生徒手帳を返却された翌日
俺は普段と変わらず学園で変わらぬ日々を送っていた
別段変わったイベントはない
昼になれば食堂に行き
放課後なれば風太郎達と勉強会を開くだろう
俺の中ではそれが当たり前となっており周りでもそれが認知されてきたのか
誰といても以前よりは騒がれなくなっていた まさに 『何時もの光景』認識されてきた
だが今日は違っている
クラス中の視線は普段の倍に感じ
風太郎は俺がクラスに来れば触らぬ神に祟りなしと一度席を外す
隣の席にいる 五月はずっとこちらに声をかけてくる
お前はお前でぶれないな?
「幸太郎君 あの」
「なんだよ五月? あんま今話しかけんな 周りがうるさい」
「ですが………その顔どうしたんですか?」
「はぁ…………」
クラス連中も五月も普段より意識を向ける理由は俺の顔にあった
実際には頬だ正確には頬より少し上目の下あたりだが、そんな些細な事周りには関係ないだろう
昨日までなかった物が覆うように貼ってある
何かと言えば、ただのガーゼだ 取れないようにテープで固定している
少々だがまだ昨日の痛みは残っている
その姿俺が頬に怪我をし カーゼで押さえるその姿を見て
クラスの連中もここに来る前に俺を見る連中も視線を向けるし
避けていく 教師も俺に何があったと登校時に聞いてくる始末
「あぁ…………うぜ」
周りの評価なんてやっぱりあてには出来ねぇ
掌を返すように『やっぱり上杉幸太郎は不良だ』『誰かに喧嘩を売った』だの言ってくる
そのまま耳から通り過ぎていけ
休みたいと思ったがきちんと登校しないとらいはに心配をかけてしまう
朝も俺をずっと心配していた 妹にあんな顔させて何してんだか…………。
「とりあえず 五月は普通にしてろ 心配すんな俺は何もしてねぇよ」
「でも その怪我どうしたんですか?昨日までありませんでしたよ」
「生きてれば傷なんて出来んだろう…………今は一限目前までに課題をやってろ」
「……………………」
「心配してくれありがとな」
「……………いえ心配するのは当然です」
「そうかい………。」
少しばかり意地悪が過ぎた
五月相手だと少々度が過ぎるてしまうのが俺の最近の反省点だ
世話になってる 何だかんだ言いつつも勉強をしてくれる
間違いがあれば素直に修正してくれるし
声もかけてくれる そんな奴だからついつい距離感を忘れてしまう
あいつに言っておいて俺が忘れてどんすんだか…………。
目線を前にすればいつのまにか風太郎は戻ってきていた
こいつも気まずいだろうな 兄がこんな姿で登校してくんだしよ
その後担任が教室に現れ
ホームルームも何事もなく行われた
不貞腐れてる暇などない
一限目も開始されるのだ 俺も受けれる間はきちんと黒板に目を向けなければな
そこから昼までの間 意識を授業のみに集中させ周りの声をシャットアウトしていた
「コータロー! 顔どうしたの」
「お兄さん頬怪我したんですか?」
「フータローくん 何かあったの」
「それより勉強をしろ」
「さっさと始めろー」
図書室での勉強会 家庭教師 正確には補佐だが
俺がさぼる訳にはいかない
案の定だが、三玖達にも心配をさせてしまった。
一花は俺に聞くよりも早いと判断したのか風太郎に聞いているが
残念だったな
風太郎はこういう時には何も答えない
理由は知っていても干渉を避けるのが弟である
まるで 中野姉妹が転校して来る前に戻ってみてぇだな
図書室で勉強を行う光景も周りの人間に当たり前に認識され始めて来たが
視線は何時もより飛んでくる
暇な奴らが多いなここも…………。
それぞれ課題や風太郎の出した問題を答えるなど出来うる限り集中して行っていた
ただこいつらも気になるんだろ 特に四葉なんてガン見してくる
風太郎に叱られてるし
「勉強しなさい」
「すみません 気になってしまって 痛くありませんか?」
「素直だな」
「だから手を動かせ!」
三度風太郎と四葉のやり取りを見て
少しは気分が楽になったかと思い俺も自分の勉強に取りかかる
四葉程無いせよ 三玖もこちらじっと見ており
視線に気づけば顔を逸らす何でかねぇ…………。
『2年一組 上杉幸太郎 至急生徒指導室まで来るように』
図書室がざわつき始める 視線は一気に強くなる
朝方説明したつもりだが、学校側は信用してないようだ
校内放送まで使うあたり まじで俺が嫌いなのか?
「ちょっくら行ってくる 昼休みには戻れそうにないから 風太郎あとは頼む」
「分かった 気にせず行ってくれ」
「コータローくんまた放課後に会おうねー」
「あぁ 一花もまたな 四葉に三玖も頑張れよ」
「お兄さん 私なら心配なしです!」
「コータロー…………気をつけてね」
後ろに手を振り生徒指導室まで向かう事にした
俺がいない方が捗るだろうしこっちの方が良いだろうな
三玖の奴 顔は伏せてるが何で泣きそうな面してんだか
別に辞めさせられるわけじゃねぇのによ。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
「何でお前がいんだよ…………」
「校内放送を聞きました」
「昼飯食ってこいよー」
生徒指導室の前で五月と出くわした
待ってましたと言わんばかりにじっとこっちを見ている
まじこいつは何だ?
先回りしてきたのか…………。
俺の事なんて気にせずって言っても家庭教師してるしな
仕事の雇い主である あの人の耳にでも入って見ろ
『君にはやめてもらう』あの冷めた声で言ってくるんだろうな
風太郎にだけは面倒をかけさせたくないし
中野姉妹の為に今は少し慎重に動かねぇとな
「とりあえず 五月 いるなら待ってろ」
「はい ここで待ってます」
冷静な時の五月程 梃子でも動かぬの言葉がそのまんま似合う人間もいないだろう
覚悟を決めたと言わんばかりだ
下手な説得は聞かない為 終わるまで待ってて欲しいとだけ伝え部屋に入る
「失礼します」
教師とのやり取りは特に面白いものは何もない
説明書をそのまま完コピしたような事を言い
俺はそれに答えるだけだ 怒ってるのか叱ってるのか分からない声を出す
本音を言えば 教師より 勇也さんからどう言われるかの方が俺は怖いと思ってる
父親だからなのかあの人だからなのか、幻滅させる事だけはしたくない
せっかく入れた高校だ むざむざ退学させられるつもりもない
だから俺は教師には事実だけを告げた
信じようが信じまいが関係ない 下手に言い訳してどうすんだ?
現実に俺は怪我を負っているわけだ 隠し立てする気もない
朝方俺を問い質した体育の教師にも俺は言っているんだ
『俺は手を出してはいない』と
「失礼しました」
数分のやり取りを終えて俺は解放された
先ず目の前には、捨てられた子犬見たいにしょぼくれる五月が立っていた
トレードマークであるてっぺんのアホ毛も萎びたように倒れている
何でこいつが此処まで気に病むのか…………。
「教室戻るぞ」
「はい…………。」
その一言だけ言い俺の横についてくる
歩幅を合わせ遅れないように
世話焼きなおかんかと思えば、叱られて泣いてる子供のようでもある
実際子供なのは変わらないけど
「一ついいですか」
「何だ」
「幸太郎君は大丈夫なんですよね?」
「あぁ…………怪我も殴られただけだ」
「それさえ聞ければ満足です 無事ならそれでいいんです」
中野五月は俺に対しての信頼は厚い
俺が問題を起こした事を彼女は問う事はしない
それよりも俺の体の心配をして来るのだ
体調に異常が無いと伝えればこいつは納得をしてくれた
教師からは停学も退学も言い渡される事はなく
学校にも別に今まで通り過ごせるわけでこれ以上の問題事は起きないんだと思い
俺も五月も足を速めた
「お前 また問題起こしたのか 上杉幸太郎…………。」
「…………」
「おい 無視か上杉?」
「何っすか 須藤先輩」
どうやらため息で幸せが逃げるのは本当だと実感した
さっさと教室へと戻ろうとした途端にこれだ
何処からか現れた一人の坊主頭の厳つい男子生徒に名指しで呼ばれた
これ以上面倒は御免だと五月の手を取りそのまま無視をしようとしたが、道を遮られる
その男子生徒 3年生須藤和之はこの学園の野球部エースであり
将来を期待されている逸材だ
そんな大物が、学園で一二争う程嫌われてる俺に何のようなのか?
俺の態度が気に入らないのかぎろりと鋭い眼光で睨んでくる
この学園で過ごす中で一番に会いたくねぇ奴だよ
一人の時でも御免被るが今は、五月も同行してんだ
これ以上は面倒に巻き込むな…………。
適当にその場をやり過ごすべく言葉を並べるが須藤は退こうとせずただ俺を睨むのみだ
話がねぇなら絡むなよ
手間取っている間に五月の方が先に行動に出ていた
「あの須藤先輩と言えば良いんですか? 私達急いでいるので失礼します」
「女子連れか…お前も言い身分だな 上杉」
「そんな事関係ないです 退いてください!」
五月から俺の手を引き何度も避けようとするが目の前の男子はそれを遮る
ただ俺を睨むのみだまじ話がねぇのかよ
何が癇に障ったか知らねぇけど先輩相手だし どちらにも被害を出す訳には行かねぇよ
「謝ればいいんですか?」
「死んだ魚見たいな目したお前が何に謝んだ」
「さーせした」
「幸太郎君 その言い方は流石に」
「上杉 お前舐めてんのか!」
「そんな訳ないですよ先輩…………手を離してください」
「ふざけんな! てめぇ何でそんな他人行儀なんだ 馬鹿にすんな」
「先輩は俺見たいな馬鹿の相手する暇あるんっすか? 卒業も近いでしょ っ」
他人行儀と言われた何だろうなまじでさ
どうしてこいつはこんなにイライラしてんだ?
その場を乗り切ろうにも胸倉を掴まれちまった
相手は毎日体を鍛える人間だ俺がどうこう出来るわけもない
五月は離すよう言うが俺は五月に『何もするな』とだけ言いされるがままだ
「先輩 やめてもらえますか? うちの高校のエースでしょ
卒業も決まって有名大学からも話来てるって聞きましたよ
俺の相手なんてしてたらせっかくのチャンスも夢も消えます……ムキになるなよ 須藤…………」
「お前にだけは言われたくねぇ!何がチャンスだ
お前が夢を語るなお前に夢を語る資格はねぇよ この意気地なしが!」
何処か吐き捨てるように掴んでいた俺をその場で離すと須藤はそのまま元居た方向へと帰って行く
一体何がしたいのか?
三年生は後半暇だと言うがマジでそうらしいな
10月ともなれば部活も引退してるだろうしそんな時に俺でも見てイラっとしたんだろう
俺をはけ口にして怒るなよ…………。
「はぁ…………面倒な奴」
「幸太郎君 大丈夫ですか 何処か怪我はしてないですか」
「ただ持ち上げられただけだ…………気にすんな」
「幸太郎君に何もなければそれでいいんです…………。」
「はぁ しょぼくれんな」
「なってません!」
「そうかよ…………。」
正直言って 生徒が、まばらな時で良かったと思う
大勢の前であんな事起こしたら須藤は教師に何と言い逃れするつもりだったんだ?
俺見たいな人間の相手なんてせずに卒業まで過ごせばいいのにさ
考えるだけで頭が痛くなる
「五月 さっきの事は見なかった事にしてくれると助かる」
「幸太郎君がそう言うなら私は口外しません でもあんな無茶はしないでください」
「へーいへい」
五月には黙っておくよう告げ
承諾を得れば止まった足を動かし今度こそ教室へと帰る事にした
男子生徒との喧嘩か…何時ぶりだろうなそんな事………。
そのまま時間は過ぎ
一花も用事があると風太郎と俺に話し
三玖と四葉の四人で勉強会を開き 遅くなる前に解散する事にした
下駄箱に向かい靴を探す
出入口では五月と二乃や三玖も待っていた
二乃は人目がある為何時もの態度はしてこないが雰囲気で判断は出来る、機嫌が悪い………。
「アンタ 今日呼ばれたでしょ」
「否定はしねぇ………。」
「仮にも家庭教師なんだから気をつけてよね」
「認めるのか?」
「ち 違うわよ!」
「コータロー 先生達から何か言われた?」
「停学も退学もねぇから 前向けよ」
「これからも勉強教えてね」
「補佐だけど任せろ!」
出入口前でそんな会話をしていれば俺を呼ぶ声が聞こえ後ろを振り向けば
一人のポニーテールが似合う小柄な女子生徒がこちらにお辞儀していた
俺はその子を知ってるし 向うも俺を知っている
学年は同じでクラスは違うだけだ
「あの 上杉先輩 昨日はありがとうございます」
「あ、あぁ 気にすんなよ 誰にも初めてはあんだしよ」
「はぁ? 初めてとかえ? あんたマジで何言ってんの」
「コータロー どういう意味?」
「幸太郎君 詳しく聞かせてもらえますか?」
「二乃 お前は余計な言い回しするな 二人も落ち着け別に何もしてねぇよ」
「すみません 勘違いされる言い方をして 私は2年の須藤真弓と言います…。上杉先輩とはバイト先が同じなんです」
「ん こいつが先輩?同じ学年よね?」
「あ あのこれ そうです 言葉足らずでした 私より先にバイトしてたのでついそう呼んでいて」
「あんたが先輩ねぇ」
「うるさい」
「幸太郎君 須藤ってまさかあの体の大きな方ですか」
「まぁ…そうだな」
俺に絡んできた 三年生須藤和之とこの小柄な二年生須藤真弓は遺伝子レベルがビックバンでも起こしたのかと言いたいほど細胞レベルで似ていないと言っていい
あいつを見た五月は『嘘ですよね』と何とも失礼な事を口走っている
「コータローも失礼な事言ってたよ」
「聞き流せ」
「それでこの子がアンタに何をされたって言うの」
「されたと言うか 昨日バイト先で 酔っぱらったお客さんから私を庇って殴られてしまって
ごめんなさい先輩 中々お礼を言えず」
「良いよ別に 俺は気にしねぇし」
「その傷って この子を庇ったから出来たの? こいつが」
「はい 先輩はバイト先でも真面目で仕事も丁寧に教えてくれるんです」
「真弓ちゃん そう言う事言わなくて良いから…………」
「ま まゆみちゃん 幸太郎君どいう関係なんですか?
さっきの須藤さんと何か関係あるんですか」
「まさか 兄が何かしたんですか? 昨日の事知って朝から上杉って言ってたんで ごめんなさい」
「真弓ちゃんが謝る事じゃねぇーよ それに何もされてねぇから」
「兄は頭が固くて 融通が利かないし 考えなしの人間ですが、上杉先輩にお礼を言いたかったんだと思います 私が怪我をしなかったのが先輩のお陰と話したら納得してくれたんで」
妹と言う存在は兄を説明する時には毒を吐かないと死んでしまう病にでもかかっているだろうか?
彼女が教えてくれた事であいつが俺に絡んできた理由も何となく察する事は出来た
必死に兄を庇っている子だ 俺は何も言う事はねぇよ
「話は理解しました でも幸太郎君は何でそれを言わないんですか」
「別に周りに言いふらす事でもねぇだろ?」
「それだと周りも勘違いしてコータローの変な噂が広まるだけ」
「俺は気にしねぇー」
人に説明したところで何がかわるんだ?
周りの人間なんて同調圧力で生きてるだけだ何も変わらん
「アンタの拗らせ方も相当よね」
「うるせぇー んで真弓ちゃんは今後バイトは続けるのか?」
「兄から 危ないようなら辞めさせると暫くは行けそうにありません」
「そうか まぁ何とかするか 店長には話したのか」
「はい 昨日の事で 私の事を気にしてくれて心のケアも大事だと」
「ОK分かった」
「それで 上杉先輩の本命の方って誰ですか」
『『---------!!』』
「コータローとはそんな関係じゃないから」
「そうです 私達は幸太郎君とは疚しい事はありませんから」
「それはないからー」
「一斉に否定されると泣けてくるんだが?」
流石に俺もそこまで言われればへこんじまうぞ?
二乃は分かるが二人もそこまで必死に言ってくるのか
信頼が下がっていたと思ってたけどそれなりに傷つく
「なら 私にもチャンスありますよね?」
「冗談はやめておけ 俺が須藤先輩に殺されるわ」
「あっははは 残念です」
「からかうな んじゃ きーつけて帰れよ」
(先輩 兄はああ云ってますが 先輩の事信頼してるんです 早く仲直りしてくださいね)
「無理言うな…………まぁなる様にするさ」
「はいでは失礼します 先輩話せる相手が出来て良かったですね」
「余計なお世話だ!」
まるで嵐 あっという間の出来事だ
須藤真弓は俺にお礼を伝えれば去って行き
同時にシフトにも穴が開く事が確定してしまう
兄と仲良くしてくださいか…幾ら真弓ちゃんの頼みでも
可能な事と無理な事ってものは存在する それが俺と須藤との関係だ
今日だってあいつと話したのいつ以来か覚えてねぇ程だ
なる様になると言っていたが状況は芳しくないんだよ
「コータロー………チャンスって何」
「知らねーよ」
「そう言う事は早いと思うんですよ幸太郎君?」
「五月は目が笑ってねぇよ」
「アンタもとことん馬鹿よね」
「お前には言われたくねぇよ!」
頬の怪我が元で生まれた今日の騒動
俺は非常に疲れた
今日という日はとことん俺とはかみ合わない一日だったが
俺の怪我を見ても怪しむどころか心配してくれるこいつらには感謝をしている
二乃も悪態は着くが怪我を見ても「それが何?」と言った感じで何時もと変わりはなかった
誰一人俺が問題を起こしたとは思ってないのだ
須藤の件も五月は真弓ちゃんに話す事はなかったし
こいつには借りをまた作ってしまったな
「なんか ありがとな お前ら」
「あんたが素直に言うのキモイんだけど」
「うっせー 俺は帰る」
「あっ コータローが拗ねた!」
オリキャラ説明
須藤和之 高校3年生
上杉幸太郎とは犬猿の仲と言われ彼とは一方的な小競り合いを起こす
基本的には熱血漢ある男子生徒で後輩からも好かれている
高校球児でサウスポー 有名大学もスカウトされ 将来の夢はプロ野球と語る
須郷真弓 高校2年生
上杉幸太郎と同学年で彼とは別のクラス
小柄でありポニーテールの髪型が特徴で兄とは似ても似つかない
自分が働くバイト先の幸太郎を先輩と呼んでいる
彼女もまた幸太郎の過去を知る一人で彼が不良少年と呼ばれても話しかける人物である