感情を全く感じさせないあの口調で「五航戦の子と一緒にしないで」と言われたら、そりゃ怒りますよ。加賀さん・・
「こんなところで何をしてるの?今日は、誰も出撃はなかったと記憶していたんだけど・・」改二への改装を終えた加賀が、提督に挨拶に向かうため、廊下に出たところ、瑞鶴が加賀に向かって敬礼していたからだ。
この鎮守府の工廠は、最も奥に設置されているため、どこかに移動するために偶然通りかかるということは考えられなかったからだ。
「・・加賀さん、改二おめでとうございます」そんな加賀の表情を見て、瑞鶴は意外な言葉を発していた。
「わざわざそんなこと言うため、待っていてくれたの?・・それに、最初にあなたから祝福を受けるなんて・・きっと今夜は大雪ね・・」
「ひどいですよ・・確かにからかってやろうと思っていましたが、いざ顔を見たら・・あまりに凛々しいお姿なので・・」
「正直なら何でも許されるわけじゃないのよ・・でも、うれしいわ、瑞鶴。やっとあなたに追いつくことができたわ」
「追いつくなんてとんでもない。改二甲でやっといい勝負だったんですから・・これは圧倒されたと思っています」
「・・謙遜も度が過ぎると嫌味になるのよ。いくら攻撃したって回避されるわ、たまに当たったところで打たれ強い上に、大破するまで艦載機を繰り出すわで、演習相手にあなたがいると、どれだけこちらの艦隊のモチベーションが下がると思っているの?」
「加賀さんがいるのに、ですか?」
「あなたを確認すると、誰もが『瑞鶴か・・』と言って、聞こえるようなため息をつくのよ・・随分成長したのね・・」
「・・加賀さんをはじめ皆さんのおかげです」
「・・そういえば、あなた、提督が企画・指示したもの以外、最近めっきり私に挑まなくなったわね?どうしてかしら?」
「いや、私もいろいろ経験をさせてもらって、加賀さんのご苦労も少しは分かるようになりましたので・・」
「私をぶっ倒して、さんざんからかって、一航戦になるんでしょう。今のあなたなら・・正直、五分以上かなう話よ。私が保証する」
「・・まさか、9割5分はダメだっていうオチじゃないですよね?」
「人がまじめに話していれば・・でも、あなたが言っていれば、そう言ったかもしれない・・」
「こんなこと言ったら、ぶっ飛ばさるかもしれませんけど、私は、一航戦の称号にそれほど執着しているわけじゃないんです」
「えっ?」
「・・確かに、初めは一航戦にあこがれてました。空母として生まれてきた以上、なんと言っても最強の代名詞ですから・・」
「確認するまでもないわ・・」
「・・私は、ずっとその一航戦で戦ってきた赤城さんや加賀さんに休んでいただきたいのです。でも、未熟な私が『休んでくれ』と言っても聞いてもらえるはずがありません。私が赤城さんや加賀さんの代わりを務められることを証明するには、その赤城さんなり加賀さんを倒すことが一番分かりやすいと思ったんです」
「・・そんなことを思ってくれてたのね」
「そのため私は努力してきたつもりなのですが・・正直、差は縮まってきている自信はあるのですが、超えたとは、とても思えません・・」
「あなたに、私たちの代わりは務められないわ・・」
「・・確かに、未熟な私では・・」
「・・それは違う。私の言い方が悪かったわ。・・私たちの存在が唯一であるように、瑞鶴、あなたの存在もまた唯一なのよ。あなたや翔鶴がそろって改二甲になってくれたから、だいぶ私たちの出番も減ったわ。名目上はともかく、事実上の一航戦はあなたたちなのよ・・」
「・・これ、夢じゃないですよね・・」
「最初に私を祝福してくれたお礼よ・・これからも期待させてもらうわ、瑞鶴。・・でも、あなたが私たちのことを心配してくれたように、自分自身の管理もきちんとしてこそ、真の一航戦よ・・」
瑞鶴は、加賀の言葉に呆然となりながら加賀を見送っていた・・