~ケーキ屋、Revival~
「完 全 復 活」
「先輩ー! 良かったです」
「まぁ 幸太郎もあれだけ休めば戻るだろう」
40℃近い高熱を出し 近くの診療所に運ばれ
家に送り届けられるという 12月の初めから酷い日々を送った俺だが 24日は体力も戻り
熱も34℃代まで下がっている
ただ…。復活を果たした頃には時すでに遅く
終業式も何かも参加する事無く 今年も終わりが見えて来た
(去年よりはましかもな…)
ここ数週間 寝てばかりでまともに動けず らいはにお世話されてばかりと
兄としての面目が丸つぶれ…。 無理のし過ぎと
彼女の言葉を思い出すだけで泣けてきた
体調管理は万全のつもりで働いて来てが、体にかかる負担は予想以上
叱られ 怒られ 心配させる の三拍子だ まったく家族に心配をかけるなと何度誓って破れば気が済むのか…。 本当に妹の優しが身に染みる
ついでに弟にも感謝だ
サンタクロースのコスで隣に立つ 弟はここ暫くは俺の用事に付き合ってくれていた
学校での様子も随時報告も受け『まぁ うん』と全く参考にならんことしか言わないけどな
同じく 後輩の真弓ちゃんもこの季節にわざわざミニスカサンタのコスをさせられている
店長 もう少しまともな衣装はなかったのだろうか…………。
「似合いますかね」
「うん 流石は真弓ちゃんだ うちに欲しい程だ」
「兄は変態だったか」
「うるせー 可愛い後輩は愛でろと言うだろ それに彼女にも世話になったしな」
「私は自分で出来る範囲で先輩のお手伝いしただけですから お気になさらず」
「凄く素直な子だよな」
「兄は暑苦しいぞ」
「うわぁ…………」
「良い人なんですけど どうも感情的な兄で」
元から俺と真弓ちゃんはここでバイトをしていたが
急に働いていた人が二人もやめてしまい 店長に『上杉君の知り合いで誰かいないかな?』と聞かれた。
そこで白羽の矢立ったのが弟の風太郎だ、
ちょうど新しいバイト先も探していたのでタイミングはバッチリ
そういう経歴もあり
先月からここで働いている 紹介した時は『身内がいるのか…気にしなければいいか』と
何とも失礼な奴だが こいつらしいと安心感もあった
ただ シフトが、かみ合わず 俺と真弓ちゃんとは中々働く機会もなかった
彼からしたらその方が良いだろうとは思うけど
回復した今日 やっと風太郎の働く姿を拝めた『お前の方が珍しい』と一言言われた
以前は 一花と五月に目撃され焦ったからな
けど働いている姿を見られても気にしない事にした 考えるだけ無駄だと
それに…あいつらとはもう学校以外で会うことは無いだろうしな
「先輩 これ今週の話数です 出番は少ないと思いますが映ってました」
「サンキュー このお礼はちゃんと返す」
「いえいえ これくらい」
「そうだぞ ありがたく受け取れ」
「お前は 出費が嫌なだけだろう」
「違う…」
「図星か」
一花が出ているドラマ それを真弓ちゃんに頼みディスクに落とし込んでもらっている
家にはDVDを再生する機器はないが、あいつが出ているものだ
ちゃんと保存して何時でも観れるようにしておきたい…。
『ファン一号』と堂々と宣言したんだ それに恥じないファン活動をしないとな
因みに一花の女優云々の事を俺は、話してはいない 彼女は偶然にも一花が出ているドラマを見たらしく
友人である三玖に本人かどうかそれとなく聞いてみた所『あれは一花だよ ファン二号は私』
との事 それ以降からだろう彼女もすっかりファンになったと話
「なぁ…真弓ちゃん 三玖はどうしてる?」
「うーん 三玖さんは変わらずですよ 期末以降から勉強も以前よりやってるようです
私も相談を受けます」
「そうか それで 一応お前にも聞こう」
「勉強は楽しいぞ それだけだ」
「ですよねー」
風太郎なりに気にはするが、そこまで観察するような事もしないだろうな
五月は俺の隣 三玖は真弓ちゃん前 この二人から現在の二人の状況を聞いたが
特に異常はなく 変わらずだと教えられる
…もう一度言う風太郎のは全く参考にもならん
時間まで三人で会話をしていればドアが開かれ 男性が気合の入った顔で現れ
こちらにあいさつをくれた ここの店長さんだ
「さて みんな集まったね 上杉君も回復したし 無事に聖夜の夜を戦えそうだ
あの糞パン屋との差を広げる絶好の機会だ みんなよろしく頼むよ」
『『了解です!』』
店長の気合も高まる 何故かずっと向かいのパン屋を毛嫌いしており
売上戦争の真っ最中だ
特に今日はクリスマスという事もあり ケーキの予約や店舗での販売も多く
お店の中も人でごった返している
自然と俺達もやる気がわいてくる
俺がこの賑わいを見るのは2年ぶりだ 去年は事故のせいでバイトに来れず
クビになると思っていたんだが 店長の計らいで何とか席を残してくれていた
『上杉君 真面目だから 僕は見た目で判断はしないよ 糞パン屋に取られるよりいいし』
最後が絶対に本音だよ…。
「店長さん やる気ですね」
「パン屋の店長と何があったのやら」
「俺もここを受けた際にパン屋について聞かれたな 何なんだ?」
「はいはい 無駄話しない 上杉君と弟君は外でビラ配ってきて 須藤ちゃんは接客お願いね」
厨房近くで話していれば店長に見つかり俺達は持ち場へと向かう
「真弓ちゃん 何かあれば呼べよ?」
「大丈夫です もう変なお客さんに絡まれても大丈夫なように兄から護身術を学びました」
「後輩がどんどんパワフルになっていくな…」
「それより 先輩もビラ配り頑張ってください きっといい出会いがありますよ?」
「俺は出会いなんて求めてねぇけどな 営業スマイルで頑張りますよ」
真弓ちゃんはあれ以降 自分でも対処できるように兄である須藤に護身術を学んでおり
それなりに腕が立つ 実際に運動神経も兄があの男だ それは彼女にも引き継がれているのか
四葉程ではないにしろ 足が物凄く速い 俺と同じでバイトかけ持つ都合上体力も必要だ
本当に あの真弓ちゃんが立派になって…先輩は嬉しい限りだ
「幸太郎早くしてくれ 一人だと心細くて死ぬ」
「お前のメンタルはそこまで弱くねぇだろうが じゃ 真弓ちゃんホールは任せた」
プラカードを持ち 俺と風太郎は店の外へと向かう
雪もちらつく中での客引きだ 風邪がぶり返さないよう たまには自分の体も少しは労わるか
それにしても『いい出会い』 真弓ちゃんは占いでも嗜んでいるのだろうか?
最近の後輩への謎は尽きないな…
「ケーキ いかがですかー」
「どれも美味しく お値段もお得です クリスマスのこの夜にどうぞ お願いします!」
「お前 本当に バイトと学校での顔の使い分け凄いよな 一花の事言えないぞ」
「何を言うんだ おっと どうぞ チラシです 興味があれば見て行ってくださいね」
街中は人であふれる どの人もカップルやら家族やらで楽しそうだ
見ているだけでこっちも楽しい気分になれる
客引きをしていれば弟は俺の変わり身を見て驚いているが営業スマイルだ
それに学校でこんな姿見せる必要は全くないし お客様の前だから出来る顔と言うのもある
暫くは 店先の人にチラシを配り 店に呼び込む それの繰り返しでだいぶ賑わってきている
接客する真弓ちゃんがあっちこっちお盆を持って走り回っている
何とも頼もしい後輩だな…
「あの…」
「はい 何でしょうか 当店自慢のケーキです もしよろしければご確認していきますか
味見も可能ですよ?」
「ケーキを一ホールください…」
「!! あのここはケーキ屋です お客様」
「ですから 注文です」
「はい わかりました…風太郎 やばい客だ」
呼び止められ そのまま営業スマイルで変わらぬフレーズを言い
何とかお客様を引き留めようとしたが、その客は『ケーキ』の注文をしてくれとありがたい
本当にありがたいお言葉をいただいたが 客に問題があった…。
それは期末以来 会う事が無かった 中野五月だった
真弓ちゃん これがいい出会いって奴なのか…。
「真弓ちゃん 話したのか?」
「先輩 顔 顔が近いです」
「あっ すまん…んで」
「何の事ですか? 私は知りませんよ それより早く注文が来てるんですから」
「風太郎が行ったよ 俺は厨房に行くさ そろそろ店も回らないだろうしな」
「良いから 先輩行きましょうーー!」
「ちょ まってくれ! 真弓ちゃん 」
中野五月だけではない 中野姉妹全員がこの店にやってきた
店内へと案内すれば俺は後輩を厨房付近まで呼び 何故こうなったか理由を聞きだす
本人は知らぬ存ぜぬと目お合わせないが、この子の友人は中野姉妹だ
きっと三玖と五月に教えたのは彼女だろう
犯人も分かれば俺は厨房の手伝いに向かい 風太郎に彼女達の相手を任せるつもりだったが
首元を掴まれ 後輩にズルズルと引きずられていく
本当に俺達の周辺にはパワフルな女子が多いな
「では 先輩方お任せしますね 三玖さん 五月さんファイトですよ」
「真弓ちゃん! 真弓ちゃん!」
「お前はいい加減諦めろ」
「っ………… ではお客様 ご注文のケーキでございます」
「コータロー君 変わり身はや! 本当に君は変わらないね」
「真弓ありがとうね 今度お礼するね」
「須藤さんには感謝しないと行けいませんね」
やっぱり真弓ちゃんかチラッと見たが後輩は色紙を持っていた
それににこやかに手を振る一花はインクを持っているまさかサインで俺は売られたか?
「やっとケーキも来たし 遅いのよ」
「すみません 今日は繁盛してまして」
「私たち お客 あんたたちは店員」
「さっさと持って お帰りくださいませー」
「あーら できるじゃない」
「はぁ…………お前らは仲良いな」
皮肉合戦だ これを見れば何処か安心感すら覚えるな
本当にケーキを頼みに来ただけなのか?
疑問に思う俺を五月が呼び止める
「すみません」
「何でしょうか お客様?」
「ケーキの配達ってできますか? やっぱり家に届けて欲しいので」
「すみません 当店では配達はやっておらず」
残念ながらうちはそこまで手を回すようなケーキ屋ではない
ここで食べるか持って帰ってもらうかの二択だ
特例も偶にあるがこの雪だ バイクも出せないしな
「えー」
「落としちゃうかも」
「すぐそこなので」
「雪も降ってるし」
「いいでしょ?」
「お願いします」
「か弱い乙女に持たせるつもり?」
「店長ーーやばい客がいまーす!」
「クレーマーですよ 塩まきましょう!」
悪質な客過ぎる 元気な姿が見れただけで俺はもう満足なんだし
さっさと帰宅して姉妹で仲良くケーキを食べて欲しいもんだ
クレーマーは慣れてるが顔見知りはタチが悪いな…
「もう店も閉める こっちはもういいから最後に行ってあげなよ」
「ですよねー」
「はぁ!?」
「上杉君 弟君 メリークリスマス」
「このバイトも辞めようかな」
「諦めろ これは駄目だ」
店長は既に向こうの味方だ この店で信用出来るのは肉親の弟だけだろう
俺はさっさと白旗上げたけどな…。
「四葉 雪の上は危ないよー」
「お子様なんだから滑っても知らないわよ」
「…」
「…」
元気溢れる四葉を先頭に姉妹は雪道を進んで行く
そして俺達は無言で後方について進む
何を話して良いのか正直気持ちの整理はついてねぇ
あいつらも普段と変わらないし 何も言ってこない 文句の一つも覚悟はしてたんだけどな
それにしてもおかしいな この道は彼女達の家の方向とは全くの別だ
近道と言える程のもんでもない…。
「お客様ー 道が違いますよー」
「あってるよー」
「こっちこっち」
(わざとか)
(どうみても遠回りだしな)
「黙って辞めたことは悪かった だが もう俺たちは家庭教師には戻らねぇ」
「悪い 俺も同意見だ 反省してるし顔が見れただけで十分だ」
遠回しで連れまわされるが、彼女たちが陰湿な事をするわけはないだろうし、
何かしら遠回りしなければいけないと考えた方がいいのか……。
思い当たるとしたら俺たちに聞きにきた…そうとらえるのが自然だ
まぁ…確実に怒っているだろうな…。
でも何を話そうが、俺たちはもう戻れない…戻らない その意志は変わらない…。
「見てください この人が新しい家庭教師です 上杉君達にも見せておきたくて」
「……」
五月がふり返り 一枚の紙を手渡す それは今度から彼女達を指導する
家庭教師の男性の写真と詳しい経歴が書かれている 人の事は言えないが少々胡散臭い人物に見えるが
東京の大学を出て元教師 非の打ち所がない プロだ
唯一の難点があるとすれば 名前だろう 丸男って あの男と同じ名前なのは好かんけどな
「もう暫くはかかると思ったが あの人も約束守ってくれたか」
「意外と早かったな それに優秀そうな人だ この人ならお前達を赤点回避まで導いてくれるだろう」
風太郎も複雑そうだが、彼なら姉妹を任せても良いだろう 勉強できる人間と元教師とでは場数が違う
「いいの? このまま 次の人に任せて私たちを見捨てんの? あんたもまた…」
「俺達は二度のチャンスで結果を残せなかったんだ 次の試験だってうまくいくとは限らない
だったらプロに任せるのが正解だ」
「悪いな これ以上は俺達の身勝手に お前らを巻き込めねぇんだ 二乃ごめんな」
中間に期末 その間にあった小テストでも結果と言えば赤点ばかり
半年以上の期間を貰い選ら得たのそれだけだ それに姉妹の仲を俺達のせいで一度は危機的な状態まで追い込んでいる 身勝手が過ぎた 結局は自分の事ばかりだ
こいつら全員ときちんと向き合えて それで勉強を教えられるそんな人材が今は必要だ
出来ない奴らが、もうかき回す事なんてする必要はない…。
「そうね あんたたち ずっと身勝手で 上手くもいかない そのせいでしたくもない勉強させられて
必死に暗記して公式覚えて でも問題解けたら嬉しくなって…」
「…二乃… 俺たちは…。」
「ここまでこられたのは全部 あんたたち兄弟のせい 最後まで身勝手でいなさい謙虚なあんたたちなんて 気持ち悪いわ それに次はないって約束したでしょ !」
あの二乃が…俺達を一番に毛嫌いし 姉妹の為に怒った彼女がここまで言ってくれる
勉強なんてくだらない そうとまで捉えていた彼女が本当に心の底からの言葉を俺達は聞いた
それなのに…俺達は本当に身勝手だな…。
「幸太郎君は私に言いましたね 全員笑顔で勉強させてそして最高の卒業をさせたいと…あれは嘘だったんですか?」
忘れる訳がない それはあの日五月に言った言葉だ
彼女達と過ごしたお陰で 俺はもう一度人を信用できる しても良いんだと思えたんだ
必死に呼びかける五月に俺達が言える事は限られている 既に自分達で降りた身だ
今更過ぎる…。
「そんなわけあるかよ…でも俺達はもう辞めたんだ」
「お前らの家にさえ出入りを禁止されてる」
「それが理由?」
「ああ 早く行こうぜ」
「冷えて来たし 風邪引くぞ…行こう」
一花の問いかけに俺達そう答える
あの人からの言伝だ『二度と入る事は禁ずる』念を推された程だ
余程こっちが嫌いらしいな…。
「もういいよ…ケーキ配達ご苦労様」
「いやまだ…」
「ここだよ ここが私たちの新しい家」
風太郎からケーキを貰うと 一花はもう既に家の前までついたと話す
指さす場所には豪華な高層マンションもオートロックも警備員も配備されていない
ただの年季の入った 今にも崩れそうなアパートだ…。
そこはまるで かつて彼女達が住んでいた アパートを連想させる
ここを借りた 蓄えはあると話す あの家がダメなら新しく用意すればいい
そして あの男にも既に報告は済んでいるとまで言ってのける
俺も風太郎も開いた口が塞がらない
「今日から私たちは ここで暮す」
「お前ら…何を考えて」
「これで障害は無くなったね」
「嘘だろ…教わる たったそれだけの為に…あの家を手放したのか…?」
「頼む…やめてくれ 考えなおしてくれ 間違ってるぞ」
「いいえ 間違ってませんよ これで良いんです」
「言いましたよね 大切なのは どこにいるかではなく 五人でいることなんです
ってお兄さんは知りませんでしたね でもそれが私たちなんです!」
何もかも 頭が追い付かない 俺達に教わる それだけのために
彼女達は何の不自由もしない 生活を捨て去ったのだ あの男から一度距離を置き
自分たちの力で出来る範囲をやって見せると…………。
大切なのは どこにいるかではない 五人でいること
場所なんてどこでもいい 零奈さん そう言う事なんですね 俺はまだ彼女達を見守って良いと
共にいても良いと そう思って良いんですね
全てを言い終われば四葉は持っていた マンションのキーカードを川に投げる
覚悟を決めたつもりだったでも 本当に覚悟を決めたのは俺達兄弟ではない
彼女達姉妹の方だった…。
「本当にやりやがった !」
「っ! うわ!」
ツル
キーカードに意識を持っていかれ つい足元がおろそかになっていた
この時期は良く滑る あの人もそうだったな
滑って転んで 俺は会えたんだった…。
走馬灯だ このタイミングで六花さんの事を思い出すなんて
『必要とされていますよ 上杉さん』 本当にそうなんですね 俺の方が馬鹿でしたよ
どぼんっ!!
「コータロー! フータロー!」
「幸太郎君!」
「上杉さん!」
「お前ら 全員飛び込んでどうすんだ! さむーーー」
「そうだ 何でよりによって」
気づけば真冬の川に七人の男女が飛び込む
泳ぐには早過ぎる 全員来る必要もないだろうに とことんお人好しだよ
「たった 二回で諦めないで欲しい…今度こそ私たちはできる コータロー フータローとならできる… コータローは言ったよね 変われる 頑張れるきっかけは必ずあるって 一人でダメならみんなでって それが今そうでしょ?」
「!!」
必死に俺達に呼びかける三玖 そして俺はあの人の言葉を今一度考えた
『あなたが自分を許せない』『上杉さんが自分を認めればいいんです』
ずっと片隅にあるその言葉……俺は自分を許す つまりは彼女達から離れ
俺一人で生きる事が許す事だと思っていた 認める事だと思っていたでもそれは軽率だった
今なら 言えるかもしれない 俺の答えを…俺は
「二乃! くそ待ってろ 幸太郎は三玖と五月を頼んだぞ」
言い切ろうとする前に水の冷たさに体が思う様に動かないのか二乃が溺れかけており
風太郎は四葉達と共に二乃の元へ向かい 俺は三玖と五月の手を掴み陸まで目指す
「わかった 二人共俺の手を離すなよ!」
「もう絶対にあなたの手を離しません あなたが何を言おうと」
「そのつもり コータローが『大丈夫』って言っても私は聞かないよ 私が見てないとコータローはまた無茶をするから」
「……ならしばらくはこの怪我人の面倒でも見ててくれ ありがとな」
『うん』『はい』
もう二度と離すもんか…大切なこいつらの為に俺はもう一度彼女達の為に
やれる事をやる それが俺のやり方だ
陸まで上がれば風太郎は五人に呆れ『考え無しすぎる』とお説教だ
履歴書を破り捨てれば高らかに宣言する『俺達の身勝手に付き合ってもらう! 最後までな』
「ふぅ さむ」
「コータロー まだ風邪が治ったばかりなのに」
「なんで知ってんだ?」
「須藤さんから聞きました それに私は同じクラスですから把握済みですよ」
「このままだとま風邪をぶり返すね」
「一花にまた移したら面倒だ 行くぞお前ら せっかくのケーキだ台無しにはすんなよ」
「うん 大丈夫だよ」
「けど 良いのか 俺達がいるとケーキが五等分出来ないぞ?」
「良いんです 七等分でも」
「うん みんな公平だから」
「そういう事 さあー行こう コータロー君」
(六花さん……俺はもう大丈夫そうです きっとあなたの力を借りる事は暫くは無さそうです
今年のクリスマスは一人でもない 7人で過ごす 楽しくあり騒がしくあるそんな日だ
本当にありがとうございました また何処かで会いましょう六花さん…。)
あの日 俺は一人だった けど今は違う
愛想のない弟に 個性豊かな五人の姉妹 この暖かな気持ちを俺は受け入れよう
「風太郎 今度こそだ 」
「あぁ! もう負けてたまるか!頑張ろうぜ幸太郎」
決意も覚悟も間違えない 俺達は正しいと思えるこの道を行く
あんたには屈しない 中野先生
それに自分自身にも負けない……。
上杉兄弟と中野姉妹が再び一つになった時 別の場所で一台の車が走っていた
一人の男性 風太郎を診察し 幸太郎の病室に現れた男性 中野姉妹の父
「江端、今日は遅かったね」
「申し訳ございません、旦那様」
「構わないさ。……しかし、その恰好はいったい……」
「ほほほ、イメチェンでございます」
「そうか……まぁいい」
彼が乗る車それを運転しているのが 阿多辺丸男 事江端である
中野は追記する事はなく ただじっと前を見る 先ほど掛かって着た電話
彼はそれを聞き 彼女達の本心を聞く事となり 今置かれた状況も改めて再認識
「やってくれたね……上杉君。しかし……君のような男に娘はやれないよ」
静かなる怒りとでも言うのか彼は表情一つ変えない
この事態を招いた一人上杉風太郎の名前を口にし これからを考える
「それに 上杉幸太郎 また君はそうした事をするのか……君がいる限り
五月君も三玖君も解放されない……。 君にだけは誰も渡せない」