三玖ちゃんメインヒロインなのに 後半では増えます
無言電話がかかり見て見ればそれは一花からの物だ
あいつがこの状況でそんないたずらをする筈もない
風太郎にも聞こえるよう二人で耳を澄ませた
ついでとばかりに五月も聞き耳を立てる…………。
『私 部活やめちゃダメかな』
それは俺達が聞きたい言葉だった
四葉の気持ちだ あいつが何をしたくて何を思っているのか決して本心は言わない
家族だから一花は姉だから 四葉もついその言葉を口にしたんだ
これでやるべき事は決まった
四葉を助け 陸上部から解放する 家庭教師の俺達の出番だ
決戦は明日 四葉の為にもそして姉妹の為にも失敗は許されない
そして向かえた朝 俺達は一花と合流し作戦会議を始める
どうやって四葉に本心を言わせ 陸上部との固執を生まないようにこっちに戻すかである
テストと陸上部の大会の日は別だ ここまでやってきた彼女の頑張りを無駄にはしない
一花が言うには 四葉は陸上部の合宿に参加させられる予定であると
大会には全力で挑ませる けど合宿にまで出てみろ 四葉はもうそこで動けなくなる
チャンスはこれが最後だろう
加え 二乃の説得に向かった 三玖から助けを求める電話まで掛かって着ている
あいつら何をしてるんだ?
「大丈夫だ 意味合いを考えろ 四葉はいい加減限界だろ 三玖まで………っ」
「それもあるが 陸上部も陸上部だ。こんな時期に合宿なんて考えられん。ったく、試験前だってのにとことんまで勉強をおろそかにしやがって」
「あなたのことなので突撃するのかと………」
「余り派手に動くのは止した方が良いな 先ずは四葉をどうにかしないと」
「なら直接お願いしに行きましょうか?」
交渉 それはあっちとこっちが対等な場合に成立する事だ
昨日の陸上部の部長との会話でハッキリした あいつはこっちの意見を聞きもしない
四葉との会話もさせる気はないだろうな
五月の意見も取り入れるが慎重に動こうと一応は提案 五月はこくりと頷く
後ろでは未だに一花が電話越しで三玖と話をしている
焦りようからすれば向こうで大変な事が起きてんのか助けに行きたいが三玖を信じる あいつならやれる
「幸太郎 作戦がある 一花 そのまま三玖を連れてきてくれ」
「でも…………」
「今は風太郎を信用してくれ 四葉の為だ 頼む」
「わかった! 待ってて」
「??」
「幸太郎 気づいたようだな」
「四葉が断れないのなら 入れ替わり作戦って事だろ?」
「!えっとそれは」
「大丈夫だ安心しろ」
「わ 私は苦手です………以前 一花の真似をした時も心臓バクバクで」
「一花の真似? まぁ今は良い 風太郎が三玖を呼んだ理由は三玖に変装させるためだ」
「あぁ………それで」
焦る五月だが本命は三玖だ 本人の言う通り五月にこの手の事は向かないだろう
表情でもろに出てしまう
三玖はその点 慣れてる 一花がダンスの誘いを受けた日に彼女が一花の振りをしたと風太郎から聞かされている
概要は説明したのは良いけど 陸上部から本物を連れ出す手立てはない
俺達が出れば 確実に妨害されるだろうしな
「二人共 あいつら出発しやがった!」
「駅に行かれたら終わりだ その前に四葉を奪還する」
「やりたくもない 部活で貴重な土日を潰されてたまるか」
「しかし どうするんです?」
「背に腹は代えられん…………五月頼む! お前が頼りだ」
「何時も断るのに幸太郎君は調子良いんですから………わかりましたやります」
「よし…………」
四葉の振りさせるには本人を陸上部から引き離す
ただ そう簡単に行かない 既に行動を開始している
三玖が居ない以上は五月に彼女の振りをして貰うしかないのである
「あははは」
「リボンも似合うな」
「そう言う話じゃない…………(はぁ…不安しかねぇ」
近場のコンビニでリボンを買い それを装着する五月だが本人は苦笑い
確かに感想を言ってる暇はないな…………。
運の良い事に陸上部は歩道橋のしたで止まっているその間に五月には四葉になりきってもらおう
「一身上の都合により 退部します」
「四葉にしては真面目すぎる」
「もっとアホっぽく」
「ぶ 部活を辞めさせていただきたく」
「固すぎる」
「もっと アホっぽく」
「無理です! こんな役目もうやめたいです!」
「それだ」
「それ それー!」
四葉にしては真面目過ぎるし 何処か堅苦しい
話をするならある程度は中身も真似をしなければ部員にバレるだろう
軽い練習の末に アホっぽい五月が誕生した
「うまくいくんでしょうか…………」
「作戦はこうだ」
「ひとまず 俺が四葉を陸上部から引きはがす 幸太郎にはここで一花達を待ってもらう
その後 何食わぬ顔でお前が集団に戻り退部しろ」
「引き剥がすねー どうすんだ?」
俺と五月が彼を見れば 息を大きく吸い 耳を塞げとジェスチャー
?と顔を見合わせ 言われた通りにすれば…………
「痴漢だーーー 痴漢が出たぞ―――――!!」
「おま」
「まさか」
「痴漢! そこの人止まりなさーい」
(いけ 俺が捕まる前に…………なっ!)
(捨て身過ぎる いくぞ 五月 アイツの犠牲を無駄にするな!)
(なんという捨て身の作戦…………了解です! 二人の言葉を信じます)
大声を出した風太郎はその場で逃走し 俺と五月はそれぞれ別の場所へとすぐさま移動
向かってくる四葉は俺らには目もくれず 痴漢(風太郎)を追い何処かへと走って行く
体力の少ない弟が自分を犠牲にしたんだ 俺もやれるだけ時間稼ぎさせてもらうか
「はぁ…はぁ…あはは…すみません……逃げられちゃいました」
「もー、いきなり走り出すからびっくりしたよー」
「早くしないと予定の電車行っちゃうよ」
「私 合宿にはいけません」
「えっ?」
五月は何事もなく 部員達の輪の中にはいり
頭を下げる そのまま合宿には参加しないと部長である生徒に聞こえるよう声を出す
ただ今更ながら この作戦には大きな問題がある…。
気づくのが遅すぎたな
困惑する 部員達 ただ部長は少し様子が変だ 疑るように四葉(五月)を見る
「私 部活を辞めたいです…」
「なんで?」
「来週は試験ですし…」
「違う 違う 私が言いたいのは なんで別人が中野さんのフリをしてるの?」
あの女 気づいてるな
五月は精一杯四葉だよ アピールをしているが、彼女はそれを冷静に対応し、何度も 問う 『どうして そんな事しているの』 五月は何とか粘るが限界だろう
ちらりと上に視線を送れば風太郎も様子がおかしい事に気づき始め
下を見ている 同じく下を眺める四女の姿…四葉は確保出来たようだな…。
(無理だ 五月 お前は四葉と違って…)
「髪の長さが違うもん」
(ですよねーー)
(くっ… 鋭い観察眼だ)
(前も こんなことありました もっと他人に興味もってください)
四葉も心配そうに見ているし そろそろ俺も動くか 一花からの連絡待ちでは五月が持たんぞ
すまん 風太郎後は任せたぞ…。
近くで隠れ様子を窺っていた俺は五月の救援と一花達が来るまでの足止めとして彼女達の前に顔を出す
「あんなにやる気のあった 中野さんが」
「やる気だ? 適当言ってんなよ」
「あれ 上杉幸太郎くんじゃないですか 何でここにいるんですか?」
「うるせ お前の話はどうも尺に触る」
「幸太郎君!」
(お兄さん! 私のために みんなまでありがとう でもすみません行きます!)
(幸太郎 お前って 待て四葉!)
ここまでやれば警戒も何も無いだろう
元から俺を嫌っている連中だ 顔色なんて窺う必要はない
それに 俺はこの部長の言葉が気に入らない
期待 信頼 走る為の才能 こいつは何を抱いてるんだ?
確かに四葉の持っているそれはどれも素晴らしいもんだ
あの性格だきっと真面目に取り込んでいたし それに四葉は目の前で困っているなら決してそれを裏切らない 裏切れないんだ…………。
でも それはそれだ この生徒はそれを自分の良いように聞き取り思い込んで勝手に都合を押し付ける
俺がもっとも嫌いなタイプだ
「てめー 四葉の意見は聞いたのか?」
「中野さんは良いって」
「それだけだろう 疲れた 休ませて 少し時間を あいつはどれかでも言ったか?」
「中野さんはそんなやわな」
「それだ その思い込みだ! 勝手に自分の理想を期待をあいつに押し付けるな」
「押し付け 君もでしょう? 中野さんは真剣に考えてくれてる」
「アイツだって思う事はある それを自分勝手な都合で勝手に話を進めて…。意見をする前にお前は先手を打つそして退路をけす お前にわかるか、頼られる側の人間の気持ちが 責任が お前 部長なんだろう? 人の気持ちを考えろ」
「幸太郎君 もういいです ここは」
「まだだ 俺は言い足りない! どれだけあいつが苦しい思いをしてんのかこいつは知らねぇ!お前のやってる事は!」
「お願いします 幸太郎君 落ち着いてください お願いしますどうか冷静に」
「はぁはぁ……っ」
さっきの言葉はどれもこれも俺に突き刺さった
勝手に家庭教師してそれをやらせてる俺達も本質的には変わんねぇけど ここまではしない
少しはあいつらの意見も聞いているさ でもこいつはどうだ 四葉の言葉を何一つ無視し
あいつが走っている姿にしか 興味を示さない エゴイストだ…。
分かんねぇって顔で見てるな こいつには永遠に分かんないだろうな…。信頼を勝手に向けられ 裏切られる人間の気持ちは…………。
そのどれもが重荷になって気づけば身動きが取れない 誰も助けてくれない
助けを呼ぶ事も許されないんだ 期待を寄せられる側は応えない事への恐怖がずっと付き纏う
四葉はいい奴だ きっとやり遂げる 信頼に答えつづける でも休ませないと壊れちまう
声をあげ女性徒に食って掛かる情けない男 それを止める五月
四葉の振りをさせる筈が俺は邪魔しか出来てない 情けない奴だ
「お待たせしました~」
後ろから声が聞こえる
「みなさん ご迷惑おかけしました」
「中野さん」
「今度は本物だよね・・・?」
「あはは ちょっとしたドッキリでした 五つ子ジョーク」
「四葉…」
「お前何で」
「なんだ冗談だったんだね でも笑えないな こんな人まで呼んでさ でももういいや 戻ってきたし」
「お前!」
「幸太郎君落ち着いて」
「っ」
「確かに怖い方ですね まぁ 私が辞めたいのは本当ですけど」
突然現れた 四葉と名乗る同じ格好の少女
その物言いは四葉そのものだ そして何事もないかのように『辞めたい』と口にする。言葉が理解できないのか 陸上部は全員困惑の表情で彼女を見ており
部長は動揺が隠せないのか慌て始める
「な…中野さん…?なんで・・・?」
「なんでって、調子いいこと言って私のこと、ちっとも考えてないじゃないですか」
「そ それは! 中野さんが頑張れるように」
「そもそも、試験の前日に合宿を決めるなんてありえません。」
「全部あなたの!」
「マジありえないから」
「はい ごめんなさい」
この子は本当に四葉なのか?
彼女の迫力に押され遂には負けを認めたのだろう その場で膝をつく部長
そして見下ろす四葉は冷めた目だ あいつが本気でキレるとここまで怖いものなの…
いや この怒り方 …まさか
「どういうことだ…?」
「つ ついに出た…ドッペルゲンガーだー! 死にたくありませーん」
「ドぺゲンと言う事は そうか!」
「ふぅ 間に合ったみたいだね 全く 五月も彼も無茶をしてさ」
「間一髪で助かったぜ お前が三玖を連れてきてくれたおかげで…」
「私はここだよ」
「あれ?」
「三玖間に合ったのですね」
「私は何もしてない」
「私たちはカツラがないと髪型的にねー」
「となるとやっぱ…あいつは…」
「コータロー お疲れ様 声聞こえたよ」
「悪いな お前らの連絡も待たずに先走った」
「ううん コータローと五月が時間を稼いだお陰で 間に合ったから」
「俺はただ 騒いだだけだ それに 二乃だろ あれ 髪型短くしたのか?」
「ハサミを持って 三玖が立ち尽くしてたの
詳しくはわからないけどきっと気持ちの変化があったんだね」
階段を昇り上で風太郎達と合流し 一花に声をかけようとすれば
後ろから三玖が現れ おれの考えは確信に変わった カツラがなければ変装は無理と一花は話す
ならば 誰かが髪を切ったのだろう そしてその誰かは一人だけだ
中野二乃 彼女だ
リボンを外し 何時もと同じく蝶のようなリボンをつける
髪を切る 男はどうだか知らないが女が切るとそれは一種の決意表明だと坂下は語っていた
二乃はここ数日で様々な物とぶつかりながらも前に進み 答えを得たのだ
知らない内に成長していると言うがまさに その通り 彼女は確かに変わった
「そんなにサッパリいくなんてもしかして失恋ですかー?」
「…ま そんなとこ」
「キャー 誰と~? 三玖知ってる~?」
「知らない」
「内緒よ」
「何?」
「言っておくけどあんたじゃないから!」
「お おう」
「わかったわね」
元の髪に戻せば 風太郎の方まで歩み寄り 指を彼に向けて主張する
戸惑う風太郎にそれを言い終わると二乃は彼の前を去る
「あと そこのあんた」
「悪かったな騙すかたちになって すまん」
「次はないからね」
「了解だ 二乃 その髪も似合ってるぞ」
「ふんだ!」
(さようなら キンタロー君 さようならお兄ちゃん そして幼い頃の私達)
言いたい事を言い終えれば二乃は四葉の元へと向かう
何だか妹が巣立った気分で俺は少し寂しいがこれもあいつが決めた事だ
それを受け入れよう……そ
れに二乃きっとお前は いや今はよそうか
自ずとその答えに彼女も行きつく筈だろう
風太郎 お前も身の振り方を考える必要が出て来たぞ…。
「四葉」
「!」
「アタシは言われた通りにしたけど、本当にこれでいいの?こんな手段を取らなくても本音で話し合えば彼女たちもわかってくれるはずよ。 あんたも変わりなさい。辛いけど、きっといいこともあるわ」
「うん 行ってくる」
「付いていこうか?」
「ありがとう…でも 一人で大丈夫」
四葉もやっと陸上部と自分の気持ちで話も出来る 俺達はここであいつの思いが伝わるように祈るばかりだが、大丈夫だろ あの五つ子の一人だ 頑張れよ四葉
残る問題は 二乃と五月 この二人だ 時間はたっぷり与えた後は気持ちを伝えるだけだぞ二人共
「さて 俺達はいくか」
「そうだね フータローくん私たちはこっち」
「期末試験の対策練ろ」
「試験のことは心配しなくていい。俺達にとっておきの秘策がある 幸太郎あの手だ」
「遂にあれを使うか…了解だ」
最終手段は使わない事に越したことは無いと誰もが言うが 風太郎も覚悟を決めている
俺は止めはしないさ なんの話か考えている二人だけど 今は秘密だ
「二乃…先日は…」
「待って 謝らないで あんたは間違っていない 悪いのは私 ごめん あんたが間違ってるとすれば… 力加減だけだわ 凄く痛かった」
「二乃ぉお そ そうですお詫びも兼ねてこれを渡そうと思ったんです この前 二乃が見たがってた映画の前売り券です 今度一緒に行きましょう」
「全く… 何なのよ 思い通りにいかないんだから」
彼等が去ったあと 二乃と五月は自分の思いを伝え
きちんと謝罪を言える事が出来た
当時を思い出し傍から頬をさする二乃
涙を浮かべていた五月だが、あの日彼等と話した 映画の件
それ以降ずっと五月は考えていた 仲直りをしたのなら 彼女と見に行こうと
持っていた前売り券をにこやかに提示すれば 『上手くは行かないな』と二乃も同じく
彼女が見たがっていたそれを密かに用意していたのだった…。
「ねぇ コータロー」
「なんだ 三玖?」
「安心して 私はコータローを裏切らない コータローを泣かせないから」
「どうした急に?」
「今はそれだけ知っておいて欲しい コータローは一人じゃないから 私達がいるから」
「ありがとな 三玖 お前には救われてばかりだな」
「私がそうしたいだけだよコータロー」
(三玖とコータローくんも 心配する程じゃなかったな 私はどうすれば良いのかな)
四葉の姿を俺は何処かで…。あの頃の俺と重ねていたのだろう
気づけば熱くなり 四葉の為と言いつつ自分の本音を声に出している
でも今は違う 三玖も言う様に 俺はもう一人じゃないのかもしれない
人を信用しても 良いのだろうか なぁ…坂下 お前は俺を憎んでいるか?