万能の力を求める者
王国民なら誰もが知っている御伽噺だ。
詳細は省くが、万能薬を作った錬金術師の話だ。
それだけを、知っていれば良い。
まさか、この年になってそんなものに縋ることになるとは、思わなかった。
だが、もはやそれ以外に手段は無い。
事の発端は、王国の王子が何をとち狂ったか一人旅、その途中で立ち寄った村の娘に恋をしたこと。
その村娘が、俺の幼馴染だった。
白状しよう、惚れていた。
プロポーズ直前のことだった。
だが、相手は王子だ。
勝ち目があるはずがない。
アイツの幸せが約束されていた。
だから、あっさりと身を引いた。
俺に猛アプローチを仕掛けていた女に手を出そうとして、泣かれた。
アイツを密かに取り合った、村長の息子に殴り飛ばされた。
最低だ。
それでも、アイツが幸せになれるなら、それで良かった。
自分を誤魔化すのに最適な、クソみたいな理由だ。
それから1年、俺は腐り続けた。
1年の間に、あの二人は恋人になった。
アイツならきっと、俺よりずっと上手く幸せにするだろう。
二人の結婚式は、俺にほんの少し元気を取り戻させてくれた。
少しずつ、立ち直り始めていた時だった。
アイツが帰って来た。
初めは死体かと思った。
息はしていた。
起こそうと何度も呼び掛けたが、駄目だった。
アイツを運んできた、王国の使者に状況を問い質した。
何故、アイツは眠ったまま起きないのか。
村に帰って来た理由は何か。
王子は一体、何をしているのか。
使者は無表情に淡々と答えた。
王子に毒を飲まされ、死ぬまで眠ること。
アイツが側室から外されたこと。
王子が新しく側室を迎え入れたこと。
最後に、王子がなんと言っていたか聞いた。
「飽きた、でも長持ちした方だったよ」
王子は
それを克服する為の、毒薬。
世継ぎを作る為の、
きっと幸せになると、信じて送り出した幼馴染は、生きた死体になって帰って来た。
殺してやろうと思った。
王子は無理だ。
だから、せめてコイツを楽に。
だが、二人が全力で止めるのだ。
ふざけるな。
コイツが今も苦しんでる。
心配するな。
ちゃんとエスコートするから。
そんな茶番を眺めていた使者が唐突に言う。
「万能の錬金術師をご存知ですか」
何故、御伽噺の話を突然しだしたのか理解できなかったが。
毒薬を作ったのは、“万能の錬金術師”であり。
数百年前、実際に王家に仕えていた記録が残っているのだと。
「どうせ死ぬのでしたら、行ってみては如何ですか」
何を思って、俺に王国の機密を伝えたのかは分からない。
だが俺には、もうこれしか残されていないのだ。
コイツが衰弱死する前に見つけなければいけない。
悪魔の棲む森に入って、3日。
まだ、見つからない。