風太郎sideも滞りなく行われています
「えーっと 君が上杉幸太郎くんだね?」
「はい 精一杯頑張らせてもらいます!」
今日はケーキ屋のアルバイトではなく
店長の頼みで彼の知り合いが経営する喫茶店の助っ人として訪れている
知り合いと言ってから男性かと思ったが、女性の店長さんで少し驚いた
大宮咲子と名乗った店長は俺の履歴書を渡されていたのか交互に見れば
『ふむふむ』と頷く
「うん 彼から聞いていた通りの人物なのは間違いなさそうだね
それと 手の事も隠さず記入されてる 両利きなんだって?」
「はい 障害が出るとしたら左ですが 右は何の問題なく動きます」
「了解了解 にしても人は見かけによらないって言うか あぁーごめんね」
「いえ 構いませんこの髪です 疑われてもしょうがないと思ってます」
染めたような白い髪
こんな姿で『染めてません』と言うほうがおかしいだろ 未だ学校でも指摘されている
しかし地毛であるのは紛れもない事実だ その理由も履歴書には記載されている
『重度のストレスによる脱色』
あの事故以降にあるトラブルに巻き込まれ 俺はPTSDにも似た重度のストレスを発症し
気づけば髪は今のように縞模様にも似た黒と白が入り乱れる色に変わっていた
当初は染めようかとも考えたでも
あの人の言葉『きっとあなたは報われます』
彼女の言葉を聞いた事で
俺は今のままで生きていこうと決めた それに染めるってだけでも
結構な値段だろう ならいっそと貧乏性も出ていたと言うのは秘密である…………。
加え 左手の主に指に残る障害だ バイト先でそれを隠す事は店側にも多大な損害を出す可能性もある
俺は履歴書には必ずその事を記載し 提出
そのせいだろう バイト先が決まらな事もままあるが 以前働いていた所は快く受け入れ
採用や軽い助っ人として俺を呼んでくれる『君は真面目だからね 安心しない』とみなが言ってくれた
あんな目に遭って 人を見る目がかわったけど
それでも俺を認めてくれる場所はあったんだと思わされる
今回のカフェでの助っ人でも店長から渡された 俺の履歴書と詳しい概要をここの店長さんは知らされているし
何度か尋ねられた 彼女自信も戸惑ってはいたんだろうけど『Оk』と踏ん切りがつけば俺の助っ人を承諾してくれている
「しっかし 君のバイト経歴は凄いね 特例だとは言え 中学2年生から新聞配達か
若いのに苦労してるな」
「色々事情もありまして…………」
「まぁ 深くは聞かないよ 上杉くんね………もしかしてさ 坂下水木って名前知ってる」
「世間は狭いって事 今実感させられました」
軽い面接が終わればそのまま作業開始とは行かず
まさかの人物の名前がここに来て登場『いえーい』といないあの人の声が脳内を木霊する
「まぁ知り合いですね ある意味では腐れ縁です」
「何処かで聞いた名だとは思ってたけど 坂下先輩が話してた あの 上杉くんね」
「あの人は適当言うんで 流して置いてください」
「っははは あの人が気に入ってる上杉君 今日は宜しく頼むよ」
「了解です」
先輩と店長さんは口にした
まさかみずき姐の後輩なんだろうか?
あの人も大概謎の多い人だよな…
渡された制服に着替えながら
幼少期からの長い付き合いのある姉を自称するあの人の事を少しばかり頭に浮かべている
坂下水木は俺よりも年上であの家と関りが出来た頃からだろうか良く俺に絡んで来ていた
どうにもあのノリが苦手であの人から逃走する毎日
本人も学校で忙しいのに年下の相手なんてしてるもんだよ
『お姉さんが相手だー』本当に毎日が楽しいんだろうと思える程
俺はあの人が笑っている姿しか見たことがない…………塞ぎ込んでる姿想像も出来んしな
「そう言えば…………みずき姐の旦那さんってもう日本に戻って来たのかな?」
疑問が出て来た 俺が入院するより前だ
盛大なとは行かないが彼女は『幹雄』言う男性と結婚した
それもう今が幸せの絶好調とばかり
とてもいい笑顔で脳裏に焼き付き記憶されてる…………。
本人も『こうくんも幸せつかもう』と俺に熱弁をかましていたくらいに有頂天
それからだ…………あの事件が起きて気づけば俺は病院の中
みずき姐とは何度か顔を合わせ 幹雄さんは何故か顔を見せる事はなかった
入院して少し 俺は聞いた『あの人はどうしてますか?』
事故のせいか当時の俺は物凄く他人行儀な言い方でみずき姐も困惑していた
まぁ 物事を簡単に割り切るあの人はすぐに考える事をやめ『幹雄くんは海外だよ』
俺に説明してくれた どうやら海外で教鞭を取っているらしい
因みにその人は俺にとって兄のような人物で勉強などで世話になっている…。
「暫くって まじでアバウトだよ…。実は身近にいたんだな……プロが」
「上杉君 これ注文表ねー」
「了解でーす (考え事は後でも出来る」
渡された注文票にはサンドイッチのセットやその他諸々
カフェと行っても何も飲み物だけではない 小腹を満たせるくらいには食も取れる
喫茶店だからと馬鹿にでは出来ないのがこの世の常だ………。
「まさか いきなり厨房を任せられるとはな」
店長さん曰く『この時期は手が足りないから一人でも多く動ける人が欲しいんだよね』
目が笑ってなかった…………あれは得物を狙う目だ
集客力でお店の将来が決まって行く その中での助っ人 それも厨房だ
自然と気持ちも引き締まる
「これ お願いします」
作り終えた品を店頭に並べる
陳列された物から出来てた物まで様々だ 今のように注文してお店で食べて帰る客もいれば
テイクアウトで済ませる人も中には多い
それにだ…………今日に限って人が多くみられる その要因が勿論
ケーキ屋 Revivalのメニューまで並べられている
あの映画の撮影が、クチコミで広がり初めお店に通う人も増え始めた…。宣伝とは馬鹿に出来ないな これが映画公開になってみろ
人の出入り更に増えんだろうな……。
んで以前から話が来ていた、このお店に俺を貸す変わりにRevivalとの実質的なコラボを店長が提示…。お互いが承諾…そういう事情もあり期限付きで売り飛ばされた…世の中はお金さ
「まぁ……給料も良いし ケーキ屋の売上も上がるし万々歳だな」
暫く厨房に籠り 仕込みの準備など始めた
それなりに商品もあるようで壁に貼られている紙だけでも種類も豊富だ
元は喫茶店ではなく 洋食屋を営む予定だったが色々な都合で喫茶店に方向転換したとか………
人のやりたい事とは中々うまくは行かないもんだなと改めて現実を実感したが…。
『例えさ 変わっても自分のお店出せるのって嬉しいからさ』
店長さんは何処か楽し気に話していた
(自分のお店か……母さんも生きてたらきっと店長さん見たいに忙しく楽しい毎日だったんだろうな)
ふいに店長さんと母の姿が重なった
こう言った事には弱い人間だ目頭も熱くなる 母は夢を諦める結果にはなったけど
その夢の痕は、俺達の住むアパートの下に残っている
窓の外に付けられている『うえすぎ』と書かれた看板はけして明かりを灯す事はないだろうけど
何時か誰かが母の夢を引きついでくれれば良いなと俺は密かに願っている
感傷に浸れば時間も過ぎていく 夜ともなればお店に来る客層も変わっていく
俺は一旦休憩を言い渡された『本当に君は誰かがストップと言わない限り動き続けるね』
店長さんも呆れ気味だ きっと俺は動かないと死んでしまう病なんだろうな
学校では省エネを重視して目立たず黙っている事を信条にしているが……
ひとたび働き先に向かえばまるで水を得た魚だ マグロのように決して動きを止めない
『生きてるって実感できる』二乃に言ったあの言葉本当にそのままの意味だ
あの時期の俺は本当に死んだ目をしていただろ だから助かった命だ それを他人の為に使おうと俺は決めたんだ…………。
「さて…………そろそろ休憩も終わりだな」
椅子から立ち上がればエプロンを腰に巻く こいつは性分だ
今更変わらないしな…………気合を入れ直し俺は一旦部屋を出る
「……………………何で あの二人がいるんだ?」
店の中に戻れば俺は少々 目を疑った
一つの席に男女がおり真剣な話でもしてるんだろう
女性は神妙な面持ちで目の前の男性の話を聞いている
男性も表情にこそ出さないだろうが彼なりにあの子に真剣に話を持ち掛けている様子だ
加えてだ…………カウンター席にも見知った人物が数名座っており その二組の会話に聞き耳を立てている
(五月とあの人…………それに風太郎と二乃か 遂に動き出したか)
沈黙を守ってきた中野父が娘に接触を取ってきた あのまま見過ごすようなら
それこそ俺はあの人を見限っていただろうけど………3月のテストもあるのにまーた厄介事か
店長である咲子さんはそのテーブルに座る お客からの注文だと
俺に紙を手渡した
「サンドイッチ 全種類か…………あの店長 給料から差し引いて良いんで
これとこれをカウンター席の二人に それとサンドイッチセットですけどプラスでこれも頼みます」
「えぇー 上杉君どうしたんだい いきなりまさか知り合いかな?」
「まぁーそんなもんですよ…………あと あの奥の席にいる子にも」
「了解 君の意見は引き受けました」
「ありがとうございます!」
五月の事だきっとお腹も空かせてるだろうし
風太郎も店の値段を見て財布との交渉だろうな
給料から少しばかり引かれるが無理を通して俺を貸し出した。普段よりも多く貰える
多少減っても痛くないだろうしな
出来上がった料理を渡せばそれを五月の元まで向かい
本人やあの男も驚いている
「すまないが 頼んだ覚えはないが?」
「ちょっとしたサービスですお気になさらず」
「ふぅ…………」
「頂いてよろしいでしょうか」
「はい きっとお腹を空かせてるだろうと彼は言ってましたよ」
「彼?」
「随分とお節介な人もいるものだ……気が引けるが頂こう」
なーんか嫌味を言われてそうだけど無事に五月の元に追加の料理も届いたようだな
風太郎と二乃の所にもケーキのセットが届けられ一安心だ
戻ってくる咲子さんも『緊張した』と声を出している
そのまま戻るかと思いきや俺の方まで来ると 肘でこつこつと胸を何度も押す
「それで あの子とはどういう関係なんだい 上杉君?
知り合いってだけでここまで気を回すかい?」
「カウンター席の男子学生は弟です それと隣の女性徒とさっきの子は…。まぁ…弟の生徒みたいなもんですよ あの男性は色々と訳アリです」
「なーんか腑に落ちないね 君との関係が見えてこないな」
「俺は…………保護者見たいなもんだと思ってください」
不満気な様子だが咲子さんは奥に戻って行く
何かと問われれば 家族だ 弟に妹同然に可愛がった二人
俺の答えはあの花火の日から変わっていない
誰かを優遇するつもりもない 全員が全員俺には大切な家族に変わりはない……。
その後は 店も落ち着きを見せ
俺も俺で少しばかり二人の会話を遠くで聞き耳を立て聞いている
どうやら俺と風太郎の出禁は解除されるようだ
加え 今後は彼の雇うプロの家庭教師の人物も含めた三人体制で五人の面倒を見て行きたいと彼は、言いだしている
俺と風太郎は補佐に回すと先生は宣言する 俺は変わらんけど風太郎まで補佐とは…。
相当 あの電話が頭にきているんだろうな 中野父にも感情はあるようだな………。
まだ話は続き 彼が言うには今の姉妹は自立と言うのは程遠い
もうすぐ始まる学校で誰が学費を払い
誰の名義であのアパートを借りているのかと痛い所を突かれ
五月は顔を伏せており
見かねた風太郎も動こうとするが二乃に止められている
下手に行けば心象はさらに悪化し話もややこしくなる 二乃の判断は正しいだろう
最大の問題として彼はあの事を五月に問いかける
『四葉の赤点回避は可能なのか?』
不安は残るさ 前回のテストも四葉は最下位だ
一番点数を稼いだ三玖ですら赤点回避は免れなかったのにその下となればあの男も動き出すだろう
『この状況で頑張っている』五月の必死の抵抗も彼は聞き入れない
そうだ あの男が言う事は何一つ間違いはないだろう このままのんびりと勉強していたら
必ずまた何処かで俺達は躓くだろう 俺も風太郎もそんな事は重々承知だ
五月もカウンター席の風太郎も静かに彼の言葉を聞く正しい その言葉を何時も強気の二乃ですら
臆している それ程だ
でも誰一人として反論しない 負けっぱなしでは終わる訳もない
「やれます 私たちと上杉さんたちならやれます!」
(やっぱいたか…………)
「この七人で成し遂げたいんです だから信じてください
もう同じ失敗は繰り返しません…絶対に!!」
俺が咲子さんに頼んだ注文追加は
風太郎 二乃 五月 中野父 加え五月達が来た少し前にここに現れずっと話を聞いていた四葉だ
ずっと俯いて話を聞いていたが、彼女も覚悟を決め 父親の前に立つ
自分の意見と自分達がなす事を見届けて欲しい 今度こそやって見せる
以前の学園で何があったのか俺は知らん 話す気もないなら聞きもしないさ
四葉の鬼気迫る表情も今の彼に通用しない
たじろぐ事もせず 彼は娘の話を聞き終われば
「もし次の試験で落ちたら その学校に転校する プロの家庭教師と三人体制ならそのリスクも限りなく小さくなると保障しよう それでもやりたいようにやるなら後は自己責任だ わかってくれるね?」
あの男は本気だ
次のテストまでと猶予はくれたが、内心は今すぐにでも娘を家に戻し
プロの指導の元確実なカリキュラムを実行させるだろう 本当に嫌なほど真面目過ぎる……。
今更出た所で状況は何も変わらない これは 彼女達が選ぶ答えだ…………五月お前はどうしたい?
「わかりました」
「では こちらで話を進めておこう 五月君ならわかってくれると思っていたよ」
「いいえ…………もし だめなら転校という条件で構いません 素直で物分かりが良くて
賢い子じゃなくてすみません」
一呼吸おいて 五月は父に姉妹達全員の代わりに代弁した自分達の総意を…
たとえ不利な状況でも 俺達七人で 試験を向かえる その答えは変わらない
本当に不器用でおバカ…おまけに優しい子だ
ありがとな五月 俺達にチャンスをくれて
俺もうかうかしてられないな
あの男の前で五月が反抗する姿
彼女のいや 彼女達の覚悟は相当だ…
「どうやら 子供のわがままを聞くのが親の仕事らしい そして子供のわがままを叱るのも
親の仕事だ 次はないよ」
「前の学校の時とは違うから」
「僕も期待してるよ」
風太郎の言葉は確かに届いていた
親としてあの男も娘の為に動いている ただそれは本当に優しさだろうか?
彼は本当に娘達を見ているのか… それが気がかりだ
五月は自分を素直で物分かりが良くないと彼の言葉と真向から戦った
実は…この男と真にその意味に当てはまるのではないんだろうか?
まぁ…考えてもわからんな
彼女達との話を終えればあの男は会計を済ませる為レジへとやってくる
対応する人手が全体的に不足している為助っ人として呼ばれた俺だレジも任せられる
「お会計は…」
「シェフに言っておいてくれ 味の薄い サンドイッチだったと」
「了解です お き ゃ く さ ま」
「ふん…」
「風太郎とあいつ等の覚悟 舐めるなよ」
「君もだ……今度のテストは彼女達だけではない 君も用心しておいてほしい」
「なんか知らんが…ご忠告ありがとうございます」
この人が俺にそんな事を言ってくるとは内心驚いている
お互い出会いは最悪で険悪のまま今を迎えている まさかここまで因縁になるとは小学生の俺
未来は凄い事になってるぞ…。
カードで一括の支払いを済ませればそのまま帰って行く
勿論払ったのは娘達の分と自分のだ 風太郎のコーヒー代やケーキ代はノータッチ
苦笑もんだよ…。
「お疲れ様 風太郎も良く耐えたな」
「こ 幸太郎! お前いたのかよ 」
「あぁ そう言う事 頼んでもないケーキとか来たのね」
「俺の判断だ 気にするな 五月も美味かったか?」
「あっ あの女性の言っていた彼って」
「知らんな- 俺は腹を空かせた奴にサンドイッチを作っただけだ」
「幸太郎君らしいですね お気遣いありがとうございます とても美味しかったです。」
顔を出せば皆は驚いてる
今日は急用だと事前に伝えていたからな
「お兄さん ありがとうございます」
「良いって 事情は知らんがあんなに辛気臭い顔してんだ 気づくさ」
「あっはは バレてましたか」
「それで 話は纏まったのか?」
「はい 私たちはこのまま 七人で テストに挑みます
上杉君 幸太郎君改めてよろしくお願いします」
「さっきも言ったがやりたいようにやるだけだ!」
「へいへい 任せておけ やりたいようにやってそんでいい結果を迎えようぜ」
「はい!」
ここから後二ヶ月後 俺達は決戦まで出来うる限りその時間を費やすことになった
あの父親をギャフンと言わせたいが、俺はこいつらと離れるつもりはない
やりたいようにやって 転校もさせない それが上杉幸太郎の答えだ
キャラ設定
大宮咲子
幸太郎の働いてるケーキ屋Revivalの店長の知り合い
急遽人手が足りなくなり 彼の紹介で幸太郎を暫く借りる事に
さばさばした性格 幸太郎の髪も彼の左手の障害を聞いても採用した
実は坂下水木の後輩らしく 幸太郎の事は彼女からも聞いていたとか
坂下幹雄
坂下水木の旦那で上杉幸太郎の恩師
現在は海外の学校で教鞭を握り時折だが幸太郎や水木に手紙を出している
中野丸男や上杉勇也とは友人である