上杉幸太郎と六等分の思い出   作:Aikk

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第十三話 不良少年と花火の夜

この時期行われる花火大会は特に人の行き交いが増え

通常より人手が足りなくなる事が多々ある

理由としては 大量の人を捌きれる人間が純粋に足りない 

または働く側が休みを取り花火を見に行ってしまうと言う何とも笑えない話だ

変な奴らと行動して問題を起こすとかよりは、全然ましではあるが、働き先には前日に話していた方が心象も変わると言うもんだ

 

「らっしゃい 一個400円で味は保障しますよー 買ってて!」

 

頭にタオルを巻き 首元まで隠れた黒のTシャツを着

袖をまくり垂れそうな汗を拭い

鉄板の上の麺との激闘が行われている

 

熱いってレベルじゃない

ごった返す人の数も合わせ横の屋台街まで熱が来るわけだ

横に置いてある 簡易扇風機の風はもはや熱風だ

涼しく何ともない

 

 

俺が呼び出されたのもまた人手が足りないと言う純粋な理由だ

今朝方電話で花火に合わせ屋台を出したが、今回来るはずだった奴が『あぁ休みます』と

もっと言い訳をもっと頑張れよ

そんなんで良く雇われたな 店長も『まさかあんな人間だったとは』と肩を竦めていた

ただいない人間の事を今更とやかく言っても何も始まらん

今は売れるだけ売って、客に満足してもらう事だ

 

売れ行き自体も好調で店長も臨時代と合わせて多く出してくれると言ってくれた

少しでも良い 借金を返せるんだ頑張らねぇとな………。

 

何パックか作り置きも合ったのだか、先ほどお客様が気前よくお買い上げだ、そんなわけで今の在庫は0、休憩を終え再び鉄板に向かう

きちんと水分補給も忘れない脱水症状で運ばれたとか笑えないしな

 

(動きますか、ねぇ)

 

 

こっちに来る人影が見えてどうやら客のようだ

接客も同時にやらないと店長は今席を外していないからな

 

「すみません あの焼きそば3パック 量多めとか出来ますか」

「はい 3パックですね 美人さん何で麺も具も増量しますよ!」

「やりました 美味しそうですね 1個はお土産にしないと」

「あっはは 五月ちゃんよだれ はしたないよ お兄さんも美人さんなんてうまい事言うねぇ」

「…………ん」

 

あれ…………?

ふとヘラを持つ手が止まる

今聞き覚えのある名前を俺の耳が捉えた

そしてその話し方を知っている………。

煙もあり俺は客の顔が一瞬しか見えなったが、浴衣で着飾った女性二人組だった

辺りは賑わっており声も張らないと聞き取りにくい事もあるし

接客の際にも気付かなかったのだろう

 

「あれ お兄さん手が止まってるよ」

「さーせん 今すぐ作ります」

 

客の正体は 五月と一花だ

ちらっと顔見れば普段違った雰囲気を出している

正直言えば、二人に見惚れた………。

向こうは気づいてないのか、『手が止まっているよ』と言い慌てて動かす

今は客と店員だ 何時もと違うきちんとしなければならない。

隠し立てする必要はないが、やっぱり働いてる姿を知人に見られるのは気恥ずかしいもんがある

 

「あの すみません 」

「あっ何っすか…………」

「どうしたの五月ちゃん?」

「いえ このお兄さんの目つき何処かで見たような気がして」

「き 気のせいですよ」

 

裏声で何とか誤魔化す

特徴的なあの髪はタオルで隠され見えず

周りの声もあり俺だと判別出来ないと思ったが上杉家の血だ

このするどい目 

何か感づいたのか浴衣姿の五月がじーっとこちらを見てくる

だが確証がないのか、うーんとうなっている

(どうかこのまま気づかずに帰ってくれ)

 

「じろじろ見てすみません 知り合いの男性に似ていたもので」

「はぁ…」

「うん 確かにコウタロウくんに似てるかも 目元とかさ」

「ハッハハハ 美人なお嬢さん方の知り合いに似てると言われるとか光栄ですね……」

「美人なんて そんなありがとうございます」

「五月ぃ 顔が真っ赤だよ でも五月ちゃんが彼以外に珍しいね?」

「屋台の熱でそう見えるだけです でも不思議です お兄さんに言われても嫌な感じがしません」

「…………」

「あぁー何かすみません!!」

「大丈夫だ…。」

「ねぇ お兄さん こんな熱い中さそんな 首元まで隠れる服で良いの熱くない?」

「……自分寒がりなんですよ(そんな訳あるか熱いよ」

「そうなんですか でも凄く汗かいてますよ?」

「気のせいっすよ…………」

 

こんなクソ熱い中 俺くらいだろう首元まで隠すのは

因みにこのTシャツはらいは特注の品だ以前頼んで作ってもらった

訳あって普段から喉元まで隠して過ごしている…。

何があると言う訳でもないがこいつらにだけは、見せたくない 

だから今回見たいな不測の事態の時には助かる ありがなとらいは………。

 

(よし このままいけばやり過ごせる)

 

2パック目が終わり最後の3玉目を作り始めた時

俺の中では勝利へのゴールテープが見え始めた

二人も余計な詮索は避けたのか顔を引っ込めてくれたし

これならバレる事もない そう俺は安心していた

 

「 幸太郎くん 売上はどうかな! おお流石は幸太郎くんだ」

「店長ぉおおおおおおおお!」

 

「あぁーー やっぱり コウタロウ君だ!」

「ここ 幸太郎君何でここに! それより私幸太郎君に美人って」

 

他の露店との話を終えた店長の帰還で俺の無駄な戦いも終わりを告げた

呼ばれた名前を彼女の耳は聞き逃す筈もなく

一花は面白がり俺の姿をスマホで撮影し 五月は俺のさっきの発言を思い出したのか

自分の髪と同じくらい真っ赤に染めている

そうだよな 知り合いにそう言われれば、恥ずかしいよな

 

 

ーーーーーー

 

 

 

ーーーー 

 

 

 

ーー

 

 

「3パック合計で900円だ」

「えっ でも1個400円って」

 

袋に出来た3パックを詰め込み

二人に手渡した 300円値引した

普段は見れない二人の浴衣が拝めたのだお釣りが来てもいい方だ

 

「社割だ それに良いもん見れたしな 似合ってるぞ二人とも」

「幸太郎君に 浴衣を褒められてしまいました ありがとうございます」

「ありがとね コウタロウ君 安くして貰って でも嬉しいなお世辞でもさ」

「お世辞で言うかよ 似合ってるって言ってんだろ たく」

「…………あっはは お姉さん照れるな」

「うっせー はぁ買ったなら他の奴の所に行けよ」

「幸太郎君は来ないんですか?」

「五月 俺はバイト中だぞ」

 

営業中と書かれた後ろの紙を指さし同行出来ないと教える

稼ぎ時に元の人が休んでたださえ人が足りないんだ

俺が離れる訳には行かないねぇ

うるうると見つめる五月には悪いと思ってる

 

「フウタロウ君や妹ちゃんも来てるよ?」

「ほーあいつが気を利かせたか珍しいな」

「まぁ 一度帰宅させられて勉強やらされたけどね」

「納得だな じゃお前ら人込みで迷子になるなよ 五月 一花これつけとけ」

「鈴ですか?」

 

先程知り合いのバイト先の人から手伝いのお礼として貰ってた

紐が掛かる手鈴を二人に手渡した

俺が持っていても使い道はない

女性である二人の方がまだ持っていても違和感はないだろう

 

「あぁ 万が一逸れても音で分かると思ってな手首にでもつけとけ」

「この中だと 音には期待出来そうにないけどね」

「いらないなら返せ」

「いります!返しません」

「五月ちゃんもこう言ってるし 素直に貰うかな じゃコウタロウ君もバイト頑張ってね」

「幸太郎君 無理はしないでください 後…首元を詮索するような真似をしてすみません…。納得できました では」

(…………まて今の五月の言葉 あいつまさか知ってる?もしや見られたか?)

 

応援を受け 俺はまた五月に対して少しの疑問を抱いたが

今は少しでも売り上げに貢献した店長を助けなければ

ヘラを取り再開しようとしたが、店長に声をかけられた

そう言えばこの人も戻ってきてたんだ

 

「なんっすか店長?」

「幸太郎くん お店は十分売上を出せた 君はさっきの友人の所に行きなさい」

「でも 店長一人には」

「君の頑張りでこれなら黒字だよ これ君の今日の分ね

    それに大切な高校生活だ青春しなさい」

「店長…………ありがとうございます! また何かあれば声かけてください」

 

 

給料の入った封筒を手渡され

店長の粋な計らいもあり俺の今日のバイトは終了となり彼等に合流するよう言われた

気を利かせて貰ったのだ素直にご厚意に甘えよう…。

 

彼女達が行ってそこまで時間は経ってはいないが

この人混みだ無事見つける事が出来るかどうかと言う不安があった

 

(あっ 案外早く見つけたわ…。)

 

人混み中でひときわ目立つ浴衣を着る五つ子の姉妹の姿を俺は見つける事が出来た

 

 

ーーーーーー

 

 

 

ーーーー 

 

 

 

ーー

 

 

 

「はぁ アイツがいたの 良かった行かなくて 汗臭そうだし」

「二乃それの言い方ひどいですよ! 幸太郎君は頑張って働いているんですから」

「頑張ってるかー あんな目つきの奴が働く所かアタシはごめんだけどね」

「ほれ これがバイト中のコウタロウ君の姿 」

「一花それを私のスマホに送ってください」

「一花 私にも頂戴」

「うわー お兄さんすごい熱そうですね!」

「幸太郎のバイトしてる姿とかすごくレアだな」

「そうなんですか?」

「あぁ あいつ普段から色々バイトに出てるけど俺は一度も出くわした事はない」

「っか アンタは基本勉強ばかりで家から出ないでしょうが!」

「俺だって少しはしてるさ 幸太郎が異常なだけだ」

「はいはい 分かったから急ぐわよ アンタ達!  アイツの話なんてしてる暇ないのよ!」

 

 

「お前ら… 祭りなんだ 人の話より 今を楽しめ」

 

『『!! 本物だー』』

 

「ったく 合流してみればなんだ 面白くもねぇ話しやがって」

 

身を乗り出し集団の中に顔を出す

ばっと離れる彼等をじーっと見る 

二乃はこっちを睨み 一花は手を振っており

おばけでも見たかのようにガタガタと震え指さす風太郎

 

「ビビらせるな! その顔を急に出すなよ」

「おい ブーメラン刺さってんぞ?」

「お兄ちゃん お疲れ様! その服着てくれたんだ」

「おう らいはありがとよ 助かったわ!」

 

妹の特注Tシャツはいい具合に隠してくれた

なお五月は何故か知っていたようだが…

(そのうち 五月には色々と聞かねぇとな)

 

「コータロー お疲れ様飲む?」

「よう 三玖 浴衣似合ってて可愛いぞ」

「……ありがとう」

 

持っていた抹茶ソーダを受け取り三玖の浴衣姿の感想を述べた

青を基調としたデザインだクールな三玖にとてもマッチしている

 

一花達の時も思ったが浴衣を着ている姿は普段のこいつらを更に華やかにしている

『似合ってる』『可愛い』とかの言葉では足りないかも知れない

 

「はい セクハラ発言」

「二乃 俺は褒めただけだが!」

「アンタが言うとキモいのよ」

「ふーん 二乃 お前も似合ってるぞ」

「思ってもないくせしてさ」

「お兄さん 私はどうですか!」

「うさぎが浴衣を着てるかと思った」

「うさぎ! 本体はリボンなんですか」

「冗談だ 四葉も可愛いぞ」

「やったー お兄さんに可愛いって言われちゃいましたー!」

 

宣戦布告して来た二乃だ

発言すればその都度噛みついてくる

ただテンション自体は高く感じる気がするな

四葉も浴衣の感想を言われて嬉しいのかはしゃいでいる

 

「って 幸太郎君 バイトはどうしたんですか?」

「うん? 店長が今日は上がっていいとさ」

「ははぁーん さてはアンタ見たいな味覚音痴が作ったやつが不味いからクビになったんでしょ」

「二乃 こいつは確かに味音痴だが、普通に料理は出来るぞ」

「人並だけどな 料理は愛情だって言っただろ?」

「あーハイハイ……って こんな奴の相手してる暇じゃない! 花火よ花火」

「二乃の奴どうしたんだ? 何時もなら食って掛かりそうなもんだが…」

 

『さっさと歩けー』と全員に聞こえるように声を上げる二乃

中々進まない人混みにイライラしながらも突き進んでいる

一花もそうだが五つ子の様子が普段と違う気がする

お祭り効果とでも言う物なのか?

 

 

「花火はお母さんとの思い出なんだ」

(零奈さんとの…そりゃ二乃も行動する筈だ)

「お母さんが花火が好きで毎年揃って見に来てた お母さんがいなくなってからも毎年 私たちにとって花火ってそういうもの」

「そうだな 母親との思い出なら大切だな」

「うん」

「さて二乃が見えなくなるし 行くか」

 

【母親との思い出】それは零奈さんに育てられた彼女達にとって

大切な思い出だ そしてそれは姉妹を一番に思う二乃も同じだろう

だからあいつはみんなに急ぐよう声をかけているんだ。

 

 

 

二乃が見えなくなっては大変だと俺達も歩く速度を上げたが

花火のアナウンスが流されると周りも自然に歩くスピードが上がり

何処に誰がいるのか分からない状態になり始め

自分はここだとそれぞれ声を上げ 場所を示すがこの人混みだ

徐々に呑まれ始め 気づけば俺の周りには誰もいなかった…。

と言うより周りの人間が明らかに俺を避けている

睨んでねぇよ 探してんだよ

 

「っ 全員とはぐれちまったか!」

 

人が避けていくのを利用してみんなを探すため前進した

止まっていても誰も見つける事は出来ねぇ

二乃が歩いて行った先は確かにこっちの方向だ

逸れないようにする中であいつの位置だけは、確認していたためだ

 

 

 

 

 

 

「おーい 幸太郎! 見つけた」

「風太郎 と 二乃か! 良く俺が分かったな」

「いやいや アンタ見たいな 目つきの人間遠くでも分かるから怖すぎよ」

「何も言わん んで他の連中はどうした」

「ダメだ完全に逸れた」

「あぁもーせっかくの花火なのに! 取り合えず予約してる所あるからアンタ達だけでも良いからついて来なさい」

「了解だ 二乃」

「なんで こう上手くいかないのよ!」

 

タオルを巻き黒いTシャツ姿が周囲を見ていれば嫌でも目立つようで

二乃と風太郎がこちらを発見し無事に二人と合流し

一旦二乃が話す店の方に向かう もしかしたら全員そこに来てるかもしれないと淡い希望を抱く

 

「あっ…」

「どうした二乃」

「お店の場所 アタシしか知らない…やば」

「はぁ?」

 

花火大会終了まで残り一時間 中野姉妹 現在二乃のみ

行方不明 一花 三玖 四葉 五月 らいは

ひでぇ…。

どうすんだこれ?

 

 

 

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