みずき姐が話すと言ったが、
俺と中野姉妹との正確な出会いの際にみずき姐はいない
彼女はその後に中野姉妹と出会ったのである
ただし正確には姉妹の事を思い出したと言った方が正しいな
食堂で四葉や五月と再会するまでは忘れていた…。
まぁ今では全ての事が鮮明に頭の中で再生されるほどには思い出している
そして当時を思い出すと確かに俺も今とは違い 随分と捻くれたと思う
本当にいい子ちゃんだ 吐き気がするほどにな
「あれは俺が小学5年生の時だ 俺はあの人 零奈さんと出会ったんだ」
『『!!』』
「当時は色々あって 勇也さんも忙しくて俺も風太郎も知り合いである坂下の家で良く世話になってた 風太郎は坂下家での事は全然覚えてねぇがな」
あの頃は特に風太郎は色々とぐれていたからな…。
今の俺に比べれば、可愛いもんだけど…
その風太郎は、坂下の家に行っても何時もふて寝していたし
時には、俺と折り合いも会わず何度も喧嘩した事もあった
そんなある日だ 俺は一人で散歩し 転んで泣くのを我慢してた時だ
『どうしました? 迷子ですか』
例の一件で、結構な記憶が抜け落ちたが零奈さんの存在は強く記憶に刻まれている
あの子と同じだ例え約束は忘れていても存在だけ覚えていた とても美しく儚い人だ
彼女と幾つか会話する中で俺は何処となく 彼女は無愛想と思ってしまった
小学5年生相手に真面目な言葉で話し 当時の俺は混乱しただろう
ただ彼女は俺の名前を聞くと『君が 彼の子なのですか 随分と成長しましたね』
彼女は俺と俺の家族を知っていた 勇也さんを知っていたのだ
戸惑う俺に彼女は言った『少し家に来ますか? 足の怪我を放っておく訳には行きませんから』
彼女の家はそこから近くだったらしく 俺は手を引かれ、当時はまだ中野と名乗っていなかった彼女達の家へと向かったのだ
アパートについた矢先だった
俺は一人の少女と出会った 長い髪を持つ 可愛い女の子
「最初に出会ったのが お前だよ 一花」
「私が コータローくんと最初に会ったんだ」
「まぁ 昔だからな忘れてても仕方ねぇよ」
本人は驚いているがそれは事実だし
俺はそれを今でも覚えている つい『可愛い』ともらした程だ
うぶだよ 俺も その話を聞き一花も照れているが、気にするな
『お母さん この子は』
『彼は 上杉幸太郎君 私の知り合いの子です 一花』
『そうなんだ 私は一花 よろしくね 幸太郎君』
『よろしくね 一花ちゃん』
足の痛みなんて既に消えていた
そして俺は更に驚く光景を目にした
『一花 その子誰』
『わぁー 男の子だ』
『君誰ー』
『お母さんのファンかなー』
『同じ子が 五人』
俺は混乱した どういう事なのか
一花ちゃんは何人も存在するすごい人間なのかと子供ながら色々な発想が出て来たが
零奈さんの言葉で俺は状況を理解した
『彼女達は 私の娘です 5姉妹で 君より一つ下です 上杉君』
『5姉妹』
俺や風太郎も兄弟がだそれは年子だ
しかし姉妹それが5人ともなれば 驚かないわけもない
でもなぜだが 不思議とそれを俺は受け入れていた 一応は兄だ
自分より下の子と接するのは弟で慣れていた 柄にもなくお兄さん風でも吹かせたいのか
自己紹介もしていた
『小学5年生の 上杉幸太郎です 友達からはコウって呼ばれてますよろしくね』
『私は二乃だよ よろしくコウにぃ』
『私は三玖』
『私は四葉って言うよ』
『五月だよ コウ君』
二乃は最初から俺をコウにぃと呼んでいた
後から知ったが彼女達に父はいなかったし
そう言う意味でも年上の男の子さらに母親が連れて来たのだ
それなりに信用あったのだろう
零奈さんから足の怪我に絆創膏を貼ってもらうと 俺はみずきねぇの待つ家に帰ろうとした
それを呼び止めたのが一花だった
『コウくん また会える』
『うん 何時でも会えるよ 一花ちゃん』
『約束だよ コウお兄ちゃん』
約束は守りたい 当時からそうだった だからまたここで彼女達と会おうと決めた
『さようなら 零奈さん』
そう一言言うと俺は全速力で坂下の家に向かった
学校終わりのみずき姐は俺を見て
『こうくん 何か良い事あったー お姉ちゃんに言ってみ-』
『友達が5人出来たよ』
『すごいじゃーん 流石私の弟だ』
『違うよ』
ここの会話は今も変わらない みずき姐も今も変わらない
そして俺は 坂下の家まで預けられれば 毎日のように彼女達と会い遊んでいた
時には風太郎にも声をかけるが『うるさい』と一蹴された
『みんなーー』
『あぁー コウにぃだー』
『コウお兄ちゃんだ』
『コウくん遊ぼ―』
『みんなで何かしよう』
『何がいいかな』
『『かくれんぼ―』』
俺と彼女達はそうして毎日のように遊んでいた
それが全てだ 俺 上杉幸太郎と中野姉妹とのあの頃の話である
「んで…数年して 今になるわけだよ」
全部話すと時間があっても足りない 重要な所だけを彼女達に話し終えた
一花との約束であもる訳で 聞かれたなら俺はそれを無視はしない
黙っていた理由も俺個人の気持ちの問題だ
決心がつけば話せるようにはなるしな
過去の出会いの事を俺は伝え終われば、やはりと言うか
一花もだが、二乃や四葉も相当 驚いている
ただ気になるのは、三玖と五月の表情だ 明らかに三人とは違う
俺が思うにこの二人は、気づいていたんだろう
だが、それをとやかく言うつもりはないし 黙っているならそれも理由があってのことだろう
「あのね コータローくん 何か恥ずかしいね」
「話した俺にそれを言うな」
「驚きです 言われてみれば、あの時の男の子はお兄さんだった気もします」
「俺だから 気がするじゃない 本人だ」
「けど不思議ですね お兄さんは急に来なくなりましたし」
「それは…………色々あったろ」
「そうか コータローくんは家の事情を知ってるし お母さんの事も知ってるんだよね」
「悪かったよ 黙ってて でもお前らが元気そうで本当に良かった」
中野姉妹は今でこそセレブと言うか中々のお金持ちなんだが
当時は今の俺達と変わらない生活をしていた
それでもだ零奈さんは俺が遊びに来ることを拒もうとしなかった
俺もそれを深く聞こうとはせず 子供なりに気を利かせていたんだろう
そして あの日 から俺は彼女達の前に姿を現さなくなった
「で 二乃 お前はどうした?」
「いや いや 本当にあんたなの…何時も遊んでくれていたあの人が」
二乃はすげー動揺してる それもそうだろうな
家に来て勝手に家庭教師し始めた 人間のうちその一人が昔遊んでいた人物だった
それもだ 見た目も性格も全然違うと来た 二乃が疑うのももっともだ
でもそれが事実であり 俺も覚えているし 一花にだって覚えはあると話してた
当時を思い出してか二乃の顔は真っ赤だ
俺と目も合わせようともしない徹底ぶりである
「まぁー そんな感じだ 今まで通りで良い普通にしててくれ」
「これを聞いて 普通にとか…」
「良いよ 二乃 まじで普段通りでそれの方が俺も話しやすいしな」
「…………まぁ 少しは考えてみるわ」
視線を俺から逸らしてぶつぶつと言いだす二乃
昔のような関係とまでは無理とは思うが、少しでもいい方向に考えてくれればそれが一番だ
四葉達も話を受け入れてくれたのか『改めてよろしくお願いします』と握手を交わした…。
とここで終われば今日は解散だったのだが、先程から視線を逸らしたままの二乃が
『あぁー』と何かを思い出したようで 俺の方に目線を戻す
病院では静かにと言いたいが、一応は個室だ 少し声を上げた所で迷惑はかからん
「あんたの事でもう一つ 聞きたい事…あんたが私らより 年上って!?さっきの話でもアンタの方が一才上だったしさ」
「あぁ 確かに私もそこが引っかかってたかな」
何でこう勉強は覚えねぇ癖にこういう事は、きちんと覚えてんだか
柄にもなく頭を抱えちまうよ
その熱意を勉強に向けて欲しいもんだ…。
しかし面倒だ 俺が彼女達より年上と言う話 これに至っては帰って来ても特に話す予定は無かったんだけどな どこのどいつだそれを口から滑らせた奴は?
『ふっふー』と鼻歌まじりに俺と目を合させないようにしているみずき姐
焦ってはいるんだろう だらだらと汗をかいている
本当にこう言う時は口が軽いよなこの人は
安心しきってる証拠だが、もう少し口は堅くしてくれ…。
「別に隠すつもりはねぇ…………ただ アレだ こういう事って気を遣わせる」
「やっぱり 言いずらい事だよね」
「そうでもねぇよ 隠すようなことをしてたのは事実だしな 何時かはバレる」
「勿論 上杉さんも知ってるんですよね」
「当たり前だろ…」
こう言ったデリケートな話題は避けるべきだと思い四葉も口を塞ぐが
やはり気になるものは気になるだろうし 何時かは話すべきだろうと
俺も薄々は思っていたところだ 『友人だから話す必要がある』
かつてある男が俺に言った言葉だ
その時は何も言わず最悪な形になったが、その事を繰り返す訳にもいかない
もうあんな事はごめんだからな…。
これを誰かに教えるのは何時ぶりだろうか…
「俺は去年 事故にあってな
それで病院に運ばれて 出席日数が足りなくてな 進級できなかった」
俺上杉幸太郎は去年の春 2年生になったばかりの季節に 交通事故に遭い
そのまま2年生をやる羽目になった 馬鹿な男だ
「それって そのままの意味って事 コータローくん」
最初に口を開いたのは一花だ
俺以上に深刻そうな顔でじっと見ている
風太郎や家族も勿論知っていたし それを口には出さないだけ
正直言えば、五月はこの事を知ってたと思う
あえて言わないのはあいつの優しさだ…。
「そうだ 去年一年間 俺は病院で過ごしてた」
「あっ… まさか 胸の傷って」
突然口を開く二乃
家に泊まった日に五月に成りすました際にやはり見られていたようだ
「………… 胸の傷はそん時のだ 人に見せるもんじゃないしな」
「何か悪かったわね」
「謝るな 別に気しちゃいねぇよ」
俺がこれを隠すのは純粋に人にお見せできるようなものではないからだ
怪我人アピールを俺はするつもりはないし
それで同情を買う気もない
二乃は顔を伏せるが、こいつは傷を見たくて来た訳じゃないし
色々な事情が重なり偶然それを目にしただけだ
「まぁ……俺がぼーっとしてただけで」
横断歩道を渡る中で迫ってくる一台の車
それは信号の色などまるで見えていないかのようだった
咄嗟の事だ 俺は回避が遅れ 車と激突 気づけば病院のベットの上
そのまま去年一年を俺は何も出来ないまま終わってしまった
「違う…………嘘だよ コータロー」
俺が会話を続けようとした時だ
先程から黙っていた三玖が俺の言葉を遮ってきた
当時の事を話そうとしたが、彼女にはどうもそれが納得いくものでないと来た
あの祭りの時と同じだ 明らかに怒っている
「嘘じゃねーよ 俺のせいだしな 怪我したのは」
「それは私が」
三玖が言いきる前に俺は言葉を続ける
「この話は これで終わりで良いか? 面白くもない事だし 三玖も何か悪いな」
「…………コータローが謝ることは無いよ」
自分を責めるような表情の三玖
だがこれは本当にお前は悪く無い だからそんな顔はしないで欲しいな
一花も二乃も四葉も三玖の様子が気になるようだが、今はそれには触れないよう
気を遣ってくれているようだ
俺個人は騒ぐほどでもないと思ってんだがな…………。
五月も先程からずっと黙ったままだし どうしたもんか
暫くは無言が続くが、それでは空気は重くなる一方だ
五月は一度『少し電話があるので一旦外します』と病室からそそくさと出て行ってしまう
三玖も落ち着いてくれたのか、表情も明るく見える
五月がいない今だから彼女達に聞けることがあるのではないかと欲が出た
さっきの今で聞く事ではないが、後々聞くのも色々と考え物であった
空気を換える為の一つとしてここは話を切り出すべきだろう
この話は以前に五月に話した事だが、俺は他の姉妹にも聞きたい事であった
「なぁ お前らに聞きたいんだが 五つ子以外に姉妹って 実はいたりするか?」
「なんと」
「まさか 連続でとは」
「ん?」
このタイミングで俺は彼女 中野六花につういて聞こうと思った
五月は知らないと答えたが、他の姉妹ではまた別の答えが来るのではと言う淡い期待があった
しかし何やら様子が変だ 『連続で』と一花は言った
どういう意味だ?
「六海ちゃんですか?」
「誰だそれは…………?」
「実は 昨日色々あってさ」
一花が言うには昨日ひと悶着あったらしく
その時に彼女が適当に作った人間が六海と言う人物らしく
似たような事が続きつい 『連続か』と呟いたようだ
しかし六海とは面白い発想をするもんだ
他にも あいつと昔あった人物はいるかと風太郎から聞かれたようだが
誰もそれには答えなかった
風太郎本人も『いるわけないよな』と過去にあった人間と現実を比較してたと
失礼なやつだな あいつも…………。
「それで コータローくんはどうして そんな事聞くのかな?」
「探してるんだ 中野六花って言う 人物を」
「中野………六花さんですか お兄さん?」
「知らねぇか? 俺も話したのは去年の12月の一回だけだが あの人は確かに中野と言ったんだ」
「………… お姉さんは知らないかな」
「コータローごめん 私も知らない」
「中野って 偶然じゃない? 私も知らないわよ」
「私も心当たりありません すみませんお力になれず」
「知らないならいいんだ また地道に探すさ」
やはり 誰も中野六花と言う 人物には心当たりはないと答える
四葉や二乃の表情からも見てだいたい分かる
残りの二人もそうだ 特に変わった様子もない
本当に知らないのだろう まじで中野六海と言う人物が実在して
その人が俺の前に現れたのでは?とかつての記憶を少々探っているが確かに
彼女は『六花』と答えた
中野と言う苗字も聞き間違いではないだろう それは確かである
可能性として 誰かが嘘をついている 俺にはあの人がこの姉妹と関係ないとは思えない
何らかの理由で、正体を隠しているのではと 何でそんな事すんのかねぇ
考える時間はあるし焦る必要はないんだろうが、俺はもう一度でいい
あって話をしたいだけ それが唯一だ
「コータローくんはさ その六花さんと何かあったの」
「何かという訳でもないぞ ただ適当に会話してただけだ 名前を知ったのはお互いが帰る時だしな」
「コータローは会ってどうするの?」
「特に何もねぇよ」
「ふーん そう」
「どうした三玖?」
「何でもないよ」
先程までしょんぼりしていたが、次は妙に食いついてくるな
『五月ちゃんには聞いたの』と一花に聞かれたがあいつには一番最初に聞いている
あんだけいる時間があるんだ それくらいのチャンスは何時でもあったしな
「でも 風太郎程言う訳でもないけど 勉強は続けろよ 進級出来ないと面倒だからな」
「コータローくんが言うと重いね」
「先輩からのアドバイスとして受け取っとけ」
「わかりました お兄さん!」
「うん 分かった勉強もこれからも頑張ってみるよ」
「少しは考えておくわ」
「頼む 風太郎は俺と違って 真面目なんだ」
「君も割と 義理堅いけどね」
「自分ではわかんねーよ 俺は俺のやり方でやってんだ」
このまま続けば進級するら危うい可能性もある
だから今からでもいい彼女達には成績を上げて
笑顔で卒業して欲しいのが俺の気持ちだ それはけして変わらない
自分の心は変わらない それを再確認し
少しばかり 会話をすれば五月が何処からか戻ってきた
表情は少し硬く見えるが何かあったのか?
「五月 どうかしたか?」
「いえ 大丈夫です 幸太郎君」
「そうか無理はすんなよな」
「お兄さんがそれを言いますか」
「コータローが言っても説得力はないよ」
「はぁ…………ひでぇ言われようだな」
そのやり取りを見て五月はくすくすと笑っている
笑顔が出せるんだし 本当に大丈夫だろう
暫くすれば時間も結構過ぎていた
彼女達もそろそろ帰り支度をしているし長居をさせればあの人になんて言われるか
「きーつけて帰れよ」
「はい 幸太郎君も無理はしなでください」
「はいよ それと三玖 お前は何も気しなくていいから」
「…………コータローもまた明日」
「じゃ さようならお兄さん」
「もう倒れないでよね 家族もいるんだし じゃ」
「またねー コータローくん」
それぞれが別れの言葉を述べれば、病室から去って行く
先程会話には混ざって来なく 珍しく静かなみずき姐はまだ部屋に残っているが
彼女達が病室から出ればそれを追うようにして彼女も去って行く
去り際に『逃げないでね』と釘を刺されるがもうそんな気はなねぇよ
上杉幸太郎がいる病室から去った後 坂下水木は中野姉妹を呼び止めた
「おーい 君達少し良いかい」
「えっと水木先生でいいですか?」
「そうかしこまらないで良いよ 昔みたいに水木お姉さんとでも呼んでくれ」
「あまり覚えてない」
「あっははは こうくん程君達とは接点ないからね」
坂下水木もまた彼女達を知り
そして彼女達の母とも親しい仲だったが、娘である彼女達との接点は彼程は無く
時折彼を迎えに来る際に顔を合わす程度だった
しかし 彼女達のアルバムに合ったあの写真は彼女が撮った物で
他にも幾つか彼女達は当時の写真を持っていると話す
「それでどうしてコータローくんの担当の人が呼び止めるんですか?」
「うん 君達に聞きたいんだ こうくん 幸太郎はさ 学校ではどうかな?私は忙しくて
彼もその辺全然教えてくれなくてさ」
「お兄さんは その あのー頼りになりますよ」
「でもコータローは無茶ばかりする」
「やっぱりそうだよね 彼のその性格は昔からだから今更は無理だね」
「確かにあいつは昔からそうだった気はするけど」
「でも 幸太郎君は学園に休まず通っています 安心してください」
「休まずか……良かったな さっき聞いたでしょ 彼は事故のせいで一年も病院にいたって
だからさ心配だったんだ 友達はいるのかな 勉強は遅れてないかなとか
私さお姉さんとか言いながら仕事ばかりで 事故の時もそうだよ彼の事構ってあげれなくて」
事故当時の事は彼女は今でも鮮明に覚えている
血まみれになりながら担架で運ばれてきた 大切な幼馴染の姿弟のように可愛がった彼が物言わぬ死体同然となって病院へと運ばれてきたのだ……。
毅然と振る舞うが、その心中は穏やかではない 曰く『生きてる事が奇跡』と誰かが言った
それは彼女も同意した 彼の見せた生きる意志が奇跡を起こしたも同然だったと言う
高校2年の始まりという大事な時期に彼は 学校も通えず 地獄のようなリハビリの毎日
あの性格だ音を上げる事はしない けして他人には見せない
彼がそう言った時に 彼女は家のある事情で中々 彼の話し相手になる事が出来ず結局はそのまま
退院後もまともな連絡も取れない 彼は携帯も捨て去った 個人で取れず
家にかける勇気もなかったと打ち明ける でも彼女はずっと彼を気にかけている
彼があんな姿になったのは本当の原因は自分ではないのか……?
彼女は自分を責めていた
普段見せる冗談交じりの話し方はしない 真剣な彼女を見て五月も向き合う
「水木先生…… 大丈夫です お兄さんには私達に 上杉さんもついていますから!」
「うん 馬鹿で無鉄砲でその癖隠し事は多いし大事な事は何も言わない そんな子だけど
どうかこれからも仲良くして上げてください」
「頭をあげてください 大丈夫です 私達は彼を信じています 彼は何もしてません
私は知ってますよ 水木先生」
「五月ちゃん……君はもしかして」
「では 私達はこれで帰ります 彼が無茶しないよう それに先生もご自愛ください」
「あぁ うん じゃ また何時か会おうねー 中野姉妹さん!」
五月や四葉の言葉で救われたのか彼女は笑顔を取り戻し
去って行く彼女達に手を振った
その後は 俺が目覚めたと知って 風太郎やらいは勿論勇也さんもバイトが終わったので
顔を見せに来た
(お前 ついに聞いたらしいな)
(でも あの中にはいないだろう)
(分かんねぇぞ)
(あの子なわけがない)
風太郎と軽く話をすれば、明日は家庭教師で来れそうにないと謝っている
『優先は向こうだ気にすんな』その言葉で気合が入ったのか弟もやる気だ
俺も明日には退院できるし 今日は大人しくしているべきだとみずき姐にも釘を刺された
もうこのまま寝てしまおうと意識を手放そうと枕に顔をうずめれば
ガラガラと扉が開かれ 再びの来客だ
めんどそうに顔をあげれば 白衣の男性がそこにいた
「目が覚めたようだね 上杉幸太郎君」
「どうも 中野先生」
中野先生 中野姉妹の今の父親でこの病院を営んでいる人物
そして 事故に遭った俺を担当した医師がこの男だ…………。
キャラ設定更新
上杉幸太郎
今作の主人公であり 弟の風太郎と同じ高校2年である
と彼は語っているが…
実際は高校生3年生だっはずの少年である事故に巻き込まれ
一年前のある日以降病院で過ごす羽目になり
出席日数が足りず 進級出来ない状況になる
その為 彼はそのまま2年をやり直していた
当時の担当医は坂下水木と中野丸男である