「はぁ? まじか 俺達に親戚が」
「口から出た嘘で雁字搦めだ」
服を着替え 荷物を整理する中
俺と風太郎は肝試しの最中に起きた出来事をそれぞれ話した
五月が消えたが無事見つかり二乃も発見できた。
それが俺が伝えた事だが
風太郎はその二乃と少し前まで行動していた
【キンタロー】と言う架空の存在として彼女と行動していたと罰の悪そうな顔でだ…。
以前二乃に写真を見られたと話
その時に【親戚の写真】とあの頃の自分をそう伝えた
何故かその見た目好印象だったようで、その時はそのままやり過ごせたが
どうもその嘘が今になってこいつを苦しめ出したようだ
二乃の勘違いだが、彼もそれに合わせそのまま過ごし
彼女とダンスの約束までしたとか 本人はどうするべきか頭を抱えている
『キンタロー君 私と踊ってくれませんか?』
『っ…………えっと』
『待ってるからね』
『五月 見つけたぞ!』
『幸太郎君 ふえぇん』
俺が五月を見つけその裏でキンタロー(風太郎)と二乃が話を交わしていた
近くにいた理由としては納得できた
「俺と一花を組ませたのはお前だ それに二乃と約束したのはお前だろ?」
「あの格好で誤魔化しきれる自信はない」
「二乃には補正フィルターかかってんだろう」
「断るに断れない…面倒な事になった」
「俺はお前のせいで面倒な事になってるけどな」
こいつは責任感の塊だ それ故今回の事が相当悩んでるんだろう
別段伝説は信じないが、二乃は完璧に舞い上がっているそれは傍目でも分かるほどに
その気持ちを踏みにじるような事になりかねない状況に今はあり
正直に「キンタローは俺だ」と言えば良いのだが、引っ込みがつかないってのもあるんだろう
それにしても、キンタローとは、こいつも咄嗟と言うが因縁のある名前が、よく出たもんだ…あまり無関係な名前じゃねーしな
「とりあえず お前は普段通り過ごせ 下手に動いて頭使っても風邪が悪化するだけだ」
「分かってるけどどうにか誤解は解きたいだが、これを弱みにされそうだ」
「二乃は素直になれば、いい子なんだがな」
「お前は例のあれであいつの気持ちを聞いたらしいしな」
「まぁ そう言う事だ とりあえず無理はするなよ?
最悪明日は俺もお前も中野姉妹と踊る事になってんだからな…」
「幸太郎 こそ良いのか? 俺が勝手にやった事だけど」
「本当にな 寛大な兄だ 誇れ」
「流石-」
「棒読みやめろコラ まぁ 一花が何か言えば 俺はそのまま一人で過ごすさ」
俺の悪評が勝手に招いた結果だしな
その相手側を騙す真似事な訳で、実際目的自体は終わっている
一花が一言「いや」と言えば俺も素直に身を引くし元から林間学校には興味はなかったしな
らいはの頼みと五月達の事が無ければ来なかっただろうし
そこら辺歪んでるよ本当に 自分で笑えて来る
暫くは風太郎と作戦会議をし
その後は別行動をする事に
今日から朝まで冷え込むらしく 風太郎にも外に出るなら厚着しろとだけ伝え一旦外にでた
少し風に当たり休憩していれば
男手が足りないと教師に言われ俺は、キャンプファイヤーで使う丸太を運ぶ作業やらされた
言われたならやらねぇといけないだろうし これを女子に運ばせるのは忍びないしな
「っ 地味に重いな」
「おっ 次はコータローくんだ手伝おうか?」
「一花か 次は俺なんの事だ」
少し手間取っていれば、一花が奥の道から走ってきた
軽く汗をかいておりここに来るまで誰かの手伝いでもしてたんだろう
1 2 3と声を合わせ同時に端を持つ
「よっ 誰ってフータローくんとこれ運んでさ 何か可笑しな話し方だったな 彼」
「そうか あいつやってたのか 無理はすんなと言ったんだがな そっち重くないか?」
「大丈夫ー 楽ちんだよー」
「良し 重さをやろう」
「あぁー 重いな-」
「嘘だ 行くぞ 足元きーつけろよ」
「了解 了解」
軽口は変わらねぇな
肝試しの時もだが、一花は特に今回のダンスの事は考えてないようだ
俺が少々自意識過剰だったんだろう
彼女がどんな事を風太郎と話したかは知らないがそれで
あいつの心が少しでも軽くなるなら俺はそれで良い
ここ最近はあいつの頭ではキャパシティオーバーな事が多い少しでも会話できる人間が増えんのはいい傾向だ
「ありがとな 一花」
「ふぇ…」
「何だその 情けねぇ声」
「コータローくんが急におかしな事言うからだよ」
「おかしかねぇーよ ただ風太郎が話したって事だ それはいい傾向だしな」
「ふふ やっぱりお兄さんしてるね 君は」
「前も話したろ 俺は兄だ あいつの為なら俺は頑張れるさ」
「下の子の為か…………ねぇ コータローくん」
俺は風太郎やらいはの為なら自分の事は大してどうでも良いと思ってる
時には疲れて自分の行動を優先する事もあんだろうが、それでも下を優先するのが兄である俺の役目だ
会話で、何か気になるのか、一花は聞いてきた このタイミングは明日のダンスに関わることか?
「なんだー 疲れたならいいぞここで下ろしても?」
「そうじゃなくてさ…明日踊る見たいだね私達」
「あぁー 何かすまんな 俺何かとだとお前も苦労するよな 」
「コータローくんは私と踊りたくない?」
「それはねぇーよ 一花と踊れるんだろ 人生中でも良い事だ」
「……そうなんだ」
「でも俺とはだめだ 俺は学園で嫌われもんだ 一花に変な噂が立つ」
「……」
一花はいい奴だ 誰とでも笑顔で時には、本心を隠すだろうが、それでも
みんなには、姉として学園では友人として プライベートでは女優だ
その一花が俺何かといれば何を言われるか分からない
こいつの障害にだけはなりたくない…。
会話は途切れ 暫く無言で歩く 建物までつけば丸太は最後の一本だ…。これさへ運べば、俺たちも休める
「って 一花 どうした」
「あれ……私どうしてかな」
一花は泣いていた 俺はまた余計な事言っちまったんだろう
こいつを泣かせるとは馬鹿にもほどがある
何してんだおれは……
持っていた丸太を壁に寄りかかるように置き
近くに一花を座らせ落ち着くまで待機することにした。
「……一花…ん?」
その時だ
バタン 突然音がした
『よし』と言う男性の声が聞こえる
急いで正面の扉をまで行けば鍵がかかり閉まっていた
何も確認なく締めやがったぞ! 少しは中を確認しやがれ
「まじかよ」
「えぇ……」
「たっく ぶっ壊すか」
「いや これは防犯センサーなる奴だよ 警備員飛んでくるよ」
「っ ほれ 今日は冷える これ着てろ」
一花は薄着だ 流石にこのままいれば風邪を引いてしまう
俺は普段から厚着だすこしくらい減っても変わりない
着ていた服を一枚彼女に手渡す
『ありがとね』と声をくれた一花は、その場で上着を羽織る
でもこうなったの俺のせいでもあるしな 一花は巻き込まれただけだ
壊せば警備員が飛んでくる 適当に説明すれば良いが信用されんのか?
「俺が連れ込んだって言えば………」
「それは駄目 絶対ダメ」
「俺は別に気にしねぇよ 誰も信じないしな」
「君は 時々悲しいことを言うね」
「実際そうだ 人間なんて少数の意見を聞きはしない なら俺はそんな無駄な事はしないさ
でも まぁ……最近はその考えも少しは変わったとは思う時もある」
「そして貰えると嬉しいかな 君にそんな事はさせられないよ」
「さて 防犯センサーの解除だけどよ これは無理だ届かねぇな それに俺には解体出来る程繊細な指なんてないしな はぁ」
「どうしよね 本当に……」
「最悪はけ破るぞ」
「うん わかったよ」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
幸太郎と一花が閉じ込められからそれなりの時間が経過しただろうか
このままいても風邪をひくと彼はどこらかマッチを取り出した
そのマッチは朝方に参加したカレー作りの際に彼が使ったものである
火の当番として働いた事がここに来て良い効果を出したようだ
学園の行事も悪くないと得意げに話すが『参加したからこうなった』と少し頭を抱える
「これで寒さは凌げるな」
「コータローくんはそう言えば五月ちゃんと同じ班だったからね その時のマッチなんだね」
「そう言う事だ この中の板を借りたが、今はこんな状況だ しゃーなしだ」
「ほんと困るよね もう少し確認してから閉めてもらわないとー」
「あぁ 『これでいいな』って 馬鹿か? 全部運べばそれで良いのかよ たく」
「ふふ」
「どうした 一花?」
「何でもないよ」
「そうか 何かあれば言えよな 聞くからよ」
「…………」
二人は誰かが助けに来る間に 他愛もない会話で時間を過ごす
彼が力になると話せば、一花は少し時間を開けた後『よし』と軽く気合を入れる
そして彼女は口を開く
彼ならば聞いてくれるだろうし きっと反対はしないだろうと彼女なりに彼を信用している
そうでもないとここで二人きりと言う状況で普通に話す事も出来ないだろう
「ねぇ…………コータローくん 私学校辞めるかも」
その言葉で彼の表情は少し変わるただ 目の前で話す彼女はそれをふざけて話す訳でもない
彼女なりに考えた結果なのだろうと彼は思ったようだ
「…… それはお前の夢が順調と捉えれば良いのか」
「うん おかげさまで」
一花は話す 今のままでは駄目なのだろうと
同じく夢を持つ者たちもそれぞれのやり方で道を追っていると言う
彼女のなりに考えた結果の一つが学校を去る事だ
それもまた一つの方法だろうと彼も納得した それで彼女の夢が叶うならと
「寂しくないと言えば嘘だがな…………ちゃんと卒業させてやりたいってのもあるさ…。
俺はお前の夢を応援している その為の努力も惜しまない でも失敗しても諦めないで欲しい…前に進み続けて欲しいんだ 」
「コータローくんはそこまで言ってくれるのに 君は夢も夢を持つ事もしないんだよね」
「俺にその資格がねぇからな……半端な人間だ 誰かに言われただけで揺れる夢なんて意味はないさ」
彼は一度彼女に話した 自分は夢を持たないとそして持つ気もないとその理由も彼は決して口にはしない
ただ自分にはそんな資格ないとそう言うだけだ
でも彼は決して夢を馬鹿にする人間ではない 持たざる自分は持つ人を応援しようそしてそれが不可能ではないと証明して欲しいと思っているのだ、だから一花の女優として活躍する事を自分の事のように彼は喜んでくれる同時に一花は、それが寂しくも見えるのだろう…どこか諦めきった彼のその表情が…………。
「風太郎もきっと応援してくれる 嫌味は言いそうだがな」
「彼らしいね」
「あいつは素直じゃねーからな 俺も人の事は言えねぇけどよ」
「本当に お兄ちゃんしてるね」
「兄貴だからな…………」
「兄だからか……ねぇコータローくん一つ聞いて良いかな?」
「面倒な事じゃなければな」
「うーんとね 私といや違うな 私達姉妹と君は昔何処かであった事があるかな?」
風太郎がどんな反応をするのか、兄だから分かると彼は言いきる
その姿を見て 彼女はある事を彼に聞く決心がついた
それは数日前 二乃が持ってきたアルバム その中にあった一枚の写真
自分達姉妹が写り その中にいたもう一人の謎の少年
一花が手を引き 二乃が抱き着く彼だ 『こー』と呼ばれる笑顔が似合う彼の事がずっと頭に残っているのだ その彼と仏頂面な彼が何処か重なって見えると彼女は思い
彼に聞いた『あった事があるか』と 彼は考えるように口に手を当て『一花が最初にか』と独り言のように呟けば、考えが纏まったのか話をしてくれた…。
「あるよ…………ずっと昔だ お前とお前ら姉妹とな 」
「そうなんだね やっぱり あの子が君なんだね こーお兄ちゃん」
「こーお兄ちゃんか随分懐かしい呼ばれ方だな 二乃からコウって呼ばれてたな
それで一花は全部思い出したのか?」
「少しだけね 家にアルバムがあってそこに君が写っていた もしかしたら私だけかな 気づいてたのは
二乃は多分 君と彼を同一人物とは思って無さそうだけど」
「そりゃまぁ…………今と昔では全然違うし 二乃も気づく訳ねぇよな」
「昔はあれだけ 仲良さそうだったのに 今は随分と言われてるよね」
「無意識に俺を誰かと重ね それをどう反応して良いか分かんねぇだろう 反抗期の妹だ」
「お兄ちゃんも大変だね」
「兄なんて そんなもんだよ… よし詳しい事は林間学校が終わったら話してやるよ」
「今聞きたいけど………… うん 終わったら楽しみにしてるね」
(これで心残りなくなったかな………私はこれで良い 踏ん切りをつけよう)
彼に感じていた既視感と懐かしさの正体は嘘では無かった
この少年があの頃自分達と遊んでくれていた こーと呼ばれいた少年本人だった
それを思えば彼が「家族だ」と言い張ったのも納得であるし 自分が「お兄ちゃん」と呼ぶ事に抵抗がないのも納得できる ただ「兄」と呼んでいたのは基本的に二乃だったらしく
今とは彼への接し方も真逆だったと述べる そうした理由なのだろう彼が二乃に何を言われても本気で怒らないのは、妹の言う事だと彼は聞き入れていたのだろう
「少しだけで 気になってたことが聞けたからすっきりした」
「そうかい なら良かった」
「うん これならいける」
「どうした一花?」
「ねぇ コータローくん 今夜ここで二人でキャンプファイヤーしようか?」
「まぁ…………小さい炎は確かにあるけどよ 俺は踊るのとか苦手だぞ」
何か決心をつけたようで何処か儚げな表情で彼女は彼に手を伸ばす
少々困惑していたが、彼女の決心を読み取ったのかはたまた付き合いが良いのか
彼はそれを拒否はせず その場から立てば彼女の方をじっと見つめる
「四葉がキャンプファイヤーの伝説とか言ってたの聞いたんだけど どんな話なの?」
彼の手を取り少しばかりその場で踊る中 彼女は先日妹が話したことを思い出していた
それは図書室での彼等の会話だ 当然それを彼は一花も聞いており
あの場に現れたのかと思ったのだが彼女は話が終わった頃に現れ全容は知らないと語る
話して良いものかと彼は考えるが、黙っておくのも後味悪いと思い彼女に学園での伝説を話した
それはキャンプファイヤーの最後に手を繋いでいた二人は永遠に結ばれると言うロマンティックな内容で彼も恋や愛は好きだが、伝説自体はあまり信用してないと話す
「え…………コータローくん それを三玖は知ってるの?」
突然足を止める彼女は彼にそう問う
彼は首を縦に振る その答えに彼女の表情は一気に蒼白となった
自分を抱くようにその場で肩を揺らし『そんな筈じゃ 三玖 私は』と何度も妹の名前呼ぶ
彼女は知っている 目の前の彼を妹である中野三玖はどう思っているのか
だから ただ踊るだけでも良い 彼と踊ってみればと妹に言うが
「一花で良い」と言われ 彼女もそれに承諾 ただ先程彼と話す中で
彼女も決心がつき 明日のダンスは無しでいこう 彼とはそれで終わりだ
これからもずっと今のままだと だが自分は知ってしまった
明日行われる キャンプファイヤーでの踊りの意味を 妹が何故それを自分に言わないのか
何故自分は、軽い気持ちで妹と接して居たのだろう
だから彼女は言うのだ『そんな筈じゃ そんなつもりじゃないよ』と狼狽する彼女を見て
少年は自分の手を彼女の頭の上においた ゆっくりと頭を撫でる
落ち着かせるように彼女一人ではないと一花に教えるように
彼女は顔を上げれば、そこには彼がいる 自分一人ではない
「落ち着け 一花 俺がいる 一人で抱え込むな」
「…………コータローくん こーくん…………」
(あれ 今 またどきって何だろうこの気持ち)
「お前がどうして今 三玖に謝っているか分かんねぇけど 俺のせいだろうな
そして俺はお前と三玖を会わせてやらねぇといけない 少々強引だが この手しかねぇな」
「どうするの コータローくん?」
「こうする !!」
バキッ…
この手は最後の最後にと彼は思い 強行手段は避けていた
だが 時間も過ぎこれ以上ここにいれば自分も彼女も体調を崩す
それに一花が三玖の名前を呼んでいる 兄として彼は二人を会わせる必要があると覚悟を決めた
彼女に頭を出さないよう言えば 近場にある木材を手に取り
扉に向かい叩きつける そして思いっきり蹴りも入れる
扉にバキっと音が鳴り 微かに外の光が入ってくる
同時に 防犯センサーが衝撃を感知し 反応そして寒さ対策での火を感知し
スプリンクラーも作動した 彼は勿論服を着こむ一花にも降り注ぐ
それでも彼は何度も 扉をたたく だがそろそろ体を騙すのも限界に近いのか
その場に膝から座り込む だが手を止めない 今更どんな悪評を言われようが彼は気にはしない
自分を送り届けた 父と妹に謝りの言葉をつぶやき
何としても ここから出る為に手を動かす
「コータローくん それ以上は手も怪我するよ」
「はぁ…………大丈夫だ こんくらい」
咄嗟に彼を止めようとするが、彼はその彼女の為に動く
止まることは無い…………。
暫くした後に 扉がガチャリと 外側から鍵が開く音がする
少し後ずされば、扉は開かれ そとの光が入り 二人は顔を背ける
「誰だ? すまねぇ 一花がいんだ 連れてってくれ このままだと風邪引いちまう」
「それはコータローくんもだよ」
気づけば二人はスプリンクラーで体中濡れていた
一花は彼から上着を借りているからまだましだが、彼は厚着とは言え服のみだ
このままでは彼も危ないと言うが、実際既に幸太郎は病人であり今更と言う状況だが
それを知るのは彼と同じく風邪をひく風太郎だけだ
二人のやり取りを見て その倉庫の外の人間
二つの影の人物 その一人が口を開く
「幸太郎君 一花 ここで何をしてるんですか?」
「…………一花」
その先にいたのは 五月と三玖の二人だった
彼女達から見ればびしょ濡れの幸太郎と一花が薄暗い 倉庫で二人きりと言う状況がどういう事なのか聞きたいのだ…………。