上杉幸太郎と六等分の思い出   作:Aikk

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第六十八話 不良少年と次男と三女

あれから数週間…

弟 上杉風太郎はここ最近様子がおかしい

理由は明白だ 俺が偶然聞いてしまった

あの二乃から彼への告白 愛の言葉だ

物凄く照れくさそうに彼に言い放つが返事はいらないの一点張りで去って行ったあの日からだ

 

気まずいのだろう風太郎は二乃のみならず姉妹たちを避け

期末以降家庭教師には行っていない

 

毎日毎日ため息ばかりだ 勇也さんやらいはも最初はそれを心配し

『病院かな?』と何度かかけようとしていたが、最近では慣れたのか

テストでいい点が取れなかった事が原因なのではと言われている

 

 

「ねー 幸太郎お兄ちゃんは何処か行きたいところある?」

「そうだなー 温泉旅行 あぁでもこの体じゃ無理かな」

「どうだろうな 貸し切りなら構わねーだろ?」

「あまり人にはお見せできないものですから」

「謙遜するな それはお前が人を救った証だ 恥じる事も隠す事もねぇ」

 

 

全くの反応を見せない風太郎に意見を求めてもダメだと判断し

らいはは迫る連休で家族で何処に出かけるべきか俺にも聞きたいと意見を求める

 

勇也さんは『ハハッ!』と言いそうな夢の国へ行きたいと言っている

恐れを知らぬ我父はやはり尊敬できるお方だ

かくいう俺はと言えば 家族水入らずとなれば

一度で良いから温泉旅行に行ってはみたいと思っていた

でも俺は温泉には入れない 胸の傷が気分を害させる恐れもある

勇也さん曰く 勲章であり 俺の生きている証だとか

哲学だ そしてそれは的を射ているな

 

「それで 風太郎…どうすんだ 答えは」

「こ 答え 俺は俺は あぁー」

「だから 勇也さんもらいはも言ってるだろう? 何処に出かけるかだ」

「そ そうか」

「はぁ…これは重症だな」

 

答えと言う言葉に過敏に反応し消しゴムに力を入れすぎたのかノートはびりっと破けてしまう

どうしたもんか 俺はあの場にいないという事になっており

彼から相談されない限り下手には動ない様にと行動している

 

このままずるずると何も答えを出せない状況は、流石にまずい

答えを出せとは言わないが息抜きぐらいはさせるべきだ チラッと 妹に目配せ

 

 

コクリ

 

「コラっ!」

「わあぁ 何だよ」

「いつまでも 引きこもってないで買い物行ってきて」

「何故 俺が…幸太郎がいるだろう」

「俺は昼のシフトだ」

「そう言う事 働かざるも食うべからずだよ」

 

 

バタン

 

エコバックを渡されれば状況判断出来ないままに家の外へと放り出れた

満足げな、らいはにへーいとハイタッチ

 

「さて 幸太郎 お前はアイツがああなった理由は知ってるな」

「すみません こればかりは自分から口外は出来ないです あいつが相談するまでは」

「そうかあいつがそうなら見守るだけだ 任せたぞ」

「了解です」

 

流石は勇也さんだ ちゃんと俺達を見ている

風太郎の悩みを俺が知っている事を既に看破だ 

この話は弟のプライバシーだ面白がって話す事ではない 

あいつが相談するまでは俺の胸の内に秘めておく

まぁ…問題があるとすれば…俺が卒業式を見届け家に帰宅

次の週には家庭教師の再開だと意気込みを決め込んでいたんだが…。

 

 

卒業式の一件以降 どうもバイトが忙しく中々家に行く事も出来ない

三玖は『今はコータローも心の整理が必要だから』とメールを寄越し

学校での勉強だけで家庭教師は休業中 全員が家庭教師計画もあり

俺達が教えるよりも捗っている事もある 

ただこのまま放置もそれはそれで責任感が無さすぎるし休み前には一度は行くべきだろうと考えている

 

「じゃ 俺もバイト行ってきます」

「きーつけてなー」

「お兄ちゃんいってらっしゃーい」

 

よーし 今日も家族の為に頑張るか

上杉幸太郎いざ出陣

 

 

 

 

上杉幸太郎がバイトに向かうタイミング

中野姉妹のアパートでは三玖に頼みこむ二乃という変わったやり取りが行われている

期末試験が終わってから正確には卒業式を見届けて以降

中野姉妹の関係は少し変わっていた 

テストで一番の成績を残し 幸太郎に告白する予定だった三玖

三玖より高い点を取りさてどうするかと考える中で二乃が風太郎に告白している現場を目撃した一花

三玖と一花と違い 弟の風太郎を選び自分の気持ちに正直に生きようと決め彼に告白した二乃

卒業式以降からずっと気持ちが落ち込む五月

他の四名が何でこうなってるのか見当もつかない様子の四葉

 

色々な感情が入り乱れ 二人があれ以降この家に訪れず 更なる悪循環が家に蔓延していた

 

 

そんな時 ある来客が現れた

黒髪の美しく誰もが見惚れるお隣さん 雨宮紡木

遅ればせながらと期末試験を終えた彼女達にお祝いと称しお祝いの品を届けに来たのだ

 

「どうもありがとうございます 紡木さん」

「気にする事はないさ 友人経由で噂を聞いてね 年明けの期末試験だ下手に低い点数も取れないしね」

「ひ ひくい点数ですか…………」

「どうかしたのかい? まさか お気に召さなかったかな 彼曰く お祝い事にはと」

「いえいえ こっちの話なのでお気になさらず」

「そうか まぁ何にかあれば 私も相談に乗ろう お隣なんだ」

 

善意から来るその言葉 でも何故かこの人の前では気を抜くなと脳が呟く

それに一瞬でも気を許せば取り込まれそうな 

そんな瞳すらしており美しさ故に怖さと言うのもを五月は感じていた

 

「その時は頼らせていただきます 今日はご足労いただきありがとうございます」

「隣だけどね ふふ じゃーまたね んやぁ おはよう 三玖ちゃん」

「おはようございます じゃ私出かけてくるね 二乃に買い物頼まれたから」

「はい 三玖も気をつけてくださいね」

「ふふふ 中々面白いね あの子も」

「え? 面白い」

「こっちの話だよ じゃ 今度こそ さようなら 五月さん」

 

今度こそ さようなら と手を振り彼女は隣の部屋へと戻って行く

ガシャンゴロゴロと物凄い音が響き渡るが最近では五月もこれには慣れ始めていた

 

めっきり消えていた笑みも久々に浮かべる五月は彼を真似るように一度気合を入れ直し

頬を軽く叩く『やはり痛いですね』と力加減を間違えたのか頬は赤くなっていた

 

 

 

更にそこから時間は進みあるデパートで風太郎と三玖が肩を並べ

買い物をしていた ここ数日何故家に来ないのか 訪ねて見れば

『行く用事がない』とだけ彼は言い 幸太郎程でないにしろ信用している彼からそう言われれば

少し寂しく感じている 

 

そのまま行こうとする彼だったが三玖の発したある言葉で足を止めた

彼女の姉である 中野二乃 彼女の頼みで買い物に訪れたと 

うーんと悩む彼は唐突に彼女に聞いてきた 

 

 

「好きな人はいるか?」

「えぇっ!!」

 

まさかあの勉強オバケの風太郎から恋の話が出るとは彼女は思いもしなかった

どちらかと言えばそれは彼の兄であある上杉幸太郎の領分だ

突然の事過ぎて慌てだす三玖にぐっと詰め寄る風太郎

『恋バナしようぜ 恋バナ』一体彼の身に何があったのか?

教えてもらってる身である為 三玖も邪険に扱えず それに風太郎がそう言う一面を見せるのは

何処か嬉しくある ふふと笑えば彼との恋バナを始める

 

風太郎が悩む二乃との関係

三玖が悩む幸太郎との関係

 

お互いがお互いに『知り合いの知り合いの話』と遠回しに自分ではないアピールで会話は続ける

このまま関係を続けるべきかいっそ踏み切るべきなのかと…。

 

自分ではそんな勇気は出せず 関心する三玖 

その勇気さえあればきっと幸太郎に想い届けているだろう

あの日 卒業式の日に図書室では二人だけ その時に彼が『今が楽しい』といった事で三玖は踏みとどまり彼への告白を先伸ばした 彼が現状を楽しむならそれもまた良しと

しかし 風太郎の話を聞いた事で三玖も決心がついたようにも見える

 

「風太郎 ありがとね 勇気が出せそう」

「俺も…じゃなく 知り合いの話が出来て良かった あっははは」

 

何処か微笑ましい 二人の関係お互いの想いが果たして今後どんな問題を起こすのか

この時の三玖は思いもしなかった…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「上杉君 今日はお疲れ様」

「はい 店長 あの給料から引いても良いので材料幾つか使わせて貰っていいですか?」

「先輩 何か作るんですか!」

「ホワイトデーのお返しだよ」

「な 上杉君の裏切り者ーーーーーー!」

「て 店長!」

 

何か不味い事でも言ってしまったのか?

店長は涙を流し そのまま店の外まで走り去っていく

まだ店は営業中なんですけど……

 

 

「はぁ……………それじゃ作りますか」

追いかけるのも面倒だ ぐれた店長の相手は真弓ちゃんに任せ

幾つか必要な材料を問いだせば調理の準備を始めた

手に持ったレシピには抹茶プリンの作り方が記載されていた……。

 

 

 

 

そして2時間少しが経過

 

「完成だ 抹茶プリンとか初めて作ったな」

「おお 先輩流石です!」

「これは真弓ちゃんの分ね バレンタインのお返し」

「あ ありがとうございます! えへへへ」

「そんな嬉しいもんか?」

「先輩のお手製は中々 食べれませんから それでこれは誰に あぁ聞かずともわかりました

 ちゃんと渡してくださいね 先輩」

「心配すんな ちゃんと渡すさ」

 

実はこの後輩からもバレンタインとしてチョコを頂いていた

三玖のチョコと良い 鼻血が止まらず 貧血気味の2月だったなと当時を思い出す

一生分のチョコを食ったと言っても過言じゃないな

うんうんと頷きながら片付けの準備を始めていたが『ここは私がします 先輩は三玖さんの元に行ってあげてください』

 

「気の利く後輩だ じゃ俺は帰るな 真弓ちゃんも帰り道気をつけて」

「はーーい さようなら」

 

 

 

 

自転車に跨りそのまま直進 目指すは中野姉妹のアパートだ

 

 

 

 

 

「久々だな ここに来るのも あいつらはいるよな…渡すにしても

 三玖が出てきてくれれば一番だな」

 

最近会っておらず気まずいのもある

一番は説明が面倒だ

玄関前に何時までも立ってたら変質者と思われるし インターホン鳴らすか

『はーい』と聞こえる声 誰だ 頼む三玖でありますように…珍しく神頼み

 

「どちらさま…………!!…コータロー!」

「三玖か神頼みが効いてくれたか…」

「あの コータローだよね」

「はい みんなの幸太郎君です どうした? 最近変だぞ」

「な 何でもない そ それでどうしたの」

「悪い 本題だ渡すもんがあんだよ」

「渡す物?」

「これ お前らで食べてくれ プリンのセット」

「あっどどうもありがとう」

 

玄関から顔を出したのはパジャマ姿の三玖だ

いきなり現れた俺が言うのも変だけど空ける前に外を確認してくれないか心配になる

渡された箱を不思議に見たあとお礼を述べる

 

「ん……抹茶プリンがある」

「何故今開けた?……まぁ うん それはバレンタインのお返しだ」

「!……コータローが私にお返しでも私はあげれてない……」

「あれだけチョコ貰ったんだ 俺の中ではバレンタインとして認識されてる」

「そうなんだ……そうなんだね ありがとう コータロー」

「お返しのプリンの形は少し 不格好だけど それなりにはいける……」

「愛情でしょう?」

 

その通り料理は愛情だ 誰かに食べてもらいたい

喜んでもらいたい その気持ちが一番に大切なんだ 

彼女の『ありがとう』という言葉を聞くと胸が温かくなり何故だろうか鼓動も少し早くなる

不思議だな……。

 

「そう言う事 俺は食べて欲しくて作ったからな  あとさ 悪いな最近来れなくて」

「ううん コータローは学校で毎日 勉強見てくれてるから」

「家庭教師として どうなんだと言いたくなるけどな はぁ…」

 

期末試験も終わり春休み明けまで大きな試験は来ないとは言え

やはり勉強は見てあげるべきだと思っている

実際に行動には移せず 学校で昼休みや放課後に見る程度

無賃だからと投げ出す程俺は愚かではない もう少し生活さへ落ち着けば、また何時ものようにこの家に集まれる…。

 

「それじゃ みんなにもよろしく おやすみ」

「あの コータロー 」

「なんだ三玖?」

「コータロー はこ こいを」

「うーん?」

「な なんでもない おやすみなさい」

「あっはい おやすみなさい」

 

渡す物を渡し 軽い談話

それが終われば俺も帰宅だ

挨拶が済むと同時だ 三玖に裾を引っ張られた 顔を向ければ何故か赤い

口ごもり言葉も聞き取りにくい

聞き返そうとするが そのまま扉は閉められた…………

 

「えぇー…」

 

卒業生との因縁さえ終われば後は万々歳 何も問題は起きないとそんな軽い気持で俺は今を生きていた

ずっと続くと思っていたこの時間 徐々にだけど確かに動き出していた

 

 

 

 

「三玖ー 誰だった…?」

「コータローがみんなに差し入れ…」

「こ 幸太郎君が来たんですか!」

「今はバイトが忙しくて来れない ごめんだって」

「おやつで釣るとか本当に私ってあいつからしたら 妹のままなのね…。」

「あっはは まぁ せっかくお兄さんが持ってきたんだし食べよう」

 

「えっ…またプリン」

「隣の紡木さんもお祝いにプリンくれたよね…」

「こう言った品は重なるとも言います じゅるり」

「五月 よだれ」

「あっすみません」

「あれー 三玖のだけ抹茶だー なんでー」

「秘密」

 

幸太郎が差し入れとして渡したプリンの詰め合わせ

何とも不思議な事に隣に住む雨宮紡木も似たような品を彼女達に期末試験のお祝いとして送っていた

偶然と言うのは何度も重なるものだ 気にするのは後回しと

彼女達は受け取ったそれを手に取れば美味しそうに口に入れる

 

 

(コータロー とても美味しい 私もコータローに負けないようにしないと

 きっとこのままじゃいけないんだよ 次はコータローに気持ちを聞かないと)

 

(と言うか…コータロー君の差し入れはわかるけど なーんで 雨宮さんは私たちの期末試験のことどこから聞いたんだろう? 本当不思議な人だな…。 )

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