期末試験結果
中野一花
国語24点 数学47点 理科41点 歴史28点 英語36点
総合176点
中野二乃
国語19点 数学22点 理科38点 歴史27点 英語45点
総合151点
中野三玖
国語35点 数学41点 理科40点 歴史70点 英語20点
総合206点
中野四葉
国語35点 数学15点 理科22点 歴史30点 英語26点
総合128点
中野五月
国語43点 数学28点 理科68点 歴史26点 英語34点
総合199点
期末試験は無事に終わり返された答案用紙を見て五人は改めて自分たちの実力と顔を合わせる
ここ一週間と今までの家庭教師で得た知識をフルに生かした結果だ
変えようのない事実 言葉を失い何度も見直すが、覆ることは無い
「これは酷い……」
「あんなに勉強したのにこの結果かー」
「改めて私たちって馬鹿なんだね」
「二乃…。元気出して」
「あんたは自分の心配をしなさいよ」
ごもっともと四葉は口を閉じる
壮大な姉妹喧嘩の末に勝ち取った点数は自分達が思っていた物よりもひどく
落胆と力の無さを痛感 果たしてこれをあの二人にどう説明すべきかと
あの二日間で得た物はこれだと彼等に見せて良いものかと 考えていても彼等はやってくる
今日は家庭教師が行われる日だ あと数分もしないうちに上杉兄弟はここに訪れる
隠す事はしない 諦めよう そして受け止めよう
「お 噂をすれば…」
「コータローは言わないだろうけど フータローにはしこたま怒られそう」
「だねー」
「なんで嬉しそうなのよ」
「あはは 結果は残念だったけどさ またみんなと一緒に頑張れるのが楽しみなんだ」
飴と鞭だ
上杉兄が彼女達を褒めれば 上杉弟が容赦なくそれを叱る 普段の鬱憤もあるだろう
覚悟を決めないと 言葉だけで折れそうだと
でも三玖も四葉も何処か笑顔で向き合ったそれを受け入れる
結果は惨敗だ 中間試験よりも成長していた…。これが今の自分達だ
それを受け入れ 前を向こう 終わった試験だ
残るは反省会と次のテストに備える事だ それに嬉しいと四葉は話す
例えこの点数であろうと みんな 7人での勉強はこれからも続く きっと風太郎は怒るだろう
『何が嬉しいんだ 迷惑だ!』それでもこの時間が続く事を彼女は望んでいた
そう 彼女達は そう望んだ…。
「失礼いたします」
五月がインターホン越しで話している人間そして招き入れた人物は
一人 そしてそれは兄弟の片方どちらでもない 一人の白髪の壮年男性だ
しかし その人物はけして、彼女達が知らない他人ではない
ここまで自分達をお世話し 林間学校の最中も車を出してくれた人物
彼女達の父の秘書である 江端と呼ばれる男性だった
軽い挨拶の中 自分から見ればまだ五人は幼い子供と変わらないと述べ
それを聞けば五つ子も苦笑い
父の秘書であり 運転手を務める彼が何用でここに来たのかその疑問に尽きる
要件は何かと五月が江端に普段のように聞いていた
「江端さん どうしていらしたのですか?」
「本日は臨時の家庭教師として参りました」
「そ そうなんだ」
「江端さん元は学校の先生だもんね」
「あいつらサボりか」
「体調でも崩したのかな」
「お嬢様方にお伝えせねばなりません」
二人は来ない その為元は何処かの学校で教鞭を持った彼が臨時として呼ばれた
彼女達はそう思った 事前に何連絡もない 今日になって用事でも入ったのだろうか?
もしかしたらまた何か厄介事なのか 憶測が飛ぶが、きっと来週には二人とここで会えるだろう
彼女達は安心しきり江端の言葉を受け入れた
ただ江端自身伝える事があると五人を見据え彼はつづけた
「上杉風太郎様と上杉幸太郎様は 家庭教師をお辞めになられました」
『『え……』』
「そこで新しい家庭教師が見つかるまで 私が務めさせていただきます」
「待って待って」
「何かの冗談だよね」
「もー ずれた冗談やめてよー」
「事実ですございます 旦那様から連絡がありまして お二人は先日で期末試験で契約を解除まされました それと お二人に伝言です『彼は大丈夫』だと」
笑ってすます きっと新手の冗談だ
でもこれは違う あの人がこのての冗談を言うはずがない事は姉妹達は知っている
紛れもない事実だ あの期末試験で彼等が誰と電話していたのか
五月はやっと気づいた 父と話していたのだと
そして追い打ちとばかりに 父から五月と三玖に伝言が届いていた
『彼は大丈夫』 この言葉が何を意味するのかを二人は知っている
「えっ つまり コータロー君もフータロー君ももう来ない…」
「江端さん 父は確かに言ったのですね 彼は大丈夫だと! 本当にあの人が言ったのですね
それは本当に!」
「嘘だ……違うよ コータロー 」
彼女達は信じられないと言った表情でその場で固まる
急に目の前が真っ暗になった これは現実なのだ あの二人はもう来ない
そして 『彼とは関わるな』と 五月と三玖は父から言われた
五月は江端に何度も何度も問い質す だが答えは同じだ
そして二乃はこの中でいまだ冷静を保ちつつあの時の父の言葉と先日の風太郎とのやり取りを思い出し
答えに行きつく
「やっぱり……赤点の条件は生きてたんだ」
「どういうこと おしえて!」
「試験の結果のせいよ パパに言われたんだわ」
「それは違うと思われます 上杉様とそのお兄様はご自分からお辞めになられたと伺っています」
「自分からって」
「コータローどうして そんなつもりじゃなかったのに……」
「そんなの納得いきません 三玖安心してください……彼等を呼んで 直接話を聞きます」
二乃の行きついた答えは違うと彼は話す 赤点でもなく 父からの命ではなく
上杉兄弟が自ら選んでもうこの場に現れないと父に伝えたのだと
それは紛れもない事実 それを聞かされた三玖は肩を落とし何度も『違う違う』と声に出し
その場でうずくまる 未だ自分も混乱する中 三玖を心配し 四葉は彼女を宥める
全員が全員 納得がいかない中 五月は立ち上がり 今すぐ彼等をここに呼び、
そして今の話は本当か聞きだすと
だが…………
「申し訳ありませんが それは叶いません お二人のこの家への侵入を一切禁ずる 旦那様より
そう承っております」
「やはり そうきましたか……! なら直接彼に連絡を……えっ」
父からの命はそれだけではなく 彼らはこの家そのものに入る事すら禁じられた
あの人ならそれぐらいやるだろうと知っていた五月はすぐに彼に連絡を取ろうとスマホを取り出し
幸太郎の番号までかけるがそれは叶う事はなかった
『その番号は現在使われておりません お確かめになってからもう一度』
既に先手は打たれていた 彼のスマホは中野の父が間に入って契約されているものだ
上杉幸太郎の携帯の契約自体を無効にしたのだろう
電話はけしてつながる事はなく 無機質な声が返ってくるのみ
手から滑り落ちた スマホは床に落ちる……。
「そこまでしますか……何故ここまで」
「わかった 私がいく!」
「三玖まだ休んでないと」
「大丈夫だから……江端さん 通して」
「なりません 臨時とはいえ家庭教師の任を受けております 最低限の教育をうけていただかなければ ここを通すわけにはいきません」
彼に連絡がつかないのなら自ら打って出る
背水の陣として三玖は入口の方まで歩いて行こうとするが江端に遮られ
ここから先に向かうのならば 家庭教師としては勉強を受けさせなければならない
それが彼が中野の父から命じられた事だ けして意地悪や悪意からの行動ではない
彼女達にはそれが今必要な事 それはほかならぬ勉強だ
ぐぐぐと奥歯を噛む彼女を五月は引き寄せる
「江端さんの頭でっかち!」
「ホホホ なんとでも言いなされ」
老兵の余裕だ 彼女達の言葉を軽く流す
こうして 中野の家から上杉兄弟は消えた もう二度とこの家に彼等が来ることはない
「これ終わったら行ってもいいのよね」
「えぇご自由になさってください」
「全く あいつらどういうつもりよ」
「私はまだ 信じられないよ 上杉さんとお兄さんが…」
「本人達の口からちゃんと聞かないとね 誰か終わった?」
「もう 終わります」
「私も」
問題を解く二人の速さは三人の倍だ それくらい真剣に取り組むと同時に
不思議と問題を理解できていた
「この問題比較的簡単だよ きっと江端さんも手心加えてくれてるんだよ」
「そうねでも 前の私たちなら危なかった自分でも不思議なほどに問題が解ける 」
江端の手心も確かにあるのだろう だがもっと大きな要因がある
それは彼等の教えが生きた事だ 二乃が言う通り以前の彼女達なら問題を見ただけで投げ出し
解く事はしないだろう でもそれを解けるようにした人物は確かにこの家に来ていた
っと軽く舌打ちする 自分が思っていたよりも彼等の影響は大きかった
「悔しいけど、全部あいつらのおかげだわ」
どれだけ 彼等がここで真剣に取り組み彼女達も彼等を必要としているか
もう答えは出ている 彼等はただの部外者ではない 赤の他人とはもう呼べない
故に信じられない 彼等がここで投げ出した事が『大丈夫だ』と彼は言った
その言葉は嘘だったのか? それを確かめる為にも今は少しでも多く解かなければ
彼女達の快進撃は続く…… と 思われていた
「あと一問…… あと一問なのに……」
「うぐぐ 私も あと最後だけです」
「ホホホ その程度も 解けないようであれば特別授業に変更いたしますよ」
『『-----つっ!!』』
ここに来て 全員が同じく最後の問題で躓いた
何処かで見たようなそれを頭をフルに使い 探し出すが一向に答えは出てこない
このまま時間を遣えば彼等と会う事も叶わず 更なる難問を出されるだろう
最悪の事態を避けるべく 五月は自分の信念を遂に捨て去る
「カンニングペーパー、見ませんか?」
「それって期末の?」
「はい 全員 筆入れに隠していたはずです」
「い いいのかな……」
それは彼等が彼女達に託した 最後の切り札と言い放った一枚の紙である
本来はこれを使わずにテストを受ける そして彼女達は使う事無く
期末を終えた 結局はそのまま筆入れにしまったままだと思い出した五月は
禁忌を使わざる負えないと言い放つ 一週間も上杉家にいた事で感化されたのだろう
最早 言動が 風太郎そのものだ
「有事です なりふり構ってられません」
「五月が上杉さんみたい!」
「あんたかわったわね」
全員も何とか承諾し 江端が動くタイミングを見計らう
「今だよ!」
視線を一度向かわせれば 彼は台所奥へと向かい 知らせを受けた五月は最初にそれを開く
だがそこに書かれていた事に彼女は更なる動揺を覚えた
「これ……どういうことでしょう……? 何というか…私のミスがあったみたいです」
「じゃあ 私のを使お……? えーっと 安?」
五月が渡されたペーパーは不備でもあったのだろうか 本人は途中まで見るとそれを置いてしまう
ならば 自分が渡された方を見るしかないと一花はペーパーを広げる
『安易に答えを得ようとは愚か者め』
『『…………』』
行動は彼にすら見透かされていた
彼等は元からカンニングさせる気などなかったのだ
しかし これでは答えに行きつけない 彼等自身と会う事も出来ないと考え込む一同
一花は良く見れば その紙には続きがあるとしる 最後まで広げれば
『→②』と書かれており 四人は二乃の方を向く
「私のかしら」
『カンニングする生徒になんて教えられるか→③」
「自分で言ったんじゃない」
「繋がってる……! これ上杉さん達の最後の手紙だよ」
ここで四葉は気づいた これを書いたであろう 二人からの最後のメッセージ
全部で五枚渡されたそれは繋がっていると
『信じてるぞ お前らなら掴み取れる 自信を持て。→④』
「この字……コータローのだよ」
『やっと地獄の激痛から解放されてせいせいするぜ。→⑤』
「あはは やっぱり辞めたかったんだ」
「私たちが相手だもん 当然と言えば当然だよね」
どれだけ彼等に迷惑をかけただろうか 勉強を教えに来た彼等に協力するまで
あっちこっちに引っ張り 足を引っかけたり引っ張ったりと 思い返すだけでも相当だ
寝る間も惜しみ期末の問題集まで作り上げている
ここまでやってくれただけでも彼等の忍耐力は凄まじいと言えるだろう
そして残る 紙は5に続く 五月が持つ物だけだ
『最高に楽しい地獄だった ありがとうな あばよみんな』
「幸太郎君……の字です 幸太郎君……会いたいです」
「私まだ 二人に教えてもらいたいよ」
「私だって コータロー無しじゃ…… 私まだコータローに全然お礼が出来てない」
全てが繋がった 1~5まで 激励と捉えれば良いのかただの愚痴なのか
それぞれ二人が書いたものだ 飴と鞭がまざっている 何ともあの二人らしい
先ほどまで勉強へと取り組むことで押さえていた感情が出て来たのか ポロポロと三玖の目から雫が落ちる
「そうは言っても あいつらここに来れないの どうしようもないわ」
「何か 探そう! 上杉さんとお兄さんに会う為に!」
「みんなに 私から提案があるんだけど……」
それぞれが思いをはせる中で一花は四人に提案があると
耳を近づけるよう言い こそこそと何かを四人に言う
『!!』全員の顔が驚きの表情へと変わる その選択は余りにも大きなリスクを伴う
だが それをやるだけのメリットは確かにあると一花は述べる 後は他の四人次第と答えを待つ
「うん ずっと前から考えてた」
「私は賛成です 一花に協力します 幸太郎君と上杉君に会う為に」
「私も五月と同じ コータローに会えるなら構わない」
「はいはーい 私も 上杉さんに会えるんだもん やりますよ!」
「はぁ いいわよ ここまで来たんだし のったわ」
「よし 決まったね全員の意見」
迷う何て考えはないのだろう 五月に続き三玖も同意し
四葉 そして二乃も嫌々ながらと言いつつもここまで自分達と関わり去って行くなど許さないと言った感じだ 全員の意見はまとまった 後はそれを実行するまで 覚悟を決めた一花は江端を呼ぶ
「おや、どうなされましたかな?」
「江端さん お願い 協力して」
「知らぬ間に 大きくなられましたな……」
江端が見た それは幼い頃の彼女達ではない もう立派に成長した姿が見えていた
にっこり微笑む彼 その表情は協力を拒むわけではない 聞き入れてくれるだろう彼女達の願いを
そして時は過ぎる 12月24日 クリスマスまで……