見た目は出ましたが 詳しい性格は分かりませんからね
一度らいはを見て「あいつに似て来たな」と勇也さんが語るシーンがあるくらいでしたね
母はとても笑顔が素敵で とても元気な人間だ
俺はそんな母が大好きだ
そして母と共に俺を育てた父である 勇也さんを俺は尊敬している
今ほど貧乏ではないが、裕福と言う程でもない
ただ普通の家だった そんな普通の家で普通に暮すその当たり前が俺の大切な記憶だ
でも母は体が弱かった いや弱くなったと言った方が良いだろう
元より病を患っていた
らいはが生まれた頃には母は病院にいることが多かった だけどそんな母でも夢があった
そして父は母の夢の為に毎日汗水たらして仕事漬けの毎日
夢を追い続ける母も 彼女を支える父の姿も俺は大好きだった…………。
俺もあの人のようになろう そう決心した
俺が家族を守るのだ 母と父が帰ってくるこの家を守るのだと…………。
「ねぇ こうちゃん やっとお母さんの夢は叶うんだよ お父さんに感謝しないとね」
俺の手を引く母はとても嬉しそうな笑みを浮かべまるで子供のようだった
やったー 良かった 嬉しいよ 子供ながら自分は言えるだけの事を口にした
だけど 俺の願いは叶わなかった 母の願いも叶わなかった
彼女は帰ってこなかった…………。
あの日全てがかわった………俺が見た母に笑顔はなく
何も言わず 目の前で…………。
そして あの男と出会った 『最善は尽くした』 その言葉で片付けたあの男に……。
医者は嫌いだ 母を救えない医者は嫌いだ そんな医者は俺は大っ嫌いだ
家には多額の借金だけが残り 家族は悲しみに明け暮れた
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妹は体が弱い 母と同じ病気ではないがそれでも彼女に負担をかけ過ぎれば、何時かはこうなる…
分かっていた事だろう 上杉幸太郎…………。
「らいは ただいま今準備するからまってろ」
「お兄ちゃん…………」
「寝てろ 俺がついてるから 今はゆっくり休んでろ 勇也さんは明日まで帰れない」
帰ってくる中 俺は出来うる限りの準備をして来た
どれが必要で今のらいは少しでも元気に出来るのか
もう誰も失いたくない
林間学校なんて 俺にはどうだっていい 家族が俺にとっての生きる意味だ
「お兄ちゃんも風邪うつるよ」
「俺は丈夫だ これくらいは平気だ今は寝て居ろ」
「また学校にいけなくなるよ…………」
「気にするな」
「林間学校の話聞きたいな…………」
学校に行けなくなる らいは それをお前が気に病む事はない
あれは俺の責任だ 俺が馬鹿だったからあんなことになっただけだ。
だから今はゆっくり休め…………。
それに学校の事なら俺ではなく風太郎が聞かせてくれるはずだ
暫くすればらいは眠りにつく
余程体に負荷をかけていたようだ
ずっと笑顔で俺がバイトで疲れても頑張れたのは妹の笑顔があったから
みんなの為に頑張る妹 こんな小さな妹に負担をかけていた
あの笑顔の中でこいつはどれだけ頑張っていたんだ
「俺は 兄失格だ」
また あの頃と同じだ 俺は何を浮かれていたんだろうな
ガタンと後方で音が鳴る
振り向く必要もない 帰ってきたのだろう
きっと学校側が連絡したんだろう
「風太郎 どうした」
「お前何で 黙ってた」
「明日林間学校だろ お前は休め 一花には俺から謝っておく 風太郎……一花を頼んだぞ」
「そうじゃない 何で何時も一人でやろうとするんだ」
「俺はお前らの兄だ それが俺のする事だ 兄を信じろ 明日に響く休め」
「…………」
風太郎は何も言わない
弟にまで心配をかける程俺は馬鹿な兄貴だよ
一人でやろうとするな
五月や風太郎を不器用と言ったが 人の事は言えないだろう
でも俺はこの生き方をやめないだろう
一花 二乃 三玖 四葉 五月 林間学校が終わったら謝ろう
「風太郎は寝ないのか」
「お前こそ寝ないのか」
「お前が寝たら寝るさ」
「嘘つくな」
「嘘はつかないさ」
(お前の口調が荒くない時は何か抱えてる時だって俺にだって分かるぞ)
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明け方だ 風太郎は結局 俺の隣でずっとらいはを見守っていた
ずっと起きていた
あれだけ学校で話してるのに家で二人で無言だった
ただひたすらに妹の回復を願って…………。
時間を見れば、バスはとっくに出ている時間だ
俺達二人は 肝試し実行委員と補佐だ。誰かが代わりをやらされるのだろうな…そいつに申し訳ないし、悪いとは思う
「らいはーーーー生きてるか」
「勇也さん お疲れ様です らいは寝てます」
「親父 声を下げてくれまだ寝てる」
「お前ら 看病してくれたのかってもう バス出てんじゃないのか!?」
勇也さんが玄関を開けて中に入ってきた
彼もどれだけ焦っていただろうか、どれだけ早く家に帰りたかっただろうか
それでも俺達を信じて時間いっぱいまで頑張って来てくれた
心配してくれるんだ それだけ報われる
「良いんですよ 俺は替えのタオル持ってきます」
「あぁ どうでもいいよ これで三日間勉強できる」
「風太郎 忘れもんだ 早く帰れなくて悪かったな 一生に一度のイベントだ 今から言っても遅くないんじゃねーか それに 幸太郎 お前もだ 今度こそ2年生をやれるんだ 少しは楽しめ」
「バスもないし 良いよ」
「俺もいいですよ 勇也さんも疲れてるんです 俺に任せてください 風太郎お前は行けよ」
勇也さんが弟に渡したしおりは何度も読み直し幾つもチェックがされていた
こいつがどれだけ林間学校を楽しみにしていたか俺がもっとしっかりしていれば
風太郎にもこんな思いさせずに済んだんだ
「あーーー お腹空いたーーー」
『『!!』』
「えっ らいは熱は」
「治ったーー でも何でお兄ちゃんがいるの ほら早く行った―」
「お前 俺達の気遣いを返せ」
「らいは…………良かった 今用意するから待っててくれ」
らいは 俺が帰ってきた時に見た弱った姿ではなく
元気に布団から跳び起きた ふと周りを見れば 林間学校の筈なのに未だいる
兄に何でいるのと体を押している
ある程度は本調子は出て来たようだけど、また何時倒れるか分からない
「幸太郎お兄ちゃんもだよ! 今度こそ楽しんでよ お兄ちゃんも遊んでよ」
「俺は良いよ 十分だから…………」
「ありがとう お兄ちゃんずっと見ててくれて でも私はもう大丈夫だから林間学校行ってきて」
「俺も幸太郎も今更 行くためのバスもないし」
妹は大丈夫 楽しんで欲しいと何度も言ってくれる
その言葉には甘えるべきなのだろうだが、俺が楽しんでも良いのだろうか
風太郎の言う通りバスは既に出ているだろうし向かう足もないのだ今更みんなに合わせる顔もない
「バスならもう出てますよ」
この家にもう一つの声が聞こえた
それはここにいる筈のない人の声だ 既にバスに乗っている筈の人物だ
「五月か…………風太郎 行ってこい」
「幸太郎君 あなたも来てください すみませんお二人をお借りします」
「いってらっしゃーい」
どこからともなく現れた五月により俺も風太郎も連行されるように連れていかれてしまう
「五月離せ!」
「今は 私の言う事をきいてください」
「なんでいるんだよ」
「バスは見送らせていただきました それにあなた達の家を知ってるのは私…だけです 私しかここへ案内できませんから」
暫く連れて行かされ 開けた道に出た
そこには一台の車 あの日風太郎と俺が見た車だ
その前には 一花 二乃 三玖 四葉 彼女と同じく本当はここにいてはいけない人達だ
なんでお前らまでここにいんだよ
「幸太郎君 あなた少しで良いんです自分を許しても良いんではないんですか?」
「…………俺にそんな資格はねぇよ」
「少しで良いんです それにらいはちゃんに言われた筈です『もう大丈夫』と
あなたは妹さんの言葉を嘘だと言う人間ですか 上杉幸太郎君」
「らいは 良い子のあいつは嘘をつきはしないさ」
「では そのらいはちゃんの為に一緒に行きましょう 幸太郎君」
「あぁ…………ありがとうな 五月」
「私 オバケが苦手なんです だから肝試しの実行委員であるお二人がいないと私がその役をやらないと行けませんから」
妹に背中を押され そして彼女達にも道を作ってもらった
ここまでしてもらって『無理だ』と言える程俺は屑ではない
それに五月が肝試しの実行委員が嫌だと言うんだ 俺達がきちんとやり遂げないとな
今は進もう…………。
「風太郎 今は行こう」
「仕方ない 行くとするか」
(みんなには黙るぞ)
(あぁ 分かってる引き返せるか)
「もう 見られたくない写真入ってるなら慎重に扱いなさい」
「あっ 悪い」
(五年前か やっぱりこの顔どっかで見たのよね)
「三玖 昨日言ってたキャンプファイヤーの話 本当に私でいいの?」
「うん その場しのぎで私やフータローが決めた事だし」
「そっか じゃあ コータローくんの相手をお姉さんがしてあげよう 五月ちゃんにも悪いけどね」
(相手を独り占めにしたい そんなことしない 私達は五等分だから それに一花なら心配ない)
(三玖が言うなら良いよね)
車に乗り込んだ俺達 合計7人と相当厳しい状態だが、こうでもしないと入れない
一番前に風太郎 後ろに 一花 四葉 二乃 最後尾に三玖 俺 五月と座っている
「あっ 俺着替えないや」
「大丈夫です 私が幸太郎君の分の三日分の服準備してますから」
「相変わらずだな お前は でも少し安心する」
「これくらいしか私には出来ませんから」
「コータロー狭くない大丈夫?」
「俺こそ邪魔じゃねーか?」
「うん大丈夫だよ」
「ようこそ 上杉さん お兄さん どうですか乗り心地は」
「良好だ」
「すげふわっふわだ」
(お兄さん 私は後悔しません 私はこの三日間を 上杉さん そしてお兄さんの思い出の1ページにしてみせます!)
『『しゅっぱーーーーつ!』』
俺達の林間学校が今始まった