神器絶焼ギルティギア   作:ジャンクヤード犬

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どうも、犬です。
見て下さってありがとうございます。

あとお気に入り登録して下さった方、重ねてありがとうございます。

いきなり評価2だけ付いてて白目をむきました、うーん、厳しい!
でも0や1よりはマシだよね、と心育む時四海はその涙、と奮い立ちました。



ではどうぞ。


Duel1 「Let's Rock!」

 

 

「──ドラグーン・リヴォルヴァーッ!!」

 

 高く飛び上がった男が右手で炎をノイズに向けて投げつけた。直撃したノイズを貫いた炎は着弾した地点から複数の火柱を発生、周囲に居た複数のノイズをまとめて消滅させた。

 

 ……しかし、せっかく面倒な小型を生み出す大型ノイズを真っ先に倒したというのに、再びその大型ノイズのおかわりが現れて小型ノイズの数を増やしていく。

 ただでさえ()()()()()()()()()()()()()()()彼の苛立ちは最高潮に達していた。

 

「まだ沸きやがるか! クソッ、『あの女』ァどこかで見ていやがるのか……!?」

 

 あちこちから情報を集めて今日のライブで彼が付け狙っている『あの女』が何かを企んでいると察知し、目的であろうモノを強奪、或いは破壊して妨害してやろうとここまで来たのだが……

 

「チッ……ままならねぇ、これも油断してたツケか……!」

 

 そう自嘲しつつ、目の前のノイズを蹴散らす為に大雑把に攻撃を放っていく、今日に至るまでの経緯を思い返しながら──

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 ──ツヴァイウィングのライブイベント前日。

 

 

 

「──ここが『あの女』のホームグラウンド(ハウス)ね!?」

「のっけから何馬鹿な事言ってんだお前は?」

 

 自分達にとっても一応は拠点である地、日本。そこに戻ってきて早々に発した目の前の少女の頭の悪そうな発言内容に「育て方間違えたかな……」と真剣に悩みつつもそんな素振りは見せずに、男はノータイムでツッコミを入れた。

 

 この場に居るのは成人男性1人に少女2人の3人組、現在密航していた貨物船からバレないように下船したばかりだ。

 

 ──なぜ正規の移動手段を使わなかったのか? 

 

 それは3人のうち1人が戸籍上は死亡扱い、2人は生死不明扱いの為に正規の身分証明が無いのが最たる理由……なのだが、仮に念の為に作っておいた偽造パスポートを使ったとして、()()()()()は全員の持ち物がどう足掻いても検査にひっかかる代物の為、どっちにしろダメだったりする。

 

 あと諸々含めてカネが勿体無い……偽造パスポート? 脅迫(おねがい)して作ったので実質無料だ。ケチれる所はとことんケチる、これもまた生き残るための知恵である。要するに、何も問題は無い。

 

 というか、色々とアブナい橋を渡りつつそれなりに資金を溜め込んだりしているので全く余裕が無いわけではないのだが……食い扶持も3人居れば頭のソロバンを幾度も弾かねばならない訳で……なんとも世知辛い話なワケダ。

 

「……2人とも、はしゃいでる場合じゃないですよ、こんな所でウロウロしていたら怪しまれます」

「む、判ってるよセレ……じゃなかった、アリア」

 

 若干ムッとした表情をしつつも『アリア』の嗜める言葉に一応応じたもう1人の少女、反対に男の方は顔を顰めつつ反論しようとした。

 

「おいアリア、俺ははしゃいでねぇぞ……」

「……パッと見じゃ誰も気付かないでしょうけど、表情が緩んでますよ、ソル」

 

 生暖かい目線を向けられつつ指摘された内容に思わず「チッ」と舌打ちをする男こと『ソル』、まぁかれこれ丸二日ものあいだ続いた貨物船内で開催された大規模かくれんぼからようやく解放されたのだ、多少気が緩むのも仕方がない。

 

「ねぇ、おに……ソル、あたし早くお風呂に入りたい!」

「ニュー、お前マジでいい加減偽名(なまえ)覚えろ」

 

 のっけから馬鹿な事をのたまったこの中で一番年下の少女、『ニュー』──勿論2人と同じく偽名──は我慢の限界だった、乙女的な意味で。

 

「……とりあえずネカフェのシャワーで我慢しろ、予定が狂ったせいで少し時間がねぇ」

「「えぇっ!? そんなっ!?」」

 

「……おいアリア、お前もか」

 

 おくびにも出していなかったがアリアも結構限界だったらしい、勿論乙女的な意味で。

 

 2人の気持ちが判らない訳でもない、というか本音は痛いほど同意したいソルは、額を抑えてため息を吐きながら妥協案を言い渡す事にした。自分にも甘くした、とも言えるが。

 

「しゃあねぇな……付近に銭湯があったらだ、それ以上は妥協しねぇぞ」

「さっすがお(にい)! 話がわかるぅ♪」

「だからお前、偽名(なまえ)ッ!!」

 

 思い切り普段の呼び方で呼んでくるニューに、ソルは頭痛が増すのを感じた。()()()()()と違って教育方針にさほど問題は無かった筈なのだが――もしや無自覚だっただけで問題があったのだろうか――「どうしてこうなった」とソルは遠い目をした。

 

 何にせよ、自分達の正体が露見するのを極力防ぐに越したことはないのだ、後で強く言い聞かせようとソルは心に決めた。仮に自分達の正体がバレたらバレたでその時は何とかするつもりではあるのだが。要はメンドクサイのだ。

 

 ちなみに先ほどから大人しいアリアはお風呂に入れると聞いてニコニコしている。

 

「ったく……ほら、さっさと行くぞ」

「「はーい♪」」

 

「やれやれだぜ……」

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

「……で、どうしてこうなった……」

 

 現在ソルは一人、バスルームで頭を抱えていた。今現在彼が居る場所はホテルの部屋にあるバスルーム……ただしホテルの頭にラブが付くヤツの

 

 近場で銭湯が見つからず……というか時間が遅くて閉まっていた為、いよいよもってシャワーのあるネットカフェへと足を向けようとしたその時、目に付いたのが今居るホテルだった。

 

「……料金設定はお手ごろで風呂にも入れる……」

 

 ……だがラブホだ。

 

「……内装もモダンで卑猥なカンジは一切無いから言うこと無し……」

 

……だがラブホだ。

 

「……此処はネカフェと違って会員証の発行やらその為の身分証明の提示なんてのも必要ねえ……」

 

……だがラブホだ──! 

 

 何より、傍から見ればとんだ3(ピー)野郎にしか見えないというのがまた酷い。ソルはますます頭を抱えた。本当に、どうしてこうなった──!? 

 

 ……だがそれも仕方がない、夜も更けている上にゆっくりと風呂に入りたい一心の女子2人──しまいには女の武器(うそなき)まで使ってきやがった──に押し切られたのだ。かなしい。

 

「ウダウダしててもしゃあねぇ、とっとと済ますか…………ぁ?」

 

 

 

──その時不思議な事がおこった。

 

 

 

「「お背中お流ししまーす♪」」

 

「何鍵抉じ開けて入って来てんだテメェらああああッ!?」

 

 バスルームのロックを外から解除して突入してきたアリアとニューに絶叫するソル、一応2人はちゃんとバスタオルを巻いているが、問題はそこではない。

 

 2人とも年齢の割に実に立派なモノをお持ち(お餅)でスタイルも抜群であるが故に(ニューはちょっと危なかった)全く指摘される事無くラブホテル(こんなばしょ)が利用が出来ている訳だが、どっちも未成年、それも18歳以下。

 ただでさえ本当はこんな所を利用してはいけないのに、これはもう完璧に事案……まぁそもそもここに強引に彼を引っ張り込んだのは他でもない彼女らだったりするのだが……バレなければ犯罪ではない。要するに、何も問題は無い。イイネ? 

 

「えー、今更裸見られて恥ずかしがるような仲じゃないし」

「どうせソルはヘタレですから手なんて出してこないって判りきってますし」

「「ねー♪」」

 

「テメェら……そこに直れ」

 

 ソルは激怒した。必ず、この羞恥皆無の小娘共を除かなければならぬと決意した。ソルには乙女心がわからぬ。ソルは、割と自由人である。ホラも吹き、若い頃はヤンチャして暮して来た。けれども情操に対しては、人一倍に敏感であった。

 

 ……だが哀しいかな、この小賢しい小娘共の方が彼よりも一枚も二枚も上手だったりするのである。

 

「……もう、お・に・い? そんな怖い顔しちゃダーメ……?」

「……貴方が紳士的だから、信用してるからこんな事が出来るんですよ……?」

「……日ごろの感謝をこめて、お世話させて欲しいな……?」

「……ダメ、ですか……?」

 

 両耳に囁きから不安げな上目遣いのコンボ……

 

 

 

こうかは ばつぐんだ! 

ソルは おれた! ▼

 

 

 

「……ハァ、もう好きにしろ……」

 

「「はーい、好きにしまーす♪」」

 

 なんだかんだで2人に甘いソルはガックリとうな垂れる、対称的に2人の少女は上機嫌だ。しかし甘いと言っても度が過ぎれば容赦なくゲンコツが飛んで来るのを知っている2人は、どうやら殴られないギリギリのラインを攻めて行くつもりのようだ。

 

 

 

 ──このあと滅茶苦茶入浴した。(全年齢)

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 ──開場4時間前。

 

 

「──クソッ、完全に出遅れたじゃねえか……ッ!!」

「もう、なんでそんなにカリカリしてるの?」

「開演までまだまだ時間があるでしょう? そこまで焦る必要は無いんじゃないですか?」

 

 一体何があったのか? 今までの疲労+風呂場でのひと悶着による精神的疲弊+フカフカのベッド=寝坊。要はやっちまった、というヤツである。

 なお、とてもどうでもいい補足だが別にラブホだからってナニもヤってはいない、3人ともまだ童貞・処女(きよいからだ)のままだ。とてもどうでもいい補足だが。

 

 そんな焦るソルに対して、お供の2人は頭に疑問符(ハテナ)を浮かべていた。目的のモノが起動した直後に強奪、或いは破壊すれば良いのだから、まだまだ時間はあると思っていたのだ。

 

 因みに現在3人が居るのはこちらに来てからソルが()()()()()()()の中、見た目はナンバープレート含め普通の乗用車に偽装しているが本来は存在しない代物、勿論運転手はソルだ。

 そんな代物を扱っているものだから、万が一にもバレないように法定速度順守で走っている……ちょっと情けないが、国家権力との揉め事など現状論外なので仕方ない。

 

 ……実態は絶賛法に喧嘩を売りまくっている最中なのだが。

 

「じゃあ聞くが……外も中も観客でごった返してる会場にどうやって忍び込むつもりだ?」

「「……あ」」

 

 ソルが苛立っている理由は至極真っ当だった。とはいえ、潜入する際の概要だとかをちゃんと詳しく話していなかったコイツ自身の落ち度でもあるのだが。

 

「出来ればやりたくなかったがしゃあねぇ……」

 

 運転を続けつつそう呟くソルに、猛烈に2人は嫌な予感を覚えた。大体こういう時の「出来ればやりたくなかった」は文字通り本当に最終手段なのだ、長年共に居た経験が嫌でもそう思わせてくる。コイツはやらかす、と。

 

 

 

 

 

 

「タイミングを見計らって真下からぶち抜く」

 

 笑顔が引き攣るアリアと白目をむいたニュー、テロリストの真似事をする気満々のソルに2人はドン引きしていた……

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 ──ライブ会場、1曲目終了直後。

 

 

「……すごい、これだけのフォニックゲインなら確かに完全聖遺物も……」

「連中の……というか『あの女』の目論見通りってワケだ」

 

 完全聖遺物、ネフシュタンの鎧の起動実験が行われている実験室が真上にある無人の空間、3人はそこで息を潜めて機会を伺っていた。

 おおっぴらに人目につく事も想定してマスクやバイザーで顔を隠し、服も露出が少なく身体のラインが判りにくいモノを着てコソコソしている集団、見つかったら漏れなく通報である。

 

 そんなアヤシイ3人組は手持ちの機材で簡易的に状況を観測、会場の真上からはソルが()()した『監視役』がwebカメラ片手に周囲に目を光らせていた。

 

「それにしても、実験場の下に普通に部屋がある配置でよかったぁ……下水に潜伏とか絶対にヤだもん」

「それには同意だな、臭いは後で焼けばいいが、汚水での感染症はシャレに………………『あの女』ァ、やりやがったなっ!?」

 

 突然の上層での爆発音に声を荒げるソルと驚く2人、しかし慌てる事無く観測機材を見ていたアリアは更なる異変に素早く気付いた。

 

「……エネルギーの暴走!? それにこの空間の異常値は……ソルッ!!」

「お前ら離れてろッ!! 階層ぶち抜いてそのままネフシュタンの所まで行……チィッ!?」

「きゃっ!?」

 

 突如上層で何かが崩落したかのような衝撃が起こり建物全体が激しく揺れ、思わず体勢を崩した。どうやら上の階層は相当悲惨な事になっているようだ。

 ソルが配置していた『監視役』からも大型のノイズが出現し観客に襲い掛かっている様子が伝わってきていた、状況はもはや一刻の猶予も無い。

 

「『ジャンクヤード・フェイク』限定解除ッ!! ……チッ、やはりこういう状況じゃ勝手が悪いな……!? 起動にかかる時間の短縮は最優先項目か……」

 

 現在のソルの武装である()()()()『ジャンクヤード・フェイク』、一応この世界で初の魔法科学論による産物であり、火の法力を増幅する機能を持つ武装。

 法力の増幅機能の他に、法術により()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()というシステムが組み込まれている、事実上の決戦兵器でもある。

 

 現代科学では最早未知の領域なのだが、これから発せられるエネルギーを上の実験室に観測される可能性が無いとは言えないために直前まで機能を解放させないで居たのだが、これが完全に裏目に出てしまった。焦りを覚えるが待つしかない、その時間がソルには酷くもどかしかった。

 

「こっちはいつでもいいよ! やっちゃえお兄っ!!」

 

 巻き添えを食わないように退避した位置から叫ぶニュー、結局ソルとは呼ばない彼女に一瞬力が抜けそうになるも、どうせこの場には自分たちしか居ないので良しとする事にした。諦めた、とも言う。

 

 彼は正常に起動した『ジャンクヤード・フェイク』を構えてエネルギーを解放する、目標は真上、チャージ次第で鉄筋コンクリート数階分なら易々と貫くその技が放たれようとしていた。

 

「……もう偽名に関してはツッコまん、行くぞ──

 

 

 

ヴォルカニックヴァイパーッ!!」

 

 

 

 勢い良く炎と共に舞い上がり天井を2枚ほど砕いてそのまま上層階にたどり着くソル、しかし……

 

「ネフシュタンはッ!! ……クソッ、遅かったか!?」

 

 その場にあったのは死体の山と崩壊した実験室、肝心のネフシュタンの鎧は持ち去られた後だった……生存者は居なさそうだと踵を返したその時、ソルの背後で人が動く気配を感じた。

 

「──……ぐ……だ、誰だ? 誰か居るのか……!?」

「……!! 生存者かっ!! おい、しっかりしやがれ!?」

 

 ソルの視線の先に、ほぼ全身が巨大な瓦礫の山に埋まった赤いスーツの大男が居た。ぱっと見どう考えても重傷通り越して助からなさそうな見た目になっている。が……

 

「……すまないが、少し手を貸してくれないか? 瓦礫が複雑に積み上がっていてどうにも自力で抜け出せそうになくてな……建物の崩壊を気にしなければ行けそうなのだが……

「…………お、おう? ちょっと、待ってろ……?」

 

 呼吸に別段乱れはなく声もはっきりしている、正直信じられないが本人の言うとおりただ瓦礫に挟まれて身動きが取れないだけのようだ……というか、最後の小声も聞き取れていたソルは割と本気でドン引きしていた。コイツ本当に人間か……? 

 

「……来い、『ザ・ドリル』!」

「gotta go」

 

「な!? ノイズ……ではなさそうだな、君は一体……!?」

 

 気を取り直したソルが召喚したのは彼のサーヴァント『ザ・ドリル』、名前通り右腕パーツのドリルが特徴的なロボットのようなナニカ。驚いた大男を尻目にソルは『ザ・ドリル』に指示を出した。

 

「悪ィが説明の時間がねぇ……ザ・ドリル! この瓦礫の山を削って掘り起こしてやれ、周辺を崩壊させないようにだ」

「OK、BOSS」

「す、すまない……よろしく頼む」

「no worries」

 

 ガリガリとドリルで掘削を開始したザ・ドリル、それを確認したソルは穴の開いた天井へと視線を向ける。この先の状況は上空から送られてきた映像で確認していた。あの大量のノイズを放置しておく程彼はヒトデナシではない。

 

「さて、こっちは野暮用があるからもう行かせてもらうぞ」

「野暮用? 一体何を……「お兄ー! 先に行くよー!?」……!?」

 

 埋まっている男の声を遮るように響き渡るニューの声、その声の主の姿がちらりと見えた男は目を見開いて言葉を失った。

 

「……ったく! すぐ行くから待ってろッ!!」

 

「ま、待ってくれ!? 君は!? 彼女は……!? クッ……!!」

 

 1歩で彼女の元へと跳んで行ったソル、そしてそのまま銀髪の少女ともう1人を加えた3人で上層へと飛んで行こうとしているのに気付いた男は我に返って叫んだ、が……男の叫び声は彼らに届くことはなかった。

 

「What's up?」

「……いや、なんでもない、そのまま続けてくれ……」

「OK」

 

 その場には掘削を続ける『ザ・ドリル』と悔しげな表情を浮かべるスーツの男、起動実験を行っていた組織のトップである風鳴 弦十郎だけが取り残されたのだった。

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 ──再び現在。

 

 

「お兄! このままじゃ埒が明かないよ! どうするの!?」

 

 手に持った2丁の銃型の装備を撃ちながら叫ぶ少し焦ったようなニューの声に思わず舌打ちが漏れるソル、恐らくコレは『あの女』の時間稼ぎ、追って来れる戦力をこの場に留めたいだけだろう。

 恐らくソルの出現及びその想定外の殲滅力に焦ったのだ。事実、最初の戦力でツヴァイウィングの2人は釘付けになっていた。ならば、これ以上被害を増やさない為にするべきは……

 

「おい! 何をモタモタしてやがる!? さっさとソイツらを連れて撤退しろ!!」

 

 未だにこの場に留まっている奏に声を荒らげるソルだったが、言われた奏とて好きでこの場から離れられないわけではなかった。

 

「出来るならそうしてるっ!! アタシは時限式で……アシストも機能不全を起こしてるから動けない人間を2人いっぺんには……!!」

 

 奏が流れ弾から気を失った翼と負傷した少女を守る肉盾に徹していた理由、それは辛うじて起動しているシンフォギアでは負傷者を安全に運べない為、つまりどちらかを置き去りには出来なかったのだ。

 

「モタモタしてると思ったらそういう事か!? アリア、手伝ってやれ! ニュー、お前は弾幕で時間を稼げ!! 俺が終わらせてやる!!」

「……わかりました! どうか気を付けて!」

「うわキッツ……でもやるっきゃないかぁ!?」

 

 心配そうな顔をすぐに引っ込めて頷くアリアと一瞬渋い顔をするも直ぐに獰猛な笑みを浮かべるニュー、この場の全員が各々のやる事を確認し行動を開始した。

 武装の機能解放、最大出力モードの起動を急ぐソルを背中に弾幕を張るニュー、アリアは奏の方へと走って行き、胸から血を流す少女を抱きかかえた。

 

「さぁ、もう大丈夫ですよ……行きましょう!」

「悪いな、アンタ……だけど、あの2人は大丈夫なのか……!?」

 

 翼を抱える奏と、少女を抱えたアリアは出口の方向に向けて駆け出す、しかし残った2人が気になるのかアリアの顔を伺う。だがアリアの表情に心配の色こそあれど、不安は一切無かった。

 

「あの2人なら大丈夫ですよ。無茶も無謀もしますけど、本当に出来ない事はしようとすらしませんから……」

「そ、そうかい……」

 

 ……若干の呆れが混じっている所を、奏は見なかったことにした。

 そのまま負傷者を抱えた2人はこの場を走り去って行く、そして残った2人、ニューは身動きがとれないソルを庇いながら銃撃を続けていた。

 

「お兄ー!? まだなのーっ!?」

「急かすんじゃねぇ! あと20秒持たせろ、それでケリをつけてやる……っ!!」

 

 悲鳴混じりに銃で迫り来る小型のノイズを丁寧に打ち抜いて行くニュー、狙ってから撃つまで1秒もかけずに両手で撃ち続ける彼女の腕は相当なモノだが、尚も増え続けるノイズの数の暴力はそんな弾幕でさえ徐々に押し込んで来ている。

 

 彼女の武器もまた法力の産物、使っている本人は銃の中身がどうなってるか良く判っていないが、対象をロックオンして(ねらって)トリガーを引けば(うてば)どこに引っ込もうが必中する(あたる)という法術が作用している事だけは把握している、というかその法術さえ理解していればそれで良いと言われたのでその通りにしただけなのだが。

 

「うおおおおおおりゃああああああああああっ!!!」

 

 雄叫びを上げ、まるでどこかのガンアクションゲームの如く無限に銃から弾丸を吐き出し続ける彼女、対するは無限にノイズを吐き出し続ける大型ノイズ、彼女では小型は破壊出来ても大型までは破壊する威力が出せない。

 否、武器にエネルギーをチャージする時間があれば大型の撃破(ソレ)もまた可能なのだが、とてもではないがそんな時間も隙も無い、冷や汗を流しながら戦い続けた彼女だったが──ついに待ちに待った時が来た。

 

「…………!! 良く持たせたニュー!!」

「っ!! 待ちくたびれたよもぉー!!」

「何だ、まだまだ余裕そうじゃねえか!? まぁ……後は任せろッ!!」

「任せたっ!!」

 

 敬愛する兄のような男の声に歓喜の叫びを上げる彼女は、置き土産とばかりに何十発もの弾丸をノイズの群れに叩き込みつつソルとすれ違うように後退する。

 

「やっちゃえぇぇぇ!! お兄ちゃあああんっ!!」

 

 叫ぶニューを背後に走りぬけて行くソルは、ノイズ達の手前から急加速、群れのど真ん中を地面スレスレの低姿勢で滑るように高速で突っ切って行く。

 

「……悪ィが終いだ──」

 

 

 

 

 

 

──オールガンズブレイジングッッ!!!! 

 

 

 

 

 

 

 それはまさに全てを焼き尽くす焔の海。ソルが通り抜けた後、彼の背後に居たこの場の全てのノイズが巨大な火柱にその身を焼かれていった。

 ソルの放った技『オールガンズブレイジング』、彼の必殺技の中で最も広範囲に暴力的なまでの破壊をもたらす技、これにより全てのノイズは駆逐されたのだった。

 

「お兄ーっ!!」

 

 そんなソルの方向に叫びながら走ってくるニュー、「やれやれだぜ……」と苦笑を漏らしつつソルはそちらに歩いて行く。

 

 ──パンッ! と小気味良い音をノイズの消え去った会場に響かせる、2人の右手同士のハイタッチ……状況はようやく終了した。もうこの場でやる事、やれる事は無いだろう、2人は――というかソルは、撤退の準備を開始した。

 

「さて、アリアを拾ってズラかるぞ」

「おっけー、長居は無用ってね♪」

 

 そうして呼び出されたのは大型バイクに似た形状のサーヴァント。それに跨るソルとニューの2人は、自分達以外誰も居なくなったライブ会場を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

「……行ってしまったか」

 

 そんな2人を見送る者が1人、その場に残っていたのはザ・ドリルに掘り起こされた風鳴 弦十郎だった。

 ザ・ドリルが掘削を終えて彼が瓦礫の山から抜け出したのが、丁度戦いを終えた2人がハイタッチを交わしている所だった。

 同時にザ・ドリルも解けるように消えてしまったのが見えたので、恐らくソルは弦十郎に気付いていたのだろう。

 

 そんな彼は今、とある少女の境遇に思いを馳せていた。

 

 二課のデータベース上に存在するシンフォギアシステム適合者候補生の一人、名前は雪音クリス。

 バルベルデ共和国で戦渦に巻き込まれ両親は死亡、しかし彼女の遺体は見つからず生死不明となっていた。

 

 現在も発見・保護されたという報告がされていないのは、恐らく彼女が裏の世界に身を置いている為。

 だがあの明るく元気な姿を見れば判る、彼女は今間違いなく幸せなのだと、何より彼女自身がそこに居る事を望んでいるのだと。

 

 ならば、無理に引き込む必要はあるまい、彼らの目的が何なのかは判らないが……きっと肩を並べられる日が来るはずだ、彼はそう信じてその場を後にするのだった──

 

 

 

 

 


 

【人物・用語・裏話】

 

 ・『ソル(偽)』

 ……転生者。元ネタ同様ソルは偽名、本名も元ネタと一緒の『フレデリック・バルサラ』、アメリカ生まれのアメリカ育ち。転生者だけあって、飛び級でとっとと大学を卒業し、発明品の特許でひと山当て、好き勝手に旅をしたりしていた。

 自身を『フレデリックの紛い物(フェイク)』と自嘲しているが、この世界に下地すら無かった魔法科学論を前世の知識を用い、自身の身体を使い実証・実用化した紛うことなき天才である。

 この世界で彼は自分の身体に余計な事をしてくれた『あの男』ならぬ『あの女』を付け狙っている。

 過去に日本にホームステイした事があるらしいがその辺の話はいずれ。

 

 ・『アリア』

 ……偽名の()その1。フレデリックは彼女の命の恩人。彼曰く治療を終えたらとっとと姉の元に帰すつもりだったそうだが、結局そのままついて来てしまった。本人曰くこの偽名は実の姉の名前をちょっと弄っただけだとか。

 

「ふん、ホームシックじゃねぇのか?」

「……それでも、貴方と共に居たいんです」

「…………やれやれだぜ……」

 

 一体何レナなんだ(棒読み)

 

 ・『ニュー』

 ……偽名の娘その2。偽名の由来はブレイブルー(以後BB)のν-№13。でも武器はBBのノエルっぽい。大体1年半ほど地獄のような日々を送っていた所をソルに助け出された、ホームステイ先の娘。

 今ほどぶっきらぼうじゃなかったソルに懐いて「お兄ちゃん! お兄ちゃん!」と付いて歩いていたとか。

 救出後にソルが教育を施していった結果、明るく元気なちょっぴりアホの子に育ってしまった。元ネタGGのソルとシンの関係に近いか? しかし、どうしてこうなった…… 

 

 因みに2人の偽名を作者が決めた際の決め手となったのは髪の毛の色。

 一体何リスなんだ(棒読み)

 

 ・『あの女』

 ……ソルが付け狙っている女。日本政府の関係機関に居るせいで迂闊に手が出せない。ソル曰く、余計な事をしてくれやがった張本人。

 コイツさえ居なければ余計な苦労はしなかった。だが、コイツが余計な事をしなかった場合ニューを救いに行く事すらままならなかった。ジレンマ。

 一体何ーネなんだ(棒読み)

 

 ・『ジャンクヤード・フェイク』

 ……ソルの武器。彼が『あるモノ』の残骸からどうにか苦労して組み上げた『ジャンクヤード・ドッグ』の紛い物。模倣神器。火の法力を増幅出来る、この世界初の魔法科学論による武器。増幅機能はギアシフト式。

 ノイズに対する攻撃時、位相差障壁により現世の外側に潜り込んでいる部分を追尾、直接干渉する法術が組み込まれている。ソル曰く、「次元を完全に超えちまう必要が無い以上、多元並行世界へアクセスするよりよほど簡単だ」との事。

 

 通常時の出力はギリギリ及第点だが大出力モードの起動に少々時間がかかる上、そこから1つギアを上げた最大出力モードで稼動させ続けると大技1~2発でオーバーヒートを起こす。本人曰く『産廃で紛い物』。現在も改良中。

 

 ・『ジャンクヤード・ドッグ』

 ……元ネタのギルティギアで主人公ソル・バッドガイが扱っていた武器。中に内蔵された『神器・封炎剣』と『神器・閃牙』により大出力の攻撃を可能とする決戦兵器。こっちはチャージ式。

 『フェイク』はコレを真似して作ろうとして、結局今に至るまで真似事すらままならなかった欠陥品。

 最新作GGSTRIVEではさらに改良を重ね『ジャンクヤード・ドッグ』から『アウトレイジMK-Ⅱ』という銘になった。

 

 ・『監視役』

 ……ソルの召喚したサーヴァントの1体、彼の召喚するサーヴァントは法力で生み出された存在で、会話等の意思疎通が可能、様々なタイプが居る。今回は会場の屋根でカメラを担いで撮影ドローンの真似事をしていた。

 

 ・『ソルの車とバイク』

 ……名前はファイヤーホイールMK.Ⅳ。派手に弄られ過ぎて最早元の姿の面影もない。パっと見は赤いスポーツカー、後ろの車種を示す所には『MK.Ⅳ』の文字が。ナンバープレートは『ろ 9』。

 最後に出てきたバイクはGGXrdRにも出てきたファイヤーホイールMK.Ⅱ。

 

 ・『ザ・ドリル』

 ……ソルのサーヴァント、見た目はGG2の本家ほぼまんま。ドリルの種類を元ネタから増やしたらしい。

 

 ・『オールガンズブレイジング』

 ……初代ギルティギアのソル、GGXX/以降の家庭用EX聖騎士団ソルの一撃必殺技、ソルが相手の背後に回った後に画面全体が火の海に包まれ、巨大な火柱が通過し全てを焼き尽くす。




最後までご覧頂きありがとうございます。

法術でのノイズに対する攻撃、限りなく万能に近いとされるGGの法力用いればぶっちゃけ可能だと思うんですが、どうですかね。独自解釈タグ要りますかねコレ。

あとあの子がGGのシン1歩手前みたいに育ってて本当に申し訳ない、でも転生者とはいえほぼソルが幼少から育てたら……育てた年数も相まってああなると思う、思わない?


最後に、上の用語解説のようなモノ……要ります?
一応アンケートとっとくかな……


ではまた。

この本文の後の用語解説、要ります?

  • 要る。
  • イラン。
  • もうちょい少なくていいよググるから。
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