御伽噺の様にはいかないけれど   作:Feles

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魔女だってお姫様を夢見てた。


微睡む魔女の残滓

「お前の願いが叶うことを祈っている」

 

彼はそう言ってくれた。

あと少しだと、思っていた。

それを、台無しにしたのは私達。

 

ごめんなさい、ユーリ

 


 

何故、わたしは生き恥を晒し続けているのだろう。

理性は理解と侮蔑を示す、そして感情が受容を拒む。

これは慈悲。

既に報復はわたし達の死を以て、終わっている。

故に、万能(あれ)にはわたし達のことなど、どうでも良い。

わたし達の生死に、興味が無い。

死んでも良かった。

正しく万能(あれ)の為に消費された。

しかし、再び生を得た。

混ざり合い、単一の存在として昇華されてしまった。

万能(あれ)にとって、これは希望の光。

わたし達にとっては、贖罪の始まり。

 

ある時、万能(あれ)が最後のお願い(めいれい)をしてきた。

人間の国を繋ぐ平原(にげみち)を奪うことを。

人類の衰退は必至。

是非も無し。

 

人類は平和の為に、魔王を共通の敵(くいもの)にしてきた。

しかし、神の気紛れにより現れた勇者が魔王を倒した(すくった)

だからと、次いで勇者を崇め(つかい)始めた。

繁栄を願い、国の支柱(ひとばしら)にした。

そして、第二の魔王(あれ)は目覚めた。

平和(ゆうしゃ)の為に魔王(あれ)人類(まぞく)を滅ぼすのだ。

 

魔王(あれ)は勇者以外に興味を持たなくなった。

勇者の為だけの機構(まおう)になった。

或いは、万能(あれ)が最後に抱いた幻想(やぼう)の為の願望機(まおう)に。

勇者の、約束された幸福(えいえんにおとずれない)、其の為だけに。

 

それで、あの子が救われるのなら。

喜んで此処を終の栖にしよう。

だから、その日が来たら。

 

どうか、わたしを

 


 

霧に触れる者達。

憐れな犠牲者が、また訪れる。

無謀にも、或いは覚悟を持って。

迷宮の主を、毒蕀の魔女(わたし)を討たんとする。

 

立ち入りは許されず、一度入れば帰ること叶わぬ、死の領域。

嘗ては国渡りの平原。

今や毒霧に包まれ、蕀で形成された迷宮。

中心地には(わたし)が一輪。

此処は、わたしだけの場所(はかば)

 

(わたし)が吐く花粉は、生物にとっては劇毒。

吸えば良くて即死、悪ければ苗床。

そして、迷宮の怪物達の仲間入り。

当然人間は対策をして挑む、しかし其れだけでは無意味。

花粉は魔女(わたし)の目。

花粉の一つ一つが感覚細胞であり、触れたものの情報(すべて)(わたし)へと伝える。

常に見られている。

常に聞かれている。

常に触れられている。

其れに人間は気付かない。

或いは、仮初めの安寧を求めているのか。

 

「…憐れ…哀れ」

 

出し惜しみをすれば死ぬ。

全力を以て踏破すれば、全力(ていど)を知る(わたし)が待ち受ける。

余力を残して踏破することは前提であり、それが出来た者だけが魔女(わたし)との邂逅が許される。

そして、皆等しく絶望する。

自ら迷宮(はら)の中へと入ってきた侵入者(えさ)達に、初めから希望などありはしない。

 

腐り堕ちたとて、魔女(わたし)は勇者の輩だったのだから。

神秘が薄れゆく時代の人間如きに、後れを取ることはない。

 

「…耳障り」

 

何故、希望(ゆめ)を見るのか。

何故、救い(ゆるし)を求めるのか。

最早、人に未来(さき)はないというのに。

今を生きる者達に(きおく)はなくとも、咎人の系譜である故に。

未だ生きる過去、死を忘れぬ復讐者には、関係が無い。

 

万能(あれ)は、無知(つみ)を赦さない。

平民ならば、一人。

貴族ならば、一族。

王族ならば、一国。

種族ならば、言うまでもなく。

等しく全てに清算させる。

世界は、其れを赦す。

緩やかに、確実に、終わりが来る。

 

火は絶え、水は穢れ、人は残された草を食む。

恵みが永遠と信じて。

日が堕ち、月は隠れ、人は未だ輝く星が照らす道を歩む。

先が奈落とも知らず。

 

いずれ(あれ)(くに)を灼き尽くす。

 

「…悪夢を」

 

魔女(わたし)は、その日を待っている。

 


 

ころして

ゆるして

うけいれてほしかった

ともだちになりたかった

さびしい

くるしい

ぱぱ

まま

おいていかないで

ひとりにしないで

おじいちゃ

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