「上杉さん ご心配なく私は勉強してますから!」
自信満々に言うが四葉…。
お絵描きの時間は今じゃねぇよ
「と言うか 上杉さんは二人いんだぞ~」
「えっとなら 上杉さんと上杉お兄さんで!」
「ОK それでも良いぞ 」
呼び方は大切だ
上杉さんと呼ばれたら俺か風太郎が反応して面倒だ
今日も中野と呼んで数人が反応する場面を俺は見ているしな
やる気はあれど一向に進まない四葉
やる気と言うより 興味本位でこの場にいる一花
勉強中などお構いなく予定を決める二乃や
こっちに全く反応しない三玖
五月に至っては部屋からまだ出てこない
これは望み薄かな…
想像以上に厄介だ
(お前何で そんな冷静なんだ)
(考えて見ろ 家庭教師が必要って言うんだぞ それが5人も勉強が出来るなら呼ばねーだろ)
(だからって 無法地帯過ぎるぞ この状況は)
上杉家のアイコンタクト
俺以上に現実の直視を避ける風太郎は、「どうしようもねぇ」とぼやいている
呆れてるこいつには悪いけど今は少しでもやる気のある四葉に勉強を教えるべきだろう
せっかく志願してくれているのだ
ここは一人一人教えていかないと後手に回るだけだ
(お前は四葉に教えてやれ やる気があるだけましだろ。)
(だけど この中で無理だろ どうしろと!)
行動する時は思いもがけない方法を取れるくせに
いざ開始となると動けないと額を押さえる風太郎
お前がそんなんでこの先どうすんだ。
俺も出来る限りサポートすると彼に言うが
思考回路はショート寸前のように見える…。
困り果てる俺たちにニヤリと近づく影が一つ
この中で 今現在要注意人物と俺の中で警報がなる人物
中野二乃がお盆に乗せられた水をこちらに手渡す
「食べてくれたら 勉強してもいいよ!」
わざとらしく目を輝かせ風太郎の顔を覗き込む二乃
自分の作ったクッキーを食べてくれる彼に『嬉しいなぁー』と言っているのだが
感情がこもってねぇ…。
でも出された物を食わねぇわけにも行かない
俺も一応頂くか、『毒は』ないと言うんだ流石に入れないだろう
あむ…。
「君も食べなよ」
折角出されたんだ俺も食うか
数個手に取り、口に入れた
「食えるな…。」
「食べてくれたぁ でもぉ…………
ぶっちゃけ家庭教師何て いらないんだよねぇ…。 なーーんてね」
『『!!』』
今の洒落にならないな
先程と違いどす黒い感情が入った言葉が俺たちの心にぐさりと突き刺さっている
当然の反応だろうな 俺たちは部外者だ それが急に押しかけて勉強しろと言ってくるんだ
多少なりと彼女の言葉に含みがあるのは仕方ないだろうな…。
俺の本能が言う 『飲むな』と…。
出されたコップをそっと机に置き
二乃の方を向く
彼女の一声で 一花達もこちらに視線を送っている
(嫌な…予感…悪寒がしやがる……)
「ごくごく ふぅ …(五人を卒業させるしか俺たちには道が無い)…………」
あっ 飲んでる人間がいる
神妙な面持ちでコップを持っていた、弟はゴクゴクと豪快に水を飲みだしあっという間、グラスは空に……
「バイバーイ」
「あぁ?………… あれ」
バタン…
風太郎はその場で顔を突っ伏していた
彼が倒れたと同時に二乃はこっちをぎろりと睨む
あぁ…これは終わったな
今日は退散するべきだな
「上杉さんー えぇ 二乃何を飲ませたの!?」
「何も ってか何であんたは飲まないわけ?」
「危機回避能力だけは高いからな」
「っ 余計な手間がかかる」
こえーよ
やっぱり猫かぶり女子だったか中野の次女は
この子に勉強させるのは相当苦労するだろうな。
考える暇もないのかそっと先程のコップを再び手渡してきた
「いや 飲まねーよ」
「飲めよ 飲みなさいよ」
「二乃 少し静かに」
「三玖は黙って 何かこいつは気に入らないのよね 俺は分かってます 見たいな顔しちゃってさ」
「二乃 それは言い過ぎじゃ」
「別に良いよ 何を言われても 嫌う勉強を俺らは教えに来てんだからよぉ これくらいは覚悟してる」
「言うじゃん!」
…っかあの可愛かった 中野二乃が、変わり過ぎだろう…。
俺が知ってるこいつらはもう少し天使のような感じだったんだがな
ふと過ぎる幼少期の記憶 今の二乃と昔の二乃を照らし合わせるが
脳内ではエラーと表示されてる
「何見てんのよ? キモ」
「言いたいだけ言えよ はぁ」
全く 勇也さんも厄介な所から仕事もらって来たなぁ
けど幾ら言われても俺らは引かねぇ 家の将来が掛かってんだ
それに一度受けた事は投げ出したくねぇしな………。
ボト…
「あっ…」
「何してんのよ 水がこぼれたじゃない!」
「今のは俺が悪かった わりぃ」
三度渡されたコップだったが、不意に起きた事なのか
左手に力が入らずそのまま落下してしまい
カーペットの上を濡らしている……。
手近に何かないかと探すと 四葉がタオルをこっちに手渡す
「四葉 ありがとな」
「いえいえ これくらい余裕ですよ」
四葉は何て良い奴なんだ
こいつが居るだけで賑やかになるな。
「何してるんですか?」
「おう 五月かうるさくして悪かった」
「うるさいのはアンタだけでしょ」
「お前もな 良いから手を動かせ」
「零したのアンタでしょ」
「だから 謝っただろ……。」
入ってから頑なに部屋から出ようとしなかった
五月だったが、騒ぐ声が聞こえたようで部屋から出て来た
床を拭く 二名を疑り深く見ている
五月からの信頼は、もう無さそうだな。
「濡れてるところはなしか」
「たく アンタがちゃんと受け取らないから」
いい加減それを言うな
何べん謝れば気が済むんだ中野次女は……。
「はぁ…今日は帰る 風太郎は寝てるし これじゃ教える所じゃねぇからな」
「二度とくんなー」
「うっせ また来るよ よっと」
久々に背負ったがこいつも随分と重くなったもんだな
風太郎を何度か起こそうとしたが、二乃が飲ませた薬が余程効いたのか
今日の出来事がそうとう応えたのか全然起きる気配もなく
仕方なく背負っている
「お兄さん大丈夫ですか!」
「弟を置いて帰れるか それにバイトしてるからなこれくらいは余裕だよ んじゃまたな中野姉妹」
「コウタロウくん気をつけてね」
「コウタロウ…………」
「どうした 三玖」
「夜の道は危険 車には気を付けて 絶対に」
「うん ありがとな きーつけるわ 五月もまたな」
二乃の『かえれーコール』は未だに聞こえるが無視だ無視
夜道は危険だと言ってくれるこいつの忠告はありがたく受け取る事にしよう
俺は三玖達に挨拶を済ませるとそのまま部屋を出ていった
今回の収穫は、あれだ 四女は良い奴ってか…
はぁ 進捗は無さそうだな
「ねぇ 五月ちゃんはいいの? 彼帰っちゃうよ」
「うぅ…………」
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「30階だしな エレベーターも少しは時間かかるよな………」
「上杉君!」
「おっ びっくりした 何か忘れものでもあったか?」
エレベーター待ちをしている俺の背後に気配を感じ
咄嗟さに横に避ければ 五月の姿があり
何故かもじもじとしている………。
「あの 上杉君 私送ります」
「大丈夫だ ここに来たのは俺らだし 俺らだけで帰る」
「夜道は危険ですから」
「まぁ…それはな でも男だぜ 負けねぇよ」
「お願いします 送らせてください」
「良いのか……俺はお前に嘘ついたんだぞ?」
「それは…………」
「どうした 急に声が小さくなったぞ」
「もう 送るったら送るんです 良いですか!」
「分かった…………でも静かにな 今こいつが起きると面倒だ」
しーっと指を口元まで持って行き静かにするよう言うと
彼女もこくりと頷く
今起きると絶対に二乃と喧嘩になる
それにあまり遅い時間に帰ると風太郎も勉強する暇もなくて
明日辺り憂鬱になってそうだからな。
「では私はタクシーを手配します」
「押しかけておいて悪いな 借りは返す」
「このまま上杉君達を徒歩で帰らせるわけには行きませんから タクシー代も私が出します」
本当に律儀だな
タクシー代に関しては断った所で返せる余裕ないし素直に五月の厚意甘えるとする
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「すいません ここまでお願いします」
「ほれー 風太郎くんやー 入れー 」
下に行けば既にタクシーが到着していた
さっき呼んだと思ったが五月の事だ事前に呼んでいてくれたのだろうな
後ろの席に風太郎を寝かせ 俺もそのまま後ろに乗り
五月は前の席へと座り 俺が持っていた手帳にかかれた住所を説明してくれている
「タクシーとか何時ぶりだよ 随分のってねーよ」
「普段どうしてるんですか?」
「自転車か全速力だ 一応バイクの免許も持ってるぞ」
「疲れないんですか」
「さっきも話してたけど 普段からバイトしてるから体力には自信あっからな」
「バイトですか…無理はしてないんですよね」
「無理ねぇ…どうだろ 俺は自分で出来る範囲まで動くからな 」
「気を付けてください 何かあったら ご家族が心配なさるのですから」
「心配だけはかけない もうかけたくないからな……。」
「…………上杉君 私」
「良いよ 五月 無理にやろうとか思わなくて 」
そんな泣きそうな面させてまで俺は無理をさせるつもりはねぇ
五月の心の整理がついてからで構わない……。
一言言うと彼女は黙り
同じくして俺も黙ったままタクシーに揺られて行く
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「おーーい 風太郎 起きろ 起きろって言ってんだろ!」
「はっ! ここは何処だ あいつは、二乃は! 」
「4800円になります」
「カードでお願いします」
「本当に悪いな 五月」
「送ると言ったのは私ですから 上杉君は気にしなくて良いんです」
目を覚まし辺りを確認する風太郎は自分の状況を理解してないようで
俺の声も届いていない
口に涎まで良いから拭いてくれ………。
「五月! どういう事だよ」
「一泡吹かされたと言う訳です これに懲りたら諦める事です」
「それは出来ない」
「送ってもらって何だが 無理だな………。」
「上杉君まで 何でそこまで」
五月には悪いとは思ってる
帰りのタクシー代まで出してもらったんだここは引くのが正しいだろう
けど俺と風太郎は引く訳には行かない
このチャンスは一世一代の大博打なんだ。
「わーーー やっぱり お兄ちゃん達だーー」
「おー らいは帰ったぞー」
「お帰りなさい ご飯出来て わーーー」
「ぐはぁ」
「風太郎ー!」
「幸太郎お兄ちゃん この人ってもしかして生徒さん!」
「ちげーよ ほらいくぞ」
「うそだー あのもし良かったら家ご飯食べていきませんか!!」
「俺は良いと思うけどな 世話になったし」
「幸太郎まで何を言いだすんだ!」
「嫌ですか…シクシク」
ズキューンと言う音が俺にも聞こえた
らいはの上目遣いに合わせ涙目という洒落にならねぇ程の破壊力を秘めた兵器
流石に五月も効いたようだ
その場で軽く悶絶した後は流れるように
タクシーを返し 五月も共に上杉家のアパートに向かう事になった