「いらない」
「ほぉーっ!」
妹に日頃のお礼として単語帳を渡すが、
勿論らいはがそれを素直に受け取ることは無く 目の前でいらない宣言され
その場でうなだれる風太郎だ
俺が退院して一週間近く経ち 今日は木曜 11月23日 人々の間では
勤労感謝の日として休日認定されている
そんな大事な休みを風太郎が見逃す訳もない
彼女達のやる気を出させるには先ず自分自身見本にならねばと朝からずっと勉強中で
そんなおり らいはから『四葉さんにお礼をしないとだめだよ』とお叱りを受けた
俺もだが風太郎は特に四葉からサポートを受けていた事が多い
林間学校でもあいつはずっと風太郎の周りでこいつが孤立しないよう動いていた
多分本人は気づいてもないがな
妹の命令と言うかお願いとして風太郎は四葉に勤労感謝として何かを渡す事になった
彼は汗をだらだら流し『何にやれば良いんだぁ』と壁にもたれ掛かっている
本当にこう言う時には頼りにならない奴だな…………。
「って お兄ちゃんもだよ みんなにお世話になったんでしょ」
「そうだな あいつ等にはな 特に五月には世話かけっぱなしだしな」
「あぁ…………五月さんか」
「どうしたらいは?」
「な 何でもないよ」
急にそわそわしだしたらいは 五月と何かあったのか?
俺との視線を逸らし 自分の準備を再開し始める
出かけるのは何も風太郎だけではないのだ
俺に話しかけているらいはも朝から準備をしており誰かと出かける約束があると言う
誰と出かけるかは話さないが『勘違いしないで男子じゃないからね』
お兄ちゃんは安心したよと胸をなでおろす中
妹は俺にも勤労感謝として誰かに何かをするべきではと言っているが
安心して欲しい 何と言うか昨日の時点で俺も約束は自体はしてある五月ではないけどな
「俺は今日用事あるから安心しろ」
「流石 お兄ちゃんだ でも誰と出かけるの?」
「秘密かな」
「ずるーい」
教えて~と言う妹には悪いが、兄もたまには妹にも隠し事くらいはするぞ?
風太郎も『気に何だけど』と詰め寄るがやめろ 顔が近い
勉強以外も考えるようになったのはいい傾向だけどもう少し距離感を保て
彼を突き放せば俺も出かける準備を始める しまい込んだスマホを確認し
時間を見る そしてディスプレイに表示された メールのアイコンには未読2件と書かれている
「はえーよ」
と静かにもらす 時間まであと1時間近くあるんだがあいつら既に来てるのか
中を確認すれば宛名は 中野三玖 中野一花と書かれていた
そう俺が今日出かける相手はこの二人だ
三玖とは以前に出かける用事を立てていたが彼女に聞く筈の用事は入院中に確認済みである
ただ約束は約束であり 五月同様に三玖にも世話になってるし休日だ
誘うのはこの日だろうと 俺はメールを送ろうとしたのだが…………
その夜に一花からもその日に出かけないかとお誘いのメールが飛んで来た
断りにくい 一花も二乃の一件で何かと手を回してもらい
五月と風太郎の喧嘩を止めるのは彼女の助言が無ければ不可能だっただろう
三玖に送るメールと一花に送るメール 俺の指はその場で止まり小一時間悩んだ
結局は 二人共に連絡を入れる事になった どっちの約束も無下には出来ない
風太郎の事は俺も言えないな
ただ電話をした時に三玖が『少し一花と相談してくる』と言い向こう側でも帳尻合わせをしてくれた
女子のこういう時の団結とはとても頼もしいもんだよ
(ダブルブッキングと言うか 最低な事してんな俺も)
準備が終わり次第 俺も風太郎も先に家を出る
らいはもう少ししたら出かけると言うので戸締りだけは気をつけるようにだけ伝えた
俺達よりしっかりしてる妹だ そこは心配はないのだがな…………。
そして俺は待ち合わせのショッピングモールへと無事に到着した
先に来ていると言う二人を探すが…………
如何やらその必要はないと見た 出入口から少し
視線の先で何人もの男性の目が集まる場所があり
そこでは一花と三玖が何度もスマホを確認しては辺りを見回していた
二人は目立つ容姿をしてるからこういう時には見つけやすい
白いコート姿の一花と黒で白のラインが入ったタートルカットソーを着ている三玖
ぱっと見てセーター姿の俺があの二人の所に行って良いものか考えてしまう
『すげー美人』『お近づきになりたい』と様々な声が聞こえてくる
俺は今からその中に飛び込むのか…………
以前にも言ったがもう少し自分達が人目を惹くと言う事を自覚して欲しいもんだよ
はぁと漏られるため息をここでとめ 二人に向かい声をかける
気づけば向こうは俺の方に手を振り『遅いよー』と一花からお叱りが飛んできている
自然の周りの目線は俺に来るがうるせー見るなのオーラで辺りを威嚇し前に進む
「三玖 一花 おはよう 服似合ってるな」
「ありがとうコータロー」
「コータロー君は流石だね きちんと見てくれる」
疎い俺でも女性がお洒落をすれば褒める時は褒める
全神経を最早古臭い自分の脳内の言葉の羅列からどれが適切な物かを選択し
それを口に出す 当然だがお世辞ではない 何度も言うが中野姉妹は美人だ
紛れもない事実だ 下手なお世辞何て言う事は無いんだ素直に褒めるこれが一番だろう
くるっとその場で周り『どう』という一花
俺にそこまでは求めるなと言いたいが流石は女優だ
服を着こなすし 似合ってない訳はない
三玖も同じく俺に三度感想を求めている 何故にそこまで求めるのだろうな
ふと見れば何時もと同じく髪留めをつけてくれている
自然だが笑みも出る
「どうしたのコータロー?」
「本当に大切にしてくれてんだなって」
髪留めを指させば三玖はコクリと頷く
『大事な物』とあの時と同じくそう話す
横の一花は何かを三玖に耳打ちし突然顔を真っ赤にしだす
何を吹き込んだのかは知らんがあまりいじめるなよと言いスマホを確認する
時間は11時少し 暫くは色々見て回っても十分に時間は余るだろう
「さて どうする」
「ここは男性がリードするべきじゃないのかな?」
「コータローは何処に連れてってくれるの」
「俺に何を期待してんだよ…………」
以前出かけた時は突然五月が現れそのまま行動する事になったが
今回は違う 事前に一花と三玖とは連絡を取っている
世間体はこれを何と言うんだろうな…………デートなのか?
ふいに頭を過ぎるみずき姐の言葉 友人同士で行動する事をデート言えるのか
それも二人連れだ この状況は多分そうは言わないだろうな
二人からも何処に行くのか期待されてるし このままいても周りの目が痛い
見てねぇでどっか行けと軽くガンを飛ばし
二人を先導するようにして何処か目ぼしい所はないか考えながら移動を始めた
ルックス最高な二人といれて俺も幸せもんだよ 全く……。
大型ショッピングモールだ 買い物以外の施設も内部には沢山備わっている
雑貨屋にゲームセンターやスポーツ用品店など様々だ
普段はこういった場所にはあまり来ず 以前にスマホを買いに来たくらいだろう
それを除けば本当に稀だ 妹にも『バイト以外で出かけてみたら』と常々言われており
はいはいと軽く流していた俺だが、『流石に女性二人を連れ歩くとは想定もしないぞ』
と思ういはするが
それで取り乱したりはしない 一応は昨日の時点で今日何をするかの予定自体は立ててはある
あちらこちらに目をやる二人はあっちに行こうとこっちに行こうとそれぞれ別の方向に移動しようとする
姉妹なのになんでこうも行先は別なのか…………。
二人を一旦止め 俺は最初の目的地を二人に指さす それはここから少し先の大きなホール
中にはグッズやらパンフやらが売られており
休日のだからか家族連れやカップルの姿も多くみられる
そう最初に行くのはあそこだ………流石は大型ショッピングモールである 映画館まで完備さ…。
「先ずは映画いくぞ」
「映画かぁ……コータロー君のおすすめとかあるの?」
「時代劇とか戦国物とかやってるの?」
「これだよ」
スマホを二人に見せる
そこにはある映画の内容が書かれており
内容と言えば一応はアクションなのだろうし R12くらいで血の描写も多い
何故か題名が「死 国オブザDEAD」とすごく B級くさい名前だ
どうして四国なのかと監督に聞きたいほどである
ただ俺も適当に選んだ訳じゃないし これも気になったいた作品の一つ
余り行動しない俺は映画館に来ることも少ない 今日は折角 この面子で出かけてるんだ
一緒に鑑賞するべきだろうと思いここに連れて来た
三玖は『うん 良いよ』と頷くがもう片方の様子は傍から見てもおかしい
『もっと別の映画があるんじゃないのかなー』と声が裏返っている
「なーにどうかしたか 一花?」
「君は本当に意地悪だね」
「?一花どうしたの」
「まぁ 見てのお楽しみだ 行くぞ二人ともチケットは予約してあるし」
「こう言う時だけ 手際が良いんだから………はぁ」
何処か諦めたかのような表情で三玖と俺についてくる一花
『ため息は幸せが減るぞ』と何時かの言葉を投げかける
むっすとはすれど怒りはしない 本当に嫌なら入り口で待ってるだろうしな
劇場の中は割と空いていた
今日から公開という割にはあまり集客力もないようで少々不安だ
ただ話題作とまでは言われてはないだろうが見に来るには十分過ぎるキャストがこれには出ているんだ
その人物とは誰かを知っているのは俺と四葉だけで 知るきっかけをくれたのがあいつだしな
「さて 何処に座るかな」
「コータロー君真ん中に座りなよ 両手に花だよ」
「一花」
「まぁ 拘ってる訳でもないしな」
一花 俺 三玖の順番で席に座り 暫くすれば明かりは消える
ふと一番前の席を見れば一瞬だけ何処かで見たようなリボンが見えたが、気のせいだろうと
俺は画面に目を向ける
さて あと数分で映画も上映開始だ 『覚悟してよね』と隣の一花さんは言っている
本当に何を気にしてるんだか、自信を持っていれば良いんだよ お前は立派だぞ
『もうお終いよ 四国の人間は全員ゾンビになってしまったわ!!』
開始そうそうぶっ飛ばしている いきなり腐敗した四国が出て来たと思えば
何処か見覚えのある女性が周りのゾンビを見て悲観的な考えと言葉を言っている
「コータロー あれまさか一花」
「女優だしな 映画も出るよ っおま踏むな」
「うぅう コータロー君のバカ」
彼女が女優を目指すと知った時に三玖は目を輝かせサインをねだったと言っていた
当然今の映画に写る女優を見れば、テンションも上がっているのか
すっと首をだし一花を見ている
まじで連れてきて良かったな 三玖も嬉しそうだし 一花もまんざらでもなさそうだ
軽くだが足は踏まれた 俺にその手の趣味はないんだがな……
そして映画は続く
一花の出番と言えば あの後数分後何事もなく そのキャラは死亡した
呆気ないにも程がある 悲鳴すら上げる事もなかった メインの人たちはさっさと行ってしまう
薄情すぎる奴らだと思った その後はなんやかんやで四国は救われ
最終的に ゾンビは消えた けど瓦礫がガタリと動き
如何にも続編を匂わせる終わり方だった
俺は満足感にひたり 終わってから暫くは笑顔だった
一花も最初に入った時とは違いため息はなく
純粋に映画を見ていた 自分が少しでも出ているんだそりゃ見入ってしまう
一方三玖はパンフを買えば 一花にサインが欲しいと突き出す
「あの出番で サインは流石に」
「書いてやれよ 台詞もあるキャラだし 罰なんて当たんねぇよ」
「うん 取っておきたいから お願い」
「分かりました 帰ったら書いてあげるよ今は書くもの無いから」
「と 言うと思ってインクを持ってきたぞ」
「何だろうね 君のその準備の良さは」
侮るなよ事前の準備は万全だ
懐からペンを取り出し一花に手渡せば、少々驚きながらも三玖が持っているパンフレットに
自分の名前『中野一花』とサインをする
仕事じゃないんだ 中々持ち歩く事はないだろうし準備していた良かった
四葉は言っていた林間学校以降からだろうか 一花は普段以上にやる気を見せていたと
仕事も増え始めたと嬉しそうに語っていた
俺も彼女を応援すると決めた傍らその成果を見て見たくなった
本人に聞いても気恥ずかしいのかどれに出てくるかなんて教えてくれない
ならば実際に見て目に焼き付けようと…
情報を提供してくれた四葉には感謝しないと行けない
確かに出番と言える出番はなかったが、それでも一花がスクリーンに映る姿はとても良かった
演技一つ一つに感情が籠っている プロ何だし当たり前だろうけど
俺はてんで素人だ ありきたりな感想ばかりだ
「お前の頑張り ちゃんと出てたな一花」
「コータロー君にはあまり見せたくなかった」
「ひでぇな 俺はファン一号だろ」
「なら 私は一花のファン二号」
「もー 二人してからかわないでよ でもありがとね」
はにかむよう笑顔を作る一花
それはあの日とは違い 偽った作り笑いではない…
彼女は俺やみんなの知らない所で頑張っている
学校と仕事に板挟み 追い打ちとばかりに風太郎の家庭教師だ
何時休めてるか不安だった 先週も事故の全容を知ってたかテンションも低く見えていた
彼女達からの誘いではあったが、こうして一花の笑顔が見れたんだ 十分過ぎる成果だろう
「そーれで コータロー君 次はどこに行くのかな?」
「少しまて 時間は うん会場は12時だ開いてるな」
「何かあるの?」
「まぁ ついて来ればわかるさ」
一旦外に出ると俺はスマホを確認し 今の時間を見た
現在13時少しだ このショッピングモールでは他にも行く場所はある
それが開くが12時からだった 一花の映画とうまい具合に重なってしまい
先にそちらを優先していた ここから歩けばすぐの場所だ
今が二階 目的地は3階の展示スペースにある
二人に逸れないよう言えば 一花は『御守りがあるよー』と鍵をチラつかせる
頼むから落とすなよ?
三玖も『大丈夫 逸れないから』と小さくだが俺の裾を掴んでいる
まぁ これなら離れる事はないだろうし
花火の時とは違う 俺には連絡手段がきんと用意されてんだ
(三玖も頑張ってるね)
(コータローとは離れたなくないから)
「また こそこそ話か前向いて歩けよー」
『『はーい』』と返事を返す二方 本当に女子とはお話が好きだな
エスカレーター乗り 少し歩けば 展示コーナーが見えて来た
それに近づくたびに 俺の裾を掴む三玖も『え』と小さな声を上げる
「コータロー これって…」
「あぁ 昨日から開始されてんだ 武田信玄 所縁の展示会がな」
「でも 私はコータロー以外に知らせてない 一花にも」
展示会では武田信玄に所縁あるものがずらずらと並べられ
沢山のお客が、写真を撮ったり 書かれている文献を読んだりと思い思いに楽しんでいる
来月12月22日は三方ヶ原の戦いが行われた年だ
それなのになぜ今なのか 今回ある理由で企画が前倒しになったらしく急遽昨日から行われている
後ろで楽しみでもあるが、不安でもある三玖
確かに彼女言う通りだ 趣味を知ってるのは俺と三玖 そして詳しくは聞かないがテストを作る際に風太郎も彼女が武将関連が好きだと気付いている
今でも彼女はそれを秘密にしている 俺も勝手に話す事はしない
元々今回は三玖をここに連れてくる予定でいたんだが、まさかの同時に誘いを受けるという
不測の事態だ 俺はどうするか迷いに迷った
最初は一花と三玖をそれぞれ別行動させ どちらかに付き添う形も考えたが
(それは駄目だ 色々と駄目だ)と心の中で誰かが警告を出した
幾つか選択を迫られる中 俺は風太郎共にある計画を進めており
その合間に 俺はあるものを製作した
不安がる三玖に『まかせろ』と告げ
展示会を見て不思議そうな顔をする一花に声をかける
「一花 どうだ こう言うの」
「あまり 来た事ないかも コータロー君好きなの?」
「割とな そこでだ せまる来月の期末に備え こんな物を作ってきた」
バーンと俺はそれを取り出した
数枚のプリントだ うーんとそれを見る一花は『あっ』と間の抜けた声を出す
そうこれはただの紙じゃない
問題用紙である 内容と言えば武田信玄についての事だ
「今回のこの展示会を利用して 二人には幾つか問題に挑んでもらう…。教科書だけでは分からない事が多いし レプリカとは言え見ながらやるのもいいだろ?」
「せっかくのお出かけ中に 勉強とはやっぱり フータローくんのお兄ちゃんだね。けど そうだね 楽しそうではあるかも 家だと出来ないから」
一花には連れて来た理由を主張版の家庭教師と説明した
もっとうまく誤魔化せたと思うが今の俺にはこれが限界だ
勉強と言い張れば 三玖が展示物に興味を持ったり 写真でとってもそこまで違和感はないだろう
「まぁ…これで三玖も安心して 中に入れるだろ?」
「ありがとね 色々考えてくれて」
「三玖には世話になったし 林間学校では心配させたからな これくらいはさせてくれ」
後ろで縮こまる三玖にもプリントを受け渡す
安心出来たのか、表情も柔らかくなりお礼も言われた 俺に出来る事なら手を貸すし
せっかく来て楽しめないまま帰るのももったいない 三玖には楽しんでもらいたいと思ってる…。
「コータローくん 何だかんだで 楽しみだったんだね 二人も美少女がいる訳だからね…。張り切るよねー!」
「ほほー 随分と余裕だな 一花 一つ忠告しておく 今渡した プリント平均点は60だ
問題を答えるだけでは終わらんぞ きちんと平均点以上はとってもらうからな」
「えっ 無茶を言うね 私の中間試験の点数見たでしょ?」
15点 三玖は68だ 差は大きい
ただし あれは数ヶ月前の結果だ 本人は面倒な顔だが、俺は一花があの頃よりも出来ると信じている
一応だが平均点以上なら商品も用意はする
「60点以上なら何か奢ってやろう 払える範囲なら構わんぞ」
お出かけだ 多少の出費も覚悟はして来ている
何とも有難い事に消え去って行く筈だった 幾つかの貯金だが、不思議な事に消えずに済んだ…。
(ここに来て こいつらの父に助けられるとはな)
スマホ代はあの人が持ってくれた それが生きる形になっている。俺としては凄く複雑な気分だ…。
「制限時間は一時間と半とする 別に平均点以下だからって罰はない 分かる範囲…展示物やそれを見ながら解いて行ってくれ ようは気楽にやれ」
「了解 コータロー君のおごりとは中々嬉しい特典があるし お姉さん頑張ろうかな」
「コータロー 60点以上で奢りなら 90点代なら何かある?」
「特には考えてない 一応は口実で三玖を連れてくる事が理由だ」
「分かった なら楽しむ けど戦国武将 それに武田信玄なら誰にも負けないよ」
「その意気だ よし 行くぞ二人とも」
武田信玄の所縁展示会に入る為に行われた 小テスト(口実)
一花を騙すような形にはなったが、三玖を楽しませるためだ 悪く思うな
勿論中に入れば 傍目でも分かる 三玖が纏うオーラが普段とは違う
渡されたプリントを持ちながらも 展示物に釘付けだ
写真を撮ったり 飾られている品を眺めたりと 普段ではお目にかかれない物を見ては
とても満足した笑みを浮かべている
これで良くバレずにここまで来たなと感心してしまう
それに一花が頭を傾げれば 三玖は彼女に手を貸し
ヒントなど与えている
これだ俺が見たかったのは 楽しく勉強して協力し合う
一人では限界も多い 何時かは躓くだろうでも彼女等は五つ子だ
互いに協力し合えば何だって出来るだろう
『五つ子だから』と三玖は屋上で言った そうだ五つ子だから
一人が出来ない所 他に教えてもらう それが俺と風太郎が考える
五つ子卒業計画の一つなのだから
俺達は異分子だ 五つ子の輪を壊しかねないだろう 二乃の意見は割と当たっている
ある程度整った物は たった一つの出来事でいとも簡単に崩れ去るもんだ
だが 俺も風太郎も諦めない 彼女達には笑顔で卒業し 大切な思い出として覚えておいて欲しい
「コータロー これ被って見て」
「ん ?」
「この兜は一般の人でも被って良いらしいから」
「コータロー君 侍だね 似合うよ」
「思ってもない事言うな」
「ううん コータローかっこいいよ」
「そいうもんか………ありがとな」
先の事を考えていればいつの間にか二人は俺の前に立ち
三玖から展示物の一つを手渡された お試しで被れるものらしく
武田の家紋が入っている しぶしぶといった感じで被れば
本当ではなくてもそれなりにずっしりと重さを感じる 一花は面白がってその姿を写真に収めている
毎度のことながら許可もなく撮るなよ 減るもんではないけどさ
「三玖も撮ったら」
「コータロー 撮って良いかな?」
「三玖は偉いな 許可取れて まぁ気が済むまで撮ればいいさ」
「ОK撮るね」
そこからは制限時間が来るまで俺も参加し三人で中を見回した
事前にネットで調べたが、俺も知らない事が多いなと発見も多く
その都度三玖から逸話を聞いた 頼りになる奴だ
一花も最後まで楽しく過ごせたようで『何かこういう勉強ならいいかもね』と言ってくれた
そして予定の時刻がスマホに表示された
まだ見たいといった雰囲気を三玖から感じるが、「次は二人で来るか?」と話した
「二人で…………うんよろしく」とちゃんと返事も得られた
次回似たような事があれば、三玖を誘わないとな
近場のカフェに入り 二人が注文を済ませている間に俺は答案用紙をチェックした
「ふむふむ」
来月には期末試験が行われ 実質風太郎の最終試験のようなもんだ
このままペースで行けば、まだ希望はある何もなければだ
今日行った簡易テストも一花は全体に成果も良く 三玖のアドバイスが結果に出ている
三玖にいたってはほぼ正解と言っても良いだろう
下手な問題だと俺や風太郎よりも良い成果を残せる筈だし
これを日本史に限らず他の教科でも生かせれば万々歳だ
紙と向き合い 頷く事数分 全てのチェックは終え待機すれば
一花と三玖が戻ってきた 手には飲み物持参である
一花はコーヒーだろうが、三玖のまさか…
「抹茶ソーダだよ」
「何でカフェにあんだよ」
「抹茶だからあるに決まってるよ コータロー?」
「ごめんな 俺が悪いよな」
「押し負けたね…。」
この世には不思議な事が一杯だと俺も自覚してるしな
今更だろうと自分に言い聞かせ納得させた カフェ何だ抹茶はあるしそれがソーダでもおかしくない
普段から飲んではいるが三玖も別にコーヒーが飲めない訳じゃない
ただ単に好きな飲み物がここにもあっただけだろう
「それで コータロー君 採点は終わった」
「おう 終わったぞ」
「どうだった」
楽しい展覧会 ただ借りとは言えテストだ
事前に60点以上が平均だとも知らせてある
二人も神妙な面持ちだ
俺は採点の終わった紙をそれぞれ見て二人に結果を教えた
「一花は 29点だ まぁ急な問題だししゃーないな 後半は空白だしな」
「あぁ やっぱその場では難しいね 色々見てたら時間なくてさ」
「でも一花 15点から成長してる 頑張ったよ」
「三玖もありがとね それで三玖はどうだったの?」
一花は急な小テストだ 流石にそれで60点以上取れとは少し無理があった
しかし前回の中間試験よりは難易度自体は上げているし これを満遍なくあげれば十分だろう
そして最後は三玖だ
まぁ結果自体は見ていた 何せこれは日本史のみの内容だ それも彼女が好きな戦国武将問題
織豊時代を中心とした問題で 元は一花にバレず展示物を見る為の物である
「89点だ 先言う これが本番のテストでこれ一個に集中していれば確実に100点は行けただろう」
三玖に手渡した紙には89と書かれ 答案用紙にはきちんと答えが書かれていた
ただ後半部分だ、一花と同じで空欄が出来ていた
まぁ…理由はどうあれ好きな物を姉妹の前で隠す事無く見れたのだ それでこの点数本当にこいつは優秀と言える…。
「うわー 流石三玖だ」
「どうした三玖?」
「コータロー君 やる前にさ 60点以上なら何か奢るって話したじゃん」
「あぁー そうだな 何か欲しいもんあるか」
渡されたテストを見て三玖は固まったまま何も告げず
俺は気になり様子を見るが、何も言わない
一花は『約束を守ろう』と俺に開始前の話を思い出させた
本当に高いものでもなければ、好きな物を俺は、奢ると話した
さてはて三玖は何が欲しいのかな?
「写真……」
「ん? 写真」
「コータロー 私と一緒に写真を撮って!」
何か奢ると俺は言った 飲み物で良いし食べ物で良い 小物類だって買える品なら買っていた
けど 三玖が要求して来た事は『俺と一緒に写真を撮る』ただそれだけだった
本当にそんな事で良いのか? 確かに三玖から何かを強請るといった事は今までなかったし
そう言った場面に出くわした事もない 彼女にあげた髪飾りも俺がお礼として上げたものである
考え込む俺とは対象的に一花は笑みを浮かべている
本人にいたってはじーっと俺を見るだけだ…。
「それで良いのか」
「コータローは何でもって言ってたし」
「何でもとは言ってねぇよ」
「ならダメ?」
「別に良いけどよ こんな目つきの悪い奴何処か良いんだ」
「はいはい そう言う事言わないの 私が撮ろうか」
「一花も一緒に撮ろうよ 今日はそう言う日なんだから」
「良いの三玖 私がいても」
「うん 今日は良いよ 三人で撮ろう」
「?? 何の話だ」
「良いから じゃあ 誰かにとって貰うかな すみませんお願い出来ますか」
今日は良いよとは一体何を意味するのか
俺にはてんで理解は出来ないが、一花も含め三人で撮る事になり
一花は店員を呼び止め自分のスマホを手渡すとぎゅと体を近づける
反対側の三玖も同じくぎゅと力を入れる やめろ 潰れるだうが…
3 2 1 の合図と共に パシャリと音がしその日の思い出が記録された
「うわー コータロー君すごい睨んでるよ」
「コータロー 何だか怖い」
「んな事言うなら 今すぐ消せ」
「嘘だよ 思い出だから取っておく コータローにも送るから」
「大切にしてね こんな可愛い子と撮った写真なんてみんなに自慢出来ちゃうからね」
「自覚があるならもう少し 視線を気にしろ」
三玖から早速先ほど取った写真が送られてきた
一花俺三玖と写り 二人が笑顔の中 俺も何とか笑顔を作り写っている
挟まれる形なんだ こうなって仕方ないだろ……。
大切にしてねと一花は言う それは当たり前だ
友人と撮った思い出を俺は大事にするさ 未だにこのスマホの中身は空に近い
林間学校でも俺と風太郎や四葉の三名で撮った写真ぐらいだ
あの時は色々頭が回らず この写真を撮るのが精一杯だったしな
俺が楽しい思い出とはよく言えたもんだよ
それに 去年の俺なら携帯もスマホも持つ気なんて無かっただろうな
少ししんみりした顔になってたのか二人が心配そうに見てくる
パタリとカバーをし スマホをポケットにしまう
「ん……そうだ次は何処か行きたい場所あるか?」
目的の二つはやり遂げた次は二人がやりたい事をさせるべきだろう
リードするのが男の役目だが偶には女性陣からの意見も聞くべきだ
うーんと考える一花は『そうだ』と何か閃いたのか
次の目的地を教えてくれた……
さては遂に女性陣からの要望だ はたして何処に連れて行かれる事だろうな
今いる三階から下に行き 二階の洋服店に向かうと話す
俺は指示されるままその場所へと歩いていく 今から行く場所は多少なりと値が張る物が多いとか
事前に言ってくれてありがとな 覚悟は決まったぞ
少し歩けばそのお店が見え始める
『何が良いかなー』と上機嫌な声で歩く一花
見てるこっちも気分が良くなるさ
先ほど彼女は言っていた『留守番している二乃にお土産を買っていきたい』と如何やら
今家には二乃しか居らず 五月も四葉も何処かに出かけているようだ
まぁ役一名は誰と出かけているかぐらいは把握は出来るが、面白いから黙っておくか
店内に入れば、幾つか並べられた服を見てはどれが良いかと迷う一花に
『そこまでしなくていいよ』と相変わらず二乃には冷たい発言が目立つ三玖
何着か選べば よしと試着室へと向かう
その時だ 試着室のカーテンのが少しだけ開かれ見覚えのあるリボンが顔を出した
「あらあら 一花と三玖 それにお兄さんじゃないですかー」
「四葉 あれ何処か食事に行くって」
「よう 四葉か何だ慌ただしいなお前も……」
首だけをだし挨拶をするのは中野四葉だ
何故か額に汗を滲ませ試着室から出ようとはしない
一花が見せたい服があると言うが『いやー 今は大丈夫だよ』と目が泳いでいる
そんなやり取りをしていると 四葉は俺に目線を送ってくる
(ん……何だ?)
何かの暗号でも送ってきてるんだろうか
凄く必死に何度も俺に目線を送る……風太郎といる筈のこいつが何故ここに一人でいるのか
そして何故そこまで慌ててんだろうな 風太郎の奴はどこ行ったんだ?
「コータローは ハットとキャップどっちが好み?」
肩をとんとんと叩き俺を呼ぶ三玖は二種類の帽子を手に持ちどちらが良いかと聞いて来る
個人的には動きやすさを重視してキャップだろうとは思う
ハットをかぶる印象は俺にはないだろうしな
「コータロー君は確かに似合わないかもね」
「うるせー まぁ うん 俺はキャップの方が好きだなバイト中でも被っていられるし」
夏場のバイトとか今年も何だかんだと暑く
照りつける日差しが、凶悪過ぎ熱気で体力を持っていかれ
タオルを巻くだけじゃ頭を守り切れんと実感していた
「なら こっちにするね うん似合うよ」
「それで何で聞いてきた 二乃へのお土産だろ」
「私は別に二乃に買う為に来た訳じゃない」
「虚しいな…………」
「こ コータローに買う為に来た」
「まじかよ…別にいいぞ無理しなくてさ」
二乃への買い物はあくまでも一花で自分はそれの付き添いにしか過ぎないと述べる
今聞いてきたのも俺へのプレゼントだと言ってくれている
嬉しいだけど 俺はそこまでされる理由はないんだけどな…
「むぅ…」
「コータロー君 今のはいただけないねー 女の子の気持ちは受け取るべきだよ」
「確かに言い方が悪かったな…日頃のお礼って思えば良いのか」
「家庭教師のお礼もあるけど…コータローに助けてもらったから」
「……」
そうだった 俺は三玖を助けたんだ
こいつが無事ならそれで良いし 姉妹達からお礼の言葉も貰えばそれで満足していた
だから三玖が何のために俺にプレゼントしてくれるのかも分かっておらず。少々機嫌を損なわせてしまい 一花にも軽く怒られる。言葉選びは慎重に……。
「コータローは嫌かな 私からのプレゼントは?」
「嬉しいさ 嫌がる理由は何処にもない けど良いのか高そうだけど」
「これくらい大丈夫だよ コータロー君 良くても6000円くらいだし」
「それは安いとは言わない 俺が普段買うのは高くて350円だぞ」
普段からこういった店には来ないし 自分の服装にはこだわらない
唯一気にするのは首元の傷を隠せる服かどうかだ あれ偶に見られると自殺しようとした後だと勘違いされるものあるし バイト先で客に与える心象にも影響してしまうからな
「じゃ これを買う 色は黒だけど良い?」
「まぁ…ここでどうこう言ってかっこ悪いだけだしな」
「お兄さん女々しいですよ」
「うるへー んじゃお願いするか 頼めるか三玖」
コクリと頷けばハットの方を戻し 持っていた方を会計に出すという
一花は何時までも出てこない四葉にしびれを切らしている様子だ
怪しいとじーろと見えている 俺にちゃちゃ入れる余裕あんだし
お前も甘んじて出てこいよ…『無理です』としか言わない四葉 お前なにと戦ってんだよ…?
(すげー…怪しいな…っか風太郎は何処だよ?)
一花は二乃がいない代わりに自分が服を着てサイズを確かめるという…。確かに姉妹ならではの確認方法ではあるな
「んん」と唸る四葉の表情はどんどん険しくなり もう限界だといった顔つきなった瞬間
「同じ体なら私が着るよ」
「えっ」
「今の声」
「……まじかよ」
それは突然聞こえた
確かに試着室からだでも今の声は四葉の物なのか?
わ わたしだよと慌てる彼女と先ほどの声を思い出し俺は少々頭痛を覚えた…。咄嗟にスマホを取り出し ある人物へとメールを送る
すると送信から僅か数分で返って来た
『俺だ』
宛名 上杉風太郎
この試着室の中では今まさに四葉の後ろに隠れ風太郎も入り込んでいるという
俺と一花が倉庫に閉じ込められた時と同じ状況になっていた
下手したらあれより不味い状況だ その後またメールが届く
『一花と三玖が来たのを見て反射的に隠れた どうしよう?』
「俺がどうしようだよ……」
っと悠長にやり取りしていれば、四葉は服を受け取り着替えを始めていた
あの中で 着替える四葉の横で弟がいるのか……
風太郎以上に色々な意味で四葉はドキドキしてるだろうな
暫くすれば服を着こなす四葉が顔を赤くして出くくる
『ぴったりだね』と安心する一花は続けざまに服を出そうとするがこのままでは風太郎も四葉も危険だ
助け船を出さんとな
「一花 ちょとこっちにきてくれ 三玖も頼む」
「どうしたのコータロー君?」
「何か見つけたの?」
「お前らに似合いそうな服があったな 本人にも意見を聞きたい」
「ほほー 君が服を選ぶとふふ 見てあげましょう」
四葉が言えば何でと言われるが 外で待つ人間が呼べば呼ばれた人間の意識はそっちに向く
その間に二人にはすぐに退避して貰おう 俺が稼いだ時間を無駄にするなよ
(お兄さん ありがとうございます)
(幸太郎 助かった)
(お礼はいい 早く行け)
アイコンタクトで指示を出せば二人は店内を後にし出て行った
本当に何もなくて良かったよ いや何かは会ったんだろうな
ふふと笑いが出てくる
でも俺の戦いは終わっていない
二人を逃がすために囮になり一花達を誘導したは良いここから先はどうしたものか
似合いそうな服とは言うけど ここで『あ 気のせいだった』とかは選択から排除する
流石にそれは駄目だと俺でも理解は出来はするさ……。
と考えてはいるが、後ろの二人は期待の眼差しだ
そんな目をキラキラさせるな 俺はそこまで趣味は良くないぞ
(何かないか…… ん)
二人に悟られないように服を見て行く中で俺は一着のTシャツを手にした
シンプルな物で値段自体もここの品物ではまだ安い方である
ただ手に取ったそれはある意味で今の俺を救う救世主だった
三玖の肩を叩きそれを見せる
「こんなのどうだ ハリネズミ」
動物のイラストがデザインされた衣服だ
ここにはあまり似つかわしくないが、タグなど見れば何処かの有名なブランドらしい
ぱっと見てこれを選んだ理由は、三玖がハリネズミが好きだ言う事だ
咄嗟に囮となった際に 探す中 ふと昔を思い出す…。何度この閃きに救われた事か……。
それは五つ子と俺で近くまで出かけた時だ
ペットショップがあり 俺達は入り そこには珍しい動物も何匹かおり。みんなでそれを眺めていた 勿論当時の俺達の生活を考えれば、動物なんて買う余裕はない
見ているだけで十分だった
今よりも繋がりの強い五つ子は好きな物も同じで嫌いな物も同じと徹底している
そんな時だ 幼い頃の三玖がある動物を見て 微動だにしなかった時があり
全員で説得し 『僕が三玖ちゃんに買ってあげるよ』と根拠もない癖に言っていた
三玖はそれで納得したのか、張り付いていたショーケースから離れ俺達は家に向かう
帰り際に自分の情けない財布の中身を見て『きっと 大丈夫だ』とまた根拠もない自信だ
その時に三玖が食い入るように見ていたのが、ハリネズミと何とも可愛らしい
可愛いわりに自分の針で周りを遮断と距離をとる……。
高校で再会した時の三玖と何処か似ている
ハリネズミがプリントされたTシャツをじっと見るが何の反応もなく
もしやあの頃約束したのは三玖ではなく別の誰かなのか?と俺は焦り見せる
「コータロー 覚えていてくれたんだ」
俺の心配は如何やら杞憂に終わった
「あれだ 『僕が買ってあげる』って奴だ
本当 生活も苦しい癖に見栄を張っていたな 昔の俺は」
「何かあったね そんな事三玖が離れなくて コータロー君が言いだしたの」
俺だけではない 一花も当時を思い出したのか
『懐かしいね』と肩をぽんぽん叩いてくる
あの時は俺と一花で張り付いてる三玖を引っ張り 更に他が後ろから引っ張るという大きなカブ状態だった
けど三玖との約束を俺は守る事はなく 零奈さんの葬式 以降俺は姉妹の前から姿を消し
次に再会したのが、俺が高校2年 三玖が高校1年と相当後の事だ
更にそこから1年時間を空けることにもなる 随分と遠回りをしたな……。
「本物じゃないけどな これくらいなら買ってやれる」
「流石にそれは悪い」
「気にすんな 急遽やったテストでもいい点取ったんだし」
「90点は駄目だったけど」
「あれは 私に付き合う形で三玖も全部書く暇なかったじゃん 実質100点みたいなものだよ」
ナイスだ一花
毎度の事 こいつには良いパスを貰う 俺だけでは中々上手くは行かん
俺達の説得を受け 何度かTシャツを見た後に『なら お願いコータロー』と承諾してくれた
一方一花も『私もなーにかー』と言いだし 俺はお好きな物をどうぞと
一応『人間には良心と言う物が』と五月の時と同じ言葉を一花にも投げかける
『大丈夫』と言うが本当に大丈夫なんだろうな?
「良い買い物できたー」
「うん 凄く良かった ありがとう コータロー」
「お前らが満足してくれただけで十分だよ」
店を出れば今日の戦果を手に持つ二人
会計の際に一花が買っていた衣類は俺や風太郎の洋服代を合わせても到底及ばず
俺は少し目まいすら覚えた
何ともリッチな生活だよ 加え一花は今では女優として働くんだ
俺が知るだけでも結構出ているし 儲かってんだろうな
三玖の買い物自体は 俺へのお礼として買った帽子のみで本人は『これが買えれば満足だよ』との事
その帽子を買うにも俺はどれだけ働けばいいんだろうな
かく言う 俺も三玖と一花にそれぞれ服など買っていたり数ヶ月前の俺なら想像もしないだろう
女子に服をプレゼントなんて機会はもう来ないと思っていた
お値段はなるべく気にしない方向で俺は強きでレジに立った
財布かた消えていく諭吉たちに敬礼をし 見送った けどまぁ必要経費と割り切っているし
プレゼントと思えば俺の気も楽だ それに喜んでいる顔が見れれば十分お釣りも来る
こういう時の為に俺は普段から借金返済分とは別に貯蓄もしている
男の甲斐性とも言うしな 見栄くらい張らせてほしい
三玖は不安そうにしてるが、気にするなの一言で済ませた
「よし 後は何処か適当に寄って行くか」
「そうだね でも一旦休憩しよう 向うに喫茶店あったしさ」
「確かに 今日は歩きつかれたかも」
「へいへい…………あっ お前らは先に行っててくれ」
「ん どうしたのコータロー君」
「と い れ 」
「うわー これまたひどい」
「分かった 待ってるよコータロー」
一旦二人と別れ 俺は少し先に見えた玩具に目がいった
『お兄ちゃんもお世話になったでしょ』と朝方らいはに言われている
二人にはプレゼントを渡したが、五月にはまだ渡していない
勤労感謝だ あいつは普段何時も気を配って 林間学校でも俺を同じ班に入れてくれた
わざわざ車も出して 風太郎と共に連れて行ってくもしたんだ……。
「すみません これとこれにあとこれお願いします」
俺は店に入ればぬいぐるみコーナーへと向かう
アイツへのお礼 一瞬『お食事券』五月に渡すには最適だがとても色気がない
彼女なら素直に喜ぶし 受け取ってくれるだろう
けどもっと別の女性が持っていても不思議ではないものを贈ろう
最初に目に入った その動物 俺は何故か目が離せなかった
とても五月と似ていると思えたからだ……。
それをレジまで持って行き 会計を済ませ 包装紙に包んでもらう
少し手間をかけ過ぎたかとも思ったが、これくらいは別に良いだろうと頭を縦に振る
店員から『彼女さんへのプレゼントですか?』と聞かれたが
『いえ 大切な友人にです』と俺は返答 店員は『ふふ』と笑っている
何か可笑しな事でも言ったかな? 少しすれば包み終わり
商品を受け取れば俺は店を出る 二人に何かと言われたら適当な理由で済ませれば良いだろう
あまり他の女性の話をするのはこういう時は良くないとも言うし
色々と理由を考える為店を出て少し歩いた時だ
俺の背後から呼ぶ声がした……。
「お兄ちゃんだーーー」
「幸太郎君 今日は出かけていたと聞きましたが ここにいたんですね」
「らいはに五月か」
振り向けば、私服姿の五月と朝からおめかしていた妹の姿があった
二人を見れば 朝のらいはの反応も納得できる
妹が出かけるといった相手は五月だった 初めて家に来た日からずっと妹は懐いていたし
番号も風太郎から教えられている 知らない合間に連絡を取っていたんだろうな
そして何故か俺を見て固まる二人
何と言うかタイミングばっちりだ 二乃以外とは全員に会えるとはな
「お兄ちゃん 誰かといるって言ってたのに一人 朝の嘘だったの」
「嘘じゃない 今は別行動だ 少し用事があってな お前らこそ 買い物か」
「はい 折角の休みなのでらいはちゃんとお出かけでもしようかと
聞けば幸太郎君もお出かけと聞いたので……残念です」
「いいさ 妹の遊び相手やってくれてんだ それだけで十分 休みくらいは俺の事は気にすんな」
「分かりました」
本当にその通りだ 学校では四六時中後ろにいられて
トイレや図書室以外に俺の休息の地はない 休みの日くらいは自分の面倒を見ていて欲しい
そのうちぶっ倒れてしまうぞ
うんうんと頷けば『お兄ちゃんにだけは言われたくないよ』と妹からの発言が胸に刺さる
「お兄ちゃん その包みなに?」
「あっこれか」
五月の横にいるらいはは俺が持っている包みが気になるようで興味深々と言った感じで
目を離さない 確かにおもちゃ屋から俺が出てくるというのも妹からしたら変だもんな
俺はその包みを目の前の五月に渡した
本人は凄く驚いた表情で困惑し『何ですか』と言いだす
「爆弾ではないぞ」
「そう言う意味ではないです 急に幸太郎君からプレゼントなんて想像も出来なくて」
「悪いな 気がきかない男で」
「お兄ちゃん意地悪だよ その言い方 五月さんが可哀そう」
「悪い悪い 受け取ってくれ 勤労感謝だろ 世話になってんだし」
「うぅ…………」
「い 五月さん」
「あっ すみません とても嬉しくてつい涙が」
渡された途端に目に涙を浮かべ 俺は変な事でもやらかしたのかと脳内でリプレイしたが
どうやら違うと言う『純粋に嬉しい』と五月は言っている
何だろうなこの感じ 傍目ではどう見られているんだろうか?
らいはも何処かニヤリといった表情だし 変に見えるのか…………。
「中身はぬいぐるみだ 色々考えたけどさ これが良いかなって思ってさ」
「ありがとうございます 幸太郎君 大事にしますね」
「渡した甲斐があるさ でも今は開けるなよ それとらいはにも ペンギンのぬいぐるみだ
何時もありがとな」
「わーー お兄ちゃんありがとね ペンギンさんだー!」
「妹の好きな動物くらい 兄にはお見通しだ」
「らいはちゃん 良かったですね」
「うん 今日はこれ抱っこして寝よう」
「それと 五月これも渡して置く 本当は直接二人に渡したんだけどな」
五月以外にもプレゼントは用意している
妹にもだ 本人は働いてるつもりは無いと言っているが
それでも居るだけで俺も風太郎も勇也さんも生活にゆとりが出来るし
先々週は無理がたたり妹は倒れてしまった
俺もちゃんとした思いで話も出来ないままに家に戻ってきている
せめてプレゼントくらいは買ってあげたいのだ…………。
何時もは大人びて見える妹だが今は年相応に喜んでくれている
共に行動してる五月も自分の事のように嬉しそうにしており
まるで親子だよ
その五月だが彼女にももう二個程荷物を渡した
相手は勿論あの二人だ
「四葉と二乃のだ 林間学校ではあいつ等にも心配をかけた
今日は行けそうにないから渡しておいてくれないか」
「えぇ 二人にまで 受け取れませんよ」
「もう買っちまった だから頼んだぞ 五月?」
「普段は頼って来ないのにこういう時は調子が良いんですね 幸太郎君は」
「男なんてそんなもんだよ じゃ俺は行くから 二人もきーつけて遊べよ」
「はい 幸太郎君も気をつけてください!」
二人に手を振り 帰るまでが遠足だ念を推し
一花と三玖が待つ喫茶店を探し歩く事になった 方向からすれば右だった筈だ
「お兄ちゃん 何か楽しそうだな」
「そうですね 今日の幸太郎君は一段と元気に見えます ではらいはちゃん私達もいきますか」
「はーい ペンギン ペンギンだー」
「さて どこかな? おっいた」
少し歩けば 二人が見えた
優雅に飲み物を嗜み 楽しく談笑している
普段からあの二人は良くいる為 会話も弾むのだろうな
俺が来たのが見えたのか荷物をどけ 座るよう促す
注文はあるのか問われるが特にはお腹も空いてはいない
出された水を静かに口に運ぶ
「それで、二人は何の話してたんだ?」
「四葉の事だよ。急にいなくなってさ」
「別のお店で見てるのかな?」
「さぁーな 結構急いでたようだし急用だったんだろうさ」
「あの子も時々不思議な行動に出るからね」
「元気が売りだが、あいつは気配りもうまい」
「コータローは良く見てるね」
「よそ見してて四葉だけいなくなるとか勘弁だからな」
「確かにねー四葉は、元気が良いけど気づけばいなくなるのが、お姉ちゃんの悩みの種」
(四葉だけか、あの日もそうだったな。)
「三玖?どうかしたのか」
「うんうん何でもないよ。」
四葉の今日の行動に違和感を覚えた二人だが、咄嗟の行動と話すが
あの中に風太郎が隠れていたとか彼女でも絶対に言わんだろうし
気まずいってレベルじゃない
こんな事になるなら俺が二人と行動していると風太郎には伝えておくべきだったと今更だが反省中だ
「何だかんだ言いつつ、俺も付き合いが良いよな~」
「自分で言うんだね」
「確かにコータローは、昨日からずっと準備してたから今日は楽しめたよ。」
「さいですか、それなら良かった」
「本当はね一花から連絡が来たって聞いた時に二人で決めたんだ」
「何をだ?」
今日のスケジュール 一花の出演してる映画の鑑賞 三玖の好きな武田信玄の展示会に行く
二人の買い物に付き合う 二乃 四葉 五月 らいはへの買い物をする
考えてみれば濃厚過ぎる一日だ
自分でも良く問題なく進行出来たと思う 風太郎と四葉は驚いたけど
二人も無事に帰れたようだし 解決できれば無かったようなもんだしな
二人も楽しんでくれたと話 俺は水をすすりながら三玖の話を聞いている
「今日は勤労感謝の日、コータローにはずっとお世話になってたから二人でお礼をしたかった」
「でも、コータロー君がまさかあそこまで真剣になって進めるとは予想外だったかな」
「リードするのは男の役目と言ったのは何処の一花さんですかね?」
「誰だろうね お姉さんは覚えないよ」
「良い性格してるよ お前は」
「林間学校での事も詳しく聞いた コータローは私と一花の為に 倉庫を蹴破った事も」
「あれか、あの時は必死でもっとスマートに出来たんじゃねーかと反省中だ」
「コータロー君 風邪引いてるのにあそこまで無理させちゃったからさ」
「コータローとフータローはずっと様子が変だった」
「あの中で言いだしずらかったよね 本当にごめんね」
「謝るな、俺と風太郎の体調管理が甘かっただけだ それに良い思い出も出来たしな。
まぁ最後は、寝てて何も覚えたないんだけどな~」
「フータロー君は一度起きたけどコータロー君はそのままだったからね」
「お前らは結局どしたんだ あの後は?」
「コータローには秘密」
「乙女には言えない事もあるんだよ」
「へいへいカヤの外ですか、」
ふふと笑って返す一花
二人が言うには本当の目的は俺へのお礼だった話す
何も家庭教師からの話でなく 三玖の件や小学生時代の事も含めただと言っている
律儀な奴らだと感心するな
あまり俺も他人の事は言えんけどな
そんな勤労感謝の日に お礼をする筈の人物が自分達が思っていたよりも色々と準備していた為
自分達の方が、楽しんだ一日になったと苦笑いを浮かべている
「それで良いんだよ。俺はあの日からお前達に前から消えたんだ、これくらいさせてくれ」
「コータローも辛かった」
「お前達程じゃないさ」
あの人の死は、当時の俺には衝撃的過ぎる程だ
お見舞いも毎日行ったけど結局は何も出来ず
葬式で泣いてる彼女達をただ見守る事しか出来なかった…………。
それに俺と違い あの人は彼女達を引き取った娘に向かえたんだ
自分の無力さと彼への嫉妬で俺はあの日以降 彼女達の前から姿を消した
何ともちっぽけな人間だ 女々しい奴だと笑われるだろう
「だからさ お前達と再会した日に 少しでも良い力になりたいって思ったんだ」
「コータローくんは義理固いね 」
「大切だからな お前らが」
『『…………』』
俺は事故の影響だろう 一部の記憶が飛んでいた
それは事故直後と幾つかの事だ
医師は言った『一時的な物だろう その消えた記憶は何かしらで戻るはすだ』
俺は中野姉妹を忘れていたんだ 五月と四葉の二人に会う事で頭のもやもやははれ
翌日には殆どを思い出し 事故の際に誰を庇ったのかも思い出せた
だから食堂で姉妹と話す 三玖を見て俺は心底安心できたんだ
二乃とのやり取りで零奈さんとの約束も思い出せた
俺が姉妹の為に何が出来るのかを…………
大切な『家族』だからだ
血の繋がり何てない 赤の他人だけど俺にはもう一つの家族だ
記憶に関しても五月は知っているのか それを彼女達に話したのかは知らないし
無理に聞き出す気もない 何時かは知れる事だろう
「でも 何時までも子供扱いは良くないよ コータロー君 あれから5年経ったんだよ」
「昔は可愛げがったのにな」
「ふーんだ」
「冗談だ まぁ 俺は俺なりにお前らと接するさ」
(三玖 これは思ったより強敵かもね 彼は私達を妹分としか見てないかも)
(コータローの馬鹿………でも私は頑張るよ一花)
確かに5年以上経っている
三玖以外で彼女達と会ったのは、一花達が小学6年生以来だ
俺なんてまだ中学一年生と若いな…………。
弾むような会話ではないが、自分達がどいった出会いをして
今にいたるか改めて知るにはいい機会だった 懐かしさと切なさ様々な感情が入り乱れてる
飲み物を飲み終えた三玖は何かを思い出し俺に視線を戻す
「コータロー 前私に聞きたい事あるって」
「何々 お姉さんも気になるなー」
「あぁー…………その事か実はな」
以前の事だ 泊まり込みで勉強をした翌日
三玖と出かける約束をし 彼女に「聞きたい事があるから 暇な日教えてくれ」と頼んだ
ただ中間試験が開けた後の コロッケ事件の際に林間学校も迫る為
別の日にずらして欲しいと俺は言ったのだ
そして内容と言えば その林間学校での後でお見舞いに来た際に俺は既に済ませていた
「コータロー君が探してる子の事ね でも私も三玖も知らないよ」
「結局は成果は無しだ」
「コータローは会いたいのも一度?」
「会えればな」
「なら せめて特徴だけでも教えて 私も協力するよ」
「男には秘密にする事もあるんだよ これは俺が自力で成し遂げるさ」
「名前と容姿だけしか知らなくて 写真も何もないんだよね」
「俺の記憶と言う 信頼できるものが当時を記録してんだ」
中野六花について 俺は何の手がかりも持ってはいない
一花は協力すると言ってくれるが、俺はお断りした
俺が会いたい あの人は、俺自身で探すのだ それで聞きたい
『探している人は見つかりましたか』と俺の心残りがあるとすれば彼女の探してる
その『男性』を俺は見つけたあげる事が出来なかったという それだけだろう
叶うなら 他にも色々と会って話をしたいとも思っているが…………。
風太郎のように写真さえあれば、俺ももう少し 上手く探せただろうけど
あの時の俺は携帯も捨てていたし 撮る物なんて何もなかった
筆記用具で似顔絵でも描けばよかったとも思うが、そんな無粋な真似出来る訳ないな
「中野ねぇ 偶然にしては不思議だよね 私達と同じ苗字 漢字は合ってるのかな」
「去り際にだけど 中央の中に 野原の野ですと言っていた」
「それは 確実に中野だね…。」
『上杉幸太郎さんですか…………』
『はい 上下の上と杉木の杉 幸せの幸に太郎で上杉幸太郎です』
『私は 中央の中に 野原の野 そして数字の六と花で 中野六花と言います』
儚げに何処か切なげに彼女は自分の名前を名乗り
去って行く俺にずっと手を振ってくれていた…………。
「きっと何時か 会えるよコータローが願っていれば」
「ありがと その言葉だけで救われる」
「お姉さんも応援してるぞ」
「へいへい」
「扱いの差が酷いんですけど お兄ちゃんは三玖を優遇するの?」
「そんな事はしねーよ 平等に扱ってるさ」
「平等か……」
「平等ね………」
「何だよ また二人して?」
「何でもないでーす」
平等という言葉にやたら食いつく二人にどうしたかと尋ねても
何でもないと言われて終わり それ以上の会話は発生せずだ
まぁ 深く聞くのは野暮と言うもんだろうな
それに別に聞きたかった事も一応は目星がついた
三玖が俺の以前の手帳を持っているのはきっとあの日に拾ったのだろう
真相は不明だが、当時の俺と三玖が再会したのはあのタイミングしかない
ただ俺が何時手帳を落としたか そこが分かんねぇ
事故にあった直後は可能性として低いだろう きっと血まみれだろうし
その前辺りが打倒だろうな
後は三玖本人に何時聞くかだ『あの日部屋では寝てない』と適当な言い訳をした分
言いだし辛いと言うのが本音だ
五月も三玖とはあの日会ってる筈で それを黙ったままにしてくれている
まぁ 後はタイミングだタイミング…………。
俺も出された水を飲み終われば二人は席を立ち 俺もその場から立てば
会計を済ませ 一度 ショッピングモールを出て外に向かう
「今日はお開きにするか」
「残念だなー」
「コータローは今から何かするの?」
「明日の準備や 期末試験の対策かな」
「まるで 勉強オバケのフータロー君みたい」
「他人事じゃないからな 無理にとは言わなけど暇な時はお願いな」
「了解 コータロー君も余り無理はしないでね」
「しねぇーよ」
「コータローの無理はしないって言葉は一番信用できない」
「悲しいな」
「自分の行いを思い出していこうか?」
「はいはい」
時間で言えば18時だ 何だかんだで5時間近く中で過ごしていたのか
帰るにはまだ早いと一花は話すが、来月には期末も来る
俺も少しは勉強しないと成績に響くしな
二人にも一応は釘を刺したし 返事も貰ったし何より この二人はやる気もある
信頼はしている それを結果に出せるよう俺と風太郎がサポートするだけだの話だ
それから二人を家まで送り届け
また明日と声をかければ二人も中に入って行った
「結局はプレゼントは一つしかあげれなかったね」
「コータローは何が欲しいとか言ってくれないから」
「ガードが堅いと言うか、欲がないと言うか 本当にお兄ちゃんは謎だらけだよ」
「ねぇ 一花 明日からは」
「うん 今日は彼の為だからね 明日からは…………。」
上杉幸太郎が家に向かう中 改めて 平等ではなく公平に行こうと決意する二人
果たして二人が心の奥で思う願いはあの少年に届くのだろうか…………。
一花と三玖はマンションへと戻って行く
そしてマンション内部 30階にある中野宅では五月が幸太郎から渡されたプレゼントを
二乃や四葉に渡していた
四葉は嬉しそうに受け取りそのまま部屋に向かい
二乃は渡された袋を訝しむように見るが『彼の誠意が籠っています受け取ってください』
と五月に言われ渋々受け取る 二乃は未だに彼とあの頃の彼が同一人物だと完全に信用出来てはいない
お礼は述べるが、そこまでの変わりようだ 事故だけでそこまで変わる物なのかと
妹である 五月ならもっと詳しい事を知っているのだろう
あの日彼女は事故の全容を姉妹全員に教えたが最後に『私があの場にいた事 それだけは彼には秘密にしておいてください』と念を推された
加え彼が事故に遭うまでどんな人間だったのかも彼女は説明し
本来は優しい人柄で人望も厚かったと言っていた
どうしてそこまで彼に肩入れするのか………二乃は疑問しか出てこない
部屋に戻れば、彼からのお礼として渡された袋
一応は中を確認する…………すると彼女の手は止まる
「あれ あいつ 覚えてたんだ 私がうさぎ好きだって事………」
兎のぬいぐるみが袋の中に入っており かつて自分が好きな動物は何かと彼が聞いた時に
『うさぎー』と話した事を思い出した どんなに見た目が変わろうと彼は彼なのかもしれない
だけど 二乃はまだ納得が出来ていない 心の整理がつかないのだろう…………
そっと袋の中に戻せば、その場で体育座りをし 今はいない彼に私はどうすれば良いのか
と言葉を投げかける…………
(金太郎君 あなたならどう思う………本当に上杉がお兄ちゃんなの?)