御伽噺の様にはいかないけれど   作:Feles

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第二章「寂しがり屋のお月様」


創生親和

生まれた生命は、少女の形をしていました。

 

少女が初めて見た世界は、暗くて冷たい場所でした。

少女は生まれ落ちた暗闇の中で、なんとなく歩き始めました。

ゆっくり歩いてみたり。

ちょっとだけ走ってみたり。

 

けれど。

何処まで行っても、ずっと暗くて寒いまま。

少女は次第に寂しくなって、立ち止まって泣き始めてしまいました。

はらはらと零す涙が世界を満たしていき、暗くて冷たい水の世界になりました。

 

涙が収まって、目を開くと遠くに光が見えました。

それがとても気になって、今度は両手を使って泳ぎ始めました。

手を伸ばして、横に広げたり。

足をぱたぱたと振ってみたり。

 

そして。

少女は水の一番上までやってきました。

水面から顔を出すと、明るくて暖かい場所に辿り着きました。

きょろきょろと見回していると、よく似た形の誰かと目が合いました。

 

少女は初めて同じモノを見つけて驚いて、それ以上に嬉しくなって手を伸ばしました。

よく似た誰かも、恐る恐る手を伸ばしてきて。

取った手はポカポカと温かくて、安心しました。

 

けれど、それも長くは続かず。

パッと離された手に涙を浮かべながら、それを見つめていると。

突然、抱えた石を半分に割って落としてしまいました。

少女は、咄嗟に石を追い掛けました。

ここは、とても深くて失くしてしまったら大変だと思ったから。

もしも拾ってあげたら、また、触れ合えるかもと思ったから。

だから、必死に追い掛けました。

 

見失いはしなかったものの、底まで落ちた石を拾い上げて水を昇っていきます。

真っ暗な水の世界をやって来た方向へと掻き分けていきます。

だから、なんとなく分かっていました。

水面に顔を出しても、暗いまま。

もうそこには誰も、何もいませんでした。

 

しかし。

ずっとずぅっと遠くに光が見えました。

きっとあの子は、あそこにいる。

光を追い掛ければ、あの子に会えるかもしれない。

抱き締めた石がほんのり暖かくて、出会いを確かなものにしてくれました。

あの子に石を届けてあげないといけない。

あの子とまた、触れ合いたい。

ただ一つの光を目指して、少女は泳ぎ始めました。

 

そして。

少女はついに辿り着きました。

しかし、キョロキョロとどれだけ見渡しても、あの子はいません。

光の中心にあったのは、少し膨らんだ地面だけでした。

その光を、あの子と勘違いしていただけだったのです。

それに気付いた少女は、我慢しきれずにわんわんと泣き出してしまいました。

あの子との出会いは、少女の寂しさをより強いものにしてしまったのです。

少女の涙は雨のように、光り輝く地面に降り注ぎました。

 

すると。

 

『どうしたの?』

 

と少女に語り掛けるモノがいました。

少女は驚いて、けれどもしかしたらと思って、涙をそのままに辺りを見渡します。

でもやっぱり、誰もいません。

 

『こっちだよ、したした。』

 

足元を見てみれば、膨らみから小さな芽が出ていました。

 

『そんなに泣いては、溺れてしまうよ』

 

少女よりもずっと小さな、けれど自分やあの子のように“自分”を持っている芽を見て、驚いたのか、それとも安心したのか。

すっかり涙は止まっていました。

 

『どうして泣いていたのか話してごらん』

 

優しい芽に、あの子に会いたいと伝えると。

 

『じゃあここで一緒に待っているかい?』

 

『その子はまた、実を食べに来るから』

 

それに顔を輝かせると同時に、少女のお腹がグゥと鳴きました。

 

『ふふ…お揃いだ』

 

『ちょっと、待ってね』

 

そう伝えると同時に、芽は木となり、瞬く間に実が成りました。

 

『彼は美味しいと言っていた、お食べよ』

 

成った枝が少女に差し出されるように、垂れました。

 

『待っている間、寂しくないように』

 

『おしゃべりでもするかい?』

 

実を受け取った少女は、笑顔で頷くのでした。




月は太陽を待つ。
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