらいですから」

 

「それは惜しいことをした。連合艦隊司令長官の奥さんになり損ねたよ・・って冗談はここまでにして、どうしたらいいかな?」

 

「世辞を言ったわけではないのですが・・事案が事案だけに、護衛を付けるわけにはいきませんからな・・7.7ミリ機銃を艤装され、発信器をお付け頂けるのであれば、この爺の責任で何とか致しましょう。・・この際、総理に人間社会の表ばかりでなく、できうれば裏まで見て頂きたいと思います。それで、もし、人間に愛想が尽きたら爺に言ってくだされ。見てのとおり老いぼれですが、元連合艦隊司令長官と元侍従長の肩書きがございます。深海棲艦の土産代わりにこの首を持って行けば、あるいは受け入れてくれるやもしれませぬ・・」

 

「男爵の命を取るなんてあり得ないよ。・・私、確かに総理になりたてのとき、バカにしたような態度を取られたことはある。でも、ほとんど何も知らなかったんだから、むしろ当然だったと思う。その人も後でキチンと謝ってくれて、今では本当によくやってもらっているから感謝しているくらいなんだ・・」

 

「・・残念ながら、人の世は『表』の部分のみで成り立っておりません。物事にはすべからく『裏』があるもの。どちらも知った上で、総理がどうされたいのか、お決めください・・」

 

「・・よく分からないけど、男爵の言葉、覚えておくね・・」

 

 

……………

 瑞鶴は、化粧をし、髪型も変え、服装も二十歳(はたち)前後の女性が好みそうなものにして街を見回った。銀座や浅草などの繁華街を訪れ、百貨店でウインドーショッピングを楽しんだり、芝居や映画などを見たりもした。

 

「東京ってすごい・・遊ぼうと思えば、何でも、いくらでもできる。みんな憧れるわけだ・・」まぶしいばかりの東京の輝きに瑞鶴は圧倒されてしまったのであった。

 

 その一方で、いわゆるドヤ街も訪ねてみた。さすがにそれまでの服装では襲ってくださいと言わんばかりになるため、みすぼらしいものに変え、顔も敢えて炭で汚すなどした上で向かったのであった。

 

 ・・そこには、瑞鶴がこれまで知らなかった世界が広がっていた。

 昼間から酔っ払って()()を巻く者や、日雇いの職を求める者、どう見てもいかがわしい物を半ば公然と売買している者、それに売春婦などなど・・まず、空気のにおいからして銀座などとは違っていた。

 

「これが同じ東京なの・・」瑞鶴はその格差に驚いた。機銃を隠して艤装してはいたが、正直関わりたくないという気持ちがわき上がっていた。

 しかし、鈴木男爵から人間社会の「裏」の部分まで知った方がいいと言われていたこともあり、よく見てみることにしたのであった。

 

「姉ちゃん、別嬪(べっぴん)さんだね・・一発○○円でどうだい?」道を歩いているだけで、一度ならずこんなことを言われては、さすがの瑞鶴も腹が立つというものであった。

 

 

「畜生、バカにしやがって。艦載機があったら、こんな奴らまとめて吹っ飛ばしてやるのに・・」そう思った瑞鶴に鈴木男爵の顔が浮かんでいた。

 

「・・男爵、何でこんなところまで見ろって言ったんだろう?綺麗なところだけ見せて『守ってください』って言ってもいいのに・・」瑞鶴は、鈴木男爵の意図が全く分からなかった。

 

 そのようなことを考えて歩いていたため、前方への注意がおろそかになってしまい、目の前に人がいることに気付くのが遅れてしまった。

「あ、危ない・・」急いで体をかわしたが、わずかに体が触れてしまった。

 

「ごめんなさい」瑞鶴は頭を下げて謝った。

 

「気にするな」顔を向けたその男は瑞鶴の顔を見ると一瞬驚いたような顔をして言葉を続けた。

「お姉ちゃん、初めて見る顔だな。新入りかい?」

 

「ええ」

 

「俺は、阿久野って言うんだ」

 

「珍しい名字ね」瑞鶴は、この場にふさわしい言葉遣いにしていたが、どちらかというと本来の言葉遣いに近かったため、苦にならないのであった。

 

「・・この辺り一帯を仕切ってる」

 

「あら、すごい人と会っちゃった」

 

「お前、面白い奴だな。・・よし、気に入った。もしよければ俺についてきな。この辺りのこと全部教えてやるぜ。・・それに俺と一緒にいれば、まず手出しされねえ」

 

「へえ、それはすごい。でも、さすがにタダってわけにはいかないよね。ひょっとして私の体が目的?」

 

「こいつは肝が据わってらぁ・・でも安心しな。俺はお前に手出ししねえ」

 

「それって私に魅力がないってこと?」

 

「言い方が悪かった。これを見てみな」阿久野が上着をめくると、そこには液体が入った容器があり、管が膀胱のあるべき位置へとつながれていた。

「昔、深海棲艦にやられたんだ・・おかげで俺は一生小便を漏らしながら生きるって寸法さ。・・これじゃあ、どう考えても女は抱けないだろう?」

 

「知らなかったとはいえ、ごめんなさい・・」

 

「いいんだ。実を言うと、お前は俺の知ってた女とうり二つなんだ・・」

 

「・・訳ありって感じだね。私でよければ話を聞いてあげる。・・何もしてあげられないけど・・」

 

「つまらねえ話に付き合ってくれるってだけで十分だぜ」瑞鶴の勘が、この男の話にうそはないと告げたため、そのまま付いていくことにしたのであった。

 

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