神器絶焼ギルティギア   作:ジャンクヤード犬

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どうも、犬です。

閲覧&お気に入り登録&感想ありがとうございます。

気付いたらお気に入り件数が3倍以上に……ありがたや……


アディルドさん、シュラバンさん、10評価ありがとうございます!



今回はプロローグを含めると2度目の響視点です。
ついでにちょっと短めです。


……一部の人は途中でトラウマを抉られる、かも、しれません、多分。
むしろこれ書いてる数日間、自分が一番ダメージ受けてたまである(白目

……失礼。



ではどうぞ。


Duel3 「No mercy」

 ……未来(みく)が、居なくなった。お父さんが、居なくなった。

 

 

 

 ツヴァイウィングのライブの事件から1年半、私はもう……限界だった。

 

 1年半前のあの事件で受けた負傷により生死の境を彷徨った私の意識が戻ったのは、あの日から数週間も後の事だった。

 お医者さんからはあと少し処置が遅ければ出血量の多さで命が無かったかもしれない、と聞かされても正直実感は沸かなかったけど……まぁ、結局の所それは運が良かったって事なんだと思う。

 

 けれど、運が良かったのはそれまでで……リハビリを経て退院した私を待っていたのは、親友が別れの言葉も無く居なくなった学校と、謂れの無い誹謗中傷、いじめだった。

 

 人殺し、と罵倒された、他人の命を踏み台に生き延びた卑怯者、と誹られた。

 

 ──何も知らないくせに……

 

 私が生き延びられたのは、運が良かったから。あの人たちが、色んな人が、助けてくれたから。

 何の力も無い小娘が、どうやって他人の命を犠牲にして生き延びられるというのか。

 

 大人を押し倒して進む力なんか無い、逆に私が押しつぶされていただろう。

 逆に、誰かを助ける事だって出来なかった。そう、私はあの場で何も出来なかった。見ているだけだった。

 

 他人を犠牲にして生き延びる事も、誰かの命を救うことも、ましてや自分の命ですらも満足に守れなかった私に、一体何が出来たというのか。

 

 でも、こいつらは何も知らない、知ろうとしない。

 ただどこかで耳にした、目にした情報を鵜呑みにして、それが正しいのだと思考停止している。

 

 そんな連中が私にしてきた事は、本当にくだらない、どうしようもなく幼稚で馬鹿な真似だった。

 

 

 

 ある日、教室に着いたら椅子が外に放り出されていた。

 

 ──我慢した。

 

 またある日は、ちょっと目を離した隙に鞄の中身が水の入ったバケツの中にぶちまけられていた。

 

 ──我慢した。

 

 別の日、後ろからモップの棒で頭を何度も小突かれた。

 

 ──我慢した。

 

 どこに隠していたのか、腐った牛乳と雑巾で机の上がグチャグチャになっていた。

 

 ──我慢した。

 

 トイレに行ったら上から水がバケツごと降ってきた。

 

 ──我慢した。

 

 靴が刃物でボロボロにされた上でゴミ箱に棄てられていた。

 

 ──我慢した。

 

 机の中に大量のゴミが詰め込まれていた。

 

 ──我慢した。

 

 昔仲が良かった子に「標的にされたくないからもう関わらないで」と言われた。

 

 ──我慢した。

 

 廊下を歩いていたら足を払われて転ばされた。

 

 ──我慢した。

 

 階段を降りている最中に突き飛ばされた。

 

 ──我慢した。

 

 廊下を歩いていたら、痰混じりの唾を吐きかけられた。

 

 ──我慢した。

 

 

 

 

 ──我慢した、我慢した、我慢した……!!! 

 

 

 

 そんな日々がずっと続いたある日、罵声を浴びながら頭に濡れた雑巾を投げつけられた私は、気付けば叫んでいた。

 

「あの時ッ!! 私みたいな小娘に一体何が出来たっていうんだッッ!!!」

 

 どこまでも身勝手な、勘違いも甚だしい正義感という名の悪意を振りかざして、それが正義と信じてやまない馬鹿は、そのありもしない幻想に酔い痴れていて。

 

 大事な人を失った人は、正直わかりたくないけど、まだわかる、悲しみのはけ口が欲しいだけだと。

 じゃあ、全くそんな目に遭ってもいないコイツらは? 

 

 ──私を人殺しだって罵るならお前で本当に……ッ! 

 

 ほんの一瞬、そんな考えが頭をよぎって、気付けば私はニヤニヤと嗤っているソイツに掴み掛っていた。

 いきなりの事で驚いたような顔をするソイツ、周りも私が抵抗するなんて思っていなかったのか、一瞬どよめく教室の中。

 

 ──……いま、私は、何を考えてた……? 

 

 ……でも、掴みかかった瞬間にはもう少し冷静になっていて、「殺す」なんて思いは霧散していた。

 このまま手を離そうかと一瞬思ったけど、少し驚いた顔から不愉快そうに歪んだソイツの顔を見た瞬間、反射的に思いっきり頬を殴っていた。

 

 あぁ、やった、やってやった、やってしまった。気分は晴れなかった。

 本当に、それだけで済めばよかったのに……たまたまその瞬間に担任が居合わせて、

 

 

 

 ……その日、学校から言い渡されたのは、私に対する謹慎だった。

 

 

 

「……なんで? あんなに沢山酷い事をしたアイツらは何をしても怒られないのに、どうして私は怒られるの? どうして、私だけ、怒られるの……!?」

 

 限界だった、もうどうしようもなく限界だった。でも、それ以上に辛かったのは……それを聞いたお母さんが、泣きだしてしまった事だった。

 

 テープだらけの窓ガラス、家の塀は落書きだらけ、中身がいっぱいのゴミ袋が捨てられていた事もあった、郵便受けに動物の死骸が詰められていたなんて事も、このご時世に脅迫文入りのカミソリレターが届けられた事もあった。

 

 色んな辛い事があるたびに、「へいき、へっちゃら」って言って、耐えてきたけど……

 

「へっちゃらじゃないよ……」

 

 何で、何でこんな事になってしまったんだろう。部屋のベッドの上で膝を抱えて自問自答を繰り返す。そして、その考えに至った、至ってしまった。

 

 

 

 ──……私が、居るから……? 

 

 

 

 そう思った瞬間には、クローゼットの中の半袖パーカーを引っ掴んで着の身着のまま家を飛び出していた。

 季節はまだ夏、体を動かすなら上着なんて半袖でもまだ少しキツい、けど誰にも顔を見られたくなかったから、フードを深く被って走り続けた。

 

 苦しくても吐き気がしても走った、誰も私の事を知らない場所に行きたくて。

 どれだけ走ったかもわからない、足の感覚もおかしくなる程走って走って……気が付いたときには、本当に知らない街に辿り着いていた。

 ロクに前も見ずにメチャクチャに走り続けたから、もう帰り道も判らない。

 

 

 

 ──でも、いいや、帰れなくても。私はきっと、居ちゃいけない人間なんだから。

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 ……朝が来た、夏でも夜は少し肌寒くて、公園のベンチでは横になれても大して眠れなかった。体が痛い、無理やり走り通した筋肉痛と、硬い場所で寝たせいだと思う、本当に辛い。

 昨日から結局何も食べてない、お腹がすいたけどお金も無いから何も買えない、お風呂にも入れてないから髪の毛がボサボサになってる。でも、家には帰りたくない。

 

 顔も洗えないせいでショボショボする目を擦りながらフラフラと歩いていく、あんまり同じ所に居ると警察に通報されるかもしれない、それだけは御免だ、私たち家族を助けてくれない警察なんて信用出来ないし。それにしても……

 

 ──本当にお腹すいたなぁ……どっかの小説か何かみたいに、コンビニの廃棄の弁当でも勝手に持ってっちゃおうかな? 

 

 なんて考えながらアテもなく歩いていたら、不意に灰が舞った気がした。嫌な予感、違う、予感なんて曖昧なモノじゃない。

 そうだ、この感じはあの時と同じ……そうして足元ばかり見ていた視線を前に向けてみると、

 

 

 

 ……視線の先には、黒い塊が落ちているのが見えた。

 

 全身の毛が逆立つのを感じる。道のど真ん中に黒い塊、しかもそれは人の形をしていた。

 

 ──間違いない、こんな事を引き起こせるのはアイツらしかいない……! 

 

 ノイズ、私がこうなった全ての元凶。思わず顔が歪んだ。アイツらさえいなければ……! アイツらのせいで私は……!

 

 ──……でも、ノイズに触れれば、この辛いのも苦しいのも、全部終わ……

 

 

 

『生きるのを諦めるなッ!!』

 

 

 

 ──ッッ!! 今、私は何を考えてたの……? 

 

 あの時、薄れ行く意識の中でかけられた言葉、薄れかけた私の意識を繋ぎ止めてくれた言葉、胸の奥に深く刺さって抜けない言葉。

 学校で散々酷い目に遭わされて、何度も自殺を考えた事もあった。でもその度に、あの時の言葉が私を踏み留めさせてくれた。

 

 ──負けたくない。

 

 そうだ、学校の連中にも、家に来る嫌がらせにも、ノイズにも、私は、負けたくない。

 

「…………あっ……」

 

 ふと気付いたら、道の向こうにノイズが居るのが見えた。

 

 死の恐怖よりも先に怒りが沸いた、憎しみが沸いた、心の奥底に黒いモノが溜まっていくのを感じた……でもそれ以上に、別の何かが私の胸に湧き上がってくる、そんな黒い気持ちを尽く焼き払っていく──あの日見た焔の色。それを、私は思い出していた。

 

 体が、熱い、まるで内側で炎が燃えているみたい。でも、焼き尽くされるような炎じゃない。何かが湧き上がってくるような不思議な感覚、それは心臓の鼓動と一緒に段々と強くなっていって、そして、

 

 

 

「……歌が、聞こえる……?」

 

 

 

 そうか、これはきっと私の胸の内の炉心(こころ)に点った焔。だってこんなに激しく鼓動しているのに、全然苦しくない。

 そうしてその感覚に身を委ねていると、(うた)(ねつ)と一緒に私の内側からどんどん沸きあがってきて……気付けばそれを口ずさんでいた。

 

 

 

 

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron……」

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 ──同時刻、特異災害対策機動部二課本部。

 

 

 

「……ガングニールだとぉッ!?」

 

「どうして!? 奏は此処に居るのに!?」

「………………。 ……まさか……」

 

「…………? 奏……?」

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 ──同時刻、フレデリックの隠れ家。

 

 

 

「……このパターン、ガングニールか。現場にたまたま居合わせたか? だが、この波形は何だ? コイツは、まるで……」

「………………」

 

「……クリス、セレナ、今どの辺りにいる? ……悪いが、買い出しは後回しだ……あの程度のノイズの数なら今から向かっても二課が対処を終えていると思ったが、何かが起きていやがる。あぁ、いま座標を送る──」

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 突然浮かんできた歌を歌った途端、光に包まれて、気付いたら自分の格好が変わっていた。でも変わったのはそれだけじゃない、何かが変わった、私の中で、何かが変わった。

 何が変わったのかは判らないけれど、変わった事だけははっきりと、頭で、胸の奥で、理解していた。

 しかもこの格好は、あの日のツヴァイウィングの2人にそっくりで。

 

 ──もしかして私、ノイズと戦える? 

 

 これが何なのか、ちゃんとは知らない、けれどあの日見た通りの物なら、きっと出来るはずだ。そんな事を考えつつ、浮かんでくる歌を歌い続けた、(これ)が必要な事なんだと何となく判るから。

 

 ──ノイズが、来る……!! 

 

 歌いながら前を見据えてぐっと拳を握り締めたのとほぼ同時、攻撃態勢に入ったノイズがこちらに向かって変形して飛んできた。普通であればあれに当たれば死んでしまう。けど、

 

 ──けど、今の私なら……

 

 私の手にはツヴァイウィングみたいな武器は無い、もしかしたらよく判らないコレにはそういう機能もあるのかもしれない。でも出し方も判らないから、今はこの拳で。

 

 手を上げるような喧嘩なんてこの前初めてしたくらいの私だけど、お手本になるモノならあの日見せてもらった……だから、何となく出来る気がした。

 所詮今からやろうとしているのは猿真似、あの人の大立ち回りの最中で気を失ってしまった私が見る事が出来た、あの人の戦い方のほんの一部。

 

 お粗末で未熟な拳、でも今出せるきっと最高の一撃。そんな確信が、拳を構える前から私の中にあった、だから……

 

 ──真前から打ち砕く……! 

 

 左足で前に踏み込み、後ろに伸ばしたままの右足を踏みしめる、その力が足から腰へ、そのまま腰を捻って肩、右腕へと伝達されていく。食らえ──

 

 

 

 

 

 

──模倣……ファフニールッ!! 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、私の右腕から焔が迸って、自分に向かってきていたノイズを全て巻き込んで、炸裂した。

 

「…………は……?」

 

 今、私は何を出した? 名前もちゃんと聞けなかったあの人の真似をしたら、あの人みたいに焔が出て……意味がわからない。

 ただ判ったのは1つだけ、私の攻撃でノイズが跡形も無く消し飛んだ、それだけ。

 

 でも、今はそれで十分だった。

 

「は……ははっ…………やった……」

 

 そう、ノイズが消し飛んだ、私が倒した、この力があれば私でもノイズを倒せる。そうだ、この力さえあれば、

 

 ──ノイズに復讐が出来る。

 

 あぁ、絶対に叶わない願いだと思っていた。我慢して我慢し続ければいつかいじめも終わると思っていた。けど、いつまで経っても終わりは見えなかった。

 そんな苦痛を、苦悩を、私に押し付けたアイツらに復讐が出来る。

 

「あは、あはははは……!!」

 

 気付けば声を出して大声で笑っていた。あぁ、おかしい、こんな力を手に入れていたのならもっと早くに気付きたかった。

 そうだ、全部ノイズが悪いんだ、アイツらさえ居なければ、きっと未来(みく)だって……でも、どうして、どうして、

 

 

 

 ──どうして私はさっきから、涙が止まらないんだろう。

 

 

 

 そもそも顔だってきっと笑えてない、さっきから笑ってるのは声だけ。

 

 ──あぁ、ちくしょう……

 

 気持ちがぐちゃぐちゃになる、積もり積もった色んな想いがごちゃ混ぜになって、もうわけがわからない。

 そんな私の声に釣られて来たのか、またノイズが視線の先に現れた。

 

 ──邪魔だ。

 

 そうだ、邪魔だ。その姿を見て一瞬で心が凪いで真顔になった私は、ノイズ目がけて一直線に駆け出した。

 ノイズが私の姿に反応してこちらに向かってくる。けど関係ない、走った勢いに任せて大きく跳ぶ、そしてあの人みたいに片足をノイズに向けて突き出して、

 

 ──砕けろッ!! 

 

 落下の勢いに加えて焔が私の体を加速させる。私の足はノイズの胴体部分に吸い込まれるようにしてそのまま貫き、直後に地面から火柱が上がって近くに居たノイズを巻き込んだ。

 これもあの人の物真似だ。でも、あの日この目に焼き付けた焔が、そのまま私自身から放たれている。何でこんな事が出来るんだろう、わからない、わからないけど。

 

 ──…………ノイズを壊せるなら、なんでもいいや……

 

 そうだ、ノイズを壊せるならこの力がなんだろうとどうでもいい、これはもう、私の(モノ)だ。誰にも邪魔なんかさせない。ノイズは全部、壊す。

 

 幸いまだノイズは居る。少しの間、私の溜まりに溜まった鬱憤の発散に付き合ってもらおう──

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 ノイズ達との戦闘を開始してから数分後、私は周囲に現れたノイズを片っ端から蹴散らして、その後は他のノイズを探して駆け回っていた。

 そうやって、壊して、壊して、壊し尽くして。きっとさっき壊したのがきっと最後の1体だったのだろう、気付けば辺りから何かが動く物音や気配は完全になくなっていた。

 

「……はぁ、疲れた」

 

 あたり散らばるのは炭の山、ノイズだったモノ。それらを見ても、何の感慨も達成感も沸かない。ただただ疲れた、それだけだった。

 

 このままここに立っていても仕方が無い、移動しようと足を動かしたその時だった。

 

 虚脱感と疲労感、それと戦闘の間だけ都合よく忘れていた空腹感が一気に押し寄せてきたのだ。ああ、一歩歩くのさえ億劫になる、それでもどうにか前へ、と無理をして足を踏み出した途端……気付けば私の格好は元の私服に戻っていた。

 

「――……あ、れ?」

 

 完全な不意打ちだった、格好が戻った瞬間に地面に倒れてしまったのだ。起き上がろうにも力が全く入らない、勿論誰かに攻撃されたわけじゃない。

 過労という単語は聞いた事があるけど、こんな短時間に発生するものだっただろうか……それ以上に、今はとにかく眠くて仕方が無かった。

 

 あまりの眠気に徐々に定まらなくなっていく思考、そういえば昨日はマトモに眠れなかった事も今の今まで忘れていた。

 そして今居る場所は少し大きな公園内の林の中、地面はふかふかの芝生、体勢は仰向けで、そのまま寝てしまうのにもおあつらえ向きで。

 

 昼間っからのノイズ騒ぎでどうせ誰も出歩いたりはしないだろうし、眠気に抗えなかった私は、

 

 ──まぁ、いっか……

 

 そのまま眠ってしまう事にしたのだった──

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

「──……どこ、ここ?」

 

 目が覚めたら林の中じゃなくてどこかの部屋のベッドの上、わけがわからない。

 ただ、あまりのベッドの心地よさに再び眠ろうとして……

 

「……おなかすいた」

 

 目が覚めた途端に、今思い出したかのようにお腹が空腹を訴える音を奏でる、もしかしなくても半日以上は間違いなく、下手をするとほぼ丸一日何も食べてない。

 

 空腹に負けて身体を起こす、改めて自分の居る場所を確認すると、病院というよりは学校の保健室みたいな部屋だった、でも部屋には窓が無い。間取りが壁際じゃないんだろうか? 

 出入りできそうな場所は扉は一つだけ、壁にはアナログの時計が7時半という時間を刻んでいた、ノイズが現れたのがお昼前だったから……どうやら数時間ほど眠っていたみたい。

 

 部屋にある扉から出ようかどうか迷っていると、その扉が突然スライドして開いて女の人が入ってきた。

 

「あら、目が覚めたんですね?」

「あ、はい……」

「心配したんですよ? 貴女、()()()()()()()()()だったんですから」

「えっ」

 

 ……どうやら今は7時は7時でも夜ではなく朝の7時、眠っていたのは数時間ではなく十数時間だったらしい。

 

「さ、お腹が空いているでしょう? どうぞ召し上がれ」

「あ、ありがとうございます……いただきます」

 

 良く判らない場所に素性の判らない相手、でも美味しそうな料理に罪はない、うん。

 そんな言い訳をしながら、私は目の前の料理を空っぽの胃の中に放り込んでいくのだった。

 

 

 

 

 

 

◆  eat it.(もぐもぐ)  ◆

 

 

 

 

 

 

「……ふぅ、ごちそうさま」

「はい、お粗末様でした」

 

 ニコニコと笑いながら食器を片付ける女の人、こんなに他人に親切にされたのは本当に久しぶりだ。場所がもう少し普通の場所なら私もきっと感激していた事だろう。

 

「……あの」

「はい? どうしましたか?」

「ここ、一体どこなんですか?」

 

 食器を片付け終えた女の人は、そんな私の質問に対しても優しげな笑みを浮かべたままで。

 

「それについては私達の責任者がこの後お話致します、格好はどうしますか?」

「……格好? あ……」

 

 そう言われて自分の服装が元々着ていた服じゃなくて患者衣になっている事に気付いた。

 

「安心してください、というのもアレですが……着替え等は私が行いました、元々貴女が着ていた服はそちらに」

 

 言われて横を見ると、私が着ていた籠の中で服が綺麗になって折りたたまれていた、どうやら洗濯までしてくれたらしい。

 

「えっと、何から何まですみません……」

「気にしないでください、こちらが勝手にやった事ですので」

 

 優しく微笑んだままの女の人、状況が状況だけに疑ってかかってしまうけど、胡散臭いカンジは一切無い。

 

 ──多分、この人は大丈夫。

 

 ここ暫く嫌でも磨かれた私の直感がそう告げている。

 

「それじゃあ、着替えますので……」

「はい、外で待って居ますね? 終わったら声をかけてください」

「はい」

 

 とりあえず、この人の言う責任者とやらに会ってみよう。

 

 

 

 

 

 

◆   ◆   ◆

 

 

 

 

 

 

 服を着替え終えた私は、女の人に案内されて責任者の人が居るらしい部屋の大きな扉の前まで来ていた。

 

 ここまで来る途中に見渡した限りだけれど、どうやらここは地上じゃなくて地下らしい。

 広めの廊下には窓が一切無いし、さっきの部屋も窓が無かったから、位の判断材料しかないけど、多分間違いないと思う。それにしても……

 

「……どんな人なんだろう?」

「ふふ、大丈夫ですよ、見た目は少し怖いかもしれませんが、優しい人ですので」

 

 どうやら考えている事が口から漏れていたらしい、女の人がクスクスと笑いながら私の独り言に答えるモノだから、思わず顔が熱くなる。

 女の人がタッチパネルに触れると、扉がスライドして開いた。中には真正面に大きなモニターのような物が見える、その前には……

 

「勝手に連れてきて悪かったな」

 

 赤いジャケットを着た体格の良い男の人、この人が彼女の言っていた責任者なのだろう。

 

「だが事情が事情でな、どうしてもそのまま帰す訳にはいかなかった」

「……なんで、ここに」

 

 けど、それ以上に私が驚いたのは……

 

「あぁ、紹介がまだだったな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の名はフレデリック・バルサラ、ここの責任者みたいなモンだ」

「貴方は、あの時の……!?」

 

 私の心に深く刻まれた背中、その張本人が目の前に居た事だった。

 

 

 

 

 

 


 

【人物・用語・裏話】

 

 

 ・『立花 響』

 ……一体いつから────―ビッキーがアニメ版(げんさく)準拠だと錯覚していた? 

 

 司令はアニメ仕様、ビッキーはXDUグレビッキー仕様、そんな世界があってもいい。だって平行世界の存在が公式で許されてるんだもの。

 

 しかし、原作で描写されたのはごく一部だけど響って相当苛烈にいじめられたのではないだろうか? 

 じゃないといじめが始まるまではアニメとほぼ同一だったっぽい響がグレビッキー時空でああはなるまい。と思い切っていじめの内容を描写してみた。

 妙に内容が生々しい? 経験談? ハハ何のことやら……

 

 実は元々書いてた『コレの前身となったお話』だとそのまま主人公だったりする。

 

 

 ・『コレの前身となったお話』

 ……タイトルは『アーケードゲーマーひびき』。別に逆立ちして筐体を操作したりパンモロしたりはしない。吉○先生の絵でもない。

 

 肝心の内容は、幼少期OTONに連れて行って貰ったゲーセンで格ゲー(主にGG)にのめり込んだ響が、どっかで方向性を間違えて格ゲーの技を現実で再現しようと躍起になってる所にOTONAが現れ……あとは、判るな? 

 諸々を省いてその後、コンサートで胸に破片が刺さった響がその場で「ドラゴンインストォールッ!!」と叫びながら覚醒、『Ride the Fire』を歌いながら奏を救う、とかいう話を書いていた。

 

 ……が、『Ride the Fire』の歌詞がどう足掻いても規約に引っかかる為あえなくボツに。

 

 その後再構成の過程で色んなものを足したり引いたりしているうちに現在の形に……もはや元の話の面影など欠片ほどしか無いとかツッコんではいけない。

 

 

 ・『響のガングニール』

 ……原作との大幅な相違点、基本的に見た目の変化は無いが、はたして……? 

 原作主人公、優遇しない理由が無い。ビッキー、プチ強化決定の瞬間である。

 細かな情報は次回にて。なお代償が無いとは言ってない。

 

 

 ・『響の使った技たち』

 ……劇中で描写があったのはギルティギアのソルの『ファフニール』と『砕けろ』、多分検索すればコンボの動画とかがあっさり見つかると思うので、響がどんな動きをしていたかの参考にどうぞ。




最後まで読んで頂きありがとうございます。


投票に参加して下さってありがとうございます、あんな未熟な絵に対して投票結果が優しさに満ち溢れておる……
とりあえず、あの挿絵は弄らない事にしますが、次に描く絵はカラーになる……かもしれません。



ではまた。
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