上杉幸太郎と六等分の思い出   作:Aikk

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風太郎に四葉 二乃
幸太郎に三玖 五月 一花
この構図で進めているとここが最大の難関の一つな気もします
ある程度は原作沿いですが基本は幸太郎メインで進みます
どうなるのか不安



第六十九話 不良少年とスクランブルエッグな恋模様1 

「「ヤッホーーー!!」」

ヤッホ― ヤッホー

 

絶景とはまさにこの事 大きな山を前に

勇也さんと妹は大きな声をあげそれは反響しやまびこして返ってくる

何て微笑ましい光景だろうか、温泉旅行が決まった際は少々不安があったが

彼等の姿を見ればそうも言っていられない

 

 

「まさか本当に当たるとは」

「お前の運に感謝しないとな」

「確率的にも商品券の方が高いだろう 不正か?」

「どんな疑心暗鬼の仕方だよ…………」

 

二人とは裏腹にどんよりとした空気を身に纏う弟は石の上でずっと座り込み

未だに当たった事が信じられないと呟き続ける

 

そうこの温泉旅行に行けたのは何を隠そう

弟である上杉風太郎の働きがあってこそだ 

先日の買い物際に3000円の買い物をした風太郎はそのレシートを応募券に

豪華景品プレゼントキャンペーンに送ったのだ 勿論風太郎は旅行なんて眼中にはなく

欲しい商品は一貫してE賞の商品券 B賞のペアリングが当たれば『売ればいい』と何とも夢の無い発言だ

 

その二日後 当選と書かれた封筒が届き 大きさから商品券と大きな期待を寄せていたが

蓋を開ければ大当たり 温泉ペアチケットだ

本人は絶妙に『いらねーーーー』と顔で表していた

そのまま破棄も出来ず売るにも売れない それにらいはの目にも止まり

『全員で温泉だーーーー』と大はしゃぎ 勇也さんも大はしゃぎ楽しそうで俺は満足です

 

ただ一つ大きな問題があった このチケットはペア つまり定員が二人までと現実は非情だ

せっかくの休み俺も連れて行きたいと話す妹の考えを無下にできない

そこで勇也さんと俺は自腹で 予約し

諭吉が消えると言う中々の出費を食らった ただ妹の笑顔が見れるならこのくらい安いもんだ

それに正月明けからバイトとハードな日常で3月までの稼ぎは去年よりも多い

 

と温泉旅行と家庭事情を交えつつも無事にこの場所へと訪れた

 

ため息続きの弟 あの一件が未だ尾を引く形になっている様子だが

変化はあった  買い物が終わって帰宅した際にこいつから相談を受けた

 

『二乃に告白された 返事はいらないと来た 幸太郎少しでいい力を貸して欲しい』

まさか直球で直線で俺に相談が来るとはやや予想外

友人の友人とかぼかして来るとばかり思っていたがこれも成長か

本人曰く『恋バナの成果』 全く意味が分からんぞ… 何が合ったんだ?

 

 

「風太郎 今は少しその事を忘れろ あいつも返事はまだ良いって言ったんだろう」

「俺の記憶に間違いが無ければ確かにそう言っていた筈だ」

 

恋愛にはやや否定的な自分がまさか誰かに告白なんてされる日が来ようとは

これも彼の成長にも欠かせない それに告白されたと言う事はそれだけ彼女達からの信頼を弟は得た

今は沢山悩め どんな結果になれお前は一歩一歩進める筈だ

 

 

「なんだろこれ お兄ちゃん写真撮ってーー」

 

「あっ…………携帯とか使わな過ぎて充電がない」

「俺はスマホを忘れた…」

 

使えないのは俺達だ せっかくの旅行に二人して記録媒体が使用不能

鞄を確認すれば充電器だけ入っている

残念がる二人は残念な俺達を置いて先に宿まで向かって行く

 

「虚しいな それは」

「世の中そんなもんだろうな」

「まぁ 誰からも連絡来ないんだ 別にいいか」

「卑屈だな」

「卑屈過ぎてぐれた幸太郎には言われたくない」

「へいへい さっきも言ったけど今は旅行を楽しめ お前もヤッホーって叫んで来いよ?」

「もーやけくそだ うおおおおー」

「青春だな……………」

 

少し離れた先にある頂上まで走りだす

生きて行く中でぶち当たるその悩みに彼なりに立ち向かう姿を見ると心の底から応援したくなる

お前がどう想いどうして行きたいか、この一年で考えれば良い

 

 

 

「「やっほーーー!!」」

 

声が二つだ どうやら先客がいた

物凄く気まずいだろうな からかいに行くかな

 

 

 

「おーい 風太郎……」

「やっぱり コータローだ」

「お兄さんだ!」

「そりゃあんたもいるわよね」

「幸太郎君です」

「嘘…」

「こっちが嘘ーだよ まさかお前らがいるとはな いやー世の中狭いな」

 

頂上まで出向けばそこには良く目にする五つ子の姿

どうやら先客とは彼女達の事でこいつらは、俺達とは違う道から登って来たようだ。どうりで会わねぇ訳だよ…

驚きを隠せない 6人とやたら冷静な俺 まぁ立ち話もと思い 一歩踏み出した途端に

背筋も凍るような殺気にも似た何かいや…間違いなく殺気だ

 

ふり返れば彼がいた せっかくの旅行だと言うのに何て顔してんだか…

 

「まさに 家族旅行だ だが気をつけなければいけないよ 旅にトラブルは付き物だね」

 

「どうも 中野先生」

 

「やぁ 上杉幸太郎君 お互いトラブルには事欠かないと言える」

 

「全くその通りですね はぁ 帰りてぇー」

 

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

 

「この鐘は随一の観光スポット『誓いの鐘』です 

 この鐘を二人で鳴らすとその男女は永遠に結ばれるという伝説が残されています」

 

「は…はは…どこかで聞いたことある伝説だ そういうのどこにもあるんだな コンビニか!」

 

バシッ

 

「江端さん とても素晴らしい話です ありがとうございます。 ほらこっち来い風太郎……」

 

父親の登場で遂に壊れ始めた弟は思考回路がショート寸前

いらんツッコミまで入れて 中野家からの視線がとても痛い かるーくどつけば一旦離れる

 

(冷静になれ)

(慣れるかよ なんでお前はあの父親と普通に会話できるんだ)

(面白い事いうな あの人と俺は皮肉しか言ってねーよ とりあえず深呼吸だ)

 

冷静さを取り戻させるため弟を諭し

深呼吸をするよう言い聞かせる『深呼吸ってどうやんだ』

あぁー本格的にダメだこれは…

 

それにしてもだ 風太郎程ではないが俺もこの状況には少なからず思う所はある

今彼女達は父親とは別にアパートに住んでいるはず

力は借りず出来る範囲でやり遂げると 

 

だがどうだ目の前には秘書である江端さんのみならず

あの男まで旅行を満喫している 風太郎が二乃を連れ去った事が原因か

それとも俺が宣戦布告した事が頭に来たのか…

どちらにせよ 父親といるという事は和解したと考えるべきだろう

 

(さて何が起きたのか…)

 

表情は全く読み取れないが娘達と過ごす休日だ

俺達は完全に蚊帳の外 部外者と言える 邪魔にはならない様しかしどうにか事情を聞きたいものだ

 

 

風太郎は早速行動に移り 一花や四葉に話しかけるが悉く失敗に終わる

助け船を出すべきかと考えていれば 彼女 中野二乃の方から風太郎に接触をしている

これはある意味で好機だろう ここ最近風太郎中野姉妹 特に二乃とは距離を開けていたんだ

進展を望むにしろ 彼女と話さなければ何も始まらない

 

 

「に…二乃…」

「何よ 言いたいことがあればハッキリ言いなさい フータロー」

「これは予想以上だな…」

「二乃 今の呼び方 どうかしたの?」

 

呼び方のトーンが完全に三玖と被っている

隣で準備をしていた三玖本人も反応してしまう

 

「えっ?  私たちも出会って半年が過ぎたわ そろそろ距離を詰めてもいいとは思わない?」

「まぁ それは常々考えてはいるけど…」

「あ そうだわ! あだ名とかどうかしら? 三玖なんか考えなさいよ」

「え 私なんで」

 

確かに出会って半年以上経つな…って言いながら こいつら半年より前に出会ってんだけどな

修学旅行の際に顔を合わせてる筈だろうし やっぱり忘れてるのか?

 

その半年記念として風太郎のあだ名命名を任さられた 三玖は突然過ぎてテンパり始める

可愛いな…

 

「 どう しよう 上…すぎ 風太郎 うーん? フータローだから フー君 ?」

「へぇ…いいじゃない それとあんたも何かないかしら?」

「俺は何でも良いさ? コータローでも幸太郎でも上杉でもさ」

「うーん コータロー?」

「それは駄目! その呼び方は」

「な なんでよ ならコウってどうかしら」

「随分と懐かしい答えが出て来たな 二乃さんよ」

 

コウとは俺が幼い頃に呼ばれていたあだ名の一つだ今ではみずき姐しかその呼び方をしていない

意味はないと言い張る彼女 もう過去の上杉幸太郎とは決別し今の俺を見てるんだ

にぃと言う語尾が着かないのはそれを表しているのかもな

 

「別に意味はないわよ いい加減あんたの呼び方決めないと面倒だからよ」

「コウ…くん」

「なんだ三玖?」

「な 何でもない それより二乃準備しないと」

「はいはい 分かったわよ」

 

「なんだ一体」

「なんか 二乃だけじゃな みんな余所余所しいんだけど…」

 

様々な事が起こり風太郎は当然困惑

確かに二乃の様子はおかしい 特に一花だ 俺や風太郎を避けるようにして動いている

何か原因があるとすればこの数日で彼女に変化があったのか もしくは

あの会話を聞いた第三者は俺だけではなく 一花も含まれていた その可能性もある

 

(まさか…二乃だけじゃない 一花まで風太郎が好きなのか 罪な弟だな)

 

 

 

 

 

ジー

 

 

「ん なんだ五月?」

 

「……」

 

「五月くん 何をしているんだい? 江端から弁当を受け取ってくれ」

「っ…………」

「あ あの……先日は」

「さぁー 準備を始めよう 久々に全員揃ったからね 家族水入らずの時間だ

 

意味ありげにこちらをじーっと見つめる五月に声をかけたが

あの男に遮られ 家族 と言う言葉を強調すれば五月を連れてシートを広げた方へと戻って行く

 

 

「嫌味な男だな 相変わらず」

「おーい 幸太郎  風太郎 おせーぞ 心配で戻ってきちまった」

「あれー なんでみんないるのー?」

 

下山して先に宿に向かっていた勇也さんとらいはが何時までもこない俺達を心配し戻って来てた

やばいやばい こっちも家族水入らずだったの忘れる処だった……。

俺たちの後方に中野姉妹を確認するとらいは駆けだした

 

 

「らいはちゃんだー」

「やはり 幸太郎君たちも家族でいらしてたのですね」

「じゃあ あの人がお父さん? コータローくんは将来ああなるのね」

「むぅ 似てるわね」

「コータローのお父さんだ…」

 

「兄より お姉さんですか 悲しいねぇ」

「ありゃ マルオか…」

「勇也さん 偶然にも同じく家族旅行だそうです」

「へぇー これは面白いな」

「俺は少々息苦しいですけど」

「お前は本当にあいつが好きだな がはは」

「勇也さん 目大丈夫ですか?」

 

声をかけるつもりはないのか、彼がいる事だけ確認すれば

すぐ戻るぞーと俺たちに声をかける

それにしてもどう見れば俺があの男を気に入ってる風に見えるんだよ

一度勇也さんは眼科に行くべきだ 勿論俺がお金を出すけど

 

「雨が降ってきたね」

 

山の天気は変わりやすい 登山家は誰しも雨を警戒すると何かで読んだ事がある

秘書に片付けを一任すればあの男は姉妹に声をかけさっさと下山していく

 

 

「えーっと……」

「あはは仕方ありませんね」

「じゃあね フータロー  それにコータロー」

「多分同じ旅館よね」

 

「たく 勇也さんが来たから 本当にあの人は……」

「あの 幸太郎君」

「なんだ 五月? 俺の顔に何かついてるか」

「えーっと あの幸太郎君と上杉君に後程お話があります

 ご足労をかけますがよろしくお願いします。」

「了解だ……五月 せっかくの家族旅行だ 楽しめよ」

「はっはい では」

 

話して分かった 五月は何処か俺を避けている

丁寧口調は相変わらずだ 俺に対する接し方も普段と変わらない

ただ何処か壁のような物を距離のようなもの感じてた

 

「お兄ちゃん 雨降ってる?」

「今から降るんだろうさ……面倒な事が起きそうだ」

「同感だ 話ってなんだ……」

 

空は晴天 雨なんて降る気配は一切なく

ピクニック日和と言えるだろう……

 

五月の話とは気になるが、今すぐ追って聞くのは気が引ける

時間をおいて俺達も下山しよう

 

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

「わぁ お化け屋敷みたい」

 

旅館には着いたが、とても営業してるようには見えない

何度も確認するが、やはりここで間違いなく  

あとは五月に会うだけだ 風太郎は『何時話せば良いんだよ』と確かにアバウト過ぎる

時間は指定して欲しかったな 今の時間帯なのか明日なのかハッキリして欲しかった

 

 

「あのー・・・中野さんって何号室ですか?」

「…………」

 

先に中に入った風太郎はチェックインカウンターに座る老人に話しかけるが

黙殺されている っかこの人寝てるのか?

 

「これはダメそうだ……うーん」

 

「どうした?幸太郎…お前も何かあったのか」

 

「いやー…何でもねーよ」

 

何だろうな この爺さんだが何処かで見た気がするんだが

考え過ぎだ…。 奥に進む風太郎を追って俺も中に入って行く

 

仲居さんを待つ二人には適当な理由をつけて後で合流する事になった

 

 

 

「風太郎……手分けして探すぞ 俺は二階に」

「俺は一階だな」

 

闇雲に探しても見つかる訳はない

ここは二手に分かれ五月を見つける

連絡手段がない俺は見つけ次第 お風呂場近くで合流しようと風太郎に話そのまま二階に向かった

俺の勘だが簡単には解決しそうに無さそうだ

 

 

 

「五月は何処だ?…………」

「何故 ここに君がいるんだね 上杉幸太郎」

「そりゃ ここに泊まるからですよ それじゃ俺はこれでって 何ですか?」

「そこから先は僕たち家族の部屋だ 君が立ち入る場所じゃない」

「はいはい すみません 向うか…………って今度は何ですか?」

 

二階の廊下 曲がり角付近でまるで誰かを待つようにして腕を組む中野先生と出くわした

一番面倒な人間だ 俺たちが五月を探していると知れば妨害されるのも確実だろう

一言詫びを入れれば回れ右と方向をかえ 足を動かすが、何故か声をかけられた

 

 

「上杉幸太郎君…………彼から君に手紙だ」

「まさか幹雄さんから…………」

 

伝言の次は手紙かよ

あの人も大概暇なんだろうな 胸ポケットから取り出した一枚の便せん

それを渡せば さっさと戻るようトーンの低い声で追い返される

 

 

「たく 面倒な人だな…………幹雄さんも俺に一体なんだろうな?」

 

渡された手紙を一度ポケットにしまい込めば俺は五月の捜索を再開した

 

 

 

「見つからねー あいつは忍者か何かか?」

 

五月は確かに見た だがそこに行っても既に別の場所に移動している

追いかけても追いかけても逃げられる

話があるなら何処かで待っていて欲しんだけど…………。

 

 

結局は成果はなし

一旦風太郎の元に戻った俺は仲居さんに厳重注意を受けている弟という構図に苦笑い

女子トイレの前で待つのは流石にダメだろう…………

 

 

 

「はぁ……………」

 

あの後部屋まで案内され 家族で温泉へと向かった

躊躇っていた俺は一応確認すれば

『安心してお使いください』と傷ありの俺でも温泉に入る許可を得た

その間に済ませたのか勇也さんもらいはも風太郎も先にあがっていた

 

 

「ふぅ~…たまには温泉も良いもんだな。でもここからさき動けば、無駄がないかだな?…五月とは中々会えないしな」

 

せっかくの家族旅行から まさかの中野姉妹登場

更に追い打ちとばかりに様子のおかしい彼女たち

加え話があると言っていた 五月は捕まらない…中野父から釘も刺される…それにあの人からも手紙まで来ていた…………。

軽く目を閉じ一気に起きた事を頭で整理する

うーんと唸るが、どうも噛み合うピースが見つからない…確かに中野の姉妹が中心だが、それだけだなのかと新たな疑問も生まれてくる

 

 

 

「せわしねーな…………。 はぁ上がるか」

 

何時までも風呂の中で考えていたら逆上せちまう

気持ちい湯だったが一旦部屋に戻り風太郎ともう一度作戦会議だな

脱衣室まで戻り 着替えを取ろうとした時 俺はある違和感とあるものが増えている事に気づいた

 

 

「まーーた 手紙かよ」

 

着替えの上には一枚の紙が置いてあり

内容は『0時に中庭で』 回りくどい…………。

 

 

「っか…………誰か俺の着替え漁ったか?」

 

手紙は勿論だ だけどおかしい 中野先生から渡された手紙は確かに左側に入れた筈だ

でも風呂から上がればそれは右の方に閉まってある………。

(五月のやつ 手紙を置いて 更に勝手に俺の手紙まで読んだな)

 

まったく あいつにも困ったもんだよ

下手な隠し事は全部見抜かれる 怖いくらいな程に俺の生活を脅かす

中野五月の暴走を俺は止められるのか?

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

 

その夜 俺は風太郎に手紙を見せれば二人で指定された場所まで向かう事になった

下に向かえばあの爺さんが夕方と同じようにその場で居座っている

中庭は何処か問うが返事は来ない それらしい場所を探すと風太郎は別方へと向かって行き

俺も中庭に出れる場所を探した

 

 

 

「見つからねーよ 何処が中庭に繋がってるんだ!」

 

 

探す事30分程 初めて訪れた旅館で真夜中ともなれば自分が何処にいるかすらも判断出来ない

予想以上に広く このまま歩いていれば迷子になってしまう

目ぼしい場所は見つからないとなれば風太郎の行った方向が正しいのだろう

来た道を戻ろうと振り向き そのまま直進し 暫く歩いた先の曲がり角だ

 

 

ドン

 

「おっと…………大丈夫か って五月!」

「コ 幸太郎君 何故ここに」

 

出会いがしらぶつかった人物は探していた五月だった

慌てていたのか前方確認もせずに突っ込んで来た

尻もちをついて 俺が目の前にいると分かれば声をあげる

『しー』 口元に指をつけ 声を下げるように指示…。普段なら適当な理由で誤魔化せるが、ある意味では密会のような物であり…。

せっかく人がいない時間帯を指定してたのに意味もなくなるしな…。中野先生にバレる前には、詳しい話を聞きたいね…。

 

 

「お前が俺達を夜中に呼んだんだろうが……たく そんな慌ててどうした?」

「いえ 何もありません…………っ」

「お前まさか…………見せてみろ? 少し血が出てるな」

「あの コー 幸太郎君」

「旅先だからこそ 持ってきて良かった」

 

 

抑える足を見せてもらえば ももの裏から少し血が出ていた

浴衣の裏ポケットにしまっていた絆創膏を貼り ばい菌と傷が広がらない様軽い処置

今はこれしか出来ない 部屋まで戻れば鞄の中に道具は一式揃えてあるんだが

今は無理そうだな…………。

 

「悪いな 転んだ時に擦りむいたみたいだ」

「ち 違う これはさっき」

「五月だよな?」

「あっ あのこれは先ほど上杉君と話してる中で階段にぶつけてしまい」

「おう そうか………」

 

目の前の少女は五月だ 暗くて判別しにくいがその話し方と髪型はあいつしかいない

多少言葉が崩れ 俺は違和感を覚えたが本人それを直し話を続ける

それでも何か解せない…………。 本当に五月か?

 

 

「それで話ってなんだ」

「あの……幸太郎君はこの関係をどう思いますか?」

「関係ねぇ…以前は家族って答えたな 俺には妹みたいなもんだ、んで風太郎はパートナーって言ってた気がするな」

「はい 幸太郎君は自分でその答えに行きつきました そしてもう私たちはあなたの 妹でもパートナーでもはありません…。幸太郎君 この関係を終わらせましょう…。」

「まぁ兄ってのは俺が自称してる事だしお前らが言うなら…。それで終わらせるって具体的にはどう言う意味を示すんだ?」

「上杉君にも伝えましたが もう私たちだけで勉強は続けられます…。お二人の手を借りる必要はないと言う事です」

 

これは驚いた まさか五月から解雇を言い渡される日が来るなんてな

あの勉強を通して五月達は確実に成長した…。今では姉妹中で勉強を教え合える程までに問題を理解できている それに勉強が嫌いなだけで教えればきちんと生かせるし結果を示してくれた

きっとこの数日間 五月はこれからの事を彼女なりに考え頭を悩ませ

その先に導き出した答え それがここから先は自分達の力で成し遂げるという事だった

 

「そうか…………少し寂しくあるけどさ お前らがそれを選んだなら 俺はその背中を押す

 もし分からない事があれば聞いてくれ そん時は話聞くからさ」

「あの……それで 幸太郎君」

 

寂しいと言うの本当だ

何だかんだと過去に決別が出来たのはこの姉妹のお陰だ

こいつらといる事が楽しくもあり 居心地が良かったんだ

 

「部屋まで送るか? 中野先生がいるから そんな一緒に入れないけどさ」

「あっそう言えば…………は はいそうですね もう時間も時間ですから私はこれで」

「おやすみ 五月」

「はい おやすみなさい 幸太郎君」

 

 

去って行く五月に手を振り 階段の方まで戻るのを確認

暗い道だ 階段を踏み外さなければ良いけどな………。

 

 

 

 

「幸太郎 ! 五月 来なかったか」

「さっき部屋に戻ったぞ」

「なんで そんな悠長なんだよ 聞いただろう あいつらが」

「そうだな………」

「五つ子の祖父は現れし 五月から解雇されるし わけわかんねーよ」

「追いかけるのか? ならきーつけていけよ」

「何か知らんんがとりあえず行ってくる」

 

 

五月が向かった方に風太郎ダッシュで走って行く

きっと中野先生が立ってる筈だし 今日中に説得は無理だろう

詳しい話を聞くなら明日だ……。

 

 

「五月に聞きそびれたな 手紙勝手に読んだかどうか…………」

 

 

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