第六十話 不良少年と初の春と再会の兆し
年が明けた
あの真冬の川にダイブ事件
不思議な事に俺は風邪がぶり返す事はなく無事に新年を向かえる事が出来たのだ…。
真弓ちゃん曰く『先輩 バランスが崩れた事で体調を崩したんです 五つ子さんは偉大ですね』と
なんのこっちゃと思うが、俺が考えても分からんらしい
後輩の意見だ大切にしよう 自分のバランスが何かで保たれそれが崩れた一体何を示しているんだか…
さて辛気臭い顔はやめだ今は新年を満喫しよう
年が明けて最初に訪れたのが父方の祖父母 勇也さんの父親と母親
つまりはおじいちゃんとおばあちゃんの家に一度里帰りをしている
去年はこれず二人にも心配をかけたが俺の元気な顔が見れて二人も安心してくれた
本当に家族に心配ばかりで長男として恥ずかしくなってくる
そんな俺と対照的に 風太郎は寝っ転がりらいはと共にドラマを見ているが
ある場面で文句ばかり言いだしてる
それはお茶の間でのキスシーンだ
さぞ凍りつく場面だが元から冷めてる風太郎はたいした興味も示さない
らいはは年相応と言った感じで目をぱちくりさせ 俺や風太郎の意見を求める
「キスか……まぁらいはの彼氏とか俺は許さねぇけどな」
「同感だ」
「お兄ちゃん達 怖いんだけど」
可愛い妹を誰にやる物か 俺は確かに恋や愛には寛容だ
だが例外もある 目に入れても痛くないこの純真無垢な妹が彼氏でも連れて来てみろ
俺は嫌われる覚悟でその男子生徒を血祭にあげるだろう
最終的に生き残れば 考えてやってもいいがやわな男がらいはを守れるものか
俺より強い 男を連れてこい せめて最弱風太郎を倒せるレベルは必要だ
「軽く ディするのやめろ」
「あっ 聞こえてた」
「幸太郎 風太郎 らいはちゃん 明けましておめでとう ほれ お年玉」
『『わーーーい』』
祖父が現れれば今年のお年玉として 封筒を手渡す
「ありがとうー」
勿論らいはにだ 隣で落ち込む弟は『去年まで貰えたのに』とショックを受けている
「いい歳だ 挨拶で十分だろう」
「うるさい はぁ親父 挨拶も終わったしもう帰ろうぜ 新年の初勉強がしたい」
現金なやつだな 俺よりもお金にがめついよな まぁ逞しいと捉える事が出来るが
新年くらいは勉強から離れてまったりしたらいいんだろうに
「バイトしてぇー」
「お前は バイトを少しは休め」
「って もう一か所ご挨拶に行かなきゃいけないとこあるでしょ?」
「もう一か所って」
「あぁー そうだな」
残された場所とは一つしかない
早速向かわねばと嫌がる風太郎を引きずり その場所へと向かう
「やっぱ 神様には挨拶しておかないとね」
「なんだ……」
「チッ 末吉か」
そうそれは神社へのご挨拶である
今年一年の幸運と安全祈願を神様にお願いする割と重要な事である
神頼みでも効果あるし 案外馬鹿に出来んからな
隣の弟はどこに行くと思ったんだ?
勇也さんがおみくじを買えば末吉らしく 愚痴をもらす
らいは嬉しそうに大吉を見せてくる
風太郎はと言えば 凶と年明けから飛ばしてるなこいつも
俺も今年の運をおみくじに聞いてみようと一回だけ試しに引いてみた
「えっと 何々…………はっ?」
「うわ お兄ちゃん 大凶だ」
「お前こそ飛ばしてるな 幸太郎」
「うるせー これは別に良いんだよ」
俺も大概だまじで大凶なんて代物が実在していたとは
確か神社によってあったりなかったりとかなりレアな物らしく
あいつ曰く『幸太郎はそのうち 引くだろうさ 私も同じ物を引けば相殺されるよ』
そんな効果はない
それで問題の中身だ 俺は中を見れば自分の目を疑った
『恋愛運 今年は最悪で最高の一年です 予期せぬ再会があなたにあるでしょう
それはある意味あなたの今後を左右するものです
名前の最後がか行の人物には気をつけましょう その人物があなたの運命の人物かも』
「アバウトか! 朝の占いじゃねーんだぞ
意味分かんねー 何がか行だ! んな人間周りにいっぱいるわ!」
全く納得がいかない結果に俺は珍しく怒りを表す
今年の運命を左右する出会いとは何だろうと気になるが他の文面が朝方の占い並みに
簡略的だ良くこんな内容が採用されたもんだよ
「お兄ちゃん 落ち着いて それにしても変な内容だね か行なんて」
「はぁ…………兄は泣けて来たぞ」
今年の俺の運命はその名前の最後がか行の人物に託された
のっけからぶっとばしてるな神様もよ
「うわ…お前ら…何でここに」
「わー! 皆さん きれいー!」
俺がおみくじとのにらみ合いを続けていた時
後ろで風太郎とらいはの声が聞こえる
振り向けばそこには綺麗に着飾った 五つ子の姿があった
新年早々出くわした事に風太郎は面倒事の始まりだと言わんばかりの第一声だ
「よう お前ら 流石だなすげー綺麗だ 新年から良いもん見れた
あけましておめでとうございます」
「あの ありがとうございます 幸太郎君 えっと新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」
「コータロー 明けましておめでとう 今年一年もよろしくお願いします。見てもらえて良かった」
「コータロー君 あけおめー 今年もよろしくね! ちゃんと褒めるあたり流石だね」
「俺は自分の思った事を言ったまでだ 綺麗なもんを綺麗って変か?お前らは美人なんだし 着飾れば目が行くのは当たり前だ」
「いやー 本当に コータローくんは良く すらすら言えるね そんな言葉…。すごく恥ずかしいんだけど…」
新年最初の中野姉妹は何時もと変わらぬ元気な姿だ
振袖と良いまさに花束である
おみくじでの大凶なんて大してあてにはならんのかも知れんな
ぶーたれる弟は『なんで新年になってまで』と嫌味全開 今年も平常運転である
初詣が終わればそのままアパートまで戻ると口にする四葉は風太郎とらいはを是非
家まで連れて行きたいと申しておる
「おう 連れてけ連れてけ」
「お前は何故 他人事のように言えるんだ」
「楽しんで来いよ って何だ 五月?」
「幸太郎君 勿論来ますよね」
「コータローも強制参加だから」
「ほらほらいくよー」
「へいへい まぁあ別にいいか…」
ご挨拶は済ませたけど 家にお邪魔になるのも悪くねぇかもな
今日は特に予定もない と言うよりもスマホが使えん今連絡もままならん
「ん…コータロー君 何か落としてる おみくじ?」
「勝手に見たらだめですよ」
「そう言いながら 五月が一番 気にしてる」
「少しだけ見て見よう 何々…………今年の恋愛運は最悪で最高です
予期せぬ再会があるでしょう 名前の最後がか行の人間には注意 その人物があなたの…」
「一花 三玖 私… か行ですね」
「って 何真剣に見てるんだろうね コータロー君に返してくるね」
後方で何やら騒がしい声が聞こえてくるが、何を手間取っているのやら
ちゃんと前を見て歩け 転んだらあぶねーだろう
あの日訪れたアパートまで8人でまったりと向かい
道中は何事もなく到着 噂だけは知っており実際に来るのは初めてとわくわくしてる妹には悪いけど
今の住居はあまり夢があるものではない 結構な現実的なお宅である
『おじゃましまーす』 一応挨拶と今日は正月だ 礼儀正しくを心掛けよう
家まで案内されれば彼女達は即座に着替えを始め 普段通りに私服に着替え
炬燵という人間をダメにする魔窟へと入って行く
あの時は気にはしなかったけど 内装自体は普通のアパートと変わらんし
衣服や勉強道具以外はやはり向うの家に置いて来たんだろうな
改めて こいつらの覚悟を見せてもらった
その覚悟を見せた5人のうち三人は録画した恋愛ドラマに釘付けだ
風太郎が冷めた目で見ていたドラマだろうな
『ロマンティックだわー』と述べる二乃だが確かにとてもロマンティックである
実際はこんな状況なるかと考えれば難しいもんだろうな
「僕は君が好きです かぁ…………」
「ひゃ! 幸太郎君 今なんと言いました」
「えっ 俳優の台詞をオウム返ししただけだが?」
「心臓が止まるかと思いました」
「悪かったなーー こんな奴が言いだして」
「違います そう卑屈にならないでください」
「ふふふ 恋愛ロマンチストですからね お兄さんは」
「まだ その称号を俺は持っていたのか」
恋愛ロマンチストとは林間学校前日の日に四葉から命名され進呈された
俺の称号だ こっぱずかしいもんだけど実害は無いしな
人前で言わないなら別に言われてても気にはしない
「お兄さんは何かとそう言った事に敏感なので これはもう不動ですよ」
「へいへい」
「つうか 何の為に呼んだんだ らいは 幸太郎 帰るぞ」
「風太郎も少しはゆっくりしてろ せっかく御呼ばれしたんだし」
「本当にお前の適応力はえーよな」
「まぁまぁ 彼の言うとり さぁ、お正月くらいゆっくり過ごそう」
「おせちも作ったけど コータロー食べる?」
台所の奥からお重箱を持った三玖がやってくる
ここに来てから顔を見なかったが、おせちを用意していたようだ
見栄えで言えば、前回よりも数段に上がっている
「おっ うまそうだな 三玖が作ったのか?」
「うん 頑張ってみた」
「あれから頑張ってんだな その姿勢は大事だ」
「そうだよ コータロー君 ねぇー三玖」
「それに これはコータロー用だから」
「おっ そうか うん ありがとな三玖」
三玖の料理は見栄えは進化しても味はまだまだだろう
けど人に作ってあげる熱意と愛情は何にも負けない調味料である
有難く俺はいただくとする
「あれ?どうしたの?らいはちゃん」
「え…………えーっと…私、勘違いしてたみたい。中野さんのお宅はお金持ちって聞いてたから…私、てっきり…もっと」
「あぁー それはならいは」
横でお腹を鳴らす妹 お腹が空いているのだろうが何処か様子がおかしく
口からでたその言葉で俺達は『あぁー』と声が重なる
彼女達は俺達を雇い そして給料を以前は貰っていた
あの桁だ それにお祭りなど らいはにとってはお嬢様な生活をしている人物が中野姉妹だ
だが それは去年までの話だ
彼女達は24日いやそれ以前からだろうか このアパートに身を寄せている
その理由はと言えば 『勉強を教えてもらうため』 以前の家に俺達は出禁を食らっており
あのままでは勉強を教える事もままならない そこで一花がある計画を立て
父親と話す事でこのアパートに住むことで あの家には出禁だがここはセーフと
何とも揚げ足取りな作戦だろうけど 以前の裕福な生活を捨ててまでの覚悟だ
それを俺達は無下には出来ない…んで その事情を知らない妹からすれば
今までの自分の勘違いだったとなってしまう
「妹よ 人には色々な理由があるんだ 察してやれ」
「あう 何かすみませんでした」
「いや あんたも適当言わないでよ」
詳しい理由を妹に教える必要もない
俺達が一種の原因としればどうなるか…。
「あはは…色々ありまして…」
「何もない部屋でごめんねー」
「いえいえ おかまいなく」
「振袖も大家さんに返しに行かなくっちゃ」
「あの状況で疑問だったが借りてたのか」
「ひとまず今は必要なものから揃えてる段階です」
疑問が一つ消えた あの状況で振袖だけ持ってくるとも考えにくいしな
必要なもの 炬燵や衣類 それにテレビなどは彼女達には必要なものだろう
以前と違い娯楽に関するものはほとんど置いて来ている
「じゃあテレビは後回しでもいいだろ」
「お前や俺はそれで良いだろうが 普通の人間は暇で死ぬんだよ」
「そうそう 暇つぶしにテレビくらいないと」
「うちにはないがな」
大して必要ではないと思っていたんだが、一花の活躍も見る事も出来ない
らいはもこの年頃だ友人と共通の話題も欲しい筈だ
(すこし 考えてみるか……)
「とにかく自分の家だと思ってくつろいでよ」
「そうだぞ 風太郎も座れ」
「お前は何でそこまで馴染めるんだよ」
「ここまで来て何を言うんだか…」
気になりはしているがしぶしぶと風太郎が開いてる場所へと座れば二乃が
『なんでそこなのよ 炬燵入りなさいよ』と自分の隣を指さす
らいはを座らせようとするが、一花にも勧められ 少々疑いながらもそこに座る
「つうか 8人は入れねぇな 俺は適当にここら辺座るか」
「コータロー君も入りなよ」
「いやいや 流石に無理だろ」
「良いから さー座った座った」
座れれば床でも良いんだがせっかくの三玖の料理を床において食べるのも行儀が悪いだろうな
風太郎の前辺りに座らされ ぬくぬくとした温かさを俺は身に染みる
「そうだマッサージしてあげるよ 二人共お疲れでしょ?」
「別に疲れてはないが…」
「俺も別に大丈夫だけど?」
なーんか雲行きが怪しくなってきたな
ご厚意なら甘えるべきだろうけど…
ずるずると炬燵から引きずる俺ら二人
「一花だけずるい」
「早い者勝ちだよー」
「じゃあ腕取った!」
「仕方ないわね」
「私は幸太郎君の手を」
「なら私はコータローの右手を」
風太郎には四葉と二乃が
俺には一花と三玖と五月が
それぞれべったりとくっつく様な形でマッサージを始める
「距離感を考えろって何度言えばわかるんだかな……」
「日頃のお礼だよー おっコータロー君肩凄く凝ってるよ」
「コータローの手やっぱり大きい」
「幸太郎君…手を大事にしてくださいね」
「へいへい……」
されるがままだけど
左手をマッサージしている五月がさり気に『大事にしてください』
そう述べる…俺の手の事情を知っている事も分かった
慣れきってはいたし あの人の言葉から察するに
三玖と五月は俺がどういう状況だったのかをずっと知っていたんだろうな
「お兄ちゃん達が急にモテだした…!…お母さん、お兄ちゃん達に一足早い春が来ました」
「違うぞ ら らいは!?」
「そうだぞ お礼らしい」
妹が勝手な勘違いをし始めている 誤解は解かねば
しっかし 四葉も二乃も何処か嬉しそうだな 俺の気のせいではなさそうだし
これは俺の立ち回りも考えないとな 下手に動いたら二人の迷惑になるだろう行動は慎重に行こう
「あの幸太郎君これを」
「おっおう」
「上杉 何時もお疲れ様」
「…幸太郎 何かしたか俺ら?」
「知らんぞ」
「福笑いやりましょう 五つ子バージョンを作りました」
『『難易度たけーよ!』』
慌ただしい 五月は普段とは何の変りもないむしろ平常運転だ
二乃なんてにっこり笑顔で風太郎を労っている様子
四葉は福笑いをやろうと大量のパーツをだしてくる
慌ただしい…それに何か怪しい… 風太郎の言うように何かしたのか?
「あの コータローと それにフータローに渡したいものが」
「それはまだ早いよ!」
「みんな隣の部屋に行こっか」
三玖が俺達に渡したいものがあると伝えたが何か不味かったのか
他の姉妹に連行され そのまま隣の部屋まで連れて行かれ
全員その場から消えてしまう
「何を企んでるんだ?」
「確かに 気になるな」
「身の危険が無ければそれでいい 俺は静かに勉強がしたい」
「こんな時くらい 一度頭から勉強をなくせ」
「うるさい 幸太郎こそ バイトの事を忘れろ」
「へいへい…って あれねぇ」
「どうした?」
彼女達がいない間 二人で適当な会話で場を繋ぐ中
俺は神社で買ったおみくじがない事に気づいた
「らいはー 俺のおみくじ知らないか?」
「お兄ちゃんの? 私は知らないよ 私はすぐに結んできたし」
「お前 落としたんじゃねーのか?」
「はぁ…………あのラッキー占い見たいなおみくじ何か知らん」
「確かに 何かフワッとしてる内容だしな 所詮はまじないだ 根拠何てない」
「夢のない弟だな けど今回はどう同意見だ あんな紙切れに俺の今後を左右されてたまるか」
「ねぇー 暇だから福笑いしてよう!」
「あいつら くるまで時間かかりそうだし」
「本当に何種類パーツあるんだ…」
何時まで待っても五人は戻ってこない
『不純です』と五月の怒鳴り声が聞こえてくる 何してんだ?
ただ待つのも飽きたのか四葉が持ってきた中野家 福笑いセットをらいはが引っ張りだしてくる
改めて見ても凄い数のパーツである
五人それぞれを髪型や鼻や口など沢山あり 誰から完成させるかで時間もかかるだろうな
髪型に関して言えば全員固有のものだ
上から攻めれば誰かが完成するだろうし地道にやって行くしかない
「ねぇー これ誰のかな?」
「髪型は一花だけど それは二乃の目だろうな」
「待て待て その口は違うだろ ちょっと隣の部屋確認してくるわ!」
風太郎は譲らないがあの口はどう見ても四葉だ 口角の形で分かる どちらも笑みを作っているが
この形は五月で間違いない 風太郎とはあいつ等と過ごした時間の差が違うんだぜ
……見っともない兄だな
「決まりですね 幸太郎く……」
ガチャリと扉が開き 正面には五月の顔だ
うーん? 俺の見立ては間違いない筈だ 何処まで精巧に作られているかは知らないが
やはり五月の口だろうな しかしここまでまじまじとこいつの顔を眺める日が来るとはな
「うーん 五月 動くなよ」
「えっ 幸太郎君 顔が ちかい ちかいです……」
(どういう事ですか 何故目の前に幸太郎君の顔が…これはやはりあのドラマのように
男性はきちんと選ぶべき 母はそう言いました 母が認めた彼なら 私は)
「やっぱり! 風太郎 この口は五月だ! すまんな五月 目が悪いと見えにくくてな」
「えっ あの」
「五月……ずるい」
「三玖まで何ですか」
「くっそ 違ったか」
「えー こっちだと思ったのに」
「わー!遊んでくれてるんですね!」
「ルール、ちょっと変わっちゃったけど・・・」
残念だったなやはり年季の差だ
しっかしあいつ等なんの話し合いをしていたんだ?
「えー…どれどれ……?……あ、上杉さん。ほっぺにクリームがついていますよ」
チュッ
「な・・・なっ・・・?」
「お、お兄ちゃん!?四葉さん!?」
「これはまた飛んでもない爆弾が投下されたな」
『『!!!!!????』』
全員がその場で固まった 四葉が風太郎の頬にキスをしたのだ
先ほど俺が五月から貰ったシュークリームを風太郎が食べてしまい
その時だろう あいつは頬にそれを付けたままで俺もらいはも面白がりあえて黙っていたんだ
まさか 四葉がここまで大胆な行動に出てくるとは、
彼女の性格だ無意識にやってのけたのだろうがそれはそれで恐ろしいな
「………あ……。…………その……今のほっぺにチューが家庭教師のお礼、ということで……///」
「??」
風太郎も突然の事で状況判断が出来ずいる
「コータローもお礼欲しい?」
「いや 俺は別にここでお前らと話すだけで十分だけど……って三久さん」
「むむむむ…………コータローの朴念仁」
「またかよ」
ポンポンと俺の肩を叩く三玖は四葉がしたように
俺にもお礼として頬にしても構わないと提案してくるがその必要はない
それにお礼と言うなら俺は既に貰ってる
不満なんだろうか ぷいっと不貞腐れてしまった
「あの……その件ですが……今の私たちでは十分な報酬を差し上げられない状況でして……。
せめてもと………」
「あぁー そう言う事か 俺も風太郎も別に気にしねぇぞ?なぁ」
「おっおう 俺達がやりたくてやってんだ給料のことなら気にすんな」
何とか意識をこっちに戻した弟は俺と同じ意見を述べる
給料何ておまけだろう 確かに借金問題が解決する道は遠のいたけど こいつらが笑顔でいてくれるだけで俺は給料以上の物を貰えているんだ
「お礼をしたいのは俺の方だ お前らが笑っていてくれるだけで何十万以上の価値がある」
「上杉君……幸太郎君」
「出世払いで結構だ」
忘れていた 弟はこう言う奴だった
ドヤ顔で彼はそう言い放つまだ言い足りないのか更なる追撃だ
先程の感動的な空気をどうしてくれんだよ
「その代わりちゃんと書いとけよな!!一人1日五千円ぽっきり!!1円たりともまけねぇからな!!わかったか!!」
「お前…………」
「貰わないとは言ってない 幸太郎程 お人好しでは通さないからな
それでさ 俺達に渡すものって?」
「えっと…………今日渡さなくていっか」
「出世したらってことで……」
風太郎はやはり変わらない ぶれない お年玉を貰えなかった事も大きかったんだろうな
色々と台無しになったけどこいつなりに借金問題には真剣に取り組んでいるんだ
それは否定できないな 頼み方ってものをもう少し学ぶべきだと兄は最近思ってきてるぞ
「そう言う事らしい 俺はかまわんぞ 五月?」
「本当に彼らしいですね 安心感すら覚えます でも幸太郎君だけに渡さないと言うのも不公平です」
「俺は補佐だ ただでさえ正式に採用されてないのに 辞めた後でとやかく言えるかよ」
「やはり 納得が行きません」
「ふっ そう思ってくれるだけで俺は十分だって言ってるだろ?
お前からのお節介が給料だと思って受け取るさ」
24日に俺は自分から二人に言ってしまった 今更取り下げるつもりは無い
今は貰える程の成果も上げれていないんだ、補佐は補佐でやりたい事を勝手にやらせてもらう
去年と全く変わらんけどさ…………。
「お前らは今を頑張れ 俺達もかわらず教えるから それで今はいいだろ」
「分かりました 幸太郎君は一度決めればそれを曲げませんから」
「お前には言われたくないけどな? ふふふ」
その後は俺達は夕方頃までお世話になり
三玖のお手製お弁当までいただいた 生活も厳しい中律儀だなと思いつつも俺はお礼述べ
風太郎とらいはの三人で家まで向かう
『名前の最後にか行がつく人物には注意をせよ』
やはりおみくじの内容は当てならんな
無くした紙の存在を俺は頭から消し去れば何事もプラスに捉えるべく
先ずは今日と明日をしっかり頑張ろうと決意を新たにしていた
「帰ったね コータロー君達」
「最後まで騒がしかったわ」
「まぁ お兄さん達より 私たちの方が騒がしかったけどね」
彼等を外まで見送り 姿が見えなくなった頃には彼女達もアパートまで引き返していく
きっとこれから自分達はあの頃のように様々な苦難が待っているだろうけど
あの二人と共にいればどんな問題もきっと乗り越えられる
「ってかさ 私たちの隣の部屋 誰か入ったの?」
「そう言えばいつの間にか部屋が埋まってますね」
「先週辺りだったか業者の人見た」
「この時期に引っ越しか珍しいね…………12月前半にここに来た私たちもたいして変わらないね」
中野姉妹が借りているアパート その隣の部屋は当初借りる際には空き部屋だった
しかしここ暫くの間人が行き来しており あまり生活音はしないが誰かが越してきていた
ただ誰一人として隣の住人とは顔を合わせておらず
引っ越しの挨拶もない こっちも未成年だけで住んでいるそういう意味では隣とは変わらないだろう
全員が部屋の中に入ろうとした時 カツカツと階段を昇ってくる足音がする
一歩また一歩と向かってくる 五月達が部屋に入る間際だ
その人物が現れた
黒く長いロングヘア― 美しい容姿
同じ女性である五月も彼女に見惚れていた
ただその人の瞳には光という物が感じ儚さすらも覚えた
ついつい視線が行ってしまい 気づけばその女性と目が合っている
少し気まずい空気の中 階段を昇ってきた彼女が口を開く
「おや お隣さんかな?」
「あっ……今晩は隣に住んでいる中野五月と言います よろしくお願いします」
「中野………中野さんね よろしく」
「五月……!………この人は」
「三玖ですか この人はお隣の方のようです」
「どうも…………中野三玖です」
「どうも 同じ顔だね 少し驚いたかな 隣に越してきたものなんだけど 色々と事情があって
挨拶がおくれた ごめんね 」
「いえいえ お気になさらず 私たちも越してきたばかりで挨拶も出来ず」
「お互い様だよ あーうん これだとダメだね 彼に叱られる少し待っててくれ」
顔を出す三玖も知らない女性がいた事で一度は驚いて目を伏せたがお隣の住人と分かれば
彼女に軽く自己紹介をした
隣同士で顔を会わせないまま一週間近く 軽い挨拶のあと彼女は一度二人に待っていて欲しいと告げる
自室の前まで向かえば鍵を開けて中に入ろうとした
だがガラガラと部屋の中から沢山の荷物が溢れ彼女の足元まで転がっていた
「あぁ 部屋は汚れるから嫌いだ 彼がいればこんな事にはならないのにさ」
「大丈夫ですか?」
「ん? 気にしなくていいよ 何時もこーだからさ 以前片付けくれてた人がいたんだけど
どうにも私は苦手なんだよ…………お あったあった これ引っ越しの挨拶がわりに
菓子折りでもどうぞ」
「ご丁寧にありがとうございます えっと」
「いいよ 無理に返そうなんて 私も適当に渡しただけだし」
「本当にすみません」
お世辞にも綺麗とは言えないその惨状 彼女は何かぼやいていたが
以降は気にも留めず 溢れるそれを退かして何かを探す
あったあったと一つの箱を引っ張り出せば それを五月に手渡す
中身はお菓子の詰め合わせだと彼女は言う
「そう言えば まだ名乗ってなかったね 私 面倒くさがって遅れていた」
「えっ」
「私は 紡木
ニッコリと笑みを浮かべその女性は手を差し伸べる
その手を取ろうとした時 一瞬 彼女は目の前の女性に何処か既視感を覚えた
一体今のは何だろうと思うが後で考えれば良い事だと彼女は握手に応じる
「雨宮さんですね よろし」
「いや 雨宮って呼ばないで欲しいな 苗字は嫌いなんだ 紡木で良いよ 中野さん」
「すみません 紡木さんですね 騒がしいと思いますがどうかご容赦ください」
「ふふ 騒がしい事はいい事だよ 騒げるのは良い事さ それじゃまた 何処かで
五つ子の末っ子さん」
(あれ…………私はあの人に五つ子と話したでしょうか?)
去って行く彼女が残した言葉に五月は戸惑うも自分の考え過ぎだろうと頭を横に振り
そのまま部屋へと戻って行く
こうして新年最初の一日が終わって行った…………。
「!」
「どうした 幸太郎」
「いや なーんか すげー嫌な予感がすんだよな」
「適当言うな帰るぞ」
「何だよ 冷たい弟だな」
キャラ設定
雨宮紡木
中野姉妹の住むアパート その隣に越してきた女性で新年最初の日に
五月と三玖と家の前で出くわし
挨拶として菓子折りを手渡した
苗字で呼ばれる事をひどく嫌っている
とても美しく 同じ女性である五月も見惚れた程で
出ているとこは出て引っ込むところは引っ込んでいるモデルのようなスタイル
余り家にはいないのか 中野姉妹は勿論
風太郎達も一度も出くわしていない
五月曰く 『部屋が恐ろしく汚い』とのこと