上杉幸太郎と六等分の思い出   作:Aikk

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第十七話 不良少年と長女の話

『第十四回 秋の花火大会は終了しました』

 

 

「コータロー君 お待たせって 凄い顔……?起きてる」

「はっ! 寝てねぇよ 誰が寝るか」

「そういう事にしておいてあげる」

「はぁ………でオーディションはどうだった?」

「うーん どうだろうね」

 

ここに戻り待機しじっと座って待つが、オーディションから戻ってきた一花の声で意識を戻す

自分では現実にいたつもりだが、意識は完全に夢の中にいたようだ

少しばかり懐かしい景色が見られた気がする。

手ごたえの方はあったかと尋ねれば、自信なさげに一花は話す

ただおっさんはそうでもないと『間違いなく合格』だと彼は太鼓判を押してくれた

本職の人がそうやって彼女に言うのだお世辞でもないだろう

待ってる俺には見れなったけどきっと良い演技をしてたとそれを自分なりに頭に浮かべる

 

彼は一花の表情など以前とは違っていたなど更に評価してくれている

それは俺ではなく彼女自身の頑張りだ

『君のおかげ』とは過大評価だろうな

これだけ聞ければ満足だ 俺は一花の手を引きその場を去る

今から姉妹達が待つ場所へ行かねぇと行けない

 

 

「んじゃ 行くぞ一花 では失礼します」

「って 何処に行くのコータロー君!」

「みんながこっちで待ってるからな」

「待ってるって まだみんなは会場にいるの?」

「いや この近くにさ公園あんだよ 二乃達も着いてる筈だろう」

「みんな怒ってるよね 花火を見れなかったこと謝らなくちゃ」

「まぁ そん時は俺もつき合うよ 二乃にあんだけ言って連れだしてこなかったしな」

 

 

 

この先で二乃達が待ってくれている筈だ

一花がオーディションをして少し 四葉に電話をして準備を頼んでいた

今回の騒動の発端と言うべき一花は母との思い出をみんなと見れずに終わった事に

表情は曇っている  どう彼女達に言えばいいのかと弱音とは珍しい物を見た

だけど一花の心配の一部は杞憂に終わるだろう

 

「花火は終わってねぇぞ 打ち上げ花火は無理だけど姉妹で囲んでやる事はできる」

「あっ 一花にお兄さんだ!」

「って 四葉お前もう始めてのんかよ!」

 

公園に入れば中野姉妹と風太郎達が買ってきていた

花火に火をつけ早速始めていた

少しだけ待ってろと電話では伝えたつもりだが、『我慢できず』と笑顔で花火をかかげている

楽しそうで良かった…………はぁ

一花は言葉が出ないのかここに着いてから黙ったままだ

 

「アンタ 五月を放ってどっか行っちゃたらしいじゃない 私と合流した時この子地図片手に半べそだったわよ!」

「に 二乃その事は内緒って 幸太郎君違うんです!地図の見方が分からなかったとかではなく」

「悪い やっぱ説明おおざっぱ過ぎたな ごめんな五月 今度何か詫びするから」

「…………はい よろしくお願いします。」

「あと アンタに言う事あるわ お つ か れ 」

「どういたしまして 風太郎にも言っておけあいつがいなかったら厳しかったしな…。」

「もう言ったわよ じゃそう言う事で………ふん」

 

こちらも見つけるな否や

顔をも近づけ言いたい事を言えば、噛みつくような言い回しで俺に労いの言葉言い

さっさと行ってしまう

二乃も素直じゃないだけでちゃんとお礼は言える子だ

本人の前で言ったらまーた罵倒されるけど………。

五月にも地図を回して目的を言ったのはいいけどそのまま一花と行動を共にし

すっかり状況を聞くのを忘れていた

半べそまでさせたんだそれなりのお礼はしてやらんとな

俺の財布よもってくれ 中身を見るが今は戦力としてはあまり役に立ちそうには無さそうだ

 

 

五月の後方既に線香花火をしている三玖を見つけた

髪型は何時もと同じく戻っていた

普段はあの髪型は中々見れないから少々名残しいとは思う

 

「三玖も今日はありがとな 助かった」

「うんうん 私は何もしてないよ 余計手間をかけたから」

「そんな事ねぇよ………… それで これ」

 

 

今回特に 三玖には世話になったお礼を言えば三玖は首を横に振る

そうでもないこいつは十分助けになった

あの人混みの中俺を見つけ 運んでくれたんだ

幾らお礼をしても足りないくらい

何が好きとか分からないけど そのお礼も兼ねた品が入った袋を手渡す

今朝方 準備をしている時に目に着いたそれを一花の帰りを待つ間に買っておいた

 『?』と首を傾げる

彼女はその場で中を確認し始める 大したものじゃない それは何処にでもある

普通の髪留めだ………。

 

 

「お前に似合うと思ってさ どうだ? 」

「……………………コータロー」

「何だ」

「私この髪留め……大切にする」

「そうしてくれればありがたいな 着けてはくれないのか?」

「…………似合う?」

「あぁ すげぇ似合ってる 可愛いじゃん」

「…………!!」

 

着けてみてはと催促してみれば

受け取った。それを左の分け目の方に着けてくれた

俺の目には狂いは無かった 劇的な変化はないだが

 青の髪留めは三玖にとても似合っていた

可愛いと言うのはお世辞でも何でもない 素直にそう思ったからだ

 

 

「三玖来てください」

「うん…………」

 

五月は一花を見つけると早速準備を始め三玖もそのまま行ってしまった

何を言うのにもタイミングがある今は彼女をそっとして置こう

 

 

未だ困惑する一花をおいて状況は進んで行った

俺達の前に一花が立つようにし

それぞれ花火を手渡された

 

「みんな………ごめん 私の勝手でこんなこになっちゃって………本当にごめんね」

「そんなに謝らなくても」

「一花も事情があったんだ 反省もしてんだ それにちゃんと一花を連れて来れなかった俺にも責任がある ごめんな」

 

 

 

 

「全くよ」

 

 

一花は俺達に頭を下げ自分の行動で全員に迷惑をかけたと謝罪をする

俺自身も二乃と約束をしそれに一花の事情を知ったのに直ぐに知らせなかった事を

連れて来れなった事を詫びた

 

 

 

「なんで連絡くれなかったの そしてあんたは論外連絡できるもの持ってないし

一花 今回の原因の一端はあんたにあるわ あと目的地を言い忘れた私も悪い」

 

「私は自分の方向音痴に嫌気がさしました せっかく彼から地図も頂いたのに」

「私も今回は失敗ばかり少しは考えて動くべきだった」

「よくわかりませんが 私も悪かったという事で!屋台ばかり見てしまったので」

 

 

それぞれがそれぞれ今回起きた騒動自分が居たらなかった点

反省すべき場所を言い合っている

一花も二乃も三玖も四葉も五月も一人が全ての責任だとは言わなかった

誰しもが今回の事で自分のダメだったところが見えたと話す

 

 

「お母さんがよく言ってました 誰かの失敗も五人で乗り越えること 誰かの幸せは五人で分かち合うと 喜びも 悲しみも 怒りも 慈しみも

       私達全員で 五等分ですから」

 

 

五月の言葉と共に一花を加えた この場にいる全員での花火が開始された

みんな笑い 楽しく 花火を満喫している

一方で俺はと言えば風太郎と二人近くの気に寄りかかってその光景を目にしていた

ちっこい線香花火を男二人で眺めている らいはの方は疲れたのかベンチに寝かせていると四葉が先ほど教えてくれた よっぽど今日が楽しかったんだろう

うちだけだと限界がある だから妹が楽しめ勇也さんが楽できるように俺も頑張って家庭教師のサポートを続けないとな

 

 

 

「風太郎 電話かしてくれてありがとな 助かった」

「あぁ お前もお疲れ……何で俺はここまでしてるんだろ」

「家庭教師だからだろ?」

「帰りたい…………と思ったけどもう少しだけこの風景眺めてる」

「だな 今は帰るなんて無粋な事言えねぇな」

「でも幸太郎と花火か…………新鮮だな」

「野郎二人だがな…………。」

 

 

借りた携帯を返し

家庭教師とは何かを語る

風太郎も何処か変わってきたと俺は思い始めて来た

以前のこいつならここまで付き合う事もなく帰宅しててもおかしくない

『勉強だ』と口にし家でひたすらにノートに意識を集中する弟は容易に想像出来る

けど風太郎は投げ出さず最後まで中野姉妹の花火の手伝いをしてくれた

一花の作り笑顔にもこいつなりに知っていた

それに偶にはこうやって風太郎と話すのも悪くねぇと思う……。

 

 

手元にある花火の火が消えた頃に

俺は風太郎に一声かけ少しばかり休憩を取った

公園のベンチを探しそこに腰を下ろす

隣にはらいはも寝息を立て眠っているしここなら安全だろう

 

 

「…………今回は少しばかり疲れたかもな 色々とあり過ぎて なんかぁ」

 

少し先

座る俺の目線に楽しく遊ぶ姉妹の風景

家ではみんな自分が好きなように動き それぞれが自分の時間を過ごしたいるけど

こうやってみんなが集めれば 昔のような景色が見える

あの頃とは少し変わったけど それでも変わらない何かがそこにはあった 

(零奈さん姉妹は元気ですよ きっとこれからも面倒は起きますけど俺はアイツらを見守ります

 助けます それが俺に出来る事ですから…………)

 

「…………すぅ」

 

 

 

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ーー

 

 

 

「残りは五本」

「もうこれだけ?」

「やり足りないねー」

 

「最後はこれでしょー」

「これに決めた」

「これが一番好き」

「私はこれがいいです」

「これが楽しかったなー」

 

『『せーーの』

 

「あは珍しいね 私はこれでいいよ それは譲れないんでしょ?」

 

彼等が見守る中姉妹達は楽しい時間を過ごす

しかし何時までも続く事はなく

残された花火は五本 どれも見た目が違う別々のものだ

おのおのが思いを口にし 同時に好きな物を手に取った

同時のタイミングだ 一花と三玖の手が一本の花火に触れた

三女の表情を見て何かを察した一花はそれを妹に譲り

受け取った三玖はある少年の言葉を思い出し

嬉しそうな表情を滲ませる………。

 

「一花? その鈴は」

「あぁ これ私の御守りかな ご利益はうーん これから出てくれると思う 三玖もいつの間にか髪留め お洒落だね」

「これは私の大切な宝物だから、大事なんだ」

「ふふ………」

「どうしたの一花 笑って?」

「何でもないよー」

 

姉の手首かかる鈴は彼女に御守りだと話す

妹が付ける髪留めは彼女の宝物だと語る

今日起きた様々な出来事はきっと彼女の記憶にずっと残って行く事だろう

二人の少年と共に過ごした 秋の夜の花火の思い出を…。

 

 

 

 

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ーーーー

 

 

ーー

 

 

 

「お礼まだ言ってなかったね 夢を応援してもらった分 私も君に協力しないとね 家族何でしょう

  自分で言うのもなんだけど 私は一筋縄じゃいかないから覚悟してよね」

 

「すぅ……すぅ」

 

「えっ…寝てるの またそのままの態勢で」

 

上杉幸太郎は眠っていた

彼女から言葉も今は耳を素通りしている

朝から今までずっと動きっぱなしで彼の体力も気力も限界だったのだ

何度か寝ないよう顔を叩いていたが、一花を待つ段階でひと眠り

その後に花火をしている姉妹達を見て安心しきった彼も緊張の糸が解け

彼女達を見守るよう目を開けながら眠っていた

 

彼の姿に一瞬だが力が抜けた一花だが、すぐに笑みを浮かべ

少年の隣に腰をかけ自称『家族』と言い張った彼を自分の膝に寝かせた

何処か不思議なこの少年 

クラスメイトは口々に一花に話した

『上杉幸太郎は危険』『上杉幸太郎は人を傷つける』『上杉幸太郎は厄介者』

 

「本当にそうなら…君は私の夢を応援なんてしないよね」

 

優しく語り掛けそっと撫でる

自分だけでは無く 妹達にも向き合う姿を彼女は何処かで見た事があった…。

とても前 まだ母が生きていた時の頃…。

今のように 誰かに膝枕をしたような記憶が彼女の脳裏を過ぎる

どうして彼を見てそれが一瞬思い出したのか、深くは考えない

今はこの少年を少しでもいい 見守ろう

 

「頑張ってたね…………ありがとう 今日はおやすみ コータローお兄ちゃん」

 

眠りにつく少年を少女は見つめる…。

チリンと鈴の音がなる…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…………幸太郎君………一花)

安らぐ彼と微笑む少女をじっと見つめる五月の姿を彼女は気づく事は無かった

彼からもらった鈴をぎゅっと握りチリンと静かに音が鳴る…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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