気づけば朝だ
二人が扉を開けた後はあんまり覚えてねぇな
ただ去って行く二人の表情が印象的だった事だ
あの顔は納得してない顔だった 今日のうちに二人を探して話をしないとな
「風太郎、生きてるか」
「ごほ ごほ何とかな? お前も無事か、こんな季節に水浸しはきついだろう」
隣のベットで横になる風太郎
俺や一花を探す手伝いで体力を消耗して
風邪がぶり返したようだ 悪い事をしたなこいつは楽しみしてたのにな
謝罪を入れるが『まずは今日を乗り切れ』と言われてしまった
そうだな今日だ今日で林間学校が終わるそれまでに何とかして
五月と三玖にはきちんと話をしねぇとな
ガチャ
「上杉さん お兄さん 自由参加だからって逃がしませんよー」
「だるいし寝る」
「無理だ相手は四葉だ 勝てねぇよ」
現れた四女は力強い
俺も風太郎もベットから引きすり出され
あっという間に着替えを渡された
だるい体に気合を叩きこみ何とか力を入れる
昨日の蹴りで足も痛むが何とするしかない
まだ時間は残ってんだ…………。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
風太郎が誰かに教わっている姿とはとても新鮮である
四葉に手を引かれ滑っているのを見るのも何だか良いもんだな
あいつも楽しそうだ まぁ何処か辛そうでもあるが、それは口にしない
せっかくの思い出が全てパーになる
「……………………」
「お兄さんも滑りましょう」
「あっあ………… 少し待っててくれ」
やばい本格的にきつくなってきた
四葉には悪いけど俺は暫く近場で休むぞ
昨日の今日でそろそろ限界に近いのだろうな
ちきしょうが…………。
「はぁはぁ…………」
遠目で向こうを眺めれば三玖も合流した様子だ
四葉の話では一花も倒れたと言っていた
風邪を移してしまったか、あんな事になるなら火なんてつけずさっさと扉をぶち壊すべきだったな
「風太郎の奴 こけてやがるな 楽しそうで良いな…………。」
今日までもてば万々歳だが、は果たしてもつのかこれは?
今までこんなに動いた事はない騙し騙しも後何時までもつか分かんねぇぞ
少しでも体力を温存する為ベンチまで向かい座っているが視線も定まらないし…息も上がってきた
「君は滑らないの…?」
「誰だ お前は?」
「私だよ 一花…!」
「あぁ そうか 一花か …………はぁはぁ 何でここにいんだよ寝てる筈だろうが」
「まだ 万全じゃないけどね」
「無理すんな 風邪引てんだろ 今は帰れ はぁ」
「幸太郎君こそ きつそうだね」
「平気だ これくらい それと昨日の話だけどさ 帰ったら話すから待ってろ」
「あ うん わかったよ 幸太郎君も昨日のこと秘密にしてね」
「分かってる 墓まで持ってく 用事は終わりか なら風太郎達と合流してこい」
風邪で寝込んだと言う話だが、こいつも相当無理をしてんな
部屋から抜け出して来やがった
顔も完全に隠して判断も出来んぞ
「…………はぁ」
「大丈夫?」
「まだ いんのか…………俺は良い 風太郎達を見てればそれで十分だ」
「少しだけでいいから滑ろうよ」
「まぁ……少しだけな 俺は滑ったら帰るぞ」
「さぁー 行こうか、みんなが待ってるよー」
「くっそ 元気有り余ってるな」
これ以上は何を言っても引く気はないみたいだし
適当に滑って後はやり過ごすか…………
スキー板に足を乗せ後は重心を前に出すだけだ…………。
まぁ滑った事は一度もねぇーけどな
「……………………風が気持ちいいな」
「って 幸太郎君何処いくのーーー」
身を任せ俺はそのまま何処かへと走って行く
分かんねぇよ止まり方なんて風太郎もさっきこんな感じに落ちてたな
ーーーーーー
ーーーー
ーー
「…………はぁ 疲れた 戻るか」
そのまま転んだが、雪がクッションとなったんだろう
体に痛みはなく死ぬことはなかった
あのスピードだし 運が悪いと何が起きてたか分からん
けど このまま雪に埋もれるのも悪くないかもな
「まぁ 何時までもとは行かねぇよな」
「大丈夫? 幸太郎君」
「あぁ…………悪くねぇな 滑るのも」
「はっはは なら良かった」
「あぁ 一旦みんなの所に戻るか」
「そうだね 三玖達も待ってるから」
「三玖か…………昨日の事話さねぇと それに五月にも説明しねぇと 一花は悪くねぇんだ
おれが悪いんだ…………はぁはぁ」
「こ 幸太郎君 本当に大丈夫」
「あっあ 大丈夫だこれくらい」
くっそ視界がぼやけて一花の顔も判別出来ねぇよ
何とか手を借りて立ち上がるけど全く力が入らない
ただ 一花に心配はかけられない今はみんなの所に向かわねぇとな…………
「…………」
「いくぞ 一花」
今日の一花はやっぱり不調だな
様子も変だし 口調何かおかしいな 同じ筈なのに違和感が出てくっぞ
「よう 風太郎 生きてるかぁ?」
「幸太郎も生きてるかぁ」
「何とかなぁ」
声で分かるこいつも限界が近い
何時ぶっ倒れてもおかしくねぇな
そんな時に鬼ごっことか無茶しやがって…………。
俺は流石に無理だな 足もまともに動かんし
ここに来るまで二乃からも追いかけられたようだし三玖のお陰で何とか回避したそうだが
そうそう同じ手は使えんだろうな
「俺はやらんぞー 立てんからな」
「そうかい 俺は逃げるからな」
風太郎は力を振り絞り何処かへと向かって行く
から元気も良い所だな無理はすんなよ
「はぁ…………」
「コータロー?辛そうだよ」
「何だ いたのか」
「コータローの横にいる」
ふと横を見ればかまくらがある
そこから三玖の声が聞こえて来た
風太郎が逃げたと言った場所は俺の真横だったみたいだ
駄目だ 判断力もねぇよ…………。
「コータローもはいる?」
「あぁ 少し休むわ」
「どうぞ…………」
「失礼します…………よっ 昨日ぶりだな さっきも見かけたけどな」
「コータローが何処か行くから」
「わりぃな………四葉から逃げてんのか?」
「うん フータローに言われた 四葉とハンデはいらないって公平でいこうって」
「そうだろうな それは駄目だ 風太郎ならそう言う お前が努力した日本史と同じだ…。ハンデなんてそれは努力を否定する事だ」
「フータローと同じ事言うんだね」
先ほど逃走を開始した弟は少しばかり三玖と話をしていたようだ
『あいつが後天的に身に着けたもんだ その努力を否定したくない』
本当にカッコいい事を言う奴だよ
でもあいつの意見を俺も尊重する 五つ子は全員同じで誰かが一人飛びぬけているという訳でもない
四葉の運動力や三玖の日本史に関する知識 どれも彼女達が努力して得たものだ
それを否定する真似は弟は好まない
遊びで本気の答えは格好が悪いが、そういう人間だ 上杉風太郎とは…………
「まぁ……兄弟だからな でも良かった 三玖と話せて」
「…………」
「昨日のあれは何でもねぇよ 俺が馬鹿だから
一花も巻き込んでさ それなのに俺は何も言えず寝ちまった 風邪までひかせたよ」
あの一件は俺の判断ミスだもう少しスマートに出来た筈だ
それなのに頭が回らず三玖と一花を早く合わせたくて一花のあんな顔見てられねぇさ
「妹を心配する姉なんだ 早く会わせたくてな」
「大丈夫だよ 分かってるから」
「そうか……なら良いんだ」
「そう言えば コータロー 一花とさっき電話したんだ」
「おう 何だって…………」
「一人でいる 五月を見つけて欲しいって…………」
「五月ねぇ…………了解」
三玖は風太郎と別れ直ぐに一花と電話をした
その様子からどうやらまだ本調子ではないと言う事だ
何とか帰ると話すが、その後に一人いる五月を探して欲しいと伝えたようで、風太郎もそれを聞いていたと話す
そうかそう言う事か今理解した あの違和感の正体だ
あの一花の様子だ…………。
不自然過ぎる話し方と俺へのよそよそしさ 普段の一花ではああはならないだろうな
「三玖 風太郎に電話を繋いでくれ はぁ…………」
「うん わかったけど はい」
「よう 風太郎 お前も分かってるだろう? 何処に居るか」
最早最後の馬鹿力だ、今はそれを使いきるだけだ
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二時間前
「いやー悪いね こんな時に体調崩すなんてついてないなー」
「事故とはいえ 不注意が招いた結果です 反省して日中は大人しくしてください」
「え~~」
部屋のベットの上で顔を赤らめやや息苦しそうにしている一花が五月に介抱されている
昨日の一件でスプリンクラーが作動し体を冷やした事が原因だろう
朝方には7度代の熱を出し咳をしている姿も目立ち
五月からは『今日は一日ここにいる事』と注意をうけた 本人は今日のスキーを楽しみにしており
やや残念そうにしている 彼女の言葉に従う一花だがあまり強気に言えないのは他にも理由がある
それは 一花と彼が服を濡らし 倉庫でうずくまっていた事だ
最初は『幸太郎君 見ませんでした?』『一花とコータロー見なかった』
五月と三玖の言葉から始まった 案の定彼と関わろうとしない人間ばかりおり
彼の居場所は分からず仕舞い 風太郎の手も借りて懸命に探すが成果は見込めず
スマホに連絡をしようにも部屋に置きっぱなし 一花も充電がないのか繋がらず
彼等は焦った 周囲の生徒からは『上杉が中野さんを何処かに』と幸太郎本人が思っていた通り
そんな反応がちらほらと出始め 『ここにいても埒があきません 森の中を探しましょう』
五月は静かな怒りを滲ませ 森の方へと向かった
ただ『きゃぁあああああ』と入って行ってそうそうに森の中で泣きながら逃走し
『ここにはいませんね』と直ぐに弱音を吐いていた そんな時だ
近くの倉庫から物音がし センサーが鳴っているのだ
倉庫前まで来れば 中から壊されたように 扉には穴が開いており
五月は持っていた鍵を使い 恐る恐る 三玖と共に扉を開ける
そして二人は見た びしょ濡れになりながら 荒い息をする幸太郎
彼を支えるように同じく濡れている一花の姿を……
その後は教員が駆けつけ二人を問い質すが
『さーせんでした 俺の不注意です 勝手にどうぞ~』と彼は適当な態度で教師を煽るかのようにそう言い
部屋へと戻って行く
一花本人も要領を得ない状況で『すみませんでした』と謝るのみだ
五月と三玖は二人の話を聞けば、それぞれ部屋へと戻り
その夜に一花は熱を出し 部屋で安静にしてるよう教師からも言い渡されたのである
「あー…五月ちゃんは、私に付き合わなくていいからスキーしてきな」
「ですが…」
「大丈夫 私も回復したら合流するから …それともコータローくんと顔 合わせづらい?」
「……」
「あの旅館からずっと警戒してたもんね」
「やはり あれは一花でしたか」
観念したのか一花は林間学校初日 七人で寝たあの部屋での事を五月に明かした
朝起きれば 自分の隣では無防備な姿見で寝息をたてる、彼の姿だ 多少なりと興味は持っていた一花
ふいに彼の顔に自分の顔を近づけていた その時だ 五月が部屋に現れたのは……
すぐに扉は閉められたが、あの現場は 確かに見られた
誰が幸太郎に対しそのような事をしようとしたのか
五月はこの林間学校の最中 色々と周りを見ていたのだ……
なるべく彼の周りで行動し 彼が誰といるのか観察していれば自ずとあの現場にいた人物も探せるはずだとだから無理をしてまで肝試しにも参加し 二乃にも聞いてみようかと思い話をかけようとした瞬間
風太郎がふんするピエロが現れ 彼女は恐怖のあまり逃げ出した
当然 二乃とは逸れ 一人森を彷徨う中で 彼と出くわした
その時に彼に聞こうか迷っていた中で 二乃とも再会し結局は聞くタイミングをも失った
そして 幸太郎が一花と共に倉庫で見つかるという騒動まで発展し始め
周りではそれが噂され始めていた 一花もそれは耳にしており
『彼には悪い事をしたな』と口にもらす
「ねぇ……五月ちゃん なんで彼をそうまでした 気遣うのかな?」
「そ それは……」
「友達って言うには少し行動がオーバー過ぎるし 彼にはそんな理由もないって言うから」
「彼はきっと分からないと思いますから」
「ならさ 私には教えてくれる?」
「すみません 一花 今はこれを言うにはいきません」
「残念……お姉さんは信用ない見たい」
「そう言う訳ではありません ただ私がどうしてもと」
「意地をはっているの」
「ち 違います 意地とかではなく」
ずっと一花は気になっていた
初めて彼と学園出会った日から いやその前からだ 学園に転校したその日から
妹である 五月の様子は何処かおかしいもので口々に『上杉君』と言っていた
『上杉?』と頭を傾げる 一花 今思えば あれは幼い頃に知っていた彼の名前
思い出しかけていた予兆ではないのかと……
それからここ三ヶ月の事 家庭教師の合間を見計るかのように
彼女は彼に何度も接触しており 『面倒』と彼は口に出すも決して彼女を怒鳴る事はしなかった
一度 少しトラブルは合ったものの無事にそれも解決したようであり一花も満足したいる
そして昨日 彼と話すうちに 彼女の心にも変化が出始めていた
本当はただ 不思議な少年で 何処か自分達よりも大人びているような彼に興味を持っていた
それだけの筈だった……三玖にもそう話した
しかし 彼は言った『お前らとはずっと前にあっている』とその言葉で彼女は幾つか思い出した
靄のかかった少年の顔は晴れ 今とは比べ物にならない程の笑顔を浮かべる彼が脳内に現れた
『一花ちゃん』そう呼ぶ彼は確かに存在していたのだ…………
それはきっと他の姉妹も同じな筈だ 彼と遊び写真も撮る仲だった 自分一人だけの関係ではない
とても胸が痛く 張り裂けそうだが きっとこの思いは自分一人ではないだろうと…………
この五つ子の五番目の少女は 彼女にしか分からない事があるのだろう
「三玖がさ 私は駄目って言うんだ 五月ちゃんは心当たりあるかな?」
「三玖が…………彼女は何も悪く無いのに」
「やっぱり 何か知ってるんだね?」
「…………」
「無言か…うん わかった今は聞かない けどさ五月ちゃん 今は彼とそれにさ
彼を探す手伝いをしてくれたフータローくんに会いに行くべきだと思う
フータローくんはあの人とは違うから…………」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
「五月だけいない?」
二乃は慌てたように言うが、問題は解決する
集まった 俺 風太郎 一花 二乃 三玖 四葉
大騒動とはいかないが一人だけ姿が見えないんだ、心配そうにするのは、当然の反応だ、
でもそれも終わる すまんな五月 こんな事になって…………。
「大変だね…でもさ、あまり騒ぎ立てると迷惑になるから」
「何が、騒ぎ立てるとよ!五月が、見つからないのよ!」
「あの…だからそれは……」
徐々に話は、大きくなり始めるそうなる前に一旦集まった…。
ただ『これ以上は、騒がず、辺りを見回す程度に』やたら悠長に構える一花を見れば、姉妹大好き二女が、黙ってる筈もなし
慌てて止めにはいる。四葉となにかに勘づいたのか、三玖がこちらに視線を贈る……。一花と電話をした彼女だからこそか…。
さてこの五女失踪事件…一体誰が犯人なのか?
まぁ…そんな奴は、初めからいないし
何より……この場に元から6人しかいない…。
俺、風太郎、一花、二乃、三玖、四葉だ
さてはてそうなると、さっきの一花からの電話に違和感と矛盾を覚える…。彼女は風太郎達に『あとから合流する』
咳をしながら答えていたそうな…。
無理はせずに部屋へと戻って欲しい、二人の言葉を渋々承諾したと話している…。楽しみにしていたスキーに参加出来なかった中野姉妹の長女…………そして目の前にはやたら悠長に何処か焦っているようにも見える。中野一花さん……君は誰だ?
(最初に気づくべきだったな……。)
『『お前が 五月だ』』
俺と風太郎は一花を指さした
風太郎の違和感それは彼女から『上杉君』と呼ばれた事だと話す
それはそうだろうな 一花は風太郎を上杉君と言わない
俺と風太郎を名前で呼ぶんだ そして俺の単純に違和感だ
一花はいい奴だ だがあそこまで親身になって俺の傍にいるだろうか?
ああまで、俺を気にかける奴は一人しかいねぇよ…。
顔まで隠してんだ 分かる筈もねぇけど お前はお前が思っている程他人に成り切れなかった
ただそれだけだ五月…………。
俺と風太郎は五月を指さすと その場で二人でぶっ倒れる
意識も暗転するが、最後に見えた…。
マスクをとればハッキリわかる 必死に呼び掛ける。あのこの子の姿を……やっぱり五月だ…良かった…今度は………お前を
「幸太郎君!」
「上杉さん!」
「コータロー!」
「上杉!」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
彼等は五月達によって宿まで運ばれた
風太郎は何とか意識を保ち二乃に『外せない用事で来れない』と謝罪していた
元気を出せと彼に言われるが二乃は口に出さずも『あんたが言うな』と言った顔である
一方幸太郎にいたってそのまま意識は戻らずベットまで運ばれ
上杉兄弟の林間学校はベットの上で向かえる寂しい終わりとなった
部屋は完全立入禁止となり 教師の監視が入ってしまい
誰一人看病も出来ない状態となった…………。
それぞれがキャンプファイヤーへと向かう事になった
「くだらないわ」
「あれ 二乃さんどうしたんですか? 誰かと踊る約束をしたって」
「フラれちゃったわ」
「あまり落ち込まないくださいね」
二乃は静かにキャンプファイヤーを眺め 守られなかった約束を思い出す
真弓の声は確かに届いているが、心ここにあらずと言ったように彼女は考えこむ
「真弓 悪いけど トイレ行ってくる」
「あっ はいお気をつけて!」
何かを決心したのか二乃はトイレと彼女に言えば気合の籠った表情でその場を去って行く
三玖と一花が火を眺めていた
幸太郎が倒れた直後の三玖は普段では見れない程動揺し
先程やっと落ち着いた程であんな姿初めてだと姉妹は話す
買って来たであろう抹茶ソーダを一花に手渡し 渡された側は困惑気味
隣に座れば一花はここ三日の事を思い出した
幸太郎の風邪は誰のせいなのかと
それを聞けば三玖は首を横に振る
『コータローもフータローも元から調子がおかしかった』と述べけして彼女を責めはしない
二人は妹の看病の際にそれを貰い
それを隠しまま林間学校へと参加していた
どちらかと言えば 一花はうつされた側の人間だ 謝る事はない
誰かが悪いと非難する事でも無い事だ
「もっと良く見てあげられたら 私も自分の事で必死だったから ごめんね」
「?」
「ダンス断るべきだった もっと早く気づいてたら良かったのにね 伝説の事……三玖の想い」
(そしてこの気持ちにも…………)
キャンプファイヤーを眺める一花はここ最近自分の事にかまけて
周りがどう動き 自分が本当は何をすべきか見つめ直し その度にため息をもらす
それと同時に感じる胸の高鳴り 三玖を見てはこの想いをどうすべきか彼女は真剣に考える
これは誰の為の想いなのかを……
(一花もきっと五月も コータローの事を想ってる)
三玖はかつて出会ったあの少年
彼とどう接し彼と何を話せば良いのか彼女は内心ずっと戸惑っていた
だけど彼女が知る彼と今の彼はどれだけ変わろうとその中身はかつての少年そのものだった
様々な人の話を聞く事でこの湧き出る感情は何かを彼女は理解した
それは一花も同じだ 彼 上杉幸太郎がどんな人間か彼女なりに理解した
彼が何故自分達の為にそこまで身を削るのかもわかった
そんな彼を見て胸にかすかに覚えた温かさを 彼が自分達の兄のような少年の正体でも構わないと
彼女は想い始めていた
「私のせいでコータローは一度深く深く傷ついた 本当は会ってはいけない 彼に顔を見せるのもダメ
そう言い聞かせて来た でも彼は私に変わらず接してくれて…………とても温かくて
彼と話して 彼といて気づいた…私は…………」
「三玖はどう思ったの 彼の事を聞かせて」
(独り占めはしたい この感情に嘘はつけない だけどそれは今じゃない
それにもう彼に守られているだけは嫌だ 同じ目線で見ていたい…………)
平等ではない 公平に行こう それが彼女が一花と話して選んだ答えだ
「…………私はコータローが好き だから好き勝手にするよ
その代わり一花もお好きにどうぞ 一花にもそして五月にも負けない」
(五月ちゃんもか………)
三玖は堂々と宣言した 彼 上杉幸太郎の事が好きだと
例え過去に自分と彼に何かかがあったとしてもこの胸に秘める感情を隠す事は出来ない
どんな時でも自分と向き合い 声をかけてくれる彼が好きで好きでたまらないと…………
「ねぇ 三玖 コータローくんとの過去何時か教えてね 」
「うん 分かった その時はコータローも一緒に」
中野三玖と上杉幸太郎との間に起きた事件
それが語られるのは彼女達が思っているより早く訪れる事になる…………。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
中野四葉は上杉風太郎のしおりを持ち立ち尽くしていた
そして自分を応援してくれた上杉幸太郎の私物を静かに眺めていた
「具合の悪い 上杉さんとお兄さんを無理に連れまわして台無しにしちゃった 私が余計事をしたから…………。」
そう語る四葉を五月はじっと見る
五月も同じだ 彼女も三玖と同じく 幸太郎の異変に気付きつつあった
でも彼はそれを表に出さず普段以上に元気に振る舞い
一花を巻き込んだのは自分が悪いとずっと謝っていた
四葉が余計な事をしたと言うなら
来ないという選択をとった彼を林間学校に来させた自分にも大きな責任があるのだ…………。
だが彼女はそれを表情には出さず 四葉と向き合う
風太郎の持つしおりに書かれた 言葉を彼女に見せる
それを見れば 四葉の表情にも自然と力が戻る
きっと無駄ではないと彼女に示す…………。
「上杉さん達に聞いてくる!」
目的が決まれば彼女が行動に移すまでは早い既に部屋には居らず 風太郎が眠る部屋へと向かっていた
一人残された五月 誰に言う訳でもなく静かに呟く
「何時 あなたに許されますか 幸太郎君?」
中野五月と上杉幸太郎の出会いと事実が明かされるのはもう少し先の事である…………。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
一人の教師が二つのベットでそれぞれ眠る少年たちを動かないよう監視していた
しかし別の教師に呼ばれそのまま部屋を後にする…………。
すると何処からか見慣れたアホ毛がベットの置く入口付近から出ている
そう 中野五月である
先生に隠れ行動する事は真面目な彼女からすればとても耐えられるものではない
だがこのまま林間学校を終えることは出来ない
風太郎とそして何より幸太郎のイベントをベットで終わらせる事はしてはいけないのだ
既に来ている筈の四葉の姿はなく 一人不安の中、何時までも黙って座っていては状況は変わらない
動かなければ始まらないと意を決した
壁を伝い 電気をつける為ボタンを探す
(あ ここですね!)
そして カチッとボタンは押された
電気がつけば そこには自分一人ではない
一花も二乃も三玖も四葉も全員集まっていた
おのおのが彼等を心配し ここにやってきた
顔を見合わせれば 自然と笑みが出てくるし 声も出る
やはり自分達は五つ子だ こういう時にどう行動するか分かっていたのだろう
二つのベットに彼女達は近づく ぞれぞれが彼等の手を取り
時間を待つ 外ではカウントダウンが開始されている
3 2 1 彼等と彼女達の林間学校は終わりを告げた…………。
(幸太郎君 あなたは一人ではありません)
(コータローはもう傷つけさせないよ)
(コータローくん何時か君の夢を聞かせてね)
(上杉さん早く元気になってください)
(本当に世話のやける兄弟なんだから…………)