上杉幸太郎と六等分の思い出   作:Aikk

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風太郎と零奈(五月)の出会いとは少し前後している時系列です
こちら風太郎が既に零奈(五月)と会った後です


第五十一話 不良少年と中野六花

「お久しぶりです 上杉幸太郎さん」

「何で あなたがここに……」

 

あの日 12月 全てがどうでも良くなったあの日 俺の命を救ったあの人が現れた

黒いキャップをかぶり ヘッドホンを首にかけ

変わらぬ笑顔を俺に向ける……………。

 

 

 

「ここは君と私が出会った場所だよ それに会いに来たんです君に」

「俺に会いに…」

「上杉さん 少し背が伸びたかな? 凛々しくもなりましたね」

「一年も経てばそれなりには六花さんも 雰囲気こそ変わりませんが更に素敵になりましたよ」

「褒めても何もでないよ 上杉さん?」

 

手を当て自分と俺の身長差を確認し あの頃とは言葉使いだけではなく

色々と変わった物があると察しながらも変わらないものもあると彼女は述べる

 

それは俺も同じだ 彼女はあの頃と何も変わっていない 

ミステリアスで何処か掴みどころのない人物だ

 

彼女は『お世辞?』と言うが俺はそんな事は一切ないな 本当に素敵な女性だ

俺が知るのは名前と誰かを探していたという事だけだ、それ以上の事は何故か聞けず仕舞い 

 

「あなたにお世辞は言いません あなたのお陰で今の俺がいるんです」

「それを言うなら私もだよ 君がいたからここにいる それを忘れないで欲しいかな」

「俺はあなたに何も出来ませんでした 結局あなたが探す人も見つかられず」

 

 

探そうとしていた 【少年】 ぎりぎりまで俺は彼女と共に その名も知れぬ少年を探し続けて 成果の程はお察しさ。

どうにも上手く行かず結局のところ、彼女と軽く話した後にその場で俺とこの人は今日まで会う事はなかった…。

 

うーんと考える素振りを見せた後に彼女は軽くだが深呼吸し

『あなたのお陰で無事に彼を見つける事は、出来ました。』

俺と別れてすぐか。はたまた最近か? そこははぐらかされたが、彼女は会いたい人と会う事は叶い その彼と言われる人は、元気でいてくれていると、はにかむ様にそう告げた。 少し羨ましいな

 

 

 

 

「確かにね 成果はなかったよ でもさ 

君はここで滑り落ちた 私を助けてくれた あのまま階段から落ちていれば 私は無事ではすまないよ?」

 

「あれは 偶然ですよ 俺は」

「今は俺なんだね あの時は『僕』だったよね」

「からかわないでください………俺は貴女と顔を合わせる資格はありません」

「俺って強い口調で言うのに 君は何処か弱くなったね 君はあれだけ私を励ましてくれたのに」

「子供の戯言ですよ………忘れてください」

「残念 忘れないよ 君の言葉は一字一句 どれも全て私の思い出だから」

「言い切りますね あなたが羨ましい」

 

自信満々に言い切る彼女は、俺が知るよりも強くなったと感じる

あの時の彼女はとても弱弱しく 話すたびに探している人物に謝っていた

『私のせいで 人生を台無しにした 顔も会わせられない きっと嫌われている』

 

「君もあの時は結構大胆だったよ? それで上杉さん 踏みとどまってはいたけど何故あんな事を?」

「俺が家族を……いえ 他人ですね 知り合いの関係をめちゃくちゃにしたからです」

「全部君のせいなの?」

「俺なんて必要ないんです 弟がいればそれで十分だった 彼女は言っていた

  俺は兄なんかじゃないって そうですよ 俺は何でもない存在です

  いっその事あの時見たいにってネガティブな考えですよ」

「うん そうだね いけないね 命を粗末にする考えは メだよ!」

「あうち」

 

背伸びをするように 俺の頭を軽く叩く 痛みはないそれに優しくもある とても温かい

 

 

「君が死ねば誰かが泣き 悔やむ人もいるんだよ それを忘れないで、私も悲しいからさ」

「すみません」

「君は私の恩人 だから私は君を悲しませない 君を一人にはしない」

「六花さん…何でそこまでするんですか?」

 

俺と真剣に向き合う彼女はあの時と何も変わらない確かに強くなった

けど内に秘める優しさは何も変わらない 微かに抱いていた違和感も消え

    本当に 彼女は 中野六花 実在する人物

 

「理由なんて無いよ 私がそうしたいだけ 君が私にそうしたようにね…上杉幸太郎さん」

「理由はないですか…」 

 

うんうんと頷く彼女はにこやかな笑顔で俺を見る

 

「ねぇ 上杉さん 手を握らせてください」

「えっ………………六花さん…?」

「治ったんだね 良かったよ 本当に君の手はもう動くんだね 上杉さん」

 

俺の利き腕を彼女はそっと自分手で包み込み何度もさする

そうだ 彼女にあったあの日 俺は未だに利き腕だけは回復しきれずギブスをつけていたんだ

そんな手で彼女を受け止めて 尋常じゃない痛みを俺は我慢して彼女は何度も謝罪していた

 

『ごめんなさい 私の不注意で手を怪我しているのに本当にすみません!!』

 

「医者に言われました 治るだろう…。普通に生きるだけなら困ることは無いと…………」

「普通に生きるだけならか」

「繊細な作業が出来ないんですよ 指先で掴むとか細いものをつまむとか…これが言うなれば残った障害です これは時間が解決すると 数年かかるかそれ以上か…。中野先生 あぁ 俺の担当の先生なんですが彼は言っていました」

「中野……………………」

「六花さん どうかしましたか?」

「いいえ 同じ苗字なので戸惑ってしまいました」

 

中野と言う名前はそれほど珍しい名前では無い

けど 三玖を助け事故にあった際に中野と言う医者に助けられ 

中野と言う不思議な人に心を救われ

中野と言う 名前の五つ子姉妹が現れた 偶然にしては出来過ぎているが、今はそれを置いておこう 目の前に彼女がいる それだけで十分だ

 

「本当にそうですね 俺もあの日からずっと六花さんを探していました…。色々と調べました そして同じ苗字を持つ友人達にも聞きました…。けど中野六花は何処にも存在しない そればかりが証明されて」

 

俺は12月に出会ったこの人を探すため出来る限り調べた

何も出来ない中 心が折れ 誰も俺を見ない中 彼女だけは

ちゃんと俺の目を見て 誰でもない俺を見て話を聞いてくれた

 

「私はここにいます 上杉さん あなたが困っている時は私はあなたを助けます…。どれだけあなたが嫌われようと私は嫌いません

 私はあなたを否定しません それだけは絶対に」

 

「はい…六花さん……」

 

 

まるで 今の五月だ あの子と同じ彼女も俺を決して見捨てない

俺を否定しないと言ってくれる あの時と同じだ

 この人と話しているだけで俺は救われる不思議と癒される

 

 

「その言葉 友人も言っていました あの子も俺何かの為に何で必死になるのか」

「上杉さん その 俺何かと言うのをやめましょう それは駄目ですよ?」

「癖みたいなものですよ」

「それはまた 嫌な癖ですね~」

「こればかりは治しようがないですよ それで六花さん 本当はどうしてここに来たんですか?」

「えっですから 上杉さんに会いに来たんですよ」

 

 

彼女は証明された しかし タイミングが良すぎるまるで見計らって登場だ

彼女を疑うような真似をするのは気が引ける 恩人に対してする事ではない

けれどもし他にやる事があるのならそっちを優先して欲しい

六花さんと話せただけで随分と心も救われて楽になっている

 

「それが本当ならあなたやっぱり 俺の恩人だ

  これで二度目です あなたに救われるのは」

「ふふふ それが私です ではお聞かせください 何故あなたはここまで追い込まれたのかを?」

「追い込まれたと言うより 自分の馬鹿さ加減に愛想が尽きたって感じですかね」

 

優しいだけではない 時には意地悪っぽくもある 

去年は見れなかったこの人の一面に少々俺も驚いている。

 

 

俺がここに訪れ黄昏少しばかり馬鹿な考えをしていた理由を彼女は知りたがっている

あまり人様に話せる事ではないが今は俺とこの人だけだ

彼女は『少しだけでも話せば楽になるはずですよ』と俺に言っている

誰かに相談………それをやろうとはしなかったな

 

近くのベンチに俺と六花さんは腰を下ろし

話を始める彼女に聞かせた ここ三ヶ月で起きた様々な事や出会った人々

きっと六花さんだから俺は打ち明ける事が出来ているのだろう

 

「五つ子の家庭教師ですか」

「補佐です 俺はおまけですから」

「はぁ またそんな言い方をして」

「すみません それにしても驚かないんですね 五つ子を聞いて」

「内心は驚いていますよ 五つ子とはきっと親御さんも苦労なさったでしょう」

「苦労はしたでしょう けど 零奈さんはそれを後悔はしていませんよ」

「何故ですか?あなたがそこまで言い切れるんですか」

「彼女に頼まれてるんです 大切な娘達を守って欲しいと」

「…………………そうですか」

「はい あの人はきっと 傍にいれない事の方が悔しいでしょう」

「親御さんの話は了解しました それでその娘さんはどんな方達ですか?」

 

本当の父親の事を俺は知らないだからそれを説明する事はできない

だからだろう察した六花さんは、本命である五つ子の話をして欲しいと言っている

 

「長女 一花って言うんですが 俺の憧れです…。

 今は夢に向かって頑張ってますきっと自分のやりたい事を見つけられます ただ少しおバカです」

「おバカなんだね」

「次女 二乃って名前です 一番厄介で…。でも本当に家族と姉妹の事を思っているんです

 俺に取っては一番に可愛い妹だと思ってます 嫌われていますけど あと少しおバカです」

「うんその子もおバカなんだね」

「三女 三玖って言います 少し暗いところはありましたけど 最近は生き生きしてます

 それに俺は彼女を大切に思っています…。

 三玖も大好きな物があってそれを話す三玖が大好きです 少しおバカです」

「あっはは またおバカな子だね」

「四女 四葉と言うんですが とても元気が良いんです見ている俺まで元気を貰えるんです

  お人好しですけど譲れない物をもっています それにきっとあの子は…これは秘密で

  あと少しおバカな所もあります」

「うん知ってた」

「五女 五月です こいつは謎です 真面目で不器用でも本当に優しい…

 でも何故か何時も俺を気にかけて それをあいつは話そうとしない それと」

「おバカなんだね?」

「はい その通りです けどそんな彼女達がとても愛おしくて 大事な妹です」

「妹か…………」

「六花さん 具合でも悪いんですか?」

 

姉妹全員の話を終われば六花さんは少し俯いてしまい

心配になり声をかけるが『大丈夫ですよ』笑顔を出すが、本当に何もないんだろうか?

首を縦にふり 自分は平気だと主張する

 

「それでその仲のお二人が喧嘩をしてしまった 原因は自分にあると君は思う訳だ」

「…………」

「うん 君が家庭教師の補佐できちんと彼女達と向き合い

 それと大切に思っているって事が私には伝わりました 

 でなければそこまで親身になって悩む事はしないでしょう 

  きっと 彼女達とあなたは互いに必要としていますよ?」

「どうでしょう……………俺はただあの子達の笑顔が見たくてでもそれが

 あの子達には迷惑なんだろうと…」

「それはありえませんよ 幾ら急に再会したとは言っても彼女達を知ってる君だから」

「知ってるですか…………でも俺は忘れていたんです あの大切な記憶や思い出を」

 

「そうでしたね…………何故自分が事故に遭ったのかもわからないと言っていました」

「俺は事故にあって 当時の記憶と大切な姉妹の記憶を失ったんですよ

  今は思い出しましたけど 五月や四葉と会うまではおぼろげに記憶にあるだけで」

「……………大変でしたね 」

「そんな忘れていた自分が今更 兄貴面なんていい迷惑ですよ」

 

本当にいい迷惑だろう 大切大切と言いながら俺は事故の影響で

その大事な記憶を忘れていたんだ 『一時的な物だ』と彼は言った

実際その通りで徐々に当時を思い出してきたでもあと一歩が思い出せず

そんな時に六花さんと出会い 数か月後 四葉と五月に再会する事で忘れていた全てを思い出した

当然混乱はしたが、俺はすんなりそれを受け入れる事が出来た元々持っていた物だ

それが戻ってきたと思えば、さほど気にする事でもなかった

 

 

「ようは 上杉さんが自分を認められない…。自分を許せない

 姉妹の子達はあなた達を必要としています

 私が保証します お姉さんの言葉を信頼してください」

「お姉さんか…」

「あっでも 年齢は不詳でお願いします その方がミステリアスですから」

「分かりました 俺もそんな気はしていたんで」

「では…。 後は上杉さんが自分を許す番ですよ」

「俺を許す……………出来ますかね」

「もし今は無理だろと思うなら それを片隅にでも置いてください 何時か許せる日が来ます」

 

俺が俺を許せばそれで解決すると彼女は自信たっぷりに言っている

幾ら彼女の言葉でも それには少し時間が掛かりそうだ

 

たった一度ここであっただけ、そんな俺の為に彼女は真剣に耳を傾け親身になって対応している

俺を見ているようで見ていなかったあいつらとは違う…

優しく温かい……何処か懐かしさすら覚える。

 

不思議だな…………。

 

やはり この人の正体はきっと………………

 

 

「上杉さん?」

 

暫くその場で考えていれば、スマホが振動していた

誰からのメールだろうか? 隣に座る六花さん『出てみては?』と進める

 

「もしもし」

『幸太郎君ですか 今どこにいるんですか?』

「五月………えっ」

『何がえっですか? あっ見つけました』

 

電話の相手は中野五月だった

少々驚き横見れば こちらの電話に聞き耳を立て不敵な笑みを浮かべる六花さん

俺は先ほどのやり取りと彼女の態度 

そして『君を否定しない』と言うフレーズから彼女の正体が自分を偽る

中野五月なのではと推測していたが、その本人から電話が掛かって着ている

本当に俺の勘違いなのだろうか?

暫くすれば コツコツと言う足音と共に電話を耳に当てる五月が現れた

 

 

「幸太郎君 ここにって…………あのその方は誰ですか」

「えっ …。五月本人だ」

「私は私ですよ それよりも彼女は?」

 

着用しているのは朝方と同じく学校の制服姿

俺を見つければ声をかけるが、隣に帽子を被る女性が気になる様で

それが誰かを訪ねている 『はーいどうも』と六花さんはマイペースだ

すっと立てば五月の方まで歩み寄り軽く会釈する

 

 

「どうも あなたが五月さんですか 私は中野六花と言います よろしくお願いします。」

「えっ この人が幸太郎君が探していた 六花さん何ですか 本当に実在しているんですね」

「失礼な子ですね 私は私 ここにいますよ」

「すみません 幸太郎君も疑うような真似をしてごめんなさい」

「いや 良いんだ 本当に……………………」

「幸太郎君?」

「上杉さん?」

 

六花さんの場合帽子を被るせいで良くは見えないけど 

二人を見比べれば何処となく似ているような気もする

 

 

俺自身 彼女と出会った時には一時的な記憶喪失で彼女を中野姉妹と同一視する事はなく

それから暫くして転校してきた 彼女達をみて

頭のモヤモヤは晴れ 六花さん=中野姉妹の誰か と推測していたのだ

だから一人づつ聞こうと決め 最初に聞いたのがある意味で本命である

 

         中野五月だ 

 

謎の多い彼女こそ あの日の彼女ではないかと…。

あの日の帰りにそれとなく聞いてみた

結果で言えば『知らぬ存ぜぬ』と散々な結果で俺は暫く落ち込んだ 

しかしそのやけに淡泊な態度が余計に気になっていたのだ 

 

実際に今 目の前には 五月と六花さん二人が並び 考え込む俺を見ては首を傾げる

本当に似ている…。少し考えがあり俺は二人に一度待っていて欲しいと言い

そのままスマホから別の番号を選び ある人物に電話をかける

 

 

 

「二人共すまん 少し電話をする もしもし」

『コータローどうしたの?急に確か二乃の所に行った筈だよね』

「変な事を聞くが 三玖で間違いないよな?」

『コータロー大丈夫?何かあった』

「すまん失礼だったな それで今家には誰がいる」

『私と一花だけど』

「一花に代わって……… いや 俺から一花にかける 三玖何時もありがとう

 もしもし一花か」

『あれー コータローくんだどうしたんだい お姉さんが恋しくなった』

「………………やっぱり一花もいるのか」

『変なコータローくん』

「すまん 急な電話でじゃまた」

 

三玖と一花が家にいる事は確認出来た

本人達のスマホにかけたんだ…。間違いないだろう

残るは四葉と二乃だ だが四葉は…。 俺の勘だが違う

それに今は陸上部の助っ人として走り込みの最中だ 朝方あった時に

俺はそれを見かけ彼女も『学校の後も走り込みです すみません』と言っていた

ならば二乃か…いや 彼女も違うだろう

 

「二乃なら先ほど 歩いているのを確認しました ホテルに戻るのだと思います」

「それは本当か!」

「はっはい 本当です 私から声をかけるのは今は気がひけるのでかけませんでしたが

  それに四葉も見かけましたよ」

「どうしたんだい 上杉さん 私がここにいるのが おかしいのかな?」

 

まじまじと俺を見る 六花さん 本当に何者なんだ

五月を含め全員は白と判明した 

ならば偶然似た名前の似たような容姿を持つ 素性の知れない不思議な女性なのか

 

確かに三人に確認をし二人も違うとはわかった

彼女は中野姉妹とは別なんだろう それに俺は恩人を疑うような真似をしていた

それは失礼な事だ きちんと謝らなければ

けど分かったこともある中野六花は、姉妹とは関係のない人物だとその確証は得られた…。

 

 

「すみません 六花さん 少しあなたを疑っていました ごめんなさい」

「別に私は気にしません 上杉さんにも何か思う所があったんでしょう」

「思う所ですか……はい 少しだけ」

「その顔 もう大丈夫そうですね」

「えっ」

「ずっと沈んだ顔をしていたのに 今はそれがない  誰かと話しているうちに

 きっと心にあった靄が消えたのでしょう」

「やっぱり自分では分かりません 本当に彼女達に俺が必要なのかは」

「君は自分に厳しいからね………うん わかった もう少しだけ考えてみて君は必要とされているよ

 ね 五月ちゃん?」

「えっ………はい 幸太郎君が何を思ってここにいるのか分かりません 彼女とどんな話をしたのかも

 でも私…………私達はあなたと上杉君を必要としています」

「……………………少しだけ時間をくれないか 期末試験が終わる頃には答えを出す」

「分かりました では行きましょう 幸太郎君」

「行くって何処へ」

「あなたは二乃と話をするべきです 既に上杉君が向かっています」

「何で知ってんだ お前が」

「それは 今は関係はありません」

 

俺の手を掴むと二乃が借りているホテルまで向かおうと話す五月

先程まで乗り気ではなかったが 六花さんや五月の言葉で気持ちも少なからず楽になった

今なら二乃ともきちんと話す事が出来ると思う

ただ 喧嘩の一端を担った五月本人は未だ会う事は拒んでおり 

ホテルまで届ければ そのままアパートに帰ると 中々強情だ

覚悟を決めた五月は梃子でも動かない 俺はそれを嫌でも知っている

 

「二乃と話すか………五月もそれをするべきだと思うけどな」

「確かに 話を聞いた限り 五月さんも少しはお話した方が良いかもね」

「幸太郎君は何を彼女に話したんですか!」

「秘密 私は信用のある人だから上杉さん話がしやすいみたい」

「うぅ 私には何も相談してくれないのに」

 

ふふと笑う六花さんに対し五月は頬を膨らませ如何やらご立腹のようだ

別に信用がないわけではなく あまり彼女達の前では見せたくない顔と言うのも俺にだって存在する

六花さんが=五月達ではないと分かれば余計にそう言う事も話してしまう

 

「六花さんも意地悪しないでください ………………それと六花さん 色々とありがとうございます」

「うん 私もまた会えて良かったよ また君が辛くなった時 私は君の前に現れるかもしれない…本当はそうならない事が一番なんだろうけどね」

「六花さん 俺はあなたと出会った事を一度たりとも後悔はしてません 俺は!」

「さようなら 上杉幸太郎さん そして 中野五月さん」

「えっ?…。あの」

「またね」

 

去り際に彼女は何かを呟き五月は少し動揺している

小さく呟いた内容で俺は聞き取れず何故五月が驚いたように去って行く彼女を見ているのか

興味はあるけどそれは聞くべきではないだろう あの人なりに五月に伝えたい事があった

そう納得すれば俺も自然と気にならなくなる…………。

 

「五月 行くか」

「はい すみません行きましょうか 途中まで」

「お前は来ないんだったな」

「自分でも分かっていますけど すみません」

「いいよ 心配して来てくれたんだろう ありがとな」

「幸太郎君が、私達の事で悩んでいるなら それは私も聞くべき事です 

お礼を言われる事ではありません」

「それでもだ お礼は言いたいんだ」

 

ガードが固いという表現は少し違うだろう

隣の少女は自分達の問題で俺が悩んでいるならば それは自分達のせいであり

俺が謝るのは間違っていると話している 無関係とは確かに言えない

でもここまで拗らせた要因は確かに俺達であり それこそ無関係ではない

それにわざわざ探しにまで来たんだ それに関してはお礼も言わせてほしいもんだ

 

「分かりました その言葉今は受け取ります」

「返却不可だぞ」

「なら仕方ありませんね  それで幸太郎君 六花さんには電話とか聞かなくて良かったんですか」

「あの人に会えた 俺はそれだけで十分だからな って五月さん」

「何ですか? 幸太郎君急に避けて」

「目が笑ってないんだよ 今のお前は」

「そんな事ありませんよ 幸太郎君?」

 

五月はニコニコしているが、雰囲気は刺々しいというよりも禍々しい

何故かとここで聞けば、きっと機嫌を損ねるだろうし

以前四葉にも注意をされたし 真弓ちゃんにも怒られている

女性相手は慎重にだ

 

五月は言っているが 俺は彼女の番号を聞こうとは思わない

唐突な再会ではあるがこうやって時々会うのが 俺や彼女には丁度いいのだろう

あまり心配もかけられないし 知ってしまえば俺は彼女を頼ってしまう

『誰かを支えられる人間に僕はなりたい そう思える自分でありたい』

かつての俺の言葉 今は彼女の存在に支えられている

ならもう少しの間だけ 中野姉妹の支えになろう…………。

 

 

「はぁ…………行くぞ 五月」

待っていてくれ 二乃 俺は今度こそお前と真剣に向かい合い話す

あの人や五月がくれたチャンスを無駄にはしない




キャラ設定更新
中野六花
黒のキャップを被り ヘッドホンを首にかけており
かつて全てを失った彼の前に現れた謎の女性 年齢は不明
ある少年を探すため ここに来たが探す中で足を滑らせ 危うく怪我を負う所を
彼が彼女を受け止める形で九死に一生を得る
以降 彼と話 その誰かを探す手伝いを彼に頼む
しかし その少年は見つかる事はなく 六花と幸太郎は初めて
自身の名前を名乗ってない事に気づき 二人で自己紹介をし
その場を別れ 以降一年近く 幸太郎は彼女を探していた

中野六花と出会う中で 五月が彼女ではないかと思われたが
偶然 五月本人がその場に現れ 彼は三玖や一花にも電話をするが
本人達がいる事を確認 五月の口から四葉も先ほど見かけ
二乃もまだホテルにいると聞かされ
本当に中野姉妹とは別の人間と分かる

彼女は幸太郎が唯一 弱音を吐ける人物で彼女も彼の言葉を親身になって聞いてくれていた 因みに探している人物には会えたらしく
その彼は今も元気でいると話す 
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