神器絶焼ギルティギア 作:ジャンクヤード犬
どうも、犬です。大幅に遅れて申し訳ありません……めちゃくちゃ難産でした……
ラヴェンさん、10評価ありがとうございます!
あ、前書きがちょっとクドいと言われたので次回以降はシンプルに行きたいと思います。
FREDERICK VERSUS HIBIKI
Get ready to rock?
「さぁ、かかってこいよ」
「……いきますっ!!」
模擬戦用の武器を肩に担いだフレデリックがニヤリと笑いながら手招きをする。
相対する響は、大よそ少女がしてはいけないような獰猛な表情を浮かべてフレデリックに応じた。
──Balwisyall Nescell gungnir tron……
即座に聖詠を歌いシンフォギアを纏う響を見て、フレデリックは肩から剣を下ろして自然体になる。
決して響を嘗めているだとか隙を晒している訳ではない、この体勢が一番あらゆる状況に応じられるというだけだ。
この勝負は響がフレデリックにクリーンヒットを入れられれば響の勝ち。響が戦意喪失、若しくは気を失う等戦闘続行不能になったら負け。
1発で良いというのだから圧倒的に響に有利そうな条件に見える。だが、フレデリックの戦闘能力はその程度の
かつてフレデリックの戦う姿をほんの少しとはいえ見た事がある響は、素人同然ながらもそこだけは十分に理解出来していた。
だからこそ、響は短期決戦を狙うしかない。
スタミナが切れればその時点で何も出来なくなってしまう、故に最初から全力で、コレで決めるつもりでその一撃を放った。
──模倣・ファフニール!!
フレデリックが使っていた技を真似たソレを本人に向かって放つ。シンフォギアによる身体強化で本家と同等の威力と速度を持った拳、だが。
「……ファフニールッ!!」
まるで最初からそれが来るのが判っていたかのようにオリジナルによって完全に相殺されてしまった。
思わず目を見開く響、だが怯む事無く即座に上段に蹴りを放つ。
しかしこれもフレデリックが放った蹴りにより受けられてしまう。
流石にこれ以上近距離で連続攻撃を続けるのは不利だと判断した響はすかさずバックスップで距離をとろうとする。いわゆるヒットアンドアウェーに切り替えるつもりだ。
だが、そんな彼女の浅知恵などお見通しとばかりに間合いを詰めるように走りこむフレデリックは、一足で飛び上がり狙いを定めて右腕を引き絞り力を溜めた。
「バンディット! ブリンガーッ! オラァッ!!」
飛び上がった体勢から炎を纏った拳を響に叩き込むフレデリック。
ギリギリで腕をクロスさせたガードが間に合った響だったが、重い衝撃が腕に伝わり思わずその身を硬直させてしまう。
さらにフレデリックは左手に握った模擬戦用の武器──彼曰くやたら頑丈な小道具を空中で弧を描くように振り下ろし、ガード姿勢のまま動けない響に追撃を加え、防御の上から少なくないダメージを与えた。
「……っつぅ!?」
2連続で叩き込まれた重い衝撃に思わず目を閉じてしまう響、その隙だらけの彼女に対して、着地したフレデリックがすかさず足払いを放った。
「バンディット! リヴォルヴァー!」
「かは……っ!?」
綺麗に足を払われ体勢を崩した響に追撃の飛び膝蹴りが差し込まれる。胸部を直撃した飛び膝蹴りは響の体を宙に浮かせ、響の肺から空気を押し出した。
そこに頭上から振り下ろされる踵落としがクリーンヒット、響は地面に叩きつけられてしまった。
「……っ!!」
いかにシンフォギアの防御性能が優秀といえど、強烈な威力を持った打撃の衝撃までは完全には殺しきれない。あまりにも重い攻撃に響は歌唱を完全に止めてしまった。
……それがシンフォギア装者にとって戦闘力をダウンさせてしまう行為だとわかってはいた。だが、流石に攻撃がクリーンヒットしている最中ばかりはどうしようも出来なかった。
身体能力向上のアシストの若干の鈍り、それに加えてダメージでふらついてしまいスムーズに体勢を立て直せなかった響。
当然フレデリックはそんな隙を見逃しはしない。彼は響の胸倉を掴み、片腕で軽々と持ち上げてしまった。
「ぐぅっ!? ……は、放……っ!?」
響はどうにかフレデリックの腕をつかんで抜け出そうともがく。だが、焦りで歌唱を止めてしまっている時点でそれはただの無駄な足掻きにしかならない。
「やる気ねぇのか?」
「……ガフッ!?」
そのまま勢い良く頭突きを叩き込まれた響は、ただの頭突きとは思えない程の衝撃をその身に受けて宙を舞い、そのまま地面に叩きつけられた。
「こんなもんか?」
仰向けで倒れたまま起き上がってこない響、もしこのまま起き上がれなければ戦闘不能とみなされ彼女の負けとなってしまう。
しかし、フレデリックは気付いていた。目の前で仰向けに倒れている相手の闘気が全く衰えていない、それどころかその気配に殺気が混じり始めている事に。
「──……うるさいな、まだやれる……!」
そうポツリと呟いた後に両足を揃えて上に向けてから勢い良く振り下ろし起き上がる響、その目はまだ死んではいなかった。
否、戦い始めた直後と比べて一段と鋭さを増していた。
「それがテメエの素か?」
「……別に猫を被ってたつもりは無い、です。一応面倒見てもらった相手だし、礼儀くらい私にだって、あります……ただ──」
「ただ、なんだ?」
ギシリと軋む様な音を立てて拳が握り込みつつフレデリックを睨みつける、その目にはもう遠慮や気遣いといった感情は欠片も無く、殺意や敵意といった感情がむき出しになっていた。
「──私の行く道を邪魔するヤツは、誰だろうと容赦しない……!」
「……上等だ! 加減の必要はねぇな?」
言うなり動き出す2人、構えてからバックステップで一旦距離を離そうとする響にフレデリックは先ほどと同じく走りこんで距離を詰める。
「ハッ! オラァッ! ガンフレイムッ!! 」
「ぐっ!?」
フレデリックは自分の剣の間合いに入った瞬間、即座に得物を振るい2連撃を叩き込み、追撃に地面を走る炎を響に向けて放った。
それで攻撃を止める事は無く、再び距離を詰めて攻撃を繰り返していく。
対する響はフレデリックの攻撃をどうにかガードしているし、身体を舐めていく炎の熱はシンフォギアがそれなりに遮ってくれてはいるが、それでも徐々にダメージが蓄積していった。
「さっきまでの威勢はどうした?」
「うるっ……さいっ……!」
──模倣・ファフニー……「何度やっても同じだ」……ッ!?
気付いた時にはフレデリックの足の裏が間近まで迫って来ている所だった,だが、技を繰り出して腕が伸びきる前だったので響はギリギリでガードに成功した。
先ほどフレデリックが繰り出した技の名はライオットスタンプ、地面を蹴り後方に跳躍し障害物、若しくは法力による障壁を蹴って加速する突進技だ。
ファフニールに合わせてカウンターを狙っていたが、結果はギリギリで気付いた響により不発に終わった。
直後、双方同時にバックステップで距離を取る。
先ほどの間合いでは下手に暴れられればフレデリックは1発貰いかねない距離、対する響も出来る限り重い一撃を貰いたくない、結果としてフレデリックが読み違えた形になった。
「……チッ」
「……ッッ」
決め手に欠ける状況に互いに舌打ち一つ。響は相手の強さに攻めあぐね、フレデリックは加減の必要は云々などと言いつつ、きっちり手加減している。
……どう見ても加減していなさそうなフレデリックの攻撃の数々だが、未だに響が致命傷を負っていないのがその証拠だ、彼が本気で繰り出せばとっくに骨が砕けている。
正直フレデリックはこれ以上威力のある攻撃を出来る限り使いたくなかった、シンフォギア相手でも殺してしまう可能性が僅かでもあるからだ。
正直、フレデリックは響に花を持たせるつもりなど欠片も無かった。
確かに響と約束はしたが、フレデリックの本音は取り付けた条件できっちり負けを認めさせて諦めさせる、彼が思い描く結末はそれだけだった。
どれだけ恨まれても構わない、戦う力を奪い取って日常に帰す、響には止められたが、迫害に対する手も打った上でだ。
余計な物を背負って戦う人間は一人でも少ない方が良い、それが彼の本音だった。
そんなフレデリックの思いなど知らず、再び拳を構える響。彼女の目は雄弁に諦めの悪さを物語っていた。
次はどういう手で来るのかと観察すれば、どうやら性懲りも無くまたフレデリックの物真似をしようとしているようだった。
それに気付いたフレデリックは、怒鳴りながら正面から叩き潰そうとした。
「いい加減、その馬鹿の一つ覚えの猿真似も見飽きたぞ!?」
「────……ッッ!!」
響の拳が炎を纏う、様子がおかしい事に気付いたフレデリックはそれでも何かされる前に潰せば良いと攻撃を仕掛けようとして……
──
次の瞬間には、2人の眼前が爆炎に覆いつくされていた。
その正体は響の放った法力による攻撃。大威力の火炎を伴ったストレートの後に、もう片方の腕から繰り出されたアッパーが爆炎を炸裂させたのだ。
……ギルティギアの史実、ゲームで言うとギルティギアゼクスというタイトルで
当然フレデリックは教えてなどいない、にも関わらず彼女は何の知識も無くそこに辿り着いた。
先ほど猿真似と揶揄していたが、それはオリジナルが存在する彼とて同じ事。恐るべき戦闘勘、センス、そして法力の出力だとフレデリックは戦慄した。しかし──
「……やるじゃねぇか、だが」
「…………これでも、ダメなの……!?」
……どんな大威力の攻撃も、当たらなければ意味は無い。
さしものフレデリックもアレには肝を冷やしたが、土壇場でライオットスタンプの初動を利用して回避に成功していた。
恐らくあの隠し玉が切り札だったはず、どうかこれで折れてくれと心の中で祈っていた。
だがそれでも響の目は死んでいない。
響からすれば不意を突く為に頭を捻った末に閃いたとっておき、それをあっけなく避けられた。
普通なら完全に折れてしまう、だが、彼女は諦めの悪さも一級品のようだ。
「手の内は終いか?」
「……まだ、諦めない……!!」
戦いは終わらない──
「──あー、居た居た! 探したよ、もう?」
「あら、お帰りなさい」
「うん、ただいま……あ、あの子起きたんだね」
「えぇ」
フレデリックと響が戦闘を繰り広げている場所を見下ろす位置に設置された窓のある小部屋、ドーム状の空間の外側にあるそこに居たのはセレナとつい先ほど帰ってきたばかりのクリスだった。
「で、なんでこんな事になってるの?」
「……フレッドは不器用ですから」
「なるほど、交渉決裂だった訳ね」
「ええ、大体そんな感じです」
たったそれだけの会話で大体を理解したクリスは、視線を窓の外へと移した。
「うわー、容赦ないなぁお兄……カウンターでライオット、またライオット。あ、ライオットフェイントしてついげきのグランドヴァイパーでさらにダメージは加速した」
「もう、変な解説つけなくていいですから」
「えー、じゃあー、ウ○ハラがぁ! 捕まえてぇ! ウメ「ク・リ・ス?」……アッハイ」
仏のような笑顔で青筋を浮かべるセレナの圧に、即座にクリスはふざけるのを止めた。
何某の顔も三度までなんて言葉があるが、本日一度目にして恐らく次は無さそうだった。
「……っていうかあの子病み上がりなんじゃないの? あんなボッコボコにしちゃって大丈夫?」
「まぁ、一応フレッドも手加減していますから」
「……まぁ、本気でやってたらとっくにあの子全身複雑骨折だよねぇ」
後で治療するのは私なんですけどね、というセレナの言葉を聞き流しつつ、シンフォギアを纏ってようが関係なく、という言葉をクリスは飲み込んだ。
割とイイのを貰っていそうなのに響が未だに無事なのは決してシンフォギアの防御性能が優秀だから、だけではない。フレデリックは間違いなく手を抜いていた。
理由は当然、事故防止。その為の模擬戦用の武器であり、実は陰でセレナにかけさせた法術によるデバフに加えて、法力の出力に自前のリミッターをかけている。
要するに、もしも万全の状態かつ本気であれば、とっくの昔に響は死んでいるのだ。
そもそもの話、全力を出したフレデリックとやり合える
どう見てもドクターストップ寸前、しかし肝心の本人の目が全く諦めていないのだからこちらとしてもどうしようも出来ない。
2人はそのまま無言で、眼下の戦いを見つめ続けるのだった──
観戦者が増えたフレデリックと響の戦いは、一向に響が諦めない為に尚も続いていた。
大技を避けられ、完全に息が上がっている響に対して続けられる苛烈な攻撃、それでも響は歯を食いしばって耐え続けていた。
だが、ダメージによってどんどん動きは鈍くなっていく。
フレデリックの攻撃が一瞬止んだ隙間に放たれる響のファフニール、その威力や速さは最初と比べれば見る影も無く、振り抜いた拳はバックステップ1つで簡単に避けられてしまう。
「バンディット──」
「……ッ!!」
そんな拳を突き出し腕を伸ばした隙だらけの響に対して、フレデリックは再び膝か拳を叩き込む為に飛び上がろうとしていた。
どうにか反撃をしたかった響はそれをチャンスだと思い、先ほどと全く同じ軌道で飛び掛ってくるフレデリックに対して、もう片方の腕で強引にアッパーでカウンターを叩き込もうとしていた、しかし……
「──かかったな? 吹き飛べッ!! 」
「ぐふっ!?」
逆に響が強烈なカウンターを貰ってしまい、訓練場の壁まで吹き飛ばされてしまった。
フレデリックは飛び上がった状態で体勢を強引に切り替え、炎を纏った強烈なブロ──―サイドワインダーを響に向けて放ったのだ。
訓練場の特殊仕様の防壁にぶち当たり、激しくバウンドして跳ね返ってくる響。当然フレデリックは晒された無防備な姿に容赦無く追撃を叩き入れた。
「ォオラァッ! 食らいなァッ!! 」
「がぅッ!?」
フレデリックは剣でアッパーをするように響を叩き上げ、空中へ打ち上げられた響に更なる追撃のサイドワインダーで殴り飛ばす。
また壁に叩き付けられ激しくバウンドする響だが、その目は未だに諦めの色が見えない。
「……チッ」
フレデリックは苛立っていた……響は確かにセンスがある。法力にしても徒手空拳の格闘術にしても、今まで一般人として過ごしてきたとは思えない程のセンス、鍛えればかなりのモノになるだろう。
だが彼女は身体に宿ったその力の半分、それは彼女にとって
響は知る由も無いが、はっきり言ってこれ以上無茶を続けさせればどうなるか判ったものではない状況だったりする。
故に、フレデリックはこれで終わらせるつもりで剣を振り上げた。
「ヴォルカニックッヴァイパーッ!! 落ちろッ!!」
「かはッ!?」
炎を纏った剣で空中に舞い上がりながら相手を斬る、というよりは殴り上げる技、ヴォルカニックヴァイパーが響に炸裂。
直撃を受けて空中で身体をくの字に折らせた響に、トドメとばかりに身体を捻り踵落としで地面に叩き落とした。
少々遅れて地面に着地したフレデリックは少し離れた位置で地面に倒れ伏した響を見つめていた。
さっきので終わらせたつもりだった、だが、未だに解除されない響のシンフォギアを見て、彼女の意識が飛んでいない事を悟った。
「まだやる気か?」
耳を澄ませると、倒れ伏した響から微かな歌声が聞こえてくる。アバラの1本や1本は持っていくつもりでいたフレデリックも、これには流石に戦慄を覚えた。
そんな響はその問いに対して「当然だ」と言わんばかりの、歯を食いしばり眉間に深い皺を寄せながら起き上がった。
しかし、そこが限界だったようだ、ついに響のシンフォギアが解除されてしまったのだ。
「…………まだ、だ! ……まだ私は、諦めてない……!」
シンフォギアのアシストが無くなった事によって立つのもやっとの状態になってしまった響はしかし、それでも歯を食いしばりながらフレデリックの方へと歩みを進めていく。
「もう止めとけ! これ以上やったら本当に死ぬぞ……!?」
「……そんなの、今更……! 死にたくは無い、けど……死ぬのなんてっ、怖くない……っ!」
「………………ッ!!」
フレデリックは絶句した。どうして彼女の周囲は、彼女がこんなになるまで放っておいたのか。いや、ある意味放っておかなかった結果がこれか。
十代の少女が思うにはあまりにも苛烈で重く痛々しい。こんなにも壊れて、壊されてしまった少女を思い歯噛みする。
フラフラと響がフレデリックに向かって歩いてくる。恐らくもう限界などとうに超えているハズの身体を引き摺って、それでも諦めずに向かってくる。
シンフォギアが解除されてしまった今なら、顎なり何なりに1発入れれば気絶させられるだろう、むしろ防御力皆無の今は下手な攻撃は命に関わる為に出来ない。
そうして待つ事しばし、ようやくフレデリックの傍に響が辿り着いた。
未だに降参もせず、気絶もしないで立っている響だったが、ついに限界を迎えたらしく、フラリと前のめりに倒れ込むようにたたらを踏んだ。
フレデリックはそれを避けたりはせずに受け止めてやろうと腕を伸ばした。
これだけ必死に食らいついて来た、それもフレデリック自身がボコボコにした相手だ。
そのまま気を失って地面に倒れ伏す前に受け止めてやるか、とあまりらしくない気遣いが出た。
……しかし、そんなフレデリックの気遣いはどうやら余計なお世話だったようだ。
「……つぅぅかぁぁまぁぁえぇぇたぁぁああああぁぁッ!!!」
それどころか響は、片腕でフレデリックのジャケットにガッチリと掴みかかり、バランスを崩していた筈の足を立て直し、地の底から響くような唸り声を上げた。
「なっ!? テメ……何をッ!?」
唐突な響の復活、というかやられたフリに動揺するフレデリック、対する響は口が裂けたような獰猛な笑みを浮かべていた。
どうやらフレデリックの油断を好機と判断し、利用する気満々だったらしい。
戦場では油断した奴から真っ先に死ぬとは誰の言葉だっただろうか?
急激に周囲の時間が伸びたような感覚に陥ったフレデリックはそんな考えが頭を過ぎる。
「──覚悟を決めろ……ッ!!」
目の前では掴みかかってきた響の目が見開かれ、もう片腕が引き絞られて今にも放たれようとしている。既に回避は不可能、物理的な防御体勢も超至近距離故に不可能。
かといって今の状況下、先ほどもフレデリックが気にしていた通り、下手な攻撃で抵抗すれば響の命を奪いかねない。
つまりは八方塞、せいぜいが法力によってダメージを緩和する位が関の山といった所か。
そうして経過した異様に長かった刹那の時間、フレデリックがソレを走馬灯の類だと認識した時には、響は拳を振り貫いていた。
「タイッ!!」
「ぐはッ!?」
ジャケットに掴みかかっていた腕と逆の腕から、火炎を伴ったストレートが放たれフレデリックの体を灼熱が貫く。
……最初に取り決めたルールでは1発攻撃が入れられれば響の勝ち、つまりもう響は勝ったわけだが、そんな事など完全に忘れているらしく、響の攻撃はそれで終わらなかった。
「ラァンッ!!」
「ぐぅおぁッ!?」
今度はストレートと同時にジャケットから手を離した拳が炎を纏い、ファフニールの要領でフレデリックを殴り、炎が爆ぜる。
およそ1発目と大差ない威力、常人が受ければこの2連撃で瀕死、最悪は即死だろうと実際に受けたフレデリックに思わせる、それほどの威力と殺意が篭った拳だった。
そして、それに続く最後の一撃が放たれた。
「レェイブッッ!!!」
「がぁぁあああァァぁぁッ!?」
トドメとして放たれたのは、炎に包まれたアッパー気味のスマッシュ、ソレは命中と同時にフレデリックの姿が完全に見えなくなるほどの爆炎を炸裂させた。
その威力はまさに一撃必殺と呼ぶに相応しい大威力、フレデリックを殺してしまうかもしれない等という考えなど微塵も無い、全力の一撃だった。
……そんなフレデリックはというと、一瞬意識を持って行かれつつも「コイツは後で説教だな」などと場違いな事を考えていた。
そう、彼は生きている。先ほどの攻撃は常人ならば良くて消し炭、最悪跡形も残らないような一撃だった。
だが、そこはこの世界における法力のエキスパート、セレナにかけさせたデバフを土壇場でディスペルしてどうにか凌ぎきっていた。
とはいえこれは彼だから出来た手段であり、恐らく他の人間が同じ事をしようとしても即死が瀕死の重体に変わるだけだったりするのだが……
『お兄! 生きてるーっ!?』
『フレッド!? 大丈夫ですか!?』
「……ゴハッ、ゴホッ……ハァ……あぁ、何とかな……危うくミディアムレアになるトコだったが」
『『それ笑えない(です)から!?』』
スピーカーから聞こえてくる2人の声に答えるフレデリックは、渋い顔をしながら起き上がった。
「……ったく、おいテメェ! 俺だから良いが、その技絶対に人に向けて使うんじゃね…………あン?」
自分を倒してみせた響の方を見て早速説教を始めようとしたフレデリックだったが、反応をしない響の態度に怪訝な表情をし、そして何かに気付いて目を見開いた。
「……クリス、担架の用意をしろ! セレナは医務室で準備だ!」
『え、どうしたの!?』
「どうしたもこうしたもあるか!」
少し慌てたように叫ぶフレデリックの視線の先、そこに居たのは最後の一撃を放ちきった姿勢のまま微動だにしない響の姿がある。
その様はまるで戦いに勝利して拳を掲げた
「……コイツ、立ったまま気を失っていやがる……!!」
……そう、その立ったままピクリとも動かない響は、完全に白目をむいて気を失っていたのだった。
恐らく、というか、あれだけボコボコにされた後だ。最後のアレは火事場の馬鹿力だったのだろう……当然といえば当然か。
勝負の行方は、なんとも締まりのない結末となってしまったのだった……
【人物・用語・裏話】
・『模擬戦用の武器』
……1/1モデルのジャンクヤードドッグMk-Ⅲ。無駄に稼動ギミックのみ再現している。材料はステンレスのフレームにアルミ板、それを板金パテで成形し、塗料はL○NE-Xで塗装、見た目の割に軽量でとんでもなく頑丈。ぶっちゃけただの拘り過ぎたコスプレ用小道具。
・『我流・タイランレイブ』
……文中でも述べたがGGX版のタイランレイブの無手による再現。
元ネタは両腕で剣を上に振り上げるが響はアッパーで炎を巻き上げる。
エフェクトの見た目とかはまんま元ネタと一緒で想像していただいて問題ない。
うちのビッキーの覚醒必殺技枠。コマンドは632146+HS
・『響の一撃必殺技』
……ギルオタ諸君に判りやすく簡潔に一行で済ませると、
「ぶっきらぼうに殴るタイランΩブリーチ」
これで大体理解出来た人は握手!
さらに内容を詳しく、そしてGGXrdっぽく説明するなら、始動がGGXX以降のEXソルの『ぶっきらぼうに殴る』の初段。
ヒットすればそこからGGXX/以降の聖騎士団ソルの『タイランレイブver.Ω Lv3』に移行。
そして『ver.Ω』の3段目がGGXrdのソルの『ブランディングブリーチ』のトドメ部分になったような技。説明長すぎか! コマンドは一撃必殺準備後に236236+HS
最後まで読んで頂きありがとうございます。
いやぁ激しい戦いでしたね(白目
書いてる自分も激しく戦いました、いやホントみんなうちのクソルのことビッキーって呼ぶのやめてよぉ!! ……あれ?
コホンッ……あ、あんま格ゲー格ゲーさせるのもどうかと思ったんですが、タイマンだとどうしてもその、ね?
自分も皆さんも場景をイメージしやすいかなぁと……でも正直まだ納得してません、なんかなぁ……! もっとなぁー……!!
あ、実は響の一撃必殺のトコ、フォントで遊んで『DESTROYED』って入れたかったんですけど、文章のテンポがほんのり悪くなったので自重しました。丁度良いフォントも無かったし……
あと、冒頭に挟もうと思ってたネタがあったんですが、同じくクドくなりすぎたのでカットしました。
そのネタは供養の為にこちらに張っておきます。
「後悔したくなけりゃ、
「…………よろしく、お願いします……!」
GGXrdのBGMとシステムボイスが脳内再生された人はどうぞ笑ってくださいw
最後に、今回の描写に関するアンケを取りたいと思います。
今回のは全体の修正はしませんし出来ませんが、今後書く続きにはその辺の結果を踏まえて書いていこうと思いますゆえ……よろしくお願いします。
ではまた。
格ゲーに寄せた戦闘描写、どう思う?
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上等だテメェ!(現状維持)
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こんなもんか?(もっとやれ)
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もうややこしいのはなしだ!(シンプルに)