オリジナル展開など多数あるのでご注意下さい
文章は気にしないでください
第一話 不良少年と末っ子
何時かの過去
「今日はありがとう」
少年に語り掛ける少女の笑みは何処か儚げである
何かを悟ったように何かを感じたように
今日一日自分の用事に付き合ってくれた彼に感謝を述べる
少年もまたそんな少女に『気にしなくて良いですよ』と返事を返す
「お名前を聞かせてもらえますか」
彼は名乗った 『上杉幸太郎』
少女も名乗った
「中野 中野六花と言います ではまた 上杉幸太郎さん」
彼女はそう言うと彼に手を振り
彼もまた手を振り返す 少々名残惜しいと感じながらも自分の目的の為少年はその場を去って行く
少女は少年の姿が見えなくなるまでずっと手を振り続ける
彼が見えなくなって来た頃 彼女の目には透明な二粒の水滴がそっと流れていた…。
何時かの記憶 何時かの思い出 一人の少年と一人の少女の過去の記憶である…。
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学園は今日も平和だ相も変わらず周りの人間は俺を見るなり
モーゼの如く道を開け避けていき
ひそひそ話をする他の学生たちの姿
見慣れた顔もあるが、今更何も思いもしない…。
気にもしない
ただまぁ 食堂に行く時も便利ではあるし このままで良いだろう
「あいつも何時もの定食だろうな 俺は適当にパンでも頼むか…。」
家庭の事情もあり
俺や特に弟は、学園での出費を必要最低限で押さえている
弟にいたっては『焼肉定食 肉抜き』と何処か悲しくてそんな悲惨な事になるのか
作ってる側も慣れたように対応するが、当初はどんな気持ちだったのだろうな。
暫歩くと食堂が見えて来た
歩く速度を少し上げ俺は目的の場所へと足を動かす
ついてすぐ
先ほどと同じく他の学生は道を開け
顔を下に俺から目をそらしている 地毛とは言えこの髪はやはり目立つな
一度黒に染めた方が良いかな…
「注文いいすっか 食パン2枚で」
自分で頼んでいて何だが味気ないにも程がある
風太郎の事を言えた義理ではないな…。
けど あいつに取っての最適解があの定食なら俺にとってこれが最適解だ
お腹に入ればどれも同じだ 何を食べても味何て変わらないだろう
渡された袋にはパンが2枚持っていたお金を渡すと
俺は足早に去って行く
余り人前に出るような人間でもないし
このままいれば、他の学生たちはずっとこの調子だろうな。
取り合えず隅っこでも良いから目立たない席を探さねば…。
「ん…? あれは風太郎 何してんだ」
俺が左側の席を凝視するとそこには、弟であり 今日も変わらず肉抜き定食頼む
上杉風太郎の姿があった
あの席は弟の定位置らしく
時折見かけてはそこに座っているのだ
ただ 兄弟だからといって同じ席に座ることは無く
俺は何時も適当な席を見つけそこに座っていたりする…。
それでその弟なのだが…どうやら何かもめ事を起こしているようだ
周りから聞こえる声に耳を澄ませば
どうやら この席は自分が先に座った 座ってない!の言い合いを起こしているようだ
「何やってんだ あいつは…変に目立つのは俺の役目だろうに」
ここで助け船を出すのは構わないが、俺が行って風太郎に迷惑をかける訳にも行かない
あいつは俺と違って優秀だ
何処に出しても恥ずかし…………性格はまぁやや面倒な所もあるが
喧嘩にでも巻き込まれてる訳じゃないんだ
ここは風太郎を信じようか…。
「おっと………… すまんな」
弟の未来を信じ俺は近場の席に向かおうと後ろを振り返った
その時後ろから近づく人に気づかずぶつかってしまった
俺の不注意だ
素直に謝るべきだろう
「いえいえ お気になさらず」
何とも元気の良い子だ
きちんと返事も返してくれる辺り 礼儀も出来てるな
2年になってからずっと『ひぃいい』とだけ言われまともな会話を女子とした記憶がない
ウサギ調のリボンをつけるその少女は俺の返答を受けるとにこやかに微笑んでくれている
「怪我ないなら、行くわ さらばうさぎリボンさん」
「私の名前は中野四葉です!」
「おっおう…すまねーな【中野】」
「それでお名前は」
「俺は、上杉……上杉幸太郎だ」
「上杉…」
ん…………?
何か気になるのだろうか
四葉と名乗った少女は俺の名を聞くとその場でだんまりとしてしまい
何度も苗字を復唱している
変な事で言ったのか俺は……?
「了解しました。上杉さん!」
「何もないなら良いんだ、じゃーな」
先ほどの事が何もなかったかのように
にんまりとする中野をしり目に俺はその場から立ち去る
同じ所に何時までもいると人の目が届くからな
なるべく避けたいんだ
『それじやーーー』と後方から声が聞こえる
何処まで愛想が良いんだ あの女学生は…………。
「どうかしたんですか、四葉?」
「あれ 五月じゃないですか?さっき向こうの席に居たのに何でここに」
「移動してきたんです あの生徒がいた席に座っているのは嫌なので」
「あははは、何かあっただね」
「良いんです。もう会う事は無いので、それより四葉こそ何でここに立っているんですか?」
「あぁ、それはですね」
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そこまで気になるのか?
周りの学生はこちらをちらっと見るが、俺の視線に気づけばすぐに目を逸らす
怯える位なら 見ないで欲しい
はぁ…………。
慣れたと言いつつも物を食べてる時まで人の目を気にするのは
俺でも嫌になってくる
今度からは食堂も避けようかな…………。
「さっさと食べて 移動するか あむ…あむ」
「あの…………? 相席宜しいですか」
俺が最初のパンを半分まで食べた辺りで横から声が飛んでくる
聞き間違えじゃなければ、俺の座っている席 同じく座りたいと言っているように聞こえるのだが、すっとその方向を見る。
こちらに訪ねて来たアホ毛の目立つ少女は何処となく先ほど会話した
中野四葉と名乗った少女と雰囲気が似ていた、少しばかり既視感を覚えてしまう程には、けれど髪型も少々異なるし
他人の空似と言葉もあるんだし似た人間は3人くらいとも言われご時世だ
一人くらい似た人間を見ても驚くの失礼だろうな
「あの…………」
「あぁ…うん、別に良いけど」
「はい では失礼します…いただきます」
「おう…………。(しかし凄い量だな」
空いてる席に座った少女
彼女が持っている 昼食はぱっと見ても凄い量である
ざっと見積もっても900円はするだろうな
俺や風太郎の昼食代を合わせてもこの値段には到底及ばない
食関してはあまり気にはしないが、こうやって見ると結構そそるものがる
「変ですか?」
「すまんな それに変じゃないと思うぞ、食べる事は良い事だ。残さず食べるそれが一番だ」
「そうですよね 変じゃないですよね! それに残しませんよ」
「そうか…………」
ずいっと前に顔を突き出す少女は何が嬉しいのか目を輝かせている
この量を食べるのだ 他の人からの目も多少なりと気にするのだろうな
でも嬉しそうな表情で食べている姿は、見ているこっちも元気を貰えるし
何処となく…………。 いや何でもない
俺は何を勘違いしてるんだ この女子がこの席に座ったのは
ただ開いていた席がここだっただけだの事だ。
「もし宜しければお名前を教えていただけますか? 折角相席になったので」
「………… 上杉幸太郎 2年だ」
「上杉幸太郎くん…………はい 私は中野五月と言います」
数分前の俺よ
お前の抱いていた既視感は間違いではない
この少女の名前は 中野五月というようだ
偶然にも先ほど似た苗字を俺は耳にした
この彼女の服装だ
その制服はこの学園の女子が来ている制服ではない
あと先ほどぶつかった中野四葉だ ぱっと見だっただけだが
彼女もまたこの学園とは違う制服を着ていた
もしかするとさっきの中野とは…………姉妹なのだろうか
それも転校生の可能性もある………俺が知っているあの子達か?
っと悪い癖だがこういった事に出くわすとついつい考えてします
下手な詮索はやめよう 中野も困惑してしまうだろう
「そうか よろしくな 中野」
「はい よろしくお願いします 上杉君!」
さっきの中野もそうだがやめてくれないか
そんなキラキラした笑顔を振りまくのは………。
苦手なんだよ
『上杉が女子と話してる』『脅してるのかな』辺りから変噂話が飛んでくる
どうやら俺が思ってた以上に周りの生徒達は俺が、他人と話す事が衝撃的なのだろう
さっきの中野四葉の時もそうだった
少しでも関わろうとすれば、変な視線が飛んでくる
そうなってしまう原因を作ったのは、俺だし
元から人と関わろうとは思わないけど、こうして話す事も周りのからすれば異端なのだ
上杉幸太郎という 人間の評価と言うのはそこまで落ち込んでいる
だから弟の風太郎にも迷惑をかけたくない…………。
「上杉君は そのお腹は空かないんですか?」
「食べれればそれで良い」
「でも それだけだと栄養が足りません。どうぞこれを食べてください!」
「あのさ 何でそこまで話しかけてくるんだ?」
「いえ あのそれは…………。」
黙りこんでしまう五月
親切なのは良い事だとは思う
けれど相席なっただけでここまで親切に出来るものだのだろうか
いや悪い事だとは、思わないけど
仮にも女子なのだから男子に接する場合は、もう少し距離感を考えるべきだ
「その気遣いだけで、お腹も膨れるよ じゃな 中野」
「は…い 上杉君」
(そこまでしょぼくれるな…怒ってる訳じゃないんだけどな)
残っているパンをかっ込み俺は席をたつ
中野は終始顔を伏せたままだった
悪い事したかな あいつは良い子なんだろうけど…………。
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放課後の事、訳あってその後の授業を受けず保健室で過ごした俺は、
帰り支度をするため教室へと戻ろうとしていた
(だる…)
その時前方から弟である風太郎が俺を発見するなり
こっちへと向かって来た
小声で『話がある』と言い
深刻な表情である事も察し彼について行く事にした
しかし風太郎から声をかけてくるとは珍しい事もあるものだな。
「それで、どうしたよ。【風太郎】お前から俺にとは珍しいな?」
「俺から話しかける事は、そんなに珍しい事じゃない。幸太郎が話も聞かず逃げるだけだろ」
「ほほーんなら、逃げるぞ」
「待て 待ってくれ!! これは上杉家に取って大事な案件何だ!」
少しばかり弟をからかおうとしたが、
上杉家に取って そう言われると俺もふざけている訳にも行かないと理解できる
『話せ』と促すと彼は話を開始した
それは風太郎が昼食を食べ終わった後の事だ
彼の携帯に妹である らいはから連絡が来た
どうも人間の腎臓を売るとお金になるらしく、風太郎はそれに志願したと話す
「してない、してない、売らないからな」
「なら俺か?」
「それはもっと笑えない 冗談はやめてくれ」
「わりぃな 調子のったわ」
今のは悪手だ言葉が過ぎた
流石に風太郎相手でも言葉を選ぶべきだった
彼の顔は何処か険しくなっている
中野に人との距離感とか言っておきながら俺も人の事は言えないな
俺の態度を見れば「分かればいい」と彼もこの話を一旦切り上げ
話題をらいはから話に戻している
「家の借金が返せるかも知れないんだ」
「話してくれ」
風太郎の教えてくれたその話は
俺たち上杉兄弟にとって重要過ぎる程の物だった
これで父である 【勇也さん】にも少しは楽をさせてあげれるだろう
弟曰く 勇也さんが『わりのいいバイトを見つけた』と話したらしく
らいは曰く 『アットホームで楽しい職場!相場の給料の五倍を約束します!』
俺には、勇也さんが騙されてるようにしか思えない程
胡散臭い感じしかないキャッチコピーであるが
あの人が、見つけて来たものだ そこは素直に受けれよう
ただ 少し疑問もある
何故 俺にはその事をすぐ伝えなかったのだろう…………?
順当に考えれば やはり風太郎の成績が優秀だからなのだろうか
不思議に思う俺に風太郎は呆れた表情で俺を見ている
「幸太郎お前さ携帯ないだろう…………」
「そうだった……持ってないから存在忘れてたわ」
「連絡取る時とか大変なんだからな いい加減買ってくれ」
「大丈夫だって今日みたいに風太郎を通して連絡取れるしさ」
「そう言う所は、直してくれ」
「はいはい」
兎に角だ
風太郎がある人の家庭教師となりその人物の成績を上げる必要があると言う話だ
因みに俺は、助っ人として参加して欲しいと言っている
やっぱり優秀な弟が指名されてるし
俺の出番はないのでは?
自分でも思うが俺が来た所で怖がらせるだけだろうし
「それでも 俺だけではどうにもできる自信がないんだよ」
「聞いてやるよ 話せ」
表情が曇る彼は話しを続ける
風太郎曰くその家庭教師をする人物に問題があるらしく
昼食の際に その人物とひと悶着あったらしい
当然 その段階では彼もまさかその人物が後に勉強を教える相手とは知る由もない
それを知ったのは、その後だ
授業前に行われた軽い挨拶の際に 転校生がこのクラスに来た事を教えてくれた
何故他人事なのか…………
それは勿論 俺は保健室で休んでいたからその事を今知ったからだ
そしてその転校してきた
中野五月と名乗った少女
彼女が風太郎が勉強を教えなければいけない人物だった
「世間も狭いな…………」
「何がだ?」
「何でもねーよ」
あの時出会った人物がまさか風太郎の家庭教師先になるとは
話を聞く限り 風太郎とのいざこざの後 彼女は去ってしまったらしい
当然追う義務もこの時の彼は知らないわけで仕方ないと言える
ただまぁ こいつの自業自得な所も無いとは言えないけど
その後行われた自己紹介の時には勿論
彼女から無視をされ続けたと彼は説明した
これで納得が行く
何故わざわざ俺のいる席まで来たのかを
それは人が近寄らない俺の周りが開いていたからだろう
当然転校生である中野は俺の学校での噂を知らないため ああやって接してきたのだろうな
ここまで話を聞く限り 中野からの風太郎に対するイメージは最悪だと言う事だ
そこで白羽の矢が立ったのが こいつの兄である俺だと言う
正直人選を見誤ってるのではと思うが、風太郎は成績は良いが
先の中野とのやり取りもそうだが、同年代の人間との会話を得意としていない
勉強以外は必要ないと言った感じの少年なのだ
兄としては悲しいが、俺も人の事は言えない
友人がいないのは俺も同じだ
この一件は無事に解決する必要がある
俺も他人事ではない上杉家の将来がかかっているのだから
「それで教えるのは【中野五月】だけで良いのか?他は」
「手伝ってくれるのか、流石持つべきものは兄弟…………ん、他?」
「あぁーいや何でもない」
どうやらこいつは知らないらしい
俺も中野五月に出会うまで忘れていたし、本人も俺を覚えてないようだった
上杉幸太郎は彼女を知っていた
そして中野四葉と中野五月との出会いで、既視感の正体が何かを気づいた
俺はあいつらを知っている
中野と言う姓で出会うのがあいつとは初めてだっただけだ
それに今の姿は、当時を知る俺には、違って見えていた
けどそれについては俺も彼女達の事は言えないのだがな
あの頃から変わったのは彼女達だけではない。
記憶に間違いが無ければ…………中野五月と四葉以外に後三人いる筈だ
(覚えてないのも仕方ないよな なんせガキの頃だし)
「普通は大学生に頼む所だが 上杉家が誇る風太郎君だ 下手な奴より頼りになる」
「褒めてるのかそれ」
「気にするな…………んじゃ後は 中野五月を探してどうにか説得する事から始めっか」
「目指すわ!借金返済だ!」
「あんまり気張るなよ 後々痛い目見た時が辛くなるから」
「そう言う事言うなよ、それに幸太郎お前が頼りなんだ 」
「へいへい 話は苦手だけど 頑張れるだけ頑張って見るから」
正直言えば前途多難だ
これから探すであろう
中野五月は性格は良い人物と思うが
風太郎とのやり取りを見る限り 中々の曲者だ
そして中野は一人ではないと言うこと…。
勇也さんが見つけたこの仕事 多分相手は中野五月だけではない
中野姉妹全員を相手にしないと行けないだろう
相場の五倍とは上手く言ったものだ 要は5人相手に挑めと言う事だ
これは流石に骨が折れるが、学園での生活よりはましだろうし
何より 家の借金を返済するための大きな近道になる
風太郎程ではないにしろ 俺自身も少なからずやる気が出てくる
「ん…………?」
「どうした幸太郎」
「いや~気のせいか誰かに見られていた気がしてな」
「変な事言うなよ。自意識過剰なんじゃないか?」
「どうやら 弟は手伝いがいらないと見えるな」
「嘘です。すみません」
「よろしい」
決意を決めた俺だったがふいに誰かに見られた気がし
辺りを見るが、そこには誰も居らず
風太郎の言う通り気のせいと思う事にした
それにこの髪色だ嫌でも目立つしな
「…………コウタロウ」
俺や風太郎が去ったあと廊下の曲がり角で俺の名前を呼んでいる人物がいた事を俺は知らなかった