久々に風太郎君の回も出てきます
その日 上杉幸太郎は高熱を出し バイト先で倒れた
「あぁ……頭が 割れる」
「お兄ちゃん これはひどい 40℃近いよ」
「幸太郎 お前は今日は休め この状態で学校は無理だ」
「だ 大丈夫だ……お 俺は平気 !」
「ガキは寝てろ 風太郎 気をつけて行ってこい」
「勇也さんまで くっそ こんな時にスマホは使えないし どうなってんだ」
病院に搬送された後に彼は風邪と判断された
『俺は動けるーー』と言いだすもそのまま病院で三度倒れた後に彼は薬を処方されると家に帰される
朝方には父親である上杉勇也も帰宅し 動こうとする長男にサブミッションをかけると動きを封じ
『暫くは動くな』と父親として彼に言い渡す 納得は出来ないが父親の命であれば
彼も文句は言えない それに承諾すれば布団の方へと戻り らいはは急いで濡れタオルの替えを準備する
以前は兄に助けられた 今度は自分が彼を助ける番だとやる気も気合もMaxだ
その幸太郎本人だが 実は知り合いに用事を頼んでいたのだが、
期末の一件以来 自分が使うスマホがネットにも電話も繋がらないただのガラクタと化した事で
頭を悩ませていた 長い付き合いだ
彼の家を彼女は知っているただし風邪を移す可能性もあり下手に動けない というよりも父親と妹の防壁を突破する事は今の彼には無理だろう
余程疲れが溜まっていたのだろうか
一週間近くは安静にしているように医者から言い渡されている復帰するのは24日頃である
最後の頼みの綱は弟である風太郎だけだと彼はうつ伏せのまま弟に言い渡す
「知り合いの 須藤って子が来るはずだ 荷物を頼んでんだ受け取ってくれ」
「面倒だ」
「頼む……今の俺にはそれしか出来ない」
「わかった それにお前もあいつの隣は座りにくいだろうし」
「…………このまま会えばアイツに何をいわれ げっほげっほ」
「お兄ちゃん! しゃべらないで! フリーズ」
「さーせんした げっほ」
「じゃ 行ってくる 幸太郎 お前は絶対に動くなよ」
「りょ 了解です…………き きーつけてな」
「いってらっしゃーい!」
「行ってこい 風太郎!」
家族に見送られれば彼は家を出る
向かうは学校だ もうどこにも寄り道する必要はない 誰も必要もない
これから先彼等は今までと変わらぬ生活を送るそれだけだ
ただ戻っただけだ あの姉妹と出会う前に
学校へ向かう中 普段は隣にいるであろう兄が病欠とはいえここにはいない
いないならいないで急に静かになったなと思いながらも彼は登校する
きっと 嫌でも会うだろう でももう関係ない それが彼等兄弟が選らんだ答えだ
(解放されたんだ 素直に喜ぶべきだ)
何処か寂しさを覚えるが顔をはたき 弱音を消した
クラスまでつけば既に教師がおり彼は兄の事を教師へと伝えた
「上杉幸太郎ですが 風邪で暫く休みます」
「おお そうか お前も無理はするなよ」
男性教諭は話を聞けば名簿に『休み』と記載し
一度教室を後にした
風太郎は自分の席へと向かう中 後ろの方へ視線が向かう
空白の席 その隣に座る彼女 もう関係のない女性徒だ関わる必要はない
昼休みになった 生徒達はそれぞれ食堂や教室でお昼を食べる
そんな中 風太郎は普段と変わらず 『焼肉定食 焼肉抜き』を頼み
何時もの指定席へと向かう
『勉強しましょう!』
『風太郎 先に図書室行ってっから 遅れんなよ? 五月もいい加減きてくれよな』
ふいに何時も見ていた光景が過ぎる
もう関係ない事だ 自分で辞めた 兄と何度も話し合って出した結論
間違っている筈もない 頭を冷やせ 冷静になるんだとブツブツ呟きながら席へと座る
食べながら勉強と最近ではそれも出来ていなかった
あの姉妹と出会ってから ここまで自由な時間あっただろうか?
嫌そんな物はないと彼は今の状況を+に捉える
自分自身の勉強に集中出来るんだ 何の問題があるんだ
「おっ………この問題 四葉なら…………って 何言ってんだ俺は 自分の勉強に集中しろ」
もくもくと箸を勧めながら彼は昼食を食べ 同時に勉強を続けた
この時間は自分の時間だ もう誰の為に使う事もない…………。
そして迎えた放課後
彼は教室で自分を呼ぶ声に気づいた
ふと出入口を見れば見知らぬ女性徒が自分の名前を呼んでいた
一体何用だと 頭を傾げるが彼はその女性徒の元へと向かう
「あのー 上杉風太郎さんで間違いないですよね?」
「俺がそうだけど あの誰」
「私 須藤真弓って言います 幸太郎先輩の後輩です」
「忘れてた あいつから頼まれていたんだ」
「あはは 何か聞いていた通りの方ですね 風太郎さんは」
「まぁ うんそうだな それであいつに頼まれた用事って」
「はい 先輩が倒れてしまって 渡す暇なかったんですが これをどうぞ」
風太郎を呼んでいたのは 須藤真弓 風太郎と同い年で幸太郎の一個下
彼は気づいていないだろうが小学校も同じだったりするのだが、他人に興味を示さない
風太郎だ 彼女の事など気にも留めた事はないだろう 今回が初対面と思っている
その真弓本人から幸太郎から頼まれた品として彼が預かったのが一枚のディスクだ
『DVDです!』と真弓は風太郎に教える
これを渡された所で家で見る方法なんてないと彼も知っている筈だろう
何故わざわざ後輩にこんな事を依頼したのだろうかと風太郎は疑問でしかない
「実はその中身 中野一花さんが出てるドラマをダビングしたものなんです」
「えっ…あいつ」
「事情は私なりに察しています 先輩が『自分で応援すると決めた以上は続ける』とおっしゃっていたので そのお手伝いをしようかと 自分にはこれくらいしか出来ないとあの人は言っていたので」
「幸太郎が言いそうな事だ………じゃ これは預かっておく」
「先輩にお伝えください ご自愛くださいと では私はこれで失礼します」
「礼儀の出来た奴だな 本当に幸太郎の後輩なのか?」
ディスクを渡された風太郎は自分の席へと戻るとそれをぼーっと眺める
自分達で出来る事はない 彼女達に勉強以外でも支えになれるような人物が必要だと
何の成果もあげれないようではあそこに居る必要ないとそう考えた
『真剣に向き合っているんだね きっと君はもう 必要とされる人になれたよ』
あの少女 【零奈】と名乗った彼女の言葉が頭を過ぎる
(必要とされる それに自分を認められるようになったらか…………)
その日 風太郎の頭にはその言葉をずっと考えていた
何が本当に正しくて 自分達はこのままで良いのだろうかと…………。
一方その頃 家で安静にしてるよう言い渡された上杉幸太郎は期末が終わった直後
風太郎と共に帰宅する中で自分にかかってきた電話の内容を思い出していた
きっとそこに理由があるのだろうと
『どうも 今までお疲れ様 上杉幸太郎君』
『なんだよ 風太郎が言ってたろ? 俺達は辞めるって』
『君の方からは直接聞いてはいないからね それは本位と受け取って構わないんだね』
『そうだ 俺なんかより 早く あいつらにいい家庭教師を見つけてやれ それと』
『何かね ?』
『五月と三玖に言っておいてくれ もう俺は大丈夫って 』
「…………」
『去年とは違う 俺はもう人と話せる 逃げたりはしないさ あいつ等のお陰だ』
『そうか わかった 君がそう言うのであれば 二人には話しておこう』
『そう言う事です なら俺はこれで 後は頼みましたよ 中野先生』
彼も自らそれを伝えた 自分ではもう彼女達と居ても何の成果もあげられない
家庭教師としては必要最低限の結果も出せないと 電話の向こうでは彼がどう考えているのかも分からない
けどかけて来たのは他でもない 中野の父親だ
なら言いたい事を言うのはこのタイミングだ
『自分はもう十分救われた』 あの事故で幸太郎が失ったのは一年という時間だけではない
友人 信頼 信用 人望 それら全てを失った そしてそれが理由だろう
彼は人を信用出来なくなっていた 中野六花との出会いで幾ばくかは心にもゆとりは出来ただろう
それでも根本は変わっていない 家やバイト先では何食わぬ顔で過ごすが
五月達と再会するまでは学園では風太郎や真弓とも話す事はなく 常に一人を心掛け
近づく人間には威嚇する 本当に不良少年そのものを演じて来た
失望させるくらいなら 自分から他人と関わらず生きていけば良いとそれがあの頃の彼の考えだ
でもその考えは変わってきた 中野の姉妹の家庭教師を言い渡された弟とそれの補佐を命じられた事で
彼女達の前では変わらぬ対応で、学園では見せない顔を作っていた
そのつもりだった けど彼は気づいた 『俺は笑えてる』 二度と友人も作らない
学校では何にも干渉せず 傍観に徹すると決めた自分が 心の底から
彼女達の毎日を守ろうと思い始めていた
三玖や一花に二乃や四葉に五月 彼女達にはそれぞれ自分の過去に関わる事を暴露していた
それが出来てしまうくらいには 彼女達が大切だったと
だからこそだ 『自分を許してもいいのでは』と六花に言われた事で彼は自覚した
『このままではいけない』 あの子達の幸せを願うのなら 離れるべきだと
零奈との約束をたがえる事にはなってしまうも
あの子達を喧嘩させてまで守る約束をあの人はさせない 『ごめんなさい』と彼は彼女に頭を下げた
家庭教師をやめ 彼も補佐を辞退した きっとあの人の事だ優秀な人材を見つけ出し
今度こそ何のわだかまりもないまま 彼女達を卒業まで導いてくれる彼はそう願っている
その翌日だ 幸太郎は今までの緊張の糸が解けたのか
バイト先のケーキ屋で高熱を出し 同じく働いている真弓が急いで救急車を呼んだ
シフトに入っていなかった 風太郎は彼を向かいに病院まで出向き
無理をしようとする彼に 家で休むよう言い聞かせた
実はその時に真弓にある頼みをしており
彼女はそれを承諾 何事もなければ彼は それを真弓から受け取っていたはずだったのだが
まさか再び倒れるとは本人が一番に驚きを隠せずにいる
「はぁ…………せめて 一花の活躍は見てやらねぇとな………ごほっ」
ファン第一号と自ら名乗りを上げたのだ
補佐はやめようが 彼女の夢を彼は応援し続ける事はやめるつもりは無い
そして四葉の陸上部の大会だ 応援に行く気でいたがこの調子では見に行く事できないだろう
熱も引かず 体力も回復の兆しはない
あと数週間は家での静養が必要と言い渡されている
この大事な時に本当に運がないと自分で自分が嫌になって来ていた
「…………自分から去った くせによ 女々しぃな…………」
真っ赤な顔でぼーっと天井を眺める
こうしてゆっくりしていれば何時かは動けるだろう
それまで寝ていよう あいつらにも家族にも迷惑はかけたくない
彼は瞳を閉じれば 死んだようにそのまま意識を手放す
その後風太郎は帰宅
眠るからに『帰ったぞ』と声かけ 真弓から渡された あれを彼の机の上におくと
風太郎は勉強の準備にはいる
「さて 勉強だ…………」
何処か心ここにあらずと言った感じの風太郎はノートを眺めると指を動かし
勉強に意識を集中させる
今は自分に…………自分がしたい事をやりたいだけやろう 時間はたっぷりあるのだから
そして時は過ぎる 12月24日 クリスマスまで……