「果穂から貰ったお金で馬券が買いたい」
35連勤目の残業中、俺は無意識にクソみたいな独り言を叫んでしまった。
はづきさんはそんな俺にとても悲しい、悲しい目で「お疲れ様です…」とコーヒーとを淹れてくれた。
丁寧におやつ感覚で睡眠薬もつけてくれた。
お い し い
その日はそのまま帰って寝た。
そして翌朝、いつも通り出社していつも通り仕事を始めた。
しかし、全く仕事が手に付かない。
俺は昨晩のクソみたいな独り言によって、今まで知らなかった、心の奥底で抱いていた己の欲望に気づいてしまったのだ。
「俺は…果穂から貰ったお金で…馬券を買いたかったのか…」
自分がスカウトして、プロデュースしているアイドル、ましてや小学生の果穂からお金を要求するだなんて、道徳的にアウトだし、なんなら法律的にもアウトな気がしてならない。
だが、この心はどうしようもないほどに果穂から貰ったお金で馬券を買うことを求めてしまっている。
この心の渇きは果穂から貰ったお金で馬券を買うことでしか満たされない。
ああ!果穂の金で馬券を買わないとおかしくなりそうだ!
時間は昼前。今から果穂の学校へむかえばちょうど給食の時間だ!
授業じゃなければ大丈夫だ!
果穂!!!!!!今行くぞ!!!!!
果穂の通う小学校に到着した。
ちょうど4限目が終わったであろうチャイムが鳴っている。
ベストタイミングだ!!!!
俺は校舎の階段を駆け上る!
事務員の人が追いかけてくるが安心してくれ、俺は怪しいものじゃない。
そして果穂の教室に辿り着いた。
もうドアを開けるのもめんどくさいので、そのままドアを突き破った。
「プ゛ロ゛デ゛ュ゛ー゛サ゛ー゛さ゛ん゛!?」
果穂はかっぽう着を着て、クラスメイトにカレーを盛り付けていた。
「果穂!!!」
「どうしたんですか?プロデューサーさん…?あ!もしかして給食を食べに来てくれたんですか!?」
果穂は無邪気に笑いながらカレーをよそって俺に差し出してくれた。
「果穂!ありがとう!おいしいよ!」
「プロデューサーさん!席に戻っていただきますしてから食べないとダメですよ!」
「ああ!スマンスマン!」
いけない、俺としたことが子供たちの目の前でそんなみっともないことをしたら示しがつかない。
そして俺はカレーを食っている場合じゃない。果穂に大切な用事があったんだ。
「果穂、今日は給食を食べに来たんじゃなくて大切な話があってきたんだ」
「大切なお話…ですか?」
教室の空気が一変する。
果穂がアイドルをクビになるのだろうか…?と不安そうな声や、月9の主演が決まったんじゃない!?といった期待に満ちた声が後ろから聞こえてくる。
そんな空気を感じ取ったのか、果穂はいつものキラキラした顔と不安げな顔をコロコロ変えながら俺を見ている。
「果穂!!!!」
「は、はい!」
「お小遣いをくれないか!?!?!?」
5時間後。はづきさんが迎えに来てくれたことで、俺はようやくお巡りさんから解放してもらえた。
ありがてえ。
はづきさんは、そんな俺に昨日よりももっと悲しい、とてもとても悲しい目で、「ご苦労様です…」と、今度は睡眠薬だけ渡してくれた。
おしまい