上杉幸太郎と六等分の思い出   作:Aikk

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第六話 不良少年と家庭事情

「親父 今帰った」

 

「勇也さん 今帰りました 遅くなってすみません」

 

「上杉君?………… あぁ どうも夜分遅くに申し訳ありません」

 

玄関を開ければ既に夕食の準備を始めている

我が家の大黒柱上杉勇也さん 俺たちの父親だ

『よう 無事に帰ったか』とこちらに返事をしてと思えば

こちらを見れば目を丸くしている

その反応は当たり前だよな………。

らいはは入るや否や鍋の中のカレーを取り分ける

五月も靴を並べそのまま中へと入って行く

 

俺も鍵を閉めた後、鞄を置き

まず初めに 母への挨拶を済ませた

 

「お母さん ただいま帰りました」

 

「お母さん お兄ちゃん達が女の子を連れてきました」

 

「らいは いいからそう言うのは報告しなくても」

 

 

母への報告は大切だろう?

らいはどんな時でも良い子なんだよ

それぞれ写真に写る母への挨拶を終えると席につく

狭い家だが、俺達が暮していくには十分だ

今はテーブルを囲むように

勇也さん らいは 俺 五月 風太郎と上手く円を描く形で座っている

 

「上杉家 特性のカレーと卵焼きでーす お口に合うと良いんだけど」

 

「とっても美味しそうです」

 

「ぷっはーー」

 

 

出された料理を俺たちは囲み手を合わせる『いただきます』

勇也さんは早速と牛乳を飲んでいるが

『一週間前じゃねーか』と言いながらも飲み続ける

 

「ちょ 勇也さん お腹壊しますよ」

 

「これくらい 何でもねーよ ゴクゴクゴク」

 

「お嬢様に庶民の味が分かるかねー」

 

そういう偏見はやめておけ風太郎

こいつ何だかんだ中野家での出来事を根に持ってるようで

皮肉交じりにもらすが、らいはにお盆で叩かれている

 

「っははは そんなこったから お前は俺やこいつ見てーにもてねーんだぞ」

 

「勇也さん 冗談はやめてください」

 

「謙遜すんなよ 幸太郎 っははは」

 

「上杉君………?」

 

「何だよ 五月 こえーよオーラしまえ 今のは勇也さんなりに小粋なジョークだよ」

 

「いえ………私は何も知りません ふん」

 

今日の昼時の悪寒が再来してきやがる………。

左隣からぞくっとする寒気を感じたが家の雰囲気もある

すぐさま収まってくれた

五月さん………怖えぇよ

勇也さんも俺らを見て笑っているが、こういった事は全然笑えないんでまじで

勘弁してほしいです。

 

「あっそうだお兄ちゃん 家庭教師ちゃんとやってきた?」

 

『『あっ!』』

 

らいはの何気ない一言で風太郎と五月の声は重なった

二人は軽く目配せするが、口を紡いでしまう

 

「あぁ らいは 勿論だ 俺も一緒なんだぞ 大丈夫に決まってんだろ」

 

(上杉君 何でそんな嘘を)

 

(五月 今だけで良いんだ 家にいる間は 会話を合わせてくれねぇか………妹の泣き顔は見たくないんだ)

 

 

(上杉君の頼みなら 仕方ありません)

 

「どうしたの 幸太郎お兄ちゃん?」

 

「うーん 明日の予定を話してたんだ」

 

「はい 明日は何処を教えてもらおうかと」

 

らいはは何処か安心したように胸に手をやる

大丈夫だ らいは俺はお前を絶対に泣かせない 嘘でも何でもついてでもな。

 

「でも これで安心したよ これで借金問題も解決だよ」

 

「らいは お客さんの前だぞ」

 

「あぁ ごめん」

 

「少しくらいいいだろ」

 

「幸太郎まで…………」

 

人前で言うような事ではないが、口に出てしまうくらい妹も安心出来たという事だ

 

 

ーーーーーー

 

 

ーーーー

 

 

ーー

 

 

 

「お邪魔しました らいはちゃんご馳走様」

 

「では 勇也さん 俺もバイトがあるんでこのまま彼女を送ります」

 

「おう」

 

 

上杉家での時間もあっという間に過ぎて行った

会話の中でぼろが出ないように最善の注意を払ったつもりではいんだけど……。

勇也さんには気付かれてそうではある

五月の隣に座る 風太郎は内心ドッキドキだっただろーな

俺もそうだし 何より話を合わせてくれたこいつも相当気を使ってたしな

 

食事も終わり 五月も帰宅することとなり

俺自身もバイトがある為 このまま彼女を近くまで送って行く事になった

じーっと居間の方から『頼むぞ』と言ったような視線が飛んでくるが

風太郎に言われんでも分かってるわ……。

 

「五月さん!」

 

「はい」

 

「幸太郎お兄ちゃんは 口は悪くて 見た目も怖い 面倒くさがって人の話をする―したりする人ですけど それでも困ってる人は助ける人なんです! 勿論風太郎お兄ちゃんも良い所あります! だからそのまた食べに来てくれる?」

 

 

「勿論です 頭を使うとお腹が空きますから またご馳走してください それに

 (らいはちゃん私は知ってますよ……彼が優しい人だって事は)」

 

 

口が悪いのは自覚してるし 見た目も分かってる

そこまで面倒くさがってたかぁ?でもそうやって俺たちをフォローしてくれるらいはが居るんだ

俺も諦める訳にはいかねぇな……。

風太郎の奴はチラッとこっちを見ては笑ってやがるし

 

ただ隣でにこやかに微笑む五月もそれは作り笑顔ではない事を俺も分かっている

今こうして隣で笑ってくれている少女 この子をこういう笑顔を浮かべれる状態で

共に勉強がしたいもんだな。

 

 

 

「じゃ 行ってきます らいは ちゃんと寝るんだぞ 勇也さんでは」

 

「お兄ちゃん……事故だけには気を付けてね」

 

「幸太郎 きーつけて嬢ちゃんを任せたぞ」

 

家族に見送られ俺と五月はアパートを後にした

事故か夜は特にあぶねぇからな 夜間はきぃつけないとな

 

 

 

ーーーーーー

 

 

ーーーー

 

 

ーー

 

 

帰り際俺はタクシーが来るまで五月と軽く話していた

家の事は深く突っ込んで来なかったのは幸いだ

彼女から見て実の父親に対する俺の接し方は少し奇妙に見えてた事は、分かっていた

何度かこちらの顔色を見てきていたからな………

 

 

「上杉君、あの……事情察しましたけれど ご協力は……。」

 

 

「気にすんな……泣き落としなんて事すっと思うか? しねーよんな事」

 

「知ってます あなたはしないと……。

  けれど 勉強は私なりにやり遂げて見ようと思います。

 それでも家庭教師を続けると言うなら みんなをよろしくお願いしますね。彼は、あんな態度でしたが、上杉君は悪いと思ってませんから……。」

 

 

「了解 明日はまた午後一に風太郎と行くから 三玖や二乃 一花に声かけてくれ。四葉は来てくれるだろうからな…………。後は勝手に進めるさ んで勝手きままにお前に声をかけるかもな?」

 

五月は言った 『家で勉強教えるならどうぞと私は知りません』

自分の問題は自分でやりますと………。

 

一応では、あるが家に入る了承は得たのだある程度は自由に動けるというのは大きい進歩だ

けどな 隣で勉強会開いてるのに 一人で勉強してる人間を無視出来る程淡泊ではない

五月は『悪くない』そう言ったが俺本人はまだ自分を許せてない

俺は俺なりに五月達に接するぞ んで全員を笑って勉強させてやる!

これが俺のやり方だ 風太郎…………。

 

それにこいつには世話になった貸しが残ってんだ

何でかしんねぇけど俺が一人だと付いてきやがるし

 

本人はと言えば鳩が豆鉄砲を食ったよう面でポカーンとしてる

 

「えっ…………」

 

「今日 焼肉定食肉抜きに焼肉が追加されたしな トッピングの分は、家庭教師と関係ねーから」

 

「いえ それでは上杉君に負担が 家庭教師とかわらないのでは!?」

 

「んな事 かんけーねぇよ 受けた恩は返す 困ってるなら助けんだよ」

 

「…………!!」

 

「どうした 耳が赤いぞ?」

 

「しっ知りません!  あと上杉君…」

 

今日散々言われているが、『上杉君』って人間はこいつの周りには二人存在する

家に来れば何と合計4人もいるわけで、今後付き合っていく中で色々と不便だ

四葉だって『上杉さん』『お兄さん』と分けてくれたんだ

五月にもそれぞれ呼称で呼んでもらわねば…………。

 

 

「あぁ その上杉君ってやめてくれないか 【上杉君】は二人いるしな 呼び方分けてくれ…あいつを風太郎君で 俺はそのまま」

 

「拒否します」

 

「ひでぇ、嫌われようだな なら 『幸太郎』って呼んでみるか?」

 

「あっ あの良いんですか?」

 

「上杉君って混同するよりましだ 言ってみ」

 

「うえs…… 違う 幸太郎  【上杉幸太郎君!】 」

 

「上出来 これから頼むぜ 中野」

 

「だから 私は五月 中野五月です!」

 

「っはは…冗談だ 五月だろ」

 

このやり取り今日だけで何回しただろか

人とこうやって話すの案外悪くねぇかもな…………。

少しばかり彼女をからかった後暫くすれば

呼んでおいたタクシーがやってきた

彼女はそれに乗ると自分が住むマンションの住所を教え目的場所へと向かう事となり

俺も彼女を見送ればそのままバイトへと向かう

 

「あの 幸太郎君 言いたい事が」

「んだよ?」

「私達は全員…………」

「その件か 俺は予想はしてる 風太郎は多分 分かってねぇだろな」

「あんな事言っておきながら、すみません」

「あやまんな………んじゃ運転手さん よろしくお願いします じゃな五月」

「幸太郎君も バイト頑張ってください 後道中気を付けてくださいね」

 

軽く手を振り彼女も振り返す

タクシーが見えなくなった頃に俺は自転車に乗り

ペダルを動かした。

 

  彼女の言おうとした事 『私達』  

  それは【私達全員が赤点候補】と言う事なのだろうな

  あの姉妹それぞれ難ありだし

  やる気だけはある四葉もノートにお絵描きしていたんだ

 勉強何て中々しないんだろう

 そして依頼された風太郎 あいつの性格だ

『誰か一人』と勝手に解釈していてもおかしくない

 

「面倒だなぁ  まぁー でも面白いからあいつには黙っておくか っふふふ……何か久々に楽しくなってきたな」

 

 

その日バイト先の店長から『上杉君 にやけ顔が怖いよ』と言われてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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