神器絶焼ギルティギア   作:ジャンクヤード犬

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どうも、犬です。
閲覧&お気に入り登録ありがとうございます。

2話目更新でバーに色がついてて白目むきました。
毎回白目むいてんなコイツ。

zin666さん 10評価ありがとうございます!


前回のアンケ結果を反映して、用語解説の内容を吟味しました。
あと、プロローグに挿絵を追加しました、画力は……まぁ、うん、はい。




ではどうぞ。


Duel2 「Reunion」

「──お守りに来たぞッ!!」

 

 

「随分待たせちまったが、もう大丈夫だ」

 

 

「……っと、やれやれ……どうやら泣き虫は治ってねぇようだな?」

 

 

「あぁ良い良い、今は思いっ切り泣け……お前は今泣いて良いんだ……」

 

 

「……あぁ、そうだな。こんなのはガラじゃねぇ。だがこれだけは言わせてくれ」

 

 

「ありがとうな、生きていてくれて──」

 

 

 

 

 

 

「──クリス」

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

「──…………クリス……」

 

 名前を呼ぶ声が聞こえる。

 

「……クリス……」

 

 いつも共に居てくれる、彼女の大好きなヒトの呼ぶ声が、そして──

 

 

 

「……クリスッ!!!」

 

 

 

 ──ドゴッ、とヒトの頭から鳴ってはいけない音と共に怒鳴り声が部屋中に響き渡った……

 

「~~~~~~~~~ッッッッ!?!!?」

 

 あまりの痛みに声にならない悲鳴をあげながらその場でのた打ち回る少女、彼女の名前は雪音クリス、先ごろ発生したツヴァイウィングのライブの事件でニューと呼ばれていた少女である。

 

「俺の授業中に居眠りとは良い度胸だな? えぇ、オイ?」

「……ま、毎度の事だけど……女の子相手なんだし、もうちょっと優しい起こし方があると思うんだけどなぁ……!? (おに)い……!!」

 

 そんな彼女にゲンコツを叩き込んだのはソルと名乗っていた男、本名をフレデリック・バルサラ──愛称はフレッド。彼は()()()の保護者のような存在で……

 

 

 

 ……こんなでも一応は、本作の主人公だったりする。

 

 

 

 先程の一撃、フレデリックからすれば小突いた程度なのだがあくまでもソレは彼基準、クリスはジンジンを通り越してズキズキする頭の痛みに耐えつつ潤んだ目で抗議の視線を向けた……が、そんな顔をしても無駄だと言わんばかりに「はっ」と鼻で笑われてしまった。

 

「……どうやら俺は、『鬼』らしいからなぁ? 鬼なら鬼らしくバイオレンスに起こして何か問題があるか?」

 

 ──Oh……バレテーラ。でも、いまのはいたかった……いたかったぞ──ッ!!!! 

 

 そんな馬鹿っぽい事を頭に浮かべながら涙目で殴られた場所をさするクリスは、普段『お兄』と呼んでいる相手の顔を改めて見てみる。フレデリック側が明らかにやりすぎだった場合に限り、謝罪と賠償を請求出来るワケダが──

 

 

 

 ……目元までは菩薩のような笑顔だ。ただしそこから上は眉間に深いシワ、額には思いっきり青筋が浮かんでいる。あっ、これはダメみたいですね。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 クリスは素直に謝った。手のひら返し、戦略的撤退である。まぁ、威力はアレでも一応は横に振りかぶるゲンコツ、フレデリック的には間違いなく手加減をしている。

 もっと加減が無い時は真上からのゲンコツ+その勢いで机に強打のダブルパンチだ。フレッドさんマジ無慈悲(No mercy)

 

「ったく、もしも学校でそんな調子だったら間違いなく留年だぞ?」

「まぁまぁフレッド、クリスだって悪気があったわけじゃないんですから、ね?」

「うぅ~……セレナ~……!」

「はい、よしよし、痛かったですね?」

「…………は、やれやれだぜ」

 

 そんな彼を宥め、クリスを慰めるのはこの場に居た最後の1人、名前はセレナ・カデンツァヴナ・イヴ、あの事件でアリアと呼ばれていた少女だ。

 そんなセレナとクリスの様子にため息を吐くフレデリック──これが彼らの日常だったりする。

 

 ──ここはとある別荘地、フレデリックの持ち物である別荘の地下シェルターの更に下にある隠れ家だ。(なお申請無しの違法増築)

 

 身を隠す為、そしていろいろな事を出来るようにする為に地盤沈下の原因になりそうな程に広く空間をとっているが、そこは法力フル活用できっちり補強しているのでそんな心配は欠片も無い。

 ただし見た目は建築基準法に思いっきり抵触しているレベルなので、バレればもれなく住めなくなる。まぁあれだ……バレなきゃ犯罪じゃないんですよ? 

 

 ……コイツ仮にも主人公なのに法に喧嘩売りすぎでは? ……今更だった。

 

 で、そんな場所で今何をしているかというと、魔法科学論・法力・法術の勉強会。自分も戦うと言って聞かない連れの2人の少女に「だったら最低限身を守る術くらいは身に着けろ」と始めたのがコレ。

 

 この力、人間が増幅装置無しに出せる出力などタカが知れているとはいえ、上手く扱えば現代科学・化学で証明出来ない、もしくは証拠が残らないテロとか出来てしまえる。

 要するにそのタカが知れている出力でも使い方を誤れば使い手自身にすら危険が及ぶのだ。文字通りのほぼ万能、まさに魔法と呼ぶに相応しい力ゆえ、危険性の周知を徹底しているのである。

 

 

 

「さて、居眠り小娘の目が覚めた所で以前やった内容の復習だ、クリス、俺の質問に答えろ──」

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

「──あぁ~……つっかれたぁ~……」

 

 乙女が出してはいけない声を出しつつぐったりと机に突っ伏したクリス、フレデリックの授業は何も法力に纏わることだけではない。一般教養、義務教育の範囲もまとめて行っている。

 ここしばらくの遠征で出来なかった分のそれらも詰め込み式で一気に行っているのだから疲れるのも当然だろう。

 

 なぜここまでするのか? それは彼が将来的には彼女たちを今居る裏の世界から表の世界に帰すつもりだからだ。

 その事はちゃんと彼女たちにも伝えてあるし彼女たち自身も理解を示している、先ほどのゲンコツもまぁ威力はともかく愛の鞭なのだ、威力はともかく。

 

「だらしねぇぞクリス、寝るならベッドで休め。まぁその前に、頑張ったご褒美だ」

「……!! はちみつレモンッ!!」

 

 クリスの突っ伏している机に置かれたのは大き目のガラスのコップ、中にはフレデリック特製のはちみつレモンジュースが入っている、本家のソル(元ネタ)みたいに砂糖水なんて渡したりはしない。

 

 この男、脳の疲労回復効果が期待できるはちみつレモンジュースをチョイスする辺りで判ると思うが、割と相手に気を遣うというか、そういう所マメである。全体的に大雑把な本家(元ネタ)を反面教師にでもしたのだろうか? 

 そして何を隠そうこのはちみつレモンジュース、1ℓのペットボトル産とかではなく色々とこだわった完全なお手製、クリス的にも「ポイント高い」と評判な代物でちょっと中毒性があるレベルで美味しいのだ……いやこだわりすぎでは? 

 

 渡されたコップの中身をゴクゴクと美味しそうに飲み干すクリス、同じものをセレナにも渡しつつ自分も手に持ったグラスから飲む、その表情はどこか満足げ……というか完璧なドヤ顔だった。

 

「っぷはぁ! おかわり!」

「ダメだ。あと1時間ちょっとで飯の時間だぞ、それ1杯で我慢しろ」

 

 ……先程の表現を早速訂正しよう、この男、マメというかただのオトン気質なだけなのでは。

 

「えぇー!? それくらいいいじゃんお兄のケチー!」

「残念だったな、お前の居眠りさえなけりゃもう1杯飲めたろうになぁ?」

「ぐぬぬ……」

 

 反論出来ないクリスの悔しげな顔を見て意地悪そうな顔をするフレデリック、本家のソルが見ればもしかすると子育ての上手さでは負けを認めるかもしれない。

 

 ……まぁ元ネタは最早常時虐待の領域だから当然といえば当然か、ぶっちゃけ比べるのもおこがましい。なんだたまのご褒美が砂糖水って。

 

 そんな2人のやりとりを横にクスクスと笑いつつ同じくコップの中身を飲むセレナ。その慈愛に満ちた眼差し、そして幸せそうに綻ぶ顔はどう見ても17歳のする表情ではない。きっと姉ポジションなのだ、決してお母さんポジションではない、筈。

 

 

 ……こんな平穏が続けば良い、この場に居る全員がそう願わずにはいられない、だが、

 

 

 ──けたたましく鳴り響くアラート、それは平穏を壊すモノ、ノイズの出現を告げるものだった。

 

 

 

「──さて、俺は出るが、お前たちはどうする?」

「少し分布範囲が広いですね……今回は残ってサポートに入りますね?」

「あぁ、任せたぞ? で……」

 

「……晩ごはん……でもノイズ……人気者2人組に任せれば……でもこれは……」

 

 フレデリックの問いかけに即座に自分の役割を確認するセレナ、彼女の戦闘スタイルは接近戦主体の為、敵がバラけていると少々分が悪い、なので今回は裏方に回るようだ。そしてそんな2人の視線の先では……なにやらブツブツとつぶやきながらクリスが葛藤をしていた。

 

 クリスはなんだかんだ言ってお人好しだ、困っている人は放っておけないし、目の前に助けられる命があれば決して見捨てたりはしない。何より、クリス自身がそうして助けてもらったから。

 

 レーダーの画面上で広く分布しているノイズの配置、恐らく自分たちを誘き出す為の罠だ、とクリスは確信はなくともそう思う。彼女は馬鹿な事を言ったりやったりはするが消して馬鹿ではない、むしろ地頭は相当に良い方だ。だから判る、この誘いには()()()()()()の為にも乗ってやるべきだと。

 

 予てより製作していた対ノイズ用の法力武装、フレデリックの()()()()()()に『性能試験』に付き合って貰い、お墨付きを貰った直後に件のライブの事件、既に十分な実戦経験も積めた、これからはもう見ているだけ、守られているだけじゃない。

 

「……ご飯の時間までに戻ってこれそうにないなぁ……でも仕方ないか!」

「心配するのはそこか? ……行きたいならもう1杯許してやる」

「さっすがお兄! 太っ腹ぁ!」

 

「……ったく、調子の良いヤツだ」

 

 そう言いつつ微笑を浮かべながらジュースを注いでクリスに手渡した。待ってましたと言わんばかりの顔でコップを受け取りそのままグイッに呷り、そして一言……

 

「あぁ~! キンッキンに冷えてやがる~!」

 

「阿呆な事言ってないでソレ飲んだらとっとと支度しろ、置いてくぞ」

「悪魔てk……あ、待って、待ってお兄、もうちょっと味わわせて……!」

 

 クリスを放っておいてさっさと準備を始めるフレデリックとセレナを見て慌ててコップの中身を飲み干すクリス。これには流石のセレナも苦笑気味だったが、ふとフレデリックが目線で何かを訴えているのに気付いて目を瞬かせる。

 本当に一瞬の視線でのやりとり、それでフレデリックの言いたい事を理解したセレナは無言で頷き、クリスに手招きをした。

 首を傾げつつもセレナの傍に寄っていくクリス、どうやらフレデリックには聞かせたくない内容のようだ。

 

「…………クリス、出る前に一応…………に行っておいた方が……ですよ?」

「……そうする、多分…………空飛んで現地に……よね?」

 

 言うや否やそそくさと部屋の外へを出て行くクリス、そんな様子にフレデリックはため息を一つ。

 

「悪ィなセレナ、まぁアイツも年頃だからな……」

「いえ、こういうのは私の役目ですから♪」

 

 ……何か思春期の娘を持った父親と母親のような雰囲気を放つ2人……お前ら結婚十数年の夫婦か何かか? 勿論娘とはクリスの事である、知らぬが仏とはこの事か。

 

 

 

「お兄ー! 準備出来たよー!」

 

 そんな何とも言えない空気の中準備を進めて待つことしばし、諸々の支度を済ませた2人の居る部屋の扉が開き、クリスの元気な声が響き渡る。思わず微笑がこぼれる2人、やっぱ夫婦だろコイツら。

 

「おう。じゃあ、行ってくるぞ」

「いってきまーす!」

 

「えぇ、いってらっしゃい」

 

 

 

 ──Get down to business.(さあ、仕事だ)

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

「──ガンブレイズッ!!」

 

 ノイズが出現した事により無人となった市街地の路地、火の手の無い筈のその場所に突如火柱が立ち上る。勿論それは火災によるものではなく炎による攻撃だ。

 何本もの火柱が地面から連続して吹き上げノイズ達を尽く消し炭へと変えていく。その場には最早元が何か判らない炭の山だけが取り残されていた。

 

 この光景を生み出した張本人、フレデリックはノイズの殲滅が完了したその場に背を向け次のターゲットへと駆けていく。

 

『ソル、次はその区画から500m先を右に、二課の装者が戦闘を行っている区域と丁度反対方向です』

「おう。ニューの方はどうなってる?」

『こっちも一通り片付いたよ。けどアリア、なんだか連中こっちに近づいてきてない?』

『……こちらと接触を図りたい様子ですね、どうしますか?』

「さて、どうするか……ま、とりあえずこの馬鹿騒ぎが済んでからだ」

 

 暗にいつでも撒いて逃げられるという雰囲気を発し、あまり気にしていない様子のフレデリック(ソル)だが、セレナ(アリア)は少し不穏な気配を感じ取っていた。

 

『……あなたが負けるとは全く思っていませんけど、気をつけてくださいね?』

「あぁ」

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

『──お疲れ様です。付近のノイズの反応ありません』

 

 セレナの通信により状況の終了を告げられる2人、途中で合流したフレデリックとクリスは今居る路地裏に満ちていた張り詰めた空気を霧散させた。

 

「ふぅ、やーっと終わったぁ……」

「ご苦労さん。さて、とっとと撤収するぞ」

 

 

 

「ちょーっと待った、まだ帰るには少し早いんじゃないかい?」

 

「……どうやらお代わりが来やがったようだ」

 

 背後からかけられた声に気だるげに振り返るフレデリック、そこには不敵な笑みを浮かべて佇む天羽 奏と、親の敵でも見つけたかの如く睨み付けてくる風鳴 翼、人気アーティスト『ツヴァイウィング』にして特異災害対策機動部二課所属のシンフォギア装者の2人が立っていた。

 

「で、二課のシンフォギア装者が何の用だ?」

 

 心底面倒臭そうな声色でそう問いかけるフレデリックの言葉に目を見開く奏と翼。奏の方はすぐに表情を元に戻したが、翼の方はますます剣呑な雰囲気を醸し出した。

 

「あぁ、この前の礼をさせてもらおうと思ってね……」

 

 そう言って手に持った槍を高く掲げる奏、それに倣うように翼も剣を脇構えに、そんな様子の装者達にフレデリックも自然と腰に休ませていた得物に手が伸び、クリスはその場から2歩ほど下がり2丁の銃を手に持ったまま自然体に。

 まさに一触即発の空気、誰が先に動くか様子を伺う中、翼が足に力を込めたその瞬間──

 

 

 

 

 

 

 ──奏が槍を180度手元で回転させて地面に力強く突き刺し、勢い良く頭を下げた。

 

「この前は本当に助かった! ありがとう!」

「ちょ、ちょっと奏っ!?」

 

 あの空気から──と言っても2人が警戒していたのは翼だけなのだが──そんな言葉が奏から飛び出して面食らうフレデリックとクリス……そして何故か翼の方もギョッとした顔をして声を裏返していた。

 

「ほら、翼もお礼言いなよ、助けられた事に違いは無いんだし」

「……私は、この人の攻撃の巻き添えで気を失うハメになったんだけど……」

 

((……あぁ、だからあんな不景気な顔してたのか、もう片方……))

 

 思わず心の声が一致するフレデリックとクリス。なんだかもう戦場というカンジの空気ではなくなってしまい肩の力が抜けていくフレデリック、クリスに至ってはさっさと帰りたそうな顔をしている始末……なんかもう色々と台無しだ。

 

「あー……まぁアレだ、気にすんな。それと悪かったな、咄嗟だったモンだから攻撃に巻き込んじまってよ」

「……いえ、不意打ちを受けたのは私の油断が招いた私自身の落ち度です、気にしないでください」

 

 そう言いつつ不機嫌そうな顔を直そうともしない翼と、それを見て「じゃあその不貞腐れたツラやめろや」と思いつつも声にも顔にも出さないフレデリック。背伸びした子供と弁えた大人の対応の差に奏は苦笑いを浮かべた。

 

「よし、じゃあこの話はこれで終わり! で、こっからが本題なんだけど……」

「まだなんかあんのか?」

「えー? あたしお腹すいたー!」

「我慢しろ」

 

 やる気のなさげな2人にこの中の誰よりも生真面目な翼の目が吊り上がるも、先ほどの少々子供な対応──まぁ歳相応ではあるのだが──のせいで誰も気に留めない……翼はますます不貞腐れた。

 

「このままアタシらと二課の本部にご同行を「断る」……だよねぇ」

 

 判ってましたと言わんばかりの奏の反応に訝しげな顔をするフレデリック、本題と言った割にあっさりと引き下がるのはどういうつもりなのか。

 

「いや、だったら力ずくで……と言いたい所だけど、アンタら2人が本気で抵抗してきたらアタシらもタダじゃあ済まなそうだからね」

「ほう、判ってんじゃねぇか。で、だったらどうする?」

 

 フレデリックの問いかけにニヤリと笑う奏、それに何かを察したフレデリックもため息を一つ、クリスと翼は若干ヒリつくような空気を察して2人から少し離れていく。

 

「当然、こうするのさ!」

「ふん、やれやれだぜ……」

 

 そう言うや、奏は地面から槍を引き抜き構え、フレデリックは右手を首に添えてゴキゴキと音を立てて鳴らし、腰の剣を抜く。徐々に闘気が高まっていく場で、ふと奏は何かを思い出したような顔をした。

 

「そうだ、大事な事を聞くの忘れてた。アンタの名前、教えてよ?」

「そういや名乗っちゃいなかったな…………ソルだ。そっちみてぇに立派な肩書きなんざねぇ、しがない何でも屋だ」

「じゃあ改めて……アタシは天羽 奏、今はアーティストじゃなくて二課のシンフォギア装者だよ」

 

 流石にこの場で本名を聞きだせるとは欠片も思っていない奏も、一応偽名とはいえ使い慣れていそうな名を名乗られた事で笑みを浮かべる。

 

 この戦いは殺し合いではない、このやりとりを始める前に通信をした二課の司令(彼女の上司)曰く「よく判らない相手だというのならば、相手が戦士であれば戦ってみれば判る」のだそうだ。

 奏はそれを「……どうせ映画か何かの受け売りなんだろうな」と思いつつも、それを試してみることにしたのだ、自分達を助けた相手がどんな人間なのかを知りたかったから。

 

「ソルの旦那か、オッケー覚えた! じゃあ──

 

 

 

 

 

 

 ──少し、付き合って貰うぞ?」

 

「……しゃあねぇな」

 

 

 

 

 

 

◆ LET'S ◆

◆ ROCK! ◆

 

 

 

 

 

 

「──へぇー……人気者も案外やるじゃん」

 

 フレデリック(ソル)と奏が戦闘している場所から少し離れた位置、奏に「手出しは無用だぞ!」と言われて大人しく壁に寄りかかっている翼の傍にクリスが近づいて話しかけた。

 

「……なに? 馴れ合うつもりはないわ、私達は敵「えっ? 敵じゃないでしょ?」同士で……」

 

 翼の言葉を遮るように言葉を返すクリス。だが、一瞬何を言われたのか理解出来なかった翼によって妙な間が空いてしまった。

 

「「……えっ?」」

 

 一瞬固まった翼が何を言われたか理解して思わずクリスに顔を向けるも、互いに浮かんでいるのは「何言ってるの?」と言わんばかりの表情で……どうやらこの2人、思いのほか気が合いそうだ(?)。

 

「えっ、うそ、わかんない? あたしらは別にそっちと敵対してる訳じゃないでしょ。ましてやこっちの敵はノイズ、そっちの敵もノイズなんだし。あれよ、敵の敵は味方っていうじゃない?」

「それは、判らなくはないけれど……」

 

 どこか納得がいかない翼にクリスは言葉を続ける。

 

「あれだよ、こっちとそっちは同業者。こっちは民間、そっちは公的機関……あっ、商売敵っていう意味なら敵扱い……? あれっ?」

「えっと、私に聞かれても……」

 

 クリスの言葉に困惑する翼を見て、何かに気付いてニッとクリスが笑う、そんなクリスの様子を訝しげに見る翼に、クリスは「ごめんごめん」と謝り、少し躊躇い気味に続けた。

 

「いやー、やっと目の吊り上がってるのが取れたなーって思ってさ」

 

 両側の眉間に両手の指を当てて上にぐっと上げながら「こーんな目してたよ!」などと言うクリスに翼は思わず吹き出してしまった。

 

「お、今度は笑ったね!」

「……全く、貴女と話していると調子が狂うわ」

 

 そう言う翼は再び視線を戦闘を繰り広げているフレデリックと奏の方へと向ける。一見互角の戦いをしているように見えるが、実態は技を一切繰り出さないフレデリックの手加減により成立している。

 相手を倒す事、傷つける事を目的としていない戦い方、どちらかといえばこれは訓練や模擬戦のようで……否、戦っている本人達も半ばそのつもりなのだろう、その動きはまるでペアで踊るダンスのようだった。

 

「……あなた達は、何のために戦っているの?」

「………………全ての悲劇に決着をつけるため、かな?」

 

「…………!! だったら……!!」

 

 クリスの答えに思わず振り向く翼だったが、しかし、クリスは首を横に振る。

 

「どうして……?」

「……この力は、簡単に表に出しちゃいけない力なんだよ」

「だったら私達のシンフォギアだって「広まれば、世界の根底がひっくり返る程の力だとしても?」……ッ!?」

 

 予想外の回答に翼は目を見開いた。

 

「シンフォギアは使い手を選ぶけど、この力は使い手を選ばない、得手不得手の差は出ても誰にでも使える」

「なら、広めれば今以上にノイズの被害を……!!」

「言ったでしょ、世界をひっくり返すって」

「それほどの力だというの……? なら、尚の事正しく管理しなければ……」

「……国じゃ管理できないだろうね。ううん、恐らくたちどころに軍事転用される」

「………………」

 

 今度こそ翼は黙るしかなかった。実際に目の当たりにしたから判るのだ、クリスの言っている言葉の意味が。

 

「……あなた達なら、正しく管理できると?」

「出来る、してみせる。うん、それだけは約束するよ」

 

 クリスのその真っ直ぐな視線と共に語られた言葉を受けて、翼は瞳を閉じる。彼女の言葉に嘘偽りは一切ない、翼はそう確信した。

 

「…………これ以上の問答は不要ね」

「そうだね、向こうももう終わるみたいだし」

「……えっ?」

 

 瞬間、その場に何かが激しく何かがぶつかり合う音が響き渡った。

 

「──ぐぅぅっ!?」

 

「奏っ!?」

 

 クリスと翼の視線の先、そこには槍で攻撃をガードするも数メートルも後退させられた奏と、その一撃を繰り出した後であろう武器を振りぬいた姿勢で止まったフレデリックの姿があった。

 

「さて、それじゃここらでお暇させてもらうよ?」

「……えぇ、そちらの事情を知ってしまった以上、こちらも無理やり連行する事は出来ないわ」

 

 恐らく、彼らの力の情報が少しでも知れ渡れば、その正体を探ろうと躍起になる勢力が多数現れる。ならば自分達に出来る事は見なかった事にする事だけ、そう翼は理解した。

 

「……じゃ、悪いけど完全な協力体制は取れないけど」

「えぇ、共闘出来ると判っただけでも十分だわ」

 

「──早くしろ! 置いてくぞ!!」

 

「わわっ、待ってー!? それじゃあね! ノイズ退治の先輩っ♪」

「……とんでもない後輩を持ってしまったものだわ。えぇ、また会いましょう」

 

 ニッ、と笑いかけてからフレデリックの方へと駆けていくクリス。しかし、一応この場はノイズの襲撃があった場所、周辺は二課に包囲されている、どうやってこの場から抜け出すつもりなのか……そんな翼の疑問は直ぐに解消された。

 

「……アイツら、本当にデタラメだねぇ」

「奏」

 

 翼の傍に歩いてきた奏の一言が全てを物語っていた。2人の視線の先、フレデリックとクリスの目の前に突如乗り物のような物が出現し、彼らはソレに乗りそのまま空へと飛んでいってしまった。

 

「……あ」

「ん? どうしたんだい、翼?」

「名前、聞きそびれちゃった……」

 

 先ほどまで話していた相手の名前を聞きそびれていた事に今更ながら気付いた翼。最初あった険も取れたその表情は、どこか残念そうだった。

 

「ま、そのうち会えるだろうし、その時に聞けばいいんじゃない?」

「そうね、そうするわ」

 

 その会話を最後に、奏と翼は2人が飛んで行った夜空を見上げ続けるのだった。

 

 

 

 

 

 

「──で、何を話してたんだ?」

「ん? こっちの事情をちょっとだけね?」

「そうか」

 

 所変わって此処は上空数キロメートル、フレデリックとクリスの2人は先ほど離れていた間の事について話していた。

 

「まぁ、連中なら信用出来る、少なくとも『あの女』の正体も知らねぇだろうからな」

「うん、けど……どう出るかな?」

「さあな、恐らく俺達の力を『錬金術』辺りだと勘繰るだろうが……」

 

 2人を乗せた機体はどんどん加速していく。しばらく沈黙が続き、不意にクリスが口を開いた。

 

「ねぇ、お兄ちゃん……勝てるよね?」

「……負けてやる理由がねぇ。必ずケリをつける、落とし前もだ」

「うん……」

 

 不安げな顔でぎゅっとフレデリックに抱きついたクリス、彼はそんなクリスの頭を安心させる為に撫でてやるのだった──

 

 

 

 

 


 

【人物・用語・裏話】

 

 

 ・『フレデリック』

 ……オトン気質、鞭担当。

 世界各地を旅していただけあって結構顔が広い。余計な縁も出会ったが、思いも寄らない人物が味方になってくれたりもしている。誰かはまだ内緒。

 

 教育方針に関しては原作のソルを反面教師にしている節がある。砂糖水をご褒美に与えたことは一度も無い。

 

 ・『クリス』

 ……日本語の勉強に「コレでも読んどけ」と渡された漫画をきっかけにサブカルに目覚めてしまった。唯一フレデリックが自身の教育において失敗したと思ってる点。

 

 実はフレデリックの口調が感染りかけ、原作通りの口調になりかけた時期があった……が、フレデリックの躾により修正された。その時落ちた雷がこちら↓

 

「テメェがそんなクチの利き方してるのを許したらッ! 俺が雅律(まさのり)さんとソネットさん(クリスの両親)に顔向け出来ねぇだろうがぁッ!!」

 

 なおセレナ曰く「散々折檻しておいて今更顔向けも何も無いのでは?」とのこと。うーん、このオトン気質。

 

 ・『セレナ』

 ……10台後半にして母性が炸裂している。オカン気質、飴担当。

 当初は原作のセレナよろしく、フレデリックを『バルサラさん』、クリスを『雪音さん』と呼んでいた。

 当然2人からは「苗字は呼びなれない」とか「さん付けもやめろ」と言われ、当初は抵抗感を感じていた。

 だが、フレデリックとクリスのやり取りを見ている内に胸にモヤモヤした物を感じ始め、気付けばすっかり呼び捨てが定着。

 

 ・『法力』

 ……魔法、シンフォギアの世界には当然存在しなかった技術体系だが。ある技術との類似点が多い。

 だがフレデリック曰く「根本的にアプローチの仕方が違う」らしい。

 

 ・『クリスの銃』

 ……実は名前がまだ決まってない。クリスがケルベロスとかオルトロスにしようとして却下されたから。厨二的な意味ではなく版権的な意味で。

 実は内部構造の一部に、ギルティギアのロボカイに使われた技術をフレデリックが再現しようとしたその研究成果が使われていたりする。

 

 ・『オペ子セレナの周辺機器』

 ……通信も法力由来、レーダーも法力由来、様々な理由から異端技術に対して法力はめっぽう強かったりする。

 当然感度・精度共に二課のモノよりも高いが、この辺は現代科学で頑張っている二課の方がある意味では凄いとも言える。

 

 ・『空飛ぶ乗り物』

 ……改造したサーヴァント、名前はエンガルファーMk.Ⅲ。元ネタのエンガルファーは変形するヨット型だったが、弄繰り回しているうちに気付けば飛空挺になっていた。どうしてこうなった。

 どうしても姿が目立ってしまう昼間には安易に使えないせいで、昼夜通しの移動に使う事が出来ないのが現状唯一の難点か。




最後まで読んで頂きありがとうございます。
ちょっと遅れました……


実は前話にてクリス(ニュー)の捕虜だった期間を大体2年半としておりましたが、色々時期等を調べた結果うちの偽ソルなら大体捕虜期間1年半以内には救出出来る事に気付いたので変更させて頂きました。
原作でクリスがバルベルデに渡った時期とセレナが死んだ時期って結構近かったのね……



さて、今度は挿絵に関するアンケを取りたいと思います、よろしくお願いします。


ではまた。

挿絵は……

  • やるじゃねぇか。(そのまま)
  • 要らねぇ! 消え失せろっ!(即削除)
  • 見栄を見せろッ!(カラーにしろ)
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