上杉幸太郎と六等分の思い出   作:Aikk

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オリジナル回です


第三十八話 不良少年と彼女が語る彼の過去

上杉幸太郎の病室から帰って行く彼女達

彼のお見舞いついでに知った事実は自分達が思っていたものよりもヘビーな事が多かったようだ

過去に彼と出会っていた事 彼が実は進級出来ず二年をもう一度やっている事

彼が誰かを探しているという事

あまり自分の事を話さない彼から様々な事が聞けた日だ

特に 彼が話した『俺は事故にあった』と言う事も彼が普通に話すが

そこまで簡単に話せる事ではないだろう

それでも話したのは自分達を信用しての事だろうと一花や四葉もそう理解した

その彼の為にも今は少しでもいい勉強する事がお返しになるだろうと

 

ただ約一名はあの時相当動揺し『私が』と口からもらし

姉妹もそれを聞き逃してはいなかった

病室を出る際も気持ちを整理して彼に挨拶をして帰った三玖だが

家に着く頃には、しょんぼりとしている

彼の回復は嬉しいし 一花にも負けないと言い張った三玖だが

どうしても今日の話は彼女が思うに納得の出来るものではないようだ

 

彼は自分がぼーっとしていて事故に巻き込まれたと話したが

それは果たして事実なのか?

彼は深くは話さなかったが、彼の今の姿と昔の姿が違うのもその事故が影響しているのではと

一花も二乃も考えている それを知るのは三玖 そして五月ではないだろうかと

五つ子だからこそ隠している事も薄々分かってしまうし

表情を見れば、一発である ただそれはデリケートな話題だ

自分達が騒ぎ立てるような事ではない 彼が話さないのならそれで今は良いと

気になる気持ちを抑える

 

彼が学園で孤立しそれを受け入れるのは、事故が最も大きいだろうと

彼女達も理解した

今では普通に自分達とは会話するがそのほかの人物とは自発的に会話する事を避けている節もある

それもそうだろう 進級しなかった生徒がいるとは他の生徒からすれば

会話がし辛いにも程があるし 下手な詮索もできない

ただ 事実はどうあれ 彼が学園では『不良少年』『問題児』と呼ばれるのはどういう事

なのだろう

 

彼は本当に何かをおこし それを隠しているのか? それも考えたが

普段から接する彼を見て 一番にそれはないと思ったのは二乃だった

幾ら自分が何を言っても口は悪いが親身なって接する彼が誰と問題を起こしたとは到底思えずにいる

一花もそれには同意だ 反省して今ではそう言う人間になったのかとも取れるが

その可能性も違うだろうと彼女なりに直感はあった

 

幾ら頭を使ってもその答えはけして出てこない

あるのは彼がまだ何かを隠しているという事だけだ

 

帰宅して時間は経つが、無言は続く

ただ それを破ったもがいる

それは三玖だ 他の姉妹にも伝えたいと言うのだ

 

 

「コータローは自分がぼーっとしてたせいって言ったけど あれ嘘」

「なんで 三玖が言い切るのよ?」

「嘘なのは本当」

「ねぇ 三玖はやっぱり何か知ってるの彼の事故の事を? 無理に聞きはしないよ」

 

自分から話を切り出すも何か口ごもる三玖

やはり彼女は彼が巻き込まれた事故について自分達よりも詳しいのだろう

無理強いはしないと窘める一花

林間学校で自分に宣戦布告をした妹と今の妹が同じとは彼女は思えなかった

何か後ろめたい事でもあるのだろうか?

一人で抱え込まないで欲しいと彼に言われた言葉を三玖にも言う

何故かますます表情を悪くし 一花も少し焦っている

 

 

 

ただ三玖には助け船もちゃんと来ていた

それは予想通りと言った人物だった

 

中野五月 その人だ

 

帰ればすぐに部屋に籠っていた彼女だが、何かを決心したのか

部屋から出れば、リビングへと降りて来た

 

「で なに 五月まで何か言いたい事あるの」

「はい 彼がこれ以上学園で孤立しない為 この話は 姉妹の中だけでも知るべきです」

「五月……でも勝手に話したらコータローが」

「大丈夫です三玖 彼の父親から既に了解を経ています」

「何時の間に コータローくんのお父さんと電話してたの?」

「病室を出てすぐですよ」

 

五月の考えは彼の事を自分達だけでも知っておくべきだという事だと

二乃が『そこまでする必要ある?』と言う

 

勿論かつてお世話になった人だが、それはそれ今は今だ

けど五月はこの話は、他人事ではないと言う

やはり三玖や五月も少なからず関わっている事らしいのだ…………。

話をする中で 五月は既に父親である上杉勇也にも話を通してあり

『構わない』と了解も貰っている

 

果たしてどこまで五月はあの少年の事を知っているのか

姉妹ながら一花は検討つかないと言った顔だ

 

本人は覚悟が決まったといった表情であり

当時の事 あの一年前に起きた事件以前の彼の事を先ず話した

 

「彼は学園で問題児や暴力事件を起こしたと言われていますが 事実無根です 彼は何もしてません」

「うん お兄さんを見ててそれはないと 私も思う」

「彼は一年から二年の初めまでは クラス委員をやったり学校の行事にも自ら進み参加をし

 周りの生徒から慕われる 社交的な人でした」

「今のあいつとは真逆じゃん」

「彼の運命を変えたのは 今から一年少し 二年になって暫くです

  彼はその日普通に過ごしていただけでした でも彼は」

 

五月は話した 過去に起きた事件など存在はしない

彼は誰も傷つけず学園で随一の真面目な人間だったとその彼が今では

不良少年やら不真面目な生徒やらと色々言われている

その理由は彼が二年になって最初の日曜日

それが 彼 上杉幸太郎の人生を変える事になったのだと…………。

 

 

「彼は あの日  三玖を 庇い交通事故に遭いました  

 そして私もまたその場に居合わせて居ました…………。」

 

『『『!!』』』

 

三人は言葉を失った

あの少年が大怪我を負い一年を病院で過ごした本当に理由

彼は自分が悪いと言ったがそれは違った

誰が悪いという事ではないけど 確かにその事は姉妹には無関係の事では無かったのだ

 

三玖が『私のせいでコータローは傷ついた』と言った意味がやっと理解出来た

 

「私が悪いんだ コータローはただ私を助けただけなのにそのせいでコータローは学校で」

「三玖のせいではありません あれは信号無視をした車のせいです 幸太郎君がいなければ今の三玖はいません だから自分を責めないでください」

 

顔を抑える三玖 微かに水滴が落ちている

彼女にとってあの日の出来事は自分の運命 そして一人の少年の今後すら変えてしまったのだ

でも 彼は何も言わず 更に『俺が悪い』と言い切った

それが余計に彼女に刺さっていたようだ

流石にここまで予想外だと一花の表情も何時もと違っていた

二乃や四葉もだ

彼はただのお節介な家庭教師補佐ではない 自分の身を犠牲にし

大切な家族を助けてくれていたのだ…………。

 

 

 

 

 

『すみません 彼女 僕の連れなんです』

『えっ………』

『それでは僕達はこれで失礼します』

 

 

あの日 高校生になったばかりの三玖

買い物の最中に絡まれた時 彼は現れた 黒髪で眼鏡をかけた真面目そうな少年

困り果てる自分を助けてくれたのだ

そして三玖は知っていた 自分を助けてくれたこの人が幼い頃に

ずっと遊んでくれていた あのお兄さんだったと

 

『僕の名前ですか 上杉幸太郎と言います』

『私は………中野三玖です ありがとうございます』

 

自分に優しく語り掛ける少年 あの時とは何も変わっていない

優しく頼もしい彼のままだった…………だが

 

 

 

 

『三玖 あぶない!』

『…………コータロー』

 

 

彼は 彼女を突き飛ばし 次に彼女が彼を見た時には

辺り一面が真っ赤にそまり その中で倒れこむ 上杉幸太郎の姿であった

 

 

そして中野五月はその血だまりを見て何も出来ずただ立ち尽くす事しか出来なかった

 

 

 

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