「ふぁー……眠い」
昨日の今日で疲れが残る中 相も変わらず
学園へと登校中である 軽い眠気に襲われ目元を擦る
体に来る風も少しばかり冷たいものだと体は認識しており
季節10月の頭
すっかり秋だと街中ですれ違う人の服を見ていれば嫌でも分かる
こういう時に自分が普段から着用しているくっそ暑い制服が役立つ
らいはも昨日の疲れか珍しく起きるのが遅れ 俺や風太郎も鼾をかいて寝ていた
『起きろー』妹の声と朝食の匂いで目を覚まし
急いで支度をし 風太郎は先に行くと言い荷物片手に家を出た…。
らいはも日直があると言うので、必然的に俺が最後に家を出ていった
寝坊とは言え遅刻する程でもないと今日の俺は何処か余裕を持っている
そう言えば聞こえはいいが実際は、最近の疲れからただ単に走る事をやめているだけだ
今日の夜にもシフトがある体を壊れない程度に無理をしないと色々と面倒である…。
そんな年中目つきの悪さを指摘される俺の前に昨日の花火で騒動の発端になった
彼女中野一花が手を振っている
周りの人は一花に見惚れているのか 歩きながらも視線を逸らさない
もう少しで良い 自分が人の目を惹きつけると理解してほしいもんだな
「やっ おっはー 欠伸すると幸せ逃げるって言うよ」
「うっせー 一花 てか欠伸じゃなくてため息だ まぁ あれだ おはようさん」
欠伸で幸せが逃げるなら 俺の幸せはとっくに底辺を超えている
ため息は人並程度と思っているし
人の幸せに対する価値観てそれぞれだ。
俺は俺で今を満足してんだ…………。
何処か面倒なスイッチが入ったと思い 一花は苦笑いしている
良く見ればこいつ周りの人と同じく冬物に変わっている事に気づいた
『感想は?』と気づいたなら述べるべきとこちらをじろりと見る彼女に適当な理由を言っておく
「温かそうだな」
「それだけ?浴衣とかお洒落してる時とかはコータロー君ましな言い方するでしょ?」
「冬服にこだわり何てねぇよ…………てか制服に関してはどう褒めろって言うんだ」
「えーっと スカートの裾が変わったねとか」
「お前も大概ひどい感想をお持ちだな それでなんだ朝から お前がいるの珍しいな」
「うん ここで待てばコータロー君と会えるかと思ってさ近く何だし一緒に登校しようかと思って」
訳を聞けばただ単に待っていたと言う彼女
さっきも思ったけど目立つんだし 人の目を気にするべきだろう
あの一件で俺が家にはいると言ったにも関わらず三玖は『お風呂』と話していたが
中野姉妹とはあまりそう言った意味では一目を気にしないのだろうか?
まぁ 三玖の場合は家だったという理由がつくのだけど
「お前はもう少し 自分が目立つと自覚しような…………。俺まで視線くんだから」
「昨日 あんな事して あんな事言った 幸太郎くんが今更気にするの?」
「余計な事言うのは その口かぁ コラぁ! あぁ?」
彼女の口にした言葉で聞き耳を立てていたであろう
男どもが一斉にこちらを見てくる 軽く睨めばこの外見だ学園以外でもそれなりに有効な効果を出してくれる
『ひぃ』と声を上げ数人がその場から去って行く
そこまでの効果は狙ったつもりはねぇけどな
一花の頬を軽く抓ろうと思ったがこれから商売で使う顔で傷にでもなってみろ
今後に支障が出てしまうし夢に向かう為に頑張るこいつにそんな事出来ない
軽く頭をポンとだけ叩くだけで済ませた。
「暴力だー」
「うっせー 余計な事言うからだ んで 一花………二乃達には言えたのか?」
「昨日あの後みんなに打ち明けたんだ みんなびっくりしたなー」
「受け入れてもらえたようで安心だ」
「うん スッキリした!」
半年間ずっと彼女はその事実を隠し
一人ずっと誰に言わず頑張ってきた 昨日の一件で姉妹の前でそれが露見する事は無かったが
花火を見れなかった理由を話さねぇと一花本人も目覚めは悪いだろうし
バレてないとは言え『女優』と言う発言を三玖には聞かれていた
ついでに言えば四葉辺りにも聞かれていただろう
その状態で隠し続けるのは、難しいし
何より彼女はもう自分の道と向き合うと言った 隠す必要ないんだ。
姉妹全員が驚きはするが、誰もそれを否定せず応援
三玖なんてサインを求めて来たと嬉しそうに話す一花を見ていれば俺も不思議と笑顔が出ている
「コータロー君も笑うんだね」
「嬉しいからな…………」
「嬉しいの?私の夢が」
「昨日も言ったろ 俺は夢や道を否定はしない 俺はそれを応援するし背中も押す
だれがお前の夢を否定しても俺は応援を続ける………。」
「あっはは………あのね 改めて言われると照れるんだけど」
「理由聞いたのはお前だろ 俺も恥ずかしいんだ お相子だ」
どんな理由であれ夢や道を持つ事は良い事だ
努力しそれが報われる事は自然である
一花が『道・夢』と言った時に俺は決めた『こいつの為に出来る事をしよう』と
俺に出来る事なら彼女には協力してあげたい
ただあくまでもこれは俺個人の意見だ 同じく中野姉妹に教える
本当の家庭教師である 上杉風太郎の意見は違った
昨日みんなと解散後 帰り道で俺は風太郎にも一花のやりたい事を話した
この事は隠しておく訳にはいかなかった
一花に許可を取らなかった事は悪いと思っている。
「風太郎に話した」
「うん…………それでフータロー君はなんだって」
「『俺は反対だ 勉強をするべきだ』となでもな あいつが本気でそう思ってるなら俺を止めただろう
それにあいつは、そこまで非情でもねぇよ って何だその顔は」
一花は風太郎に話した事を怒りはせずどういう反応をして彼はどう思ったのか
聞きたいと話す
俺はあいつの話した事あいつが思っているであろう事を一花に伝える
ジーっと見る視線を感じれば一花が関心したような表情で俺の顔に目線を寄越していた
こっちの声を聞き『ごめんごめん』と言い
彼女は俺を見ていた理由を続けて話す
「コータロー君ってちゃんとお兄さんしてるんだなって思ってさ 二乃が彼を寝かせた時もコータロー君は背負って帰って行ったでしょ? 五月ちゃんが言うには起こさないようにしてたって言うし…。」
「ちゃんとお兄さんしてるか…………まぁそうだろうな 俺に取って風太郎とらいは掛け替えのない弟と妹だ 長男である俺はアイツらの事を守ってやらんといけねぇしな あいつらの前ではちゃんと兄貴として向き合いたいんだ」
「ふふ…………何となくわかったかも。それに私も長女だし 長男であるコータロー君とは似てるのかもね… お兄ちゃん!!なんてね」
「うぅ…………頼むそれを人前で言うな あの発言却下するつもりはねぇけど 気恥ずかしさは俺にもあるんだぜ」
あの後も何度か一花には『お兄ちゃん』とからかわれてばかりだ
今もニヤリとし何時また言ってくるかわかんねぇ
その発言自体を俺は取り消すつもりはないと言うのも本音だ
試しに風太郎にも聞いたがあいつにとっての中野姉妹は
『協力関係でパートナー』だと言って来た
俺も大概だが弟も結構な発言が強力なもんだ
それも帰り際に俺に言う様に発言したのだ 他の人から色々変な目で見られ
誤解も招いたのは言うまでもない。
一花もその言葉を聞き『パートナーか…………やっぱり兄弟だね君達は』と笑いを堪えながら言ってくる始末だ
そう言った事で兄弟認定するのだけは本当に勘弁してほしい…………。
暫く歩けば学園も見え始めてくる
その時だ唐突に一花が俺にスマホを差し出してきたのだ
一体なんの冗談だ 文明の利器を持たない俺への挑戦か
スマホくらい使えっからな?
「違う違う これからコータロー君達に協力するんだし 私も留年しない程度には勉強したいと思ってね…。放課後連絡するから メアド交換しよう」
「おう 風太郎に聞いといてやる 紙を貸せ」
「フータロー君もだけど コータロー君のも教えてよ」
「だーから俺は持ってねぇって言ってんだろうが!? お前も俺の鞄の中見たんだから分かんだろう」
「あれ 本当だったの? 家に置いてきたとかだと思ってたんだけど」
「だれが んなことすっか 携帯なんざ持ってねぇと意味ねぇーだろうがよ 俺のは諦めろ 風太郎には俺から伝えるから」
きょとんとしてる辺り本当に俺が携帯やスマホを持ってない事を改めて認識したとみえる
あの日五月に言われて鞄や俺のポケットまで探してこいつ驚いていたのに
あれもその場の演技なのか?
それはそれで良い演技力を持ってる こいつの将来は安泰であると俺はうんうんと一人で納得しているが
何と言うか一花本人は納得がいかないと言った表情でこっちを見続ける
その後スマホをタップし何かを操作し
俺の前へと体を乗り出したと思えば以前にも似た光景を俺は目にする
スマホの画面を俺に見せてくるその姿何時かの三玖のようだ
ここまで悠長に構えているが、スマホに写っているものは三玖の武田信玄とは比べ物にならない程俺にダメージの大きなものだった
それは昨日の俺のバイト姿ではなく…………一花に膝枕されて
寝息を立てているであろう目つきの悪い俺の姿だ
「おい おめぇ何だこれは?」
「ふっふー 昨日可愛い寝顔があってねーこれは撮らないと指が勝手に動いたんだよねー」
「…………はぁ 要求は何だ 仕事の応援はするって言ってんだろう」
「違うよー これ他の人にはちょーっと見られたくないよね?」
これはうざい…………
「俺は周りの事は気にしねぇって言ってんだろう」
「でも 流石に連絡手段ないとコータロー君も大変でしょ」
「風太郎でいいんじゃね」
「コータロー君は私の応援してくれるんでしょ? ならコータロー君だけに言いたい事とか口裏合わせ要因がいればと」
「こういう時は自分を偽らねぇなお前、なーにが口裏要因だ」
学園での中野姉妹は、俺が見る限りそれなりに友人関係が広い
だからふとした事で先ほどの写真が何処かに流失する恐れがあるだろう
それで俺がどうと言う訳でもない 最初は驚いたが良く見ればタオルで髪も見えねぇんだし
今更誰にどう思われようが、0から何を掛けようが0だ焦るのも馬鹿らしいと思ってはいるが………。
俺はどうでもいい その写真俺が写るそれを一花が持っていると周りで言われる事だけ嫌だ
これからこいつは夢に向かって行くんだそれの障害に俺はなるつもりは無い
ただ 今更捨てたあれをどうこうしようとは思えない未練はないし
そんな態度を続けていれば一花の表情はどんどん険しくなる
険悪なもんは避けてぇな…………。
「まぁ あれだ昨日、五月にも帰り際言われたんだ 今度俺が接する中で無いのは不便ではってな」
「五月ちゃんがね…………。」
「少しは考えてもいいかもなって」
「五月ちゃんの言う事なら君は素直に聞くんだね コータロー君」
「はぁ?別にそう言う訳じゃねぇよ 変に勘繰るなよ まぁもう一度持つ事くらいは考えてもいいぜ」
「それならお姉さんも安心かな あと条件として姉妹全員の聞くように フータロー君も含めてだからよろしくね」
「全く面倒事で………風太郎にはそれとなく伝えておく」
「Оkじゃ 校門までもう少し行くよコータロー君!」
「走って怪我すんなよー」
何処かから元気にも見えるが一度はそのまま走って行く
俺も追う様に走り出す周りで見てくる生徒はまた『上杉が』といらん事いうが
気にしないでおこう そんなの今更だしな
問題と言えば携帯の確保だ…………。
(もう一度俺が携帯を持つ事になるかもしれねぇとはな…………。)