上杉幸太郎と六等分の思い出   作:Aikk

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第四十二話 不良少年と姉妹のお礼

五月から言われ 謎も解けたし

放課後になれば一花や三玖 それに四葉とも会える

二乃とは中々出くわす機会もないため本人が現れるのを待てばそのうち

何かしらアクションを起こしてくんだろうな

 

『お礼を言いたいんだと思います』と五月はそう言った

家族を助けて貰ったんだその反応は間違ってはいない

もし俺が助けられた側なら正当な評価を受けるべきだとも言うだろうが

俺は別にそんな評価やお礼の言葉を求めてはいない ただ命が無事ならそれで良いと思っている

酷く歪んだ考えを持つ そんな男だ

 

黄昏るようにその日は時間を過ごし

五月も珍しく俺に何も言う事はなくただずっと俺から目線を外す事だけはしなかった

 

 

「さて 図書室行くか」

席を立ち 待っているだろう図書室へと足を運ぶことになるが

一応 五月には同行するかどうか確認はしておく

最近は風太郎との衝突もないと聞くし 近くで勉強をすれば捗るだろうからな

 

「すみません もう暫くは自分の力で頑張ってみます」

 

駄目でした

 

「まぁ そのうちで良いさ 風太郎も来てくれれば喜ぶだろうし」

「彼がですか? いやそれはないですよ」

「どうだろうな でもあいつはあいつでお前を嫌ってはねぇと思う」

 

そうでなければアイツが日曜まで全員分のプリント製作をする筈もない

嫌ならとっくに投げ出してる

 

「幸太郎君は私が参加したら どう思いますか」

「俺か? 勉強してくれてありがとうとは思うぜ」

「そうではなく あのもっと具体的な感想を」

「何が聞きたいかは知らねぇけど………俺はお前ら全員を笑顔で勉強させる事は諦めない

 楽しく行こうぜ 五月」

「はい…………/// あの私少し 席を外します ではーーーーーーー」

 

俺が言い終われば五月は一目散に教室から出て行ってしまい俺はポツンと残された

 

あの感じからすれば五月も勉強会の参加は拒否しないだろう

あいつは『あなたの迷惑になりたくない』と告げたが

ここ最近の五月を見ていれば、勉強を見てもらう=迷惑になると言う考えも変わって来ていると思う

 

去って行く五月に

『お大事に』とだけ言い

止まった足を俺は動かす 風太郎は既に図書室にいる 俺もさっさと向かわないといけない

早く合流しねぇとな…………。

 

『上杉がまた何か言ってるぞ』『やめろよな 問題を起こすのは』

 

(本当に暇な奴らだよ……)

 

 

出先 横ぎった時に聞こえた言葉 俺が何かをすれば反響するかのように噂を始める

見ていて虚しさするら覚えるが、何時もと同じだ俺とこいつらは無関係だ

 

人の価値観や考えは、同調圧力だ いつの間にか知り合いだった奴が突然何も言わず

敵になる 周りの人間もそれに呼応し気づけば周囲は敵だらけ…………。

そんな暇あるならお前らはもう少し自分の為に生きろ

 

 

 

 

 

階段を降りて直ぐだ 待ち構えていたかのように

一花と三玖が立っていた 朝方と同じく何処かよそよそしく見えるが

目線は俺と合わせている 顔も真剣そのものだ

『少し待ってて』と手を向け 息を整え始める一花

そしてその場で頭を俺に下げた

 

「コータローくん 妹を三玖を助けてくれてありがとうございます」

「コータロー……あの時は本当にありがとう コータローがいなかったら私はここにいない」

 

 

 

「まぁ………何だ 三玖は怪我もなかったしな 無事でいてくれただけで俺は嬉しいしな」

 

 

本当に俺は語彙力も何もない 感情が欠落してんのかな?

何時もと同じだ まるで自分の事は関係もないかのような態度

自分でやってて恥ずかしいな もう少し真面目に話せよと出来てない自分に言い聞かせている

 

けどそれが俺だ あの時は必死だった

三玖を助ける事で頭がいっぱいで気づけば俺は動いていた

迷ってる暇なんて俺には無かったんだ

 

『どれだけ感謝すればいいかわからない』と一花は言う

別に俺は人から賛美されるために行動していた訳じゃない

必死で必死で気づけばそうなっていただけの事だ

 

俺は確かに進級も出来ず二年をもう一度やる事になったが

きっとあの行動を俺は後悔はしないだろう

 

「コータローくんはそんな目に合ったのに 

 それでも私達と向き合って家庭教師として教えてくれている

 君には頭があがらないよ」

「家の事情もあるが 俺は俺がやりたい事をやってるだけだ 気にすんな」

「今回は流石に気にするかな 君の今の状況を作った一因が私達姉妹な訳だし」

 

一花は何か勘違いをしている

俺が学校でありもしない噂で孤立し 風太郎達以外と交流しない原因の一端はあの事故だと言う

関係ないとはいかないが、あの事故がなくてもきっと俺はこれと似た状況に陥っていたと思ってる

当時の俺は今以上に敵が多く 正義ずらするのが気に入らないと言った輩が多かった

それと当時の事故が同時に起きただけで俺は一度もこの事故が原因とは思った事はない

 

どうしてと問われても俺は話す気はない

そう言うもんだとしか答えない

 

後悔なんて事は一度も感じた事はない ただ俺でも命を救えた

彼女は無事だった それを知れただけで俺は救われた

三玖は俺に『命の恩人』だと言う けど 本当に命を救われたのは実の所俺の方なんだけどな………。

あの日の記憶が少しばかり思いだせば自然と胸を押さえていた

 

 

「俺は何も望まない けどそれでお前らが困るなら 毎日元気でいてくれ 

  それだけで俺の一年は報われんだ」

「うん 分かった私はコータローのために元気でいるよ コータローの願いなら」

「そうだね 君がそう言うならお姉さんはそうする けどコータローくん

  もう少し自分を大切にしてあげてね」

 

 

二人がいや 中野姉妹全員が何事もなく過ごすだけ俺の一年はお釣りがでるくらいには戻ってくる

それに幾ら悩んでも時間は戻る事はない なら今を見るしか俺にはないんだ

一花には『自分を大切に』と釘を刺されたがきっとこの生き方は変えられない

18年という時間を俺はこの方法で生きて来た それをやすやすと変えれる程器用じゃねぇ

でも彼女達や家族の為にそうならないよう努力はしていくつもりだ

 

ぽんぽんと二人の頭に手を乗せる

少々驚かせてしまったが、別段逃げる事はしない

 

「これからもよろしくな 二人とも」

 

今言える事はそれだけだ

ここで再会した日には何も言わずぶっきらぼうに挨拶を交わしたが

一花はあの日の事を知り 三玖はそれと向き合い俺の前に現れた

きっと三玖の方が辛い筈だ 何も言わず俺は彼女達と今日まで接して居たんだ

今思えば 三玖がちょくちょく俺に接触してきたり 屋上で自分の秘密を打ち明けたのも

彼女なりのお礼だったんだろうな 

 

 

「うん これからもずっと よろしくコータロー」

「少し照れくさいけど よろしくね コータローくん」

 

吹っ切れたと言うか、満足できる答えを聞けたのか

二人は視線を合わせて返事を返した 何時までもしょぼくれたままだと困るしな

二人の頭から手をどければ『あっ…』と名残惜しいと言うよな顔で見られた

あんまりこういう事してると何言われるか分からんし セクハラになるからな

『図書室に行くぞ』と言えば二人も頷く 今はこの関係で良いだろう

俺はこいつらの家庭教師で補佐だそれで十分だ

 

(コータローくんは不思議だね)

(昔からコータローはこうだったからね 私はずっと覚えてたよ一花)

(何か 三玖が生意気なんだけど…ふふ)

 

 

 

後ろを向けば二人は何かこそこそと話している

本当に仲が良い事で 安心するよ

向かう足を止めず前へと進める 少し歩けば図書室まであと少し

入口付近で俺の視線は止まった そこには先ほど一花達と同じく

待っていたかのように待機している 四葉と二乃がいた

この二人の組み合わせも珍しいと 見ていたが、二人と同じだ二名も話があるのだろう

一花達に先に行くよう言えば、何も言わずそのまま図書室へと入って行く

 

 

待機する二人はじーっとこっちを見ており

ここから動く気配はない

声をかけるが 二乃は警戒でもしてるのかオーラを纏っている

睨み合いが続くとここは決心したが、その沈黙は数分もすれば終わりを告げた

 

「五月から 聞いたわ そのありがとね」

「お兄さん 朝方は逃げてしまいすみません 三玖を助けてくれてありがとうございます」

 

「素直が一番だ それにちゃんと生きてんだ あんまり考えるな」

 

「本当に 上杉は不思議よ 幾ら私達と昔遊んでたからって自分を犠牲にしてさ」

「理由なんてないさ 俺はただ三玖を助けたいと思っただけだ 家族や友人は大事だろ?」

「…調子狂うな 今日の上杉を見てると あの話のせいだ」

「って 二乃 お兄さんを上杉って呼んでる」

 

お礼の言葉を受ければそのまま会話になる

ふと四葉が二乃の異変に気付く よく聞けば彼女は『あんた』ではなく『上杉』と苗字で呼んでいた

これは良い方に転んだなと俺もつい笑みが出る

 

「関係ないわよ つうか あんたの笑顔怖いからやめてよね」

「俺はそれだけは傷つくだけどな」

「はいはい じゃ 私は用事あるからお先に」

「何時かは 参加してみろよな」

 

二乃は何も言わなかった

でも彼女との関係も少しずつ変化している

良い成果だと思うな

残った四葉も笑顔は絶やさない 朝は急に逃げたくせに言う事言えば

こいつもすっきりしたんだろう

 

「お兄さんには大きな借りが出来ましたね」

「借りとか思わなくていいぞ 一花達にも言ったが 俺は俺がしたい事をやった 結果はどうあれな」

「例え お兄さんが怪我をしてもですか?」

「あぁ 後悔はない やりたい事をやれない方が俺は嫌だからな」

「後悔ですか…………」

「四葉 何度も言うが後悔をするような選択はするなよ 人生の先輩からのアドバイスだ」

「あっははは なんですかお兄さん急に 私は大丈夫ですよ」

 

笑ってすませる四葉はそのまま図書室へと走って行く

俺もそれを追いかけるようにし中にはいる

周りを見れば 既に全員定位置だ

風太郎もこちらを見れば『よっ』と手を上げる

 

悪いな四葉………俺にはお前の気持ちが分かってしまう

お前や五月に会うまで忘れていたとは言えそれまでは覚えていたんだから

風太郎の持つ写真に写る人物が誰かくらいはな…………。

 

 

「さて 全員揃った事だし 勉強会始めるか」

『『おーーーー』』

 

始まりを告げる声と共に全員はノートを開き

課題を相手に戦いを始める

俺達はそんな彼女達を時には見守り 時には指導し 正解へと導く

そうして一つずつでいい 着実に覚えさせていく

 

せまる期末試験の前に起きた姉妹とのトラブルも無事に終わり

俺も勉強会に身が入る 少し疑問は残るが何時かはそれを五月本人が語ってくれる事を願い

信じて待つのみだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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