上杉幸太郎と六等分の思い出   作:Aikk

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過去の話誤字やミスを見つけてちょくちょく手直してしてます


第五十六話 不良少年とさようなら

それはとても綺麗な土下座だ

久々に中野家に戻ってきた 二名に加え 今回の騒動の元となってしまった

四葉は家につけば ドサッと頭をさげる

問題は解決したんだ 怒る奴は誰もいないさ

 

「この度は ご迷惑をおかけして…」

 

「朝から大変だったねー」

 

「早朝だったので ご飯食べ損ねてしまいました…」

 

「全ては私の不徳に致すところでして…」

 

「帰りに買ってくればよかったかなー」

 

「でも今日はシェフがいる」

 

「誰がシェフよ」

 

「大変申し訳なく…」

 

確かに 誰も気にはしないだろうさ

けど少しは耳を傾けてあげてもと思っているんだが、その様子は皆無だ

彼等のやる事は既に変わっているんだ 過去には拘らない…。

 

「その前に」

 

「おかえり」

 

「ただいま」

 

こっちはもう前を向いてる 五月と二乃を戻すまでどれだけの時間を費やしたか

どれも無駄な事とは思わない どれも必要だった事だ

 

 

「早く入りなさい」

「お先にどうぞ」

「じゃあ同時ね」

『『せーの』』

「なんで動かないのよ!」

「二乃だって」

 

この光景は和むな

喧嘩には発展する事のないやりとは見ていて安心出来る

いや気分がいいな

 

「久々に賑やか」

「うん! よーし じゃあこのまま…」

 

「試験勉強だな」

 

「!」

 

このムードを壊したのは弟だ

まぁ こいつらに試験勉強をさせる為にここまで来たんだ

風太郎の意見は正しいだろうな

 

「忘れていないだろうな 明後日から期末試験だ 文句あるやついるか?」

「も もちろん そう言おうとしてたよねぇ」

 

「……」

「四葉さん」

「お兄さん みんなが聞いてくれませーーん!」

「泣きつくのは良いけどよ もう終わった事だ お前も前を向け」

「でも 今回はみんなに……」

「そう 思うなら今回の教訓を活かせるようにしろ わかったか?」

「わかりました 中野四葉 頑張ります!」

 

「じゃあ 四葉が朝食当番」

「さっ 行こ!」

 

「らしい いくぞ」

「うんっ」

 

今回はお咎めなし あるとすれば中野家の朝食当番だろう

暗い顔を辞めた四葉はそのまま家へと入って行く

 

「なぁ 幸太郎」

「なんだ 風太郎?」

「お前が あの部長に言ってた事 去年のお前のような事にさせない為か?」

「どうだろうな 俺は期待をかけられた事ねぇーなからな…。 」

「はぁあ……そう言う事にしとく だけど俺はお前に期待してる」

「弟は優しいね 兄は泣けて来た いくぞ」

「真面目に聞けよ……」

 

もう誰も信じない 誰にも頼られない

そんな事ばっかりの中でこいつは俺に『お前に頼みたい』と俺を補佐に任命した

気づけば 五つ子と再会し 彼女達の問題に向かい合い

学園行事にも参加と……

去年の俺はそんな日が戻ってくるとは思いもしないだろう

何だか今年一年は色々な事が多かったな……。

 

何時までも過去に囚われていては駄目なんだろうな 俺も前に進む必要がある

その為に 俺が選ぶ答えはもう決まっている

 

 

 

「お兄さん どうですか!」

「でけーな」

「大きければ お腹も膨れて気合が入ります」

「喉つまらせるなよ それと五月も落ち着いて食べろ」

「!……お腹が空いてたものでしてつい」

「調子が戻ったなら それで良いさ」

 

四葉お手製のおむすびは大盛況 様々な種類がありみんな夢中といった感じだ 

確かに愛情のこもったいい味 俺も久々に作って見るかな……

 

 

「それで、陸上部とはどうなったの?」

 

「あの後ちゃんとお話しして、大会だけ協力してお別れすることになりました」

 

最後に陸上部と話し合ったのはこいつ本人だ

無事に退部は出来る事になったが、四葉の性格上大会に出ないって判断は無い

 

 

「そのまま大会も断っちまえばよかったのに」

 

 

「1度お受けした以上、それはできませんよー」

 

 

「幸太郎君の思っていた通りでしたね」

 

「確かに問題は起きたけど あいつの努力を全て否定は出来ない これがベストだ

 まぁ…俺はあの部長は嫌いだけどな!」

 

「まぁ 無事に終わった事ですし 冷静に」

 

「そいつの意見は私も賛成ね やり方が汚い」

 

去年の俺ならまだしもだ今の俺はあの部長とは永遠に分かり合えないだろうな

二乃の言う通り やり方がえぐい あの場でそう言われれば四葉が断れない事は

あの女も分かっていただろう まぁ 四葉が欲しいって気持ちはわかる

 

「お前はバイクより早いしな」

「お兄さん また競争しましょう!」

「ジェット四葉さんは怖くて二度とごめんですよ」

『『??』』

 

時速60kmを追い越す 人間と誰が戦うか…負けが決まった事なんてやりたくない

お前なら世界を狙えるぞ……それに規定以上は速度違反だ 捕まりたくないからな

洒落にならんさ  

俺と四葉の会話の内容について行けない残りの5人は何の事だろうと顔を見合わせる

 

「また何か言われたら教えなさい。今度こそ教育してやるわ」

 

 

「ありがと、二乃!でも、今度は1人でやってみる!」

 

「あっそ まぁ頑張りなさい」

 

今度またおきたなら 呼べばいいと二乃は言うが 似たような事が起きれば

自分の力で解決してみせると四葉は気合を入れる 以前とは違う 任せても良さそうだな

 

「さて 本題に移ろう」

「休憩は終わりだな ほれ」

 

「とりあえず問題集は全員終わらせてるみたいだけど」

「私たち ちゃんとレベルアップしてるのかな?」

 

テーブルの上に乗せられた問題集の山 最初は数式や問題のみでそれ以外は空白だった

だが今ではその解答欄も全て埋まりきっている 彼女達の頑張りで終わらせる事が出来たのだ

 

「元が村人レベルだからな。ようやく雑魚を倒せるようになったくらいか」

 

「それで期末試験を倒せるのでしょうか……?」

 

「本音を言おう 無理だな お前らは頑張って来たがそれが現実だ」

 

「やっぱりそうだよね……厳しいねぇー」

 

確かに厳しい元の計画では、全員が既に終わらせ 

更に復習も兼ねる筈だった そうなればギリギリの点数を取れる算段

 ……まぁ計画は上手くはいかないもんだ

ここまでやれただけでも立派な成長と言える

 

それに俺達には最後の切り札が残っている

 

「この土日レベル上げをするしかない」

「だが 不測の事態の対策はある」

「秘策あるって言ってたね」

「こいつは禁じ手だ だがどんな弱い奴でも 裏ボスだろうがいちころだ…」

『『ゴクリ』』

「これが そのチートアイテム カンニングペーパーだ!」

 

風太郎が取り出した その紙切れがこの最悪の展開を変える魔法のチートアイテム

どんな問題だろうが、敵は無いと言った最高で使えば多数の人間からの評価も下がる

デメリット付きだ………… 

 

「あ あなたはそんなことしないと思ってました」

「そんなことして 点数取っても意味ないですよぉ」

 

「でも これしか道はない でも こいつを使わないようにする」

「この二日間みっちり叩きこむ! 覚悟しろ!」

 

俺達もこれは使いたくない  そうならないようにするために

残りの二日間真剣に取り組み寝る間も惜しめばきっと成果は出てくれる筈だ

どんな結果であれ 俺も風太郎も後悔はしない

 

言いたい事を言い終わり 風太郎は二乃の方に視線を向ける

 

「というように進めさせていただきますが…いかがでしょうか?」

「何それ 今まで散々好き勝手やってきたくせに やるわよ よろしく」

 

こいつは想像以上の結果だ 二乃はすんなり受け入れた

風太郎本人は信じられないといった顔つきだ

 

「そう言う事だ 風太郎さん 俺も補佐として頑張るから 最後まで気張れ

 家庭教師の先生」

「あっ ああ! やるぞ」

 

ここまで心を合わせて取り組むまでどれだけの時間がかかっただろう

全員が全員問題児といった形で 何かをすれば何処かが崩れる

上手く行けば 次にポカをするそれの繰り返しで決して前には進めない

 

笑顔で間違えた問題を見せる四葉

 

自分に自信が持てず前を向けない三玖

 

俺に何故ここまでするのかと問う一花

 

俺のやり方を否定はしないが教えも乞わない五月

 

全てを否定し姉妹の事を案じる二乃

 

時には喧嘩し 時には協力し 勉強だけご勘弁と

本当に骨が折れる毎日だ でも全て報われた

俺達の前に写るのは 協力し互いに教え合う姉妹達の姿だ

やっとそれを見る事が出来たんだ これですべて上手く行く そうだろう風太郎?

 

「やりましたね 上杉さん!」

 

「まだ ここからだ」

 

四葉の声で風太郎も現実に戻り 気合を入れ直す 勉強に参加する

 

 

「良かったね コータロー」

「あぁ………三玖 これからもよろしくな」

「うん こちらこそよろしく」

 

 

ごめんな三玖……俺は最後の最後でお前らを裏切る事になる

でもこれが一番の方法なんだ……。

 

 

 

勉強会は滞りなく行われ 何度か衝突したけども以前のように問題は起きなかった

そして二日目の今日 ついに訪れたテスト当日だ

 

眠気を押さえ 俺は準備を始める 顔を何度もたたき 気合を入れ直す

今日のこの日の為に俺達は彼女達の勉強を見て来た そして風太郎をサポーターしてきた

その俺が眠そうにしていは駄目だ アイツに恥じないような兄でありたいんだ

 

 

「風太郎!起きやがれ!」

 

 

「うるせー!こっちは寝てねーんだよ!」

 

「勇也さん おはようございます」

 

「おう 幸太郎 今日は気合入ってるな!」

 

息子の首根っこを掴み 玄関まで運ぶ彼は朝から元気な声だ

外には既に五月が待っている 俺達も急がなくてはな

 

「待たせてごめんなー」

 

「えー!! 五月さんもう帰っちゃうのー?」

 

「おはよう 五月今日は頑張れよ」

 

「ごめんね、らいはちゃん……それと幸太郎君 おはようございます」

 

五月は特にらいはに懐かれている この一週間 妹は楽しかったんだろう

男ばかりの中で五月の存在はらいはにとって大きいものだったんだ

大喧嘩の先についたのがうちだが、五月には感謝しないとな

 

「お世話になりました。あの・・・これ、諸々のお礼なので、受け取ってください」

「いらねーよ 気持ちだけで十分だよ 五月ちゃん」

「あぁ お前のお陰で らいはも勇也さんも楽しい一週間だった お礼をしたいのはこっちの方だ」

「幸太郎君……はい その言葉でつっかえも取れました!」

 

俺も勇也さんもお礼なんて受け取る必要もない 

五月は謝礼をしぶしぶ閉まっていたが、楽しい一週間と聞けば何処か満足した表情に変わる

まぁ……お世話されるのは面倒だったけどな 

 

「ほら!シャキッとしろ!!」

「いでっ!」

 

「五月ちゃん 幸太郎も言ってたが 楽しい一週間だったぜ またいつでも遊びに来いよ」

「試験頑張って!」

「はい」

 

(気合はいったか?)

(あの力で叩かれればな いよいよだな 幸太郎)

(あぁ……)

 

勇也さんとらいはに見送られ 俺達は学校へと向かう

そしてここからが俺と風太郎の最後の……家庭教師と補佐の仕事だ

 

 

 

「ついに当日だね」

「大丈夫かなー」

「やれることはやった」

「二乃どうしたんですか 深刻な顔して?」

「何でもないわ……」

 

中野姉妹は学園内で合流した

それぞれが当日を迎え緊張と不安で胸が一杯と顔に現れているがこの数週間

そして二日間は無駄ではないと気持ちも切り替わる

 

ただ一人 二乃は何処か上の空で気になった五月は声をかけるが

軽くあしらわれる そこまで大事ではないのなら大丈夫だろうと彼女は追求をやめる

 

「10分前だ」

「じゃ 健闘を祈るわ」

「あれ 上杉さんとお兄さんがいない!」

「お二人はらいはちゃんに電話だそうです」

「こんな時に?」

「きっと 今じゃないといけないのでしょう 自身の携帯は充電切れなのに……私のを借りていったほどですから」

 

ここに風太郎と幸太郎の姿はない 学校につけばすぐに

風太郎のみならず幸太郎まで充電切れと言いだし らいはに連絡が出来ないと困っており

五月に彼は貸して欲しいと頭を軽く下げた

不思議に思ったが彼の頼みは珍しい 頼られたのだ それに応えよう

彼女は何の躊躇いもなく 幸太郎にそれを渡す

『わりぃ すぐに返す!』と彼は言えば風太郎と共に何処へ向かって行ってしまった

 

 

 

 

そして 彼等は屋上に来ていた

幸太郎は知り合いの教員に頼み鍵を借りていた 流石の手際の良さと風太郎は感心

初老の教師は『悪さは控えろよ』と彼に念を推していたとか

そのまま外に向かえば 風太郎は五月のスマホを操作し

ある番号へとかけ その人物と話を始める

暫く話し合えば 『期末試験頑張ってくれたまえ』と男性は電話越しに言い

会話を終わろうとするが、彼等の話は終わっていない

 

「今日をもって 家庭教師と そして兄は補佐を退任します」

「…………」

「あいつらは頑張りました この土日なんんてほとんど机の前にいたと思います

 しかし 赤点は避けられないでしょう 苦し紛れの策を案じましたが あんな物に頼らない奴らだってことはよく知ってます」

『今回はノルマを設けてなかったと記憶しているが』

 

幸太郎と風太郎は 家庭教師を辞めると 彼女等の父に報告していた

この決断は既に二人の中で決まっていた事だ 何度も話し合い

その都度二人で考えた でも結論は変わらない これが最善の方法だと

 

風太郎は電話越しの彼に言う

本当は回避できた ペースを守れば赤点な取る事も無かったと

でもそれは避けられない 確かに勉強を教える事が彼等に課せられた仕事だ

だから 嫌がる姉妹達に向き合い勉強を教えた 勉強は…

でも それだけだ 幾ら必要とされていようが 彼女達姉妹をバラバラにした事は変わらない

教えられる側の気持ちもくみ取り それが出来る人間でなければやっていても意味はない

 

その為の上杉幸太郎だった でも彼の力でもダメだった

本人がそれを一番自覚している サポートに回るはずが周りに助けられ勉強どころか

何も出来ないままが続き 結局自分はまだ 人の心を分かっていないと結論を出した

 

風太郎も自分では限界が来ると感じ 兄との二人体制で挑んだが 惨敗続き

焦りで五女との固執が生まれ 赤点を免れず中間試験は敗北をきし

今回の問題ももう少し彼女達に寄り添えばそれは回避できた それをしなかった

出来ていたと思っていた きっと 自分達より相応しい人物がいるのだと答えは変わらない

最後に姉妹が手を取り合い勉強に勤しみ姿を見れた事が、何よりの報酬だろう

 

 

中野父は彼等の言葉を聞き 引き留めはせず労いの言葉を送る

 

「一度 ご自身で教えてみてはどうでしょう?」

『……!』

「家庭教師では限度がある 父親にしかできないこともあるはずです」

『いや 私も忙しい身でね それに他人に家庭をどうこう言われたくないな』

「最近家に帰ったりとかは……知ってますか 二乃と五月が喧嘩して家を出ていったことを」

『初耳だね……もう解決したのかい?』

「はい」

『それならいい 教えてくれてありがとう では』

「それだけですか?」

 

淡々と話を聞き 内容だけ聞き取れば電話を済まそうとする彼に流石の風太郎も感情を抑えられない

何故 二人が喧嘩したのか? あの子達が何に悩み 何を思うのか

父親なのに それが気にならないのかと矢継ぎ早に風太郎は彼に聞く だが返答はどれも同じだ

感情が籠っているのかすら怪しい声だ そうだ この男はずっとこうだ

初めて電話をした時も風太郎は何処か違和感を感じていた

中間試験の際の電話もだ淡々と話を進め 心配だから力量を図る

理由は全うだろう だが 一度それ以外で娘達と彼は話しているのだろうか?

 

風太郎がこのスマホを借りた時に 偶然履歴が目に入った

彼女からの電話はあっても 彼から彼女にかけた形跡はほぼ無い

あっても家庭教師に関する事だけだろう 

 

それに 不自然だ 彼女達から父親に関する話題 家族に関する事を風太郎は一度も聞いたことが無い

五月が話した 彼女達の過去 それ以外風太郎は知らないのだ

娘達に家を与え 生活に不自由させないよう配慮する それもある意味では親の仕事だ

でも顔もまともに見せず ここ数ヶ月電話越しでしか会話をしない彼は、本当にこれで良いのだろうか

他人に興味を示さない 彼ですらそう思えるほど 違和感が拭えないのだ……

 

この際だ もうやめるんだ こいつにぶつけてやろう全部言いたい事を言ってやろう

 

 

「少しは父親らしいことしろよ! 馬鹿野郎」

声を荒げ自分の気持ちを言い終われば彼は意見を聞く事もなく電話を切る

 

「かっけー……」

「……やべ 今月の給料ちゃんと貰えるかな……」

「まぁ そん時はそん時だ なぁ風太郎」

「なんだよ 幸太郎」

「俺達は間違ってないよな」

「あぁ…………何も間違いない 答えは変わらない」

「そうだな」

「一花 二乃 三玖 四葉 五月 お前ら五つ子がそろえば無敵だ 頑張れ」

「俺達は応援してるぞ 負けるなよ お前ら……」

 

空を見る 流れる雲は静かに進む

正解なんて無いのかもしれない でも出した答えは間違ってはいない

あとは 姉妹達が今日までの成果を出し 自分達の実力と向き合うだけだ

 

「さて 風太郎 俺達もいくぞ 遅れたら教師にどやされる」

「それだけは嫌だな」

 

 

 

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