上杉幸太郎と六等分の思い出   作:Aikk

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第五十三話 不良少年とキンタロー君作戦

風太郎は放課後になればそのまま二乃の泊まるホテルへと向かって行き

俺はと言えば四葉の説得にかかり 悉く失敗ばかり

学園でも有名な中野姉妹を追いかけまわす人間として今では新たな噂も流れる始末

本当に暇な奴らしかいねぇーのかこの学校は?

 

「お疲れ様 お兄ちゃん」

「お前は学校ではその呼び方をするなと…………」

「コータローお兄ちゃん」

「やめろ 三玖何かに目覚めそうだから」

「コータローお兄ちゃん」

「ふーんだコータロー君 何てもーしらない」

 

四葉を追いかけ暫くは休憩していれば

何処から一花が現れ あの一件以降続けるお兄ちゃん呼びを未だに学校で続けている

他の生徒に見られたらどう弁解するつもりなんだ

三玖まで一花の真似をして『お兄ちゃん』と言いだし始めた少々来るものがあるが

今は我慢しよう 

『上杉は変な性癖をもってる』と言いだされたらそれこそ俺は学校に通える自信を無くす

 

 

「お前らは勉強捗ってるか?」

「うん問題集をちゃんとやってるよ」

「毎日あれを相手に奮闘するんだから少しはご褒美も欲しいかなー」

「はぁ……適当に考える」

「わーい お姉さん頑張るぞー」

「元気だねー お前は」

「コータローも何処か嬉しそう 昨日は少し落ち込んでたから」

「色々ありまして」

「本当だよ 急に電話かけてくるんだもん びっくりしたよ」

「二乃と何かあったのかと少し焦った」

「その節はどうもお騒がせしました」

「それで 何があったのかな」

「秘密です お兄ちゃんも偶には妹にも秘密を持つんだ」

 

勉強はきちんと続けているし 問題集とも戦っているが実の所成果は出ているかは

自分達では分からないと言っていたが、俺からすればちゃんと続けてるだでも有難い事で

期末試験にもその結果は出てくるだろうと俺は強気だ

 

本人達も二乃や五月 それに加え四葉の事も気になってそっちに手を貸した中

良くやってくれている 一花に言われたらという訳じゃないが何かしら褒美をやっても良いくらいだ

真弓ちゃんの話では三玖は普段以上に授業にも取り組んでいる様子らしく

一花も一花でちゃんと勉強しているんだろうな

 

 

そんな二人だが昨日の俺からの電話が気になるらしく

結構な食いつきを見せる 二人は六花さん捜索には手を貸すと以前述べていた

まさか俺が昨日 その本人と出くわし 似ているからという理由で二人に電話したとは言えない

それに今は期末前で余計な心配もかけるべきではないだろう テストが終わればいくらでも話してやる

 

「テストが終わればか…………」

「コータローなんか表情が険しいけど 本当に大丈夫?」

「大丈夫 大丈夫 二人こそ勉強してくれて有難いけど 適度な休憩を忘れずにな」

「了解 コータローもフータローもあまり無理はしないように」

「へいへい」

「その返事の仕方はちゃんとしない時」

「三玖は最近 五月に似て来たな」

「姉妹だから 似てるところもあるよ 三玖はコータロー君が心配なんだもんね」

「うーん…。 一花!」

「何だか知らんが お前ら二人は仲良さそうで安心するよ」

「そう見える? コータローくん」

「えっ………………」

「って 冗談だよ あっスマホなってるよ」

「おっ おう…………」

 

一花と三玖は俺が見ている中でも特に仲の良い二人だと思い

ふと口から出たその言葉 一花はすぐに反応し 俺は一瞬彼女の表情に戸惑ったが

助け船とタイミング良く 俺の持つスマホが自己主張しだす

やけに真剣な表情でたじろいでしまった…………。

 

ディスプレイを確認し それが彼からのものと分かれば迷うことなくそれに応答する

 

「本当かそれは………………わかった 俺にいい考えがある 後から合流する」

「フータローは何だって?」

「少し おもし…まぁ今の状況が好転するかもしれないって事だ」

「へぇ 彼もやるねぇ」

「そこでだ 二人に聞きたいんだけどさ」

「何かな」

 

風太郎……彼に知らされたそれを聞いて俺は、最悪な未来も考えたが

有難い事に ここにはその手のプロである 二人がいる訳で少しアドバイスでも頂くか

ドッペルゲンガー作戦ならぬ 成り代わり作戦を……。

 

 

 

 

 

 

 

「ど どうも…………」

「さっ遠慮せずに入って お邪魔します………」

 

現在風太郎は二乃が待つ ホテルの一室におり彼女と二人談笑しており

先ほど二乃から『本当にキンタロー君が来たんだけど!ど どうしようと』物凄くてんぱった声で電話が掛かって着た 

『キンタローはワイルドだが聞き上手だ そのまま会話を続けろ』と淡泊なアドバイスを投げる

こくりと電話越しでは頷いてあろう二乃 本当にキンタローがいれば素直だなと驚かされる

 

その俺はと言えば ホテルのエントランス付近で一人待機中でスマホと携帯をそれぞれ準備して

直ぐに二乃との連絡が取れるよう待機中である

 

俺が一花達と話している時に風太郎が『最後の心残りがキンタローの事だ』と教えてくた

そこで風太郎と話し合い決行がされ

『風太郎くん成り代わり作戦』を行う事になった

二乃を騙して悪いとは思う 本当は正直に伝えた方がきっと円満な解決策だ

でも彼女が最後にキンタローと会いたいと言うのなら 風太郎は彼になると言うんだ

俺は止めはしない 風太郎を最後まで支援させてもらう

 

もしも二乃が風太郎に電話を掛けた時の対策として彼の携帯は預かっている

三玖曰く『本気で演じれば 私や五月以外は声だけだと二人を判別できない』との事だ

詳しい概要は教えていないが 俺が風太郎の声真似をしたらと適当な理由で切り出した話である

一花は少し考え込んでおり 勘のいいこいつだ下手な事は言えないな…………。

 

 

先程の電話でもやはり 俺が幸太郎とは二乃も気づいてはいない

余程 キンタローと会えたのが嬉しいのだろうな

 

 

『もしもし キンタローくんちょー 優しんですけど!!って緊張してまともに顔見れないわ!』

「ほう それは良かったな あいつも都合を合わせた甲斐がある 喜んでる筈さ」

『あの キンタローくんってシュークリーム嫌いじゃないよね』

「あぁ 食べてくれるはずだ 二乃が作るんだ美味しいだろう」

『オーケー!』

 

本当に機嫌が良いな 一目惚れと言うのはあながち嘘ではないようだ

これは思っていたよりも大変な事かもしれんな…………。

(二乃は本気で キンタローに惚れている) 

俺は腹をくくっている もしその時が来れば答えは風太郎に託している

演じ切るのか明かすのか どちらに転んでも二乃を傷つける形になるのは変わらない

ただ 怒られるだけで済めば良いが…………。

(ダメなら 俺が全部引き受ける…………)

 

 

前へ進むためには心残りを無くしたい

そうすれば誰にも置いて行かれず自分も前に進める 勝手には進ませない自力でやり遂げる

それが二乃が俺に話した事だ 

『キンタローくんとちゃんとお別れがしたい』それを風太郎に話した 俺もその手伝いをすると決めた

 

 

例え間違ったやり方でも今 二乃の前には確かに キンタローと言う一人の人間がいる

俺はその邪魔をさせない…………。

 

 

 

『彼に名前で呼ばれたわ!』

「で 進歩はあったか」

『今シュークリーム作ってる所よ』

「了解健闘を祈る」

 

 

 

名前で呼ばれた それが嬉しいと彼女は話す

微笑ましい 二乃が本当に心から喜んで楽しく過ごせているんだ 

きっと…………これで心残りもなくなるはずだろう

 

暫くは二乃からの電話は今の現状報告が続き

キンタローもまんざらではないと二乃視点で語っている

本当はどんな顔で話しているのか少々気になるが、お邪魔虫はカフェで待機だ

 

 

『あ あんた今どこにいる?』

掛かって着たのは幸太郎の方のスマホだ

「ん? 俺は近場で待機してるぞ 二乃と話がしたかったしな」

『なら 好都合ね 一階のカフェで待ってなさい』

 

二乃からの連絡はそれだけだ

弟のまま電話をすると思っていたがここで俺へパスが回るとは待機して正解だったな

ここ数時間ひたすら電話ばかりしておりいい加減店員の目が痛くなって来たし

二乃が来るまでの辛抱だ

 

 

「早いわね」

「電話で話したろ お前と話すから待ってたって それでどうした」

「その 実はさ キンタローくんと会ってたの」

「ほう あいつも喜んでいると思うぞ」

「そうかなー」

 

上機嫌 上機嫌です

あぁ 心が痛いよ

 

前の席に座り 適当に注文を始め『あんたアイスコーヒーで良いかしら』と俺にまで配慮している

キンタローくんの存在は二乃にはとても大きなものなんだろうな

 

「私 彼にコクられるかも」

「ほー」

「だってあんな真剣な顔して 大切な話って何よ そんなの一つに決まってるわ」

「流れだけ聞けば確かにな お前も名前で呼ばれて随分と嬉しそうだし」

「…………そうね  それであんたはどう思う?」

「俺はそうだな…………」

 

二乃がキンタロー(風太郎)から大切な話があると言われ

その緊張を解す為一旦離籍し 話し相手として俺を呼んだと言っている

二乃は告白と捉えているが きっと

風太郎は自分の正体を明かすつもりで真剣に彼女と向き合う決心をつけたんだ

さて 俺はどう答えるべきだ 勝手に俺が明かすのも覚悟を決めた風太郎の気持ちを無下にする行為だ

ただ 『付き合えよ』と言うのもすごく無責任すぎる発言だ ここは慎重に考え、彼女自身のこれからを見届けよう…。

 

 

「あっ キンタローくん」

「どこだ!」

「そこに今…………って冗談よ それにあんたの意見は聞く気無いし」

「真剣に考えた 俺の時間を返せ」

「ふ 相変わらずね あんたも…………」

「どうかしたのか二乃?」

「上杉には連絡取れないから あんたに言うわ 彼と会わせてくれてありがとう」

「本当に 風太郎に言えよ それは…………まぁ うんどういたしましてだ」

 

二乃は今の現状を整理する為だと話す 元より意見は参考にもしないと

全くこのお嬢様は変わらないな 何処か気晴らし程度だが心の整理も着き戻ると話す

去り際に握手を求められ 俺はそれに応える 

 

「この先 どんな結果になっても彼との今の関係に一区切りつけるわ」

「俺は何んもできないが……頑張ってこい」

 

握手が終われば二乃は立ち上がる

そのまま部屋へと戻るのだろう 

俺も何だか眠くなってきた最近は気を貼ってばかりでまともに睡眠も取れて無いんだろうな

また五月にどやされる…………

 

 

 

 

 

俺はこの時すっかり気が抜けていた

自分自身が発した 凡ミスにすら気づけずにいた

 

悠長に欠伸なんぞして 二乃の表情の変化すらわかっていない

 

 

プルルルルと音が鳴る それは 俺が持つ 風太郎の携帯だ

 

まずい…………

 

「二乃 これは…。」

「うん やっぱり あんただったんだ」

「まさか お前」

 

最初からなのか それとも途中からなのか

二乃は既に気づいていた 電話の相手が風太郎ではなく俺である事に

とことん俺は詰めが甘い

 

「気づくわよ あんたが思ってるほどあんたは自分以外演じれないから

  それに私は『二乃』と彼に言われた話をあんたには伝えてないのよ」

「説明を………させ………なんだ 急に」

「あいつが 上杉だってことも気づいてるわ 前回と違ってよーく見えるから

  真似なんてしてもすぐバレるわ 五つ子じゃないんだから…………さようならコウにぃ」

 

 

本当のさようなら 彼女はそう告げれば去って行き

俺は意識を失った どのタイミングで薬を盛られたのか今考えれば

『キンタローくんだ』と分かりやすい誘導をした際にだろう

初日と違い まさか二乃が再び同じ手を使ってくる事など俺は想定もしていなかった

覚悟は決めたつもりだが、二乃の方が俺達よりも上手であった…………。

 

暫くした後に 息を切らして現れた風太郎

『俺も気が付いたら寝てた あいつ飲み物に仕込んでた…………。』

俺が二乃と会っていた時には既に眠らされており ホテルの従業員に起こされ

下のカフェで意識を失う俺を見つけたと話す

 

 

そして 二乃は俺達の前から去った

 

今度こそ何の痕跡もない 手がかりすら失った…………。

 

 

     期末試験まで 残り 三日

 

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