「おい 一花何だよ! 花火の時間終わっちまうぞ」
「いいから いいから」
現れたと思えば、俺の手を引き何処かへと歩きだす
俺の手を掴む彼女の手にはさっき渡した鈴が付けられていた
こいつも大概律儀な奴だ。
歩く中『花火見えた?』と何とも他人事のような発言にイラッとしたが
今のこいつの表情を見てると怒る気にもなれない
少し先に路地が見え
二人でそこに入って行く
あの場に残した五月の事が心配だが、地図を渡したし
壁沿いを行けば合流できるとも言ったしあいつを信じよう
「…………で 何だ一花 こんな所に連れてきてよ」
「コウタロウ君 さっきの事さみんなには秘密にしてくれる
それと私はみんなと一緒に花火を見れない………。」
ドーンと大きな音がして
夜空に綺麗な花火が広がっていた……。
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「理由を聞かせろ………」
「急なお仕事が入っちゃてさ だから花火には行けない」
「お前がいねぇとダメだろ」
「コータローくんだってバイトって言って最初は来なかったじゃん?」
そこを突かれると言い返せないな
バツの悪そうな顔になる俺に彼女は続けて話す
「それに同じ顔だし 一人くらいいなくても気づかないよ」
「無理言うな」
「でも急いでるんだ 人を待たせてるし」
「一花 説明だけでもしろよじゃないと二乃は納得しねぇぞ」
二乃と約束をした花火を見せてやると
三玖は言った 思い出なのだと
だからこいつらに花火を見せてやるんだ。
もしそれでも行けないと一花が言うのなら説明でもしてくれないと
姉妹を思う二乃の事だ、また喧嘩になってしまう
そんなところは、見たくないのだ
行こうとする彼女の手を掴み離さない
「なんで お節介焼いてくれるの?」
「そんなの!」
「フータロー君と同じく家庭教師だから コータロー君は補佐だっけ でも何でなの?」
「今はどうでも良いだろう!」
どうでも良いと言った俺の態度に彼女は顔色変える
今はあんまり動かないで欲しい
さっき倒れそうになったんだ体力もあんまし残ってない
手は掴んでいるが実際は力はほぼ入ってない
威勢に任せてるだけだ…………。
「ごめん コータロー君…私急いでるから」
「あっ 待て一花!」
するっと手から抜け出し
彼女は自由になるとその場から足早にさって行こうとする
ここで一花を見逃したら二乃に何て言えばいいんだ
俺は何を言われてもいいが、姉妹との関係を険悪な物にはしたくない
「って一花 おっどうした!」
「ごめん 隠れて」
行ったかと思えば一花は急にこちらの方に戻ってきた
ちらっと向こう側が見え先ほどのおっさんが、きょろきょろと辺りを探るように見ている
俺達のいる路地のまん前まで歩いて来ていた
「どうしよう 仕事抜け出してきたから怒られちゃう」
「あぁ もう………少しだけ我慢しろよ」
「コータロー君!?」
壁を背にし一花の顔が隠れるように抱き合う形でその場で動きを止める
咄嗟の行動だ
一花は抜け出したと言った それなのに誰かと会っていた
相手は男と分かれば向こうからすれば、良い気分とはいかないだろう
少しでもやり過ごす為にはおっさんが通り過ぎるのを待つしかない…………。
「よっこいしょ」
(座んのかよ!)
通り過ぎるどころか箱の上に座りやがった
くっそこんな所で時間くってる場合じゃねぇよ
(コータロー君 汗臭いね)
(うるせぇ…………バイトだったんだし 走ったからなでも 少しだけ辛抱してくれ)
今日は朝方から急なバイトだ
屋台の準備やら他の手伝いやらで動きっぱなし
加えてあの暑さの中で鉄板と数時間も格闘していた
上着にもタオルにも汗がびっしょりだ
そんな体で一花に抱き着くようにしてんだ
二乃にでも知られたら、何て言われんだろうな『このセクハラやろう 目つき以外手癖も悪いのね』
カンカンに怒る彼女の姿が頭で脳内再生される…………。
(ねぇ コータロー君 傍から見ればさ 私達って恋人同士に見えるのかな?)
(恋人か……ぱっと見ればそうだろうな この現場に居合わせたら俺なら何も言わず帰る)
(コータロー君の心臓の音余り激しくないね こういう事慣れてるの?結構大胆だよね)
(慣れてる訳ねぇだろ そんな事する奴 今の俺にはいない)
(今 ね…………でもさコータロー君とこんな事してるの何か、悪い事してるみたい友達なのにね?)
慣れてる訳じゃない ただ単に俺が、そう言う人間だからだ
丁度顔が、俺の胸辺りにある為一花は鼓動を聞いている
その態勢のまま会話を続けた。
少しのやり取りで、俺の発言の一部を一花は強調するように言う
耳が痛い 別にそこまで深い意味はないんだがな。
ただ少々気になる事はあった 俺に抱き着く形でいる一花は何処か震えていたように思えた。
(友達か…………)
(ハグだけで友達超えちゃうの流石に早いかな)
(そうじゃねぇんだ…………俺が言いたいのは別で)
(えっ?)
この状況は傍から見れば恋人同士で抱き着いてるだけに見える
だが 本人である俺達の関係性と言えば
俺は風太郎と共に家庭教師する
一花は、中野姉妹と共に教えられる側だ
彼女の言う様にハグだけで恋人と言うには今の俺達には関係と言えるものが足りない
もし過去の出来事を合わせても 一花は覚えていないそれを+材料にも出来るわけでもないのだ
だから 彼女の言う通り 友人と言う その呼称が正しいのだろう
だが、あのおっさんの言う 『どういう関係』その言葉が頭に残るし
五月にも『あなたはすでに分かっている』と言っていた
(友達か……)
今ならハッキリと言える 俺は五つ子の友人だ
そして俺にとってこいつら姉妹は手のかかる妹のようなもんだ
もしその関係性が何かと問われたら…………。
「えぇ 撮影の際は大丈夫ですので!」
自分と彼女達とはどんな関係なのか…。
改め見詰めなおした時ふと座り込む男性が声を上げた
目を凝らせば何処かと電話のやり取りをしている
(撮影? 一花お前の仕事って)
(うん あの人カメラマンなの私はそこで働かせてもらってる)
(カメラアシスタントか…………まさか)
(良い画が撮れるように試行錯誤する 今はそれが何より楽しいんだ)
(…………)
顔は見えないが、静かに語る一花は、きっと俺が思っているより充実した表情でいるだろう
(一花……進学すら危ういって言われてるそれは自覚してるよな? だけどそっちを優先したいお前はそう思ってるんだよな?)
(そうだよ…………ねぇコータロー君はさ何のために勉強してるの? 教えてくれない )
(俺が何の為に勉強してたか…………)
『零奈さんは絶対に…………』ある日の言葉だ
一花に言われ記憶の隅から姿を出した
出来もしねぇ事を夢見た馬鹿の思い出だ。
俺が勉強をしてた理由何故しようと思ったのか
何故 それを俺は諦めたのか…………。
(なぁ 一花俺は! ん)
「一花ちゃん見つけた 言い訳は後で聞く 早く走って!」
またこれだ言いかけた時に突然おっさんが一花の名を呼び
誰かの手を取る
第一一花俺の前にいるし おっさんはこちらに気づいてもいないのだ
なのに一花を見つけたと言い その人物を連れて走って行こうとする
「あの 私は!」
((三玖!))
おっさんに連れられていくその人物を俺や一花は良く知っている
それは先ほど俺と分かれ 二乃達の元に向かった筈の 三玖であった………。