「交渉をまとめたのね・・たいしたものだわ・・」ミッドウェー島から横須賀へ戻る船の中で、加賀は瑞鶴に声を掛けていた。
「加賀さんに褒めてもらえてホントうれしいんだけどさ、10年の期限付き、しかも人類に行動変容を求めることになっちゃった・・」
「中間棲姫は、日本を総攻撃すると言ったんでしょう。そうなれば日本はこの世の地獄になっていた・・それを行動変容だけ、しかも10年の猶予をもらったんだから、大成功よ」
「行動変容だけって・・加賀さんには
「・・よく中間棲姫に『総攻撃する』と言われたところでケンカ別れしなかったわね。私の挑発にすぐ乗ってきたあなたが・・」
「・・正直、一旦はあきらめて、死ぬまで戦おうって思った。・・でも、それは自己満足でしかないってことに気付いたんだ。私がヤケを起こして日本という国と1億の国民を地獄に落とすことはできなかった・・」
「あなた、いえ、艦娘には総理は務まらないと思ってた。・・でも、それは違った。あなたは立派な総理よ・・」
「これ、夢じゃないよね・・加賀さんにこんなに褒めてもらえるなんて・・」
「瑞鶴、中間棲姫に対する見返りは何なの?」
「えっ?何のこと?」
「おかしいわよね。日本を総攻撃しようって言ってた中間棲姫に10年とはいえ、停戦というこちらに願ったりかなったりの条件をのませたんですもの。それ相当の見返りを与えた、あるいは与える約束をしたと見るべきよね・・」
「アハハ・・さすが加賀さんはごまかせないか・・」
「・・まさか、あなたの命じゃないわよね・・」
「あ~・・その手があったか・・そうすればよかったかな。日本、ひょっとしたら世界を救ったヒロインになり損ねちゃったよ・・実はね・・」瑞鶴は一世一代の大芝居を打ったのであった。
「いえ、私より先に報告すべき人がいるのに申し訳なかったわ。・・あなたの命じゃなければ、それでいいのよ・・」人間が相手であれば、あるいは加賀は芝居であると見抜いたかもしれなかった。
しかし、加賀の意識にある瑞鶴は、悪く言えば単純といっていいほどまっすぐであったため、瑞鶴の芝居を見抜けなかったのであった。
「加賀さんらしくないなあ・・そうだ、加賀さん。私の役割もこれでほとんど終わったからさ。もうすぐ戻れるよ。そしたらさ、鍛え直して欲しいんだ。総理なんかやってると弓にも触れなくってさ。かなり腕がなまってると思うんだ・・」
「ええ・・泣こうが、わめこうが、射貫かれようが二度と離さないから覚悟なさい・・」そう言いながら、加賀は瑞鶴の乗る船の護衛へと戻っていった。
その姿を見ていた瑞鶴は「危なかった・・きっと鈴木男爵なり米内さんにも同じことを聞かれるだろうから、戻るまでに辻褄を合わせておかないと・・それにしてもやっぱり加賀さんはすごいや。図星だった・・ウソついてごめんなさい・・加賀さんは、この国、いや人類の至宝だから、絶対に死なせるわけにいかないんだ・・この罪は後でしっかり償うから・・」と、心の中でひたすら詫びたのであった・・