五月 丸男 三玖 一花の順番で幸太郎と会話する数が多い
丸男がヒロインなのか?
「やったーー」
「見事全員赤点回避を出来ましたね!」
二乃の点数は無事に赤点ラインを越え
あの男の提示した条件を彼女達はクリアできた
大はしゃぎと四葉がわーいとその場でジャンプ 一花から聞かされた
以前の学校での事を考えれば彼女が大喜びするのもうなずける
風太郎は彼女達に『良くやった 特に三玖 お前は一番に安全圏に入った』とお礼の言葉を伝え 店長からバイクの鍵を渡されればそのまま外に向かう
『全員強制参加だー』と去り際伝えている
「それと 上杉君ももう一台あるからそれで行ってきな 君達もバイトに遅れないようね」
「ありがとうございます 店長」
店長はもう一台の鍵を投げて渡す
「コータローも迎えに行くの?」
「まぁな…………それと三玖 本当にありがとう風太郎も言ってたけどさ
お前の頑張りが合ったからみんなここまでこれたんだ 俺を……俺達を信頼してくれてありがとう」
「うん 私は二人を……コータローを信頼してる これは私の気持ちだから」
私の気持ち……それはどう言った意味として捉えれば良いだろうか
微笑む彼女に見送られ 店を出る
裏の方の倉庫に入れば一台のバイクがひっそりと置かれている
『動くのか?』と不安もあったが、このままさようなら そんな都合がいい事誰が許すか
ものーすごく突き刺さる言葉だけど今は二乃の元に向かうのが先決だ
倉庫から運びキーを差し込む
しまわれていたけど何時でも使えるよう整備されているのか汚れはなかった
「待ってろよ 二乃 それと中野先生……」
アクセル全開 風太郎より遅れて出るんだ少しくらいは勘弁してくれよ
「おーっす 迎えに来たぞー二乃 それとこんばわ中野先生」
「あ あんたまで何で!」
「ハァ? 勝手にいなくなる奴を捜しに来ただけだ 風太郎早く二乃連れてバイトに行け」
「はいよ 乗れバイトに遅れる」
数分遅れで俺はマンション前まで到着
既に話は終わったのか二乃は風太郎の近くでどうすべきか迷っている様子
俺が来た事に気づけば早速に本音を隠しての一言だ
『はぁ』とため息を出す中野先生は俺達をじっと睨むように視線に入れる
二乃の方に手を伸ばす
「君が行こうとしてるのは茨の道だ うまくいくはずがない
後悔する日が必ず訪れるだろう こちらに来なさい」
「二乃 迷うな風太郎の後ろに乗れ」
「うぅーーん……パパ 私たちを見てて」
「えーえっと……お父さん……娘さんを頂きます 幸太郎遅れるなよ」
風太郎と父 二人どちらと選択に迷う彼女に『迷うな』と声をかける
振り切る様に風太郎のバイクに跨れば弟は爆弾発言を残しつつその場から去って行く
「ふふふ 笑えるな……はぁ……あんたの言った条件あいつ等はクリアしたぞ
これで良いんだろう?」
「確かに彼女達は全員赤点を回避できた 父親として喜ばしいかぎりだ…感謝しよう 上杉幸太郎君」
「思ってもねぇ―事 言うな」
風太郎は先に行ったが俺はまだこの男と話す用事が残っている
成績が乏しく低い娘達
それでも可愛いからこそこの人も色々と考えているんだろう
でもだ そのやり取りは彼自身の考えで結局は娘達の意見など聞く耳はない
今回の期末の条件も風太郎に言われたからだろう
自分から出向き五月と話し合った
そして彼から提示された条件が彼女達の赤点回避だ…………。
高い壁だか、七人で挑むんだ
不安もなく彼女達はそれを受け入れる
覚悟も決まっていたしあいつらも自分たちの実力を発揮できた
姉妹は全員赤点回避を成し遂げた 喜ばしいさ俺達も教えた側としてこれほど嬉しい事もない
去年から続く 惨敗黒星の連続から無事に脱却し初白星だ
なのに彼は出向くことなく、結果を知ればそれだけだ
当たり前とでも言いたいのか…
なぜそこまで彼女たちと距離を開けようとするんだ…。
解せないことばかりだ
「本当に思うなら……あいつらに直接聞くべきだ 二乃は自分からここまで来たけど
他の四人とも……ちゃんとあんたから聞く そうすべきだった筈だ」
「相変わらず 家庭の事情にずけずけと入り込む あの頃から君は何も変わってないね」
「お互い様だ……」
彼の言う事は本当に正しい 俺は他人だもう踏み込んでいいラインはとっくに超えている
赤線なんて気にも留めない ぶつかる寸前さ
でもこれが俺だ あの子達の為なら俺は例え父親だろうと思った事は口にだす
この人からの評価なんて初めて会った頃に最低値を振り切りマイナス
デッドライン目前…… 嫌いな男だ
「…………一つ言わせてくれ 俺はダメだ 今回の試験 俺は……最悪だ
赤点ギリギリと言わないけどな」
「…………」
「あんたに隠す必要もない 何時かバレる 言い訳はしない」
「了解した………それが君の答えという訳だね 上杉幸太郎君」
今回の期末試験
俺は全く点数を稼げなかった
上杉風太郎
国語89点 数学97点 理科88点 歴史94点 英語91点
総合459点
上杉幸太郎
国語70点 数学79点 理科75点 歴史74点 英語80点
総合378点
風太郎と百点近くの差をつけられ 前回から一気に落ちている
80点代は英語のみ 歴史は三玖と2点の差だ
これがかつて 学校で最優秀と言われ周りが期待した人間の今の姿
俺史上最悪のテスト結果と言っても差し支えない…………。
「だから言った筈だ 用心するようにと………その点数で君は彼女達に教えられるかい?」
「無理だ…………って以前の俺なら言ってたな でもこのまま続けるさ 下がった分はこれから取り返せばいい」
「許すとでも?」
「勝手にするさ あんたが許す許さない そんな事あいつ等と風太郎には関係ない
アンタの事だ どうせまた何か仕掛けるつもりだろう 受けて立つよ」
「自分勝手が過ぎないかい 上杉幸太郎」
「そうだ 俺は自分勝手な人間だ あんたが一番知ってるだろ 中野先生」
言い訳も弁解もしない 俺がテストの成績を下げた事実は変わらない
苦情も文句も受け付ける だけど勝手に調べられどうこう言われるのだけは俺は嫌だ
そうなる前に自分から言ってやった
「わかったでは行くといい あぁそうだ 幹雄君から君に伝言だ『期待している』と」
「!!」
「珍しく動揺しているようだが…………くれぐれも事故の無いようにしてくれ」
「っ…………あばよ」
最後の最後で隠し玉か…………
勝ち誇った顔で俺を見送ればあの男もさっさと車に乗ってしまう
運転手の人は俺にお辞儀をしてくれた
何処かでとは少しおかしいけど 別の所で見た気もするが今は良いか…………
(幹雄さんが俺に期待か…………)
まさかあの人が俺に伝言とは聞いた時は本当に驚いたけど
今は頭をクールダウンさせよう 今からあいつ等とお祝いだ
ただでさえ仏頂面で加え辛気臭い顔なんて見せられるか…………
それに俺自身 明日はケジメをつける日なんだ 今からこうでは後が思いやられるぞ
「気合の入れ直しだ あの人に宣戦布告したんだ 気張れ俺!」
上げる声は虚勢か答えは帰って来ない…………。
カランカラン
「うーっす」
バイクを倉庫に戻し みんなが待つ席まで向かう
当然だろうけど楽しそうに話すあいつ等には俺の声は聞こえてないようだ
まぁ…………笑顔で話してるならそれで良いけどな
「バイクがなんだってーー 二乃さん?」
『『!!』』
本当に俺が戻ってきた事に気づいてなかった
声をかければ、花火大会の再来だ全員が肩をびくつかせる
なーんか既視感あるな
「もう 驚かさないでよー!」
「悪い悪い まじで話に夢中だったとはな…………」
「コータローお疲れ様」
「俺は何もしてねーよ 風太郎に感謝しろよ」
「…………あんたもありがとね」
「気にすんな 俺がやりたくて行っただけだ でもノーヘルはマジでやめろよ」
「…………」
「なんだー? 反論は無しか」
普段ならここで『うるさい・勝手でしょ』と罵詈雑言ギリギリの苦情が来るかとも
構えていたが黙って顔を下にするだけだ 風太郎と何かあったのか?
「じゃ 俺は厨房に行くから…………何だ五月?」
「幸太郎君 少しお話があります 行きましょう」
「おっ おい五月!」
「五月…………」
(やっぱり 五月ちゃんはコータロー君の事お見通しなんだね…………)
厨房に向かう前に五月に手を引かれ
以前にも似たような場所まで連れて行かれた 中野姉妹は人を連れ去るのが好きなのか?
「強引に連れだすような真似をしてすみませんでした 父から伝言が来ています」
「最近は伝言が流行りなのか?」
「?…………えっと スマホの方ですが使用できるようにしておいたと」
わざわざそれを娘に伝言で伝えさせる辺りあの人らしいな
「つうか 契約したのは俺だぞ 使えるのが当たり前だろうが…………」
「そうですね 少し力技が過ぎますね」
「これでお前らとの連絡も取れる訳だ…………うわぁ」
持っていたスマホを開き
履歴を見れば12月から今日までずらーっと中野五月の名前で埋まっている
三玖の方はメールも来てるし 知らん顔してるがこいつ俺のスマホ使えないの知ってたくせに……はぁ…頭いてぇ
起動できるのを確認すれば胸ポケットにそれを戻す
「要件は終わりだな」
「いえ まだです 幸太郎君 父と何を話していましたか?」
「プライバシーだ」
「私たちには言えない内容なんですね?」
「別に大した話はしてねぇーよ」
宣戦布告してきましたーとか言えるか
『やはり私では』と塞ぎ込む五月 本当にこいつは直ぐに落ち込むな
どれだけ気になってんだか、俺の事で悩んでくれるのは有難いけどそれで落ち込まれたらこっちまで
悲しくなっちまう
「前も言ったろ 信用してないと俺の過去は話さないって」
「ですが……うぅ………わかりました」
「わかればよろしい ほれ戻って姉妹と楽しく話してこいよ」
俺も早く厨房に行かねーと店長に何言われるか
耳元で嫌味は言われたくないさ
「幸太郎君…………明日は学校に来るんですよね」
姉妹の元に戻るかと思えば、まだ何か言いたい事があった
口を開けば『明日は学校に来るのか』と当たり前の事を聞いて来やがる
「行くに決まってるだろう…………学校なんだ」
「そうですね 変な事を聞いてすみません では幸太郎君 期末試験改めてお疲れ様です」
「おー 五月もお疲れ様 頑張ったな」
ぺこりと頭を下げればやっと姉妹達がいる席に戻って行く
彼女がいなくなると分かれば深いため息だ
「あいつは本当にこえーな 何でも知ってるな……………」
明日3月10日は3年生の卒業式
同時に俺がケジメをつける日でもある
今後あいつらと接して行く中で遺恨やしこりは無くしたい
その為にも明日は何があっても学校に行く
「はぁ……………ん?」
『対象外なら無理にでも意識させてやるわ……………あんたみたいな 男でも好きになる女子が地球上に一人くらいいるって言ったわよね それが私よ 残念だったわね』
『な な な』
『今は返事はいらないわ………そう言う事だから覚えておきなさい!』
『おっ おい二乃!』
(まじか…………)
戻り際突然聞こえたその会話はとてもじゃないが 驚いた その言葉で片付けて良いものではない
二乃が遂に風太郎に告白したんだ 予兆はあった
あの姉妹の喧嘩が収まった頃だ そしてこの三ヶ月の間少しずつだが
二乃は風太郎の傍で行動していた 祝福すべき事だろう 二乃が選んだ相手だ
その相手も弟の風太郎………喜ぶべきだ
『時間は止まらないさ 幸太郎 人が思っていても周りは勝手に動き出す
だから前に進むべきなんだよ 上杉幸太郎』
あの女が言った言葉を思い出した
時間や今は自分だけでは動かせない周りがいる事で勝手に進行していく
今のままとはいかない様世界は出来ている 哲学的だでもそれが当たり前だ
24時間365日 永遠なんて続かないのかもしれない…………。
(二乃は席に戻ったか?)
タッタタと急ぎ足で駆けていく音が聞こえた
隠れるのをやめ 厨房に戻ろうと足を動かす
「ん?………一花」
「あっあー こ コータロー君だ どどうしたの?」
明らかに動揺してやがるなこいつ
厨房の近くにあるトイレの中から一花が出てくれば俺と目が合う
顔は真っ赤で汗も掻いている 目もあちらこちらと定まっていない
「あの あのコータロー君は今」
「さて 戻るか 何だ一花早く戻れよ」
「えっ 聞こえて無かったの」
「何の話だ? 俺は今さっきお前のところの末っ子から解放されたばかりだが…」
「そうなんだ 五月ちゃんも心配症だからね じ じゃーお姉さんはこれで」
俺は嘘をついた
聞かなかった 聞こえなかった その場を嘘でやり過ごす
変わる事を認められないのはきっと俺だろうな
二乃は前に踏み出した………けど俺は同じ場所で永遠に足踏み
何時になれば前に進めるんだろうか
そのために明日は学校に行かないと俺が俺に出来る事はそんな事しか思いもつかない
「ふぅー 風太郎 お疲れ様 悪かったな 洗い物全部させて」
「お おう 幸太郎もお疲れ ああの何だ 俺はそろそろ帰るから」
「はぁ? みんなまだいるんだぞ」
「悪い 今は色々と頭がいっぱいで本当にすまん」
「了解 あいつらには適当に言っておく きーつけて帰れよ」
「家でまた会おう」
弟は兄に相談しない道を選んだ
告白なんて生まれて初めて何だろう 動揺する気持ちは分らんでもない
今は悩めそして悔いのない選択をしてお前も前に進め
(……………四葉 お前はどうするんだ?)
洗い終わった食器を片付ける中
一人の少女の名前を俺は口にした 中野四葉 五つ子の四番目
(俺は二乃とお前を応援する…………どっちかを優先に何てしない)