風太郎が祖父に弟子入りする際に一緒にいた人物は四葉に代わり
幸太郎が三玖と話す形になっています
感想などあればよろしくお願いします
朝になれば五月からの電話で目を覚ます
俺と風太郎の現代の利器は息をしていないならば誰なのか…………
上杉兄妹の中であと一人 五月と番号の交換をしている人間が存在する
らいはだ
何故朝から電話が掛かってきたのか 疑問が尽きないが
電話を出た風太郎は驚愕の表情で俺に伝える
『五月は昨日俺たちとは会ってないってさ』
それは確かに衝撃の事実過ぎる
となれば昨日出くわした人物はあの姉妹の中の誰かってことになる………。
「さて…目~覚ましますか…」
そうなれば早速行動だ
反対側とこちら側が現在行き来できない
中野先生が監視の目を光らせていると五月から知らされた
彼女から詳しい話を聞くには何か別の方法がある
うーんと考え込む間に 風太郎が『妙案がある』
うわー嫌な予感がする………。
それから風太郎の作戦は実行された
五月と合流する方法は一つしかない
色々と考えた結果として風太郎が出した結論は……
温泉で彼女と会う………なんて?なに?
「ぶっ飛ばすぞ?」
「違う違う 混浴じゃない つうか殺意高いな」
当たり前だ
俺でも怒るときは怒るし 色々と呆れてしまう
こめかみに手を当て何度か状況を整理
何と言うか風太郎は天才のわりに根本的にはおバカだよな………。
「じゃ 俺は先に向かう 幸太郎も後から来てくれ」
「はぁ……………何でこうなる」
先にお風呂場に向かった弟の姿に不安感はぬぐえないが
俺も俺で自分の用事を済ませてさっさと五月と合流しないと…
昨日預かった 幹雄さんから手紙だ
俺が風呂に入ってる間に 誰かが 俺より先に読んでいる
あの数分の間に何処だかと考えたが………五月が一番怪しい だって手紙を置いたのが五月な訳だし
理由は後から聞けば良いだろう さっさと読んでしまおう
『拝啓 上杉幸太郎様
この手紙は一旦中野先生に渡っている筈だ 彼も無関係とは言えないからそこは許してほしい
上杉君 君が無事に完治した事は水木から知らされた まずはおめでとうございます
そしてお疲れ様と言わせてほしい 僕は当時から海外で君が入院した際に戻れず
全部中野先生と水木に任せっきりだった すまないと思っている 』
「すごく 真面目だ 幹雄さんは何も悪く無いのにさ…」
真面目を絵で描いたような人物だがお堅い人でもない
とても話しやすく 何度かお世話になった人物だ……
水木姐の旦那である 坂下幹雄先生だ
中野先生とは友人らしいのかこうして彼を経由して俺の所に連絡をくれた
どうにも気に入られてるのか あの人は俺の将来を真剣に考えてくれている
手紙の内容と言えば ありきたりと言って良いのか
彼の現状と俺に対する労いの言葉など 何とも彼らしい
読み進めて行く中で俺はある一文に目が留まり
尋常でない汗を掻きだす
とてもじゃないがこれは他人に見せられるようなものではなく
プライバシー案件だ 五月に見られたと考えると少々厄介
あいつが公言するような人間ではないと俺は保障出来る でも それでもだ
「あいつに直接聞かねぇとな…」
手紙を鞄にしまい込み
着替えを持てば風呂場まで向かう
さーて 向うはどんなカオスな状況なんだろうな
ーーーーーー
ーーーー
ーー
風呂場に到着すれば既に風太郎が上がっていた
話は終わったと言うし 俺の出番は必要はなかったようだ
「はぁ……せっかくだし 風呂入ってくるわ」
「わかった 詳しい話はお前が戻ってからする」
「了解ですよ…」
作戦会議でもするのかな?
今の状況を知るのは 俺 風太郎 五月に三名かあの父親が見張ってる中でどう動くだろうな
弟の働きに期待するか…………
「あーーーやっぱ 朝風呂最高だな…はぁ…」
家族旅行で一人とはなんとも寂しくもあるが、温かい風呂につかれば、自然と力が抜けていく…おぉ脱力
一人というのもあり気を抜けば眠ってしまいそうだな。日々の疲れも吹き飛ばす…旅館の風呂…侮れんな
「こ 幸太郎君ですか?」
どうやら一人ではない 女子はお風呂が長いな………
はぁ……今日一番のため息だ
「風太郎はもー 上がったぞ今なら誰もいない」
「いえ 幸太郎君を待っていたんです」
「そうかい 昨日の事で何かあったか?」
「幸太郎君はどう思いますか? 偽五月の存在を…………」
偽五月とは面白い固有名を得たな 姉妹の誰かは
弟との話で彼女は彼女なりに偽物と共感出来る事があったと話す
「俺はまぁ…お前を含んで全員があの意見でいきたいって言うなら止めない
家庭教師としての役割が終わるだけだ…………」
「幸太郎君らしい 意見ですね あなたは何時も何処か私達よりも目線が高く一歩を見据えています
だから今回の話でも動揺しないのでしょう」
動揺しないのではない そう言った姿を見せたくないだけだ
実際偽五月には『寂しいけど』 そう口に出していた
今のこの時間を俺はずっと続けばいいと そう思っていたでもそうも行かないと来た
現に五月も前を向いて進もうとしてる…………。
「それで 五月は最近どうだった………俺も忙しくてな」
「最近って幸太郎君は何時も私やみんなを学校で気にかけてくれているではないですか?」
「それはそうだが 家での話だ 学校と家じゃ 様子も異なるだろ?」
「と言われましても…………。」
「俺は何か五月が遠く感じた」
「えっ 私がですか それはないです 私は何時も幸太郎君の事を///
あぁー 今のは聞かなかった事にしてください!」
「ぷっははは ごめん 俺の気のせいだ」
「少し 笑い過ぎではないですか?」
こいつは何時も自爆してんな………。
家庭教師をしてる時は当たり前のこのやり取りが何処か懐かしく思い
気づけば大笑いだ 学校でも変わらずだが
こうして日常でもこのやり取りが俺には当たり前になり始めていたんだ
「わりぃ…………お前はお前だ あれだずっとお前と話せなくて
寂しかったんだろうな………大切な友達だからさ」
そうだな これは確かに風太郎の言うパートナーとは変わっている
もう十分に友達だ 『俺は俺で友達と三年を過ごす』気づけばそうあいつ等にも宣言していたな
「…………あの 幸太郎君 一つ聞いてもいいですか」
「なんだ五月?」
「幸太郎君は 恋がしたいですか」
「恋? 何だ藪から棒に」
「いえ 少しの興味です……………したいと思いますか?」
こいつが何を求め この質問を俺にしているのか
どうにも理解が出来ない まさかとは思うけど
五月も好きな奴が出来たりしたのか………こいつらは可愛いしなモテない方がおかしいだろうし
って 今はそれは良い 俺に対する質問だよ
「少し 前向きになら検討はしてるかな 相手はいねぇーけどな」
「そ そうですか 相手 相手がいればいいんですよね」
「五月さーん 声がちいせーぞー」
「い いえ独り言です 聞きたい事は聞けました ありがとうございます」
「なら 良いけどさ もし何か悩んでるなら相談してくれ 話は聞くし協力もする」
結局五月が何を聞きたいのか俺には点で分からなかった
こいつが何かを悩んでいるのなら 力になれる範囲で力になってあげたい…三玖や一花 五月には散々力になって貰ったんだしな
聞きたいことはそれだけなのか、ないなら俺も彼女に聞いておきたいことがあるんだ…二人だけのこの状況を利用させてもらうか
「そう言えば 俺も五月に聞きたい事あんだよ」
「私にですか? 何の話でしょうか」
「とぼけてるならそれはそれで良いんだけどさ お前昨日手紙置く時さ 俺の服漁ったか?」
「服を漁る? 私は幸太郎君の着替えの上に手紙を置いたらすぐに戻りましたけど」
ん……? まさか本当に五月は俺のズボンを漁ってないのか……
でも確かにあの手紙は誰かが先に読んだ形跡があった
中野先生はある程度信用しているから先ずそんな事はしないだろう
もし 五月が言っている事が本当なら…犯人は別にいるのか
俺が風呂に入り 上がるまでの間に 五月以外の誰かが先に来ていた
そして手紙の内容を読み 五月が来たことで咄嗟に元の場所とは別のポケットに入れてしまった
そう言う事なのか…………
「五月 お前が手紙を入れる前 誰か出て来たか?」
「えーっと 私が来た時には…………
二乃が出てきましたね 四葉もいましたし 三玖や一花も見かけました」
「わかった つまりはお前以外が怪しいって事だな ОK了解だ 」
犯人候補が多すぎる 五つ子全員とか勘弁してくれ、つうか何で全員何事もなく混浴出入りしてんだよ…少しは恥じらえ…
「あの 幸太郎君 何かあったんですか?」
五月に相談して良いものか…………こいつが嘘を言ってる
可能性はないよな 五月は正直もんだ 俺があんな目に遭ってそれで嘘つく様な人間なら
どれだけ肝が据わっているのやら……
脳内で出した結論は たまには五月に相談しろ これで可決した
「知り合いから手紙が来てた それを俺が読む前に誰かが読んだ可能性がある」
「それは本当なんですか?」
「嘘言うかよ 内容を伏せるが 俺のプライバシーに関する事が記載されてる…ポケットに入れてた俺が悪いんだけど 封が切られてた…」
「幸太郎君は誰が怪しいと踏んでますか……」
「正直言えば 誰も彼もだ…………怒りはしないけど…形跡があれば気になるさ」
「…………わかりました 偽五月の一件が片付き次第 幸太郎君の手紙を読んだ人物を探しましょう」
「もしくは その偽五月と手紙を読んだ犯人が同一人物の可能性もある」
今までの前提として五月が手紙を置き その前に来た人物が犯人だと
だがそれが違う可能性もある 五月が手紙を置いたのを目撃した偽五月が
時間と場所を知り 偶然に俺の手紙を見つけたという線だ
「確かに そうなれば 私が見た4人の中から更に絞れますね」
「お前が出てった後だ 誰かが見てない限り 犯人像は見えてこねぇ」
「しかし 不思議ですね 何故幸太郎君の手紙を盗み見たのでしょか?」
「興味本位とかならやめていただきたい…………」
手紙の内容自体は俺の期末試験の点数や今後の方針がかかれており
お世辞にも人にお見せできるものではない
この一件が解決すれば、手紙を読んだ犯人の特定にも力を入れれる
「先に言っておく 犯人が分かっても それは俺と五月の胸に閉まっておこう
そしてそいつを責めない事だ 注意はするがそこまでだ」
「私も誰かを責めるような事はしたくありません その方針で行きましょう」
五月から承諾を得られた 興味本位でも見てはいけない
見られたくないものはごまんとある だから今回は厳重注意で済ませる
偶然だった場合は少しの注意で許してやろう
「それと偽五月だけどさ 足に怪我してる」
「怪我ですか」
「あぁ………軽い擦り傷だけどさ 血が出てたから絆創膏をはってやった」
「ま 待ってください つまり幸太郎君は偽五月の足を触ったという事ですか破廉恥です」
「へいへい すみませんでした」
ぷんすかとむくれてやがる
情報提供のつもりが墓穴を掘ったな上杉幸太郎よ
一応探す際には参考にすると言ってはいるけどやや不機嫌だ
「なんで 俺が弁解せねばならんのだ…………」
他人の事で悩んだり考えたり そればっかで痛い目を見た最初の二年
今ではそれも当たり前だ 姉妹の問題を解決し 仲の良い状態に戻す
五月曰く俺を呼んだ最大の理由は最近の姉妹感についてだったらしい
風太郎にも聞いていたようだが求める答えは何もなし
「悩み相談は受ける それと五月 五つ子を見分ける方法ってあるか?」
「見分けるですか………上杉君と違い 幸太郎君は私たちと幼い頃から過ごしてましたからね」
「やっぱ………気合と根性か」
「いえ 愛の力です!」
「ОK 俺の得意分野だ 料理も愛情 お前らを見分けるのも愛情か……やって見ますか」
姉妹の相談をするに辺り先ずはあいつ等を見分ける事が重要だ
5年前の俺ならば彼女達を一発で見分けられただろうが今ではブランクもあり
以前ほど見分けれなくなっている 愛が足りないな
気合 根性 愛情 その三つを駆使して見分けてやるか………。
「さて…………上がるか」
「…………幸太郎君」
「五月…………」
「ま 前にも似たような事がありましたね」
「悪い 戻るな」
「いえ 大丈夫です」
「俺が大丈夫じゃねーから!」
風呂から上がればタオル一枚の五月とご対面だ
中野家覗き事件の風呂上り目撃の再来だ 今回も完全に俺の不注意が招いた
混浴っては聞いていたが何で脱衣場まで繋がってんだよ……
とっさに風呂場に戻るが何故か五月にがっちりと腕を掴まれる
「やめろ 離せ」
「後ろを向いているだけで良いので 幸太郎君は絶対に覗きなんてしないと私は信用してます」
「っー…………わかりました さっさと着替えてくれよ」
「髪を乾かさないといけません…………」
「お前は俺をタオル一枚で放置するつもりか?」
「じょ 冗談ですよ」
「わかった 髪が濡れたままの方が風邪ひくしな だから早く着替えてくれよ」
卒業式の一件でトラウマを越えた筈なのに心臓がバクバクなってやがる
やはり女性が真後ろで着替えてるのは心臓に悪すぎる
「幸太郎君…………」
「なんだー」
「背中にも少し傷がありますね」
「ガードレールに直撃だったらしいからな そんときだろう」
俺の胸の傷は手術で出来た痕だ
背中の傷は車に跳ねられた時に運悪くガードレールの先にぶつかり切り傷が出来てしまった
これに関してはそれほど重大な傷という訳でもない
中野先生も『当たり所が悪ければ』何て言っていたけど当たりは良かったから無事だ
ぺた
「…………何だ 背中なんて触って」
「痛くないんですか?」
「……前よりはましだな まぁ大丈夫さ」
「大丈夫という事は痛いと言う事ですね」
「っ…………良いからさっさと着替えろ」
「もー 終わりましたよ 次は幸太郎君の番です」
「よーし ならさっさと脱衣所から出て行け 見られちゃ着替えもできんぞ」
あーだこうだと言い合うのは面倒だ
一旦外に追い払えばさっさと着替えを始める
タオル一枚ですっかり体は冷え切ってるし 風邪なんて二度とごめんだ
外からは『ずるいです』なんて声が聞こえてくる始末
五月のテンションもやっぱおかしいよな…………。
ーーーーーー
ーーーー
ーー
作戦の概要を説明された
先ずは五月が中野先生の足止め その間に俺達二人が姉妹の部屋まで気づかれない様に向かう
当初は俺も足止めに参加する予定で話は進んでいたが
五月がはっと思い出す『幸太郎君が父に話しかけるだけで怪しまれる可能性があります』
同意せざる負えない
あの人の前だと俺はついつい本音が出て何時も話がややこしくなる
『大船に乗ったつもりで任せてください!』
『『不安しかねーー』』
一応は五月にあの人の相手を一任し 俺と風太郎は部屋の前までやってこれた
ここまで誰にも気づかれず 彼女達の祖父にも会うことなく無事到着
ばん
「な…………」
「五月の森だ」
扉を開けた先に広がる光景に絶句
見覚えのあるアホ毛が四本ぴょんと立っている
「コータローくん達 ノックくらいしてよ」
「びっくりさせちゃった」
「これはですね…………?」
「丁度良かったわ あんたにはもう一度試してみたかったのよ
覚えているかしら五つ子ゲーム?」
「すまん 俺は存じ上げない」
「あっ お兄さんは入院中でしたね」
「お前 四葉だな?」
「ふっふーん なんのことでしょう」
「いいわ あんたの覚悟も試してみたかった 当ててみなさい 誰が誰かを…………もう あの時とは違うわよ」
「これはまた すげー事になってきたな」
五月達?からの挑戦 本当の名前を当ててみろと
過去の俺なら誰が誰かも完璧に見分けている
この五月が言うあの時とはまさに過去のリベンジも兼ねているのだろう
本物の五月が言う 愛 それが試される大事な場面だ
風太郎はすげー面倒そうな顔だけど…………
ーーーーーー
ーーーー
ーー
急遽開催された 第二回五つ子ゲーム 俺が入院中の間に第一回が開催され
当時は風太郎と出くわした誰かを当てる為に行われたらしく
一応は正解までたどり着いたと自信なさげだ
筆跡や書き方で何とか見つけたが最後に五月と三玖を間違えたとか…………
ぱっと見は同じだ 間違えてもしゃーない
それで今から簡単なルール
俺と風太郎が部屋で待機
残りの4人が一人づつ部屋に入り 彼女がそれぞれ五月っぽく振る舞う
そこから正体を導きだすと言う 単純明快な五つ子ゲーム
偽五月の正体を探る手立てにもなるし 同時に彼女達の相談も行える
手っ取り早い方法でいきなり足を見せろと人間性を疑われる質問があるけど流石に控えた
「お一人め どうぞ」
「自己紹介ですね。私は中野五月、17歳、5月5日生まれのA型です」
「五月だな…………ありがとうございますでは お次の五月さんどうぞ」
最初の五月は自己紹介だ
近くで見れば本当に区別が難しいな
話が終われば退室させ 二人目の五月を部屋に通す
「好きなこと・・・ですか・・・。やはりおいしいものを食べているときが幸せですね」
「ありがとうございます では お次の五月さん」
二人目は好きな食べ物に関する事を言ってくる
一番目の五月と顔も些細な仕草も同じだ…………
特に可笑しい点はない まぁ五月が二人いるのがおかしいけどさ
「なぁっ!!?そんなこと答えられるわけないじゃないですか!!上杉君!女の子にそのような質問をするのはいけません!どうかしていますよ!!」
三人目の登場でいい加減風太郎も口を開く
ある質問を投げ掛ければ三人目は顔を真っ赤に怒りだす
ゴツン
「いて」
「すみません 弟が では最後の五月さんどうぞ」
「どうも 上杉君 幸太郎君」
「くっそ 全然違いがわからねー」
「おい 落ち着け冷静さを失えば判断が鈍るぞ」
弟の反応はもっともだ ここまで4人 全員が五月だ 紛れもない中野五月
些細な違いすら見つけられない 相手がぼろを出さん限りは何が違うかも…………
一応は俺なりに判断は出来ているんだが、自信はない
「あのー・・・質問がないなら、もう行ってもいいですか?」
「おっと 悪い悪い 」
「おう 質問か…………聞きたい事がある なんで全員五月の変装なんてしてるんだ?」
「あぁ………確かにな 最初に聞くべきだったな」
もっともな疑問だ 五月が増えたせいで俺は五月忍者説を疑った程だ
実際は全員が五月の格好で行動し 俺たちが勝手に翻弄されていた間抜けな話さ
「えっ…………えーっとですね」
(もしかして この五月)
「話すと長いん………の で す が えっと…………」
別段難しい質問ではない
疑問に思っていたその答えを教えて欲しいだけ その簡単な質問で突然口ごもる4人目の五月
風太郎曰く ある四番目の四女の四葉は嘘が下手で演じるのが苦手とか…………
彼女は話し始める 五月の変装をせざる負えないのか…………
当時の五つ子は全員同じ見た目 同じ髪型 趣味や服装まで全く同じ
自他共に認める 仲良し姉妹だ 当然そんな仲の良い姉妹を見て祖父は大変喜んでいたとか
そんなある日だ 一人の少女が別の格好をし始めたと………。
「ふーん どんな格好だ」
「それは 今と同じウサちゃん リボ…………」
「確定です 四女です この子は四女です」
「はっ……お前四葉だろ!」
「な なんのことかわかりませーーん」
四葉だと確定した 本人に暴きやすいなこいつは嘘が下手ってレベルじゃない
自分から自爆していきやがった………
四葉四葉と何度も呼ばれるが本人は『五月です』ともうメッキ剝がれてきてるぞ
まぁ ちゃちゃを入れるのはここまでだ
五月(四葉)は話を続ける
彼女達が何故五月に変装しているのか
その理由は 仲の良い姉妹が急に姿を変えた それが祖父には衝撃的だったらしく
何日も寝込む結果に陥り 祖父を元気づける為に
全員の見た目を一致させる そこで選ばれたのが五月だった 一番に変装もしやすいと…
ただ それがどうも四葉は苦手だったと話している
『ちゃんと変装できるか不安でした』 それが理由でここ暫く様子がおかしかった
これで四葉の悩みは聞けた
彼女は誰か演じることが極端に苦手なんだ…………。
質問が終われば風太郎は祖父がどんな人物か聞いている
「とても 優しい人ですよ 私も大好きです」
「じーさんもお前らが大好きだ」
「確かにな…」
「お前は何を言われたんだ…」
風太郎やけに祖父を怖がっているが
理由は口にしない 『気をつけろ』とだけ言えば口を紡ぐ
ーーーーーー
ーーーー
ーー
全員の話を聞き終われば 一度部屋に集め直す
ここで俺たちはミスを犯した
五月(四葉)に目印も何もつけてはおらず 全員が同時に座ったため
最早誰が誰かも区別がつかない…………露骨に視線を逸らせば四葉だと確定するんだけどな
「あ…………あれ どれが四人目だ」
「はぁ……ガッカリ だめみたいね」
「まってくれ もう一度チャンスを」
「うーんと 俺の勘だけど…………って 誰か来た!」
コンコンと伏間が叩かれる
バレたら今までの事が全部パーだ…………
「風太郎 お前は炬燵に隠れろ!」
「おっ おい 押し込むな!?」
「俺は …………よっと」
『『えぇーーーーーーー!!』』
流石にあの中に二人では入れない
咄嗟の行動だ 俺は空いている二階の窓から飛び降りた
そのまま落ちる何て事はしない 手すりにつかまり懸垂のような形でその場に留まる
普段からバイトで鍛えてるから良いけどさ 良くもまぁこんなバカな真似したよ
(左手がきついな…………)
ーーーーーー
ーーーー
ーー
「お おじいちゃん 」
「おはよー」
「…………」
「え?え?」
「何か心配してるみたい」
「安心して 今でもそっくり仲良しだから」
上杉幸太郎がベランダ飛び降り
落ちない様 手すりに捕まり 上杉風太郎が炬燵の中に隠れる
何とも不思議な光景だ
だがこれは風太郎からすれば好機 この中ならば誰の足が怪我をしているのかも確認出来る
兄には質問を控えるよう言われ あの場では偽五月を割り出せず
五つ子ゲームも答えられず仕舞い 踏んだり蹴ったりだ
姉妹達は悟られない様祖父と会話をし何とか誤魔化す
彼女等に祖父も一度は侵入者を疑ったが 彼女達以外居らず 先ほどの叫び声も
『て テレビです』と五月(四葉)が苦手な嘘でその場をやり過ごす
とっさの行動だと言え まさか飛び降りるとは予想外
未だに目を疑う
約二名は心底心配しており 何度か視線をベランダに向け
手があると確認すれば 安堵のため息がもれる
( いで …………流石に足がぶつかるな)
中をまさぐる風太郎はくすぐったさで動く彼女達の足に何度も蹴られるが
偽五月を見つけられる絶好の機会 諦めず続けた
(あった こいつが偽五月だ!)
遂に足に傷がある人物を発見 彼が言った通り絆創膏が張られている
一応顔を出すが五月と同じ容姿で判別は出来ない
(あとは 幸太郎の救出だ)
ーーーーーー
ーーーー
ーー
10分程経っている いい加減左手は限界だ
現在右手のみで全体重を支えている ひえぇー 落ちたらひとたまりもねぇーな
部屋を確認したくても顔を出せば見つかっちまうし
下の階には流石に着地出来る箇所は見当たらない…………。
スル
「あっ…………やべやべ!」
「っ ! お前は無茶し過ぎだ うぐぐぐ」
「サンキュー 助かった」
手汗で滑り 手すりから手が離れ 危うく天に召される寸前
息を切らし 弟が俺の手を掴む
「はぁ……………それで見つかったか?」
「え あぁ確かに 絆創膏をつけてた って お前は今度はあんな真似するなよ!」
「はいはい………それでその怪我してた 五月は勿論目印は」
「あっ! 行ってくる」
ベランダに倒れ込む俺たち
まさか温泉旅行で命を落としかけるとは想像してなかった
流石に俺の態度が癇に障ったのか軽く叱られた
助かったから万々歳と…言えれば良いんだがあれはやり過ぎたと反省はしている
風太郎は叱り終わればその怪我した五月を捜しにさっさと部屋から出て行った
「俺もその人物を探すかねぇー…………。」
「ちょっといいですか?」
「五月じゃねーな………」
「むー」
「えっと 待ってくれ 昔なら判別出来たんだ」
「今は分からないんですか?」
「違う そうじゃない……うーんと」
「私は怒ってます すごく」
入口付近では五月ではない姉妹の誰かがむくれっ面で待ってる
一体この五月は誰なのか頭の隅には出ているが中々答えには行きついかない
いやー四年前ならすぐに出たんだけどな
一言『怒ってる』と言う 台詞を聞き
誰なのか回答に行きつけた…。
俺がこんな無茶をやらかし それを本気て怒る人物は姉妹の中で二名
一人は未だ中野父と話し合い中だ となれば彼女しかいない
答えが分かっても怒りは収まらない はぁ……
「あっ…………三玖か!」
「コータローの馬鹿馬鹿 あんなことして!」
「悪い悪い 風太郎隠すので手一杯でさ 逃げる場所がベランダしかねーからよ」
「今度は怪我じゃすまないんだよ! 何でそんな軽くすませるの!」
「そんな つもりはねぇーんだけどな 悪かった お前には刺激が強すぎたな」
「本当に無茶だけはやめて絶対に…」
「ごめんな」
一度三玖の前で死にかけた 責任を感じる三玖にとって あの行動は軽率すぎた
泣かせないと言いつつ同じことを繰り返す とことんダメな男だな
怒らせておいて足に怪我があるかを聞くどころじゃねーな
ぽんぽんと頭に手を乗せ『もうしない』と彼女と約束を交わした
「コータローは本当に無茶ばかりだよ」
「こいつは性分見たいなもんだしな…………。でもあんな真似はしないから 怖い顔するな」
「ふん…。でも許す コータローもビックリしたでしょ お父さんがいて」
「あの人なりに心境の変化でもあったのかとな…。」
「実はね コータローが家に来た日 フータローとばったり出くわして 同じく応募してみたんだ
住所の欄は間違って 全員で来ることになったけど」
「それでも あの人が来てるんだし…。何か変化あったんだろうさ」
「コータローはお父さんと何かあったの?」
「お前は五月から聞かされてると思うけど 俺の担当の一人が中野先生だ」
「うん 知ってるよ…。でもそれ以上に二人は何かありそうな気がする」
あの人との関係なんて医者と患者以外何もない
下手な事言っても混乱させるだけだしさ…。何時か三玖に話す機会でも来るのかねぇ
「特にはねーよ それで お前の悩みってなんだ あるなら俺に相談してくれればいいのにさ?」
「ダメ コータローの力で当てて…………。 」
「お前の悩みねぇ…………。」
バレンタインのお返しはした 確かに一週間程遅れた
それを根に持つようなタイプでもないし 味にいたってはこいつの好みの抹茶だ
やべぇ………全く見当がつかないんだけど
うーーーーと深く考えるが こいつと最後に会ったあの日の言葉
『コイ』が悩みに関わる事ならなおの事意味が分からねぇ コイって鯉か?
「お前も 孫に手を出すのか 殺すぞ」
「いっ! しませんよ」
背後からドスの聞いた声 手を出せば殺すとまで言われちまった
「どうも えっと こいつらのお爺さんですよね」
「三玖よ何もされとらんか?」
「う…うん」
「…………」
あの爺さん 一発で三玖だと気付きやがった
伊達に五つ子と過ごしてねぇな
「って 関心してる場合じゃねぇーよ」
「コータロー?」
「少し用事が出来た 後でまた会おう」
「無茶だけはしないでね!」
「了解……爺さん 話があんだ!」
足の事はまた後で良い
あの人は五つ子を見分けられる そのこつを是非聞きたい
「おう 幸太郎 お前も弟子入りか さっき四葉といたんだけど
あいつが何も言わないのに一発で見抜いたんだ」
「俺は三玖だ…………すごいなこの人は…………」
ーーーーーー
ーーーー
ーー
中野姉妹の見分け方を祖父から聞きだそうと行動に移す彼等
それと同時刻
温泉に入るのは 中野二乃と中野一花の二名
自分に相談があると部屋からここまで同行を頼んだ妹の悩み
それは聞かずとも彼女には分かっている 上杉風太郎への告白の件だろう
好きな人が出来た その人物との出会いは最悪だった
突然家に現れ 家庭教師と名乗りだし あまつさえ自分を騙したその男
やはり 風太郎への恋愛相談
聞いていると何処か胸が苦しくなる 何故妹はここまで素直に好きな人に告白まで迫れたのだろう
自分が想うあの少年に対して自分は何も出来ず 距離を置く事で気持ちに整理をつけた
そのつもりだった 彼の発した言葉『恋か…………』
その言葉を聞いて秘めていた気持ちが今にも溢れそうになった
でも 彼には 彼を想うのは三玖だ 三玖じゃないといけないんだ
それに 彼を良く知る五月だって口には出さないだけで傍から見ればカップル
自分が足踏みをしている間に 妹は一歩先に進んでいる どうして?
「告白されたら 多少 意識したりするのかしら?」
「私の経験では…………だけど ごめん」
自分の経験 そんな経験あるのだろうか…………
「そういうことはなかったかな」
(フータロー君に変化があれば コータロー君だって気持ちが変わるかもしれない
今はこのままでいたい いさせて…………!)
恋と呟いた彼だ 弟に恋人が出来たなら きっと彼も自分の発した言葉の意味に気づく筈
そうなれば今のように彼といられる時間は無くなってしまう
現状維持 足踏み何かじゃない
今の関係が自分や彼にも一番なのだと一花は遠回しに二乃を誘導している
妹の恋路は素直に喜ぶべきだ でもそれを喜べない自分がここにいる………。
妹も初めての気持ちと自分が告白した その二つで舞い上がって冷静な判断が出来ていない
そうに違いない 一花は得意とする言葉で二乃を引き留めようと必死だ
「告白だけじゃ 足りない………と え!? いや…そうじゃなくて
出会いは最悪だったんだよね………本当にその人が好きなのかな?」
「最初はさ 兄貴と同じ私の大事なものを壊す存在としか見て無かった だけどあの夜…。
王子様見たいな あいつを別人と思い込んだまま 好きになっちゃった
そして理解したのよ 私が拒絶したのは彼の役割であって 彼じゃない」
だめだ 駄目だ 妹は止まらない 自分の今の言葉ではもう止められない所まで行き始めてる
何か手立てはないのか焦りの色を滲ませる一花
対照的に二乃はスラスラと自分の気持ちを赤裸々に語る
「それにさ 憎からずコウ…上杉もさ 思ってるけど 好きなのは弟の方
王子様って気づいてから歯止めが効かなくなっちゃった 本当は一花に相談する前に
兄の方にも相談するつもりだった あいつはきっと応援してくれるから」
(やめて 二乃 彼にだけは言わないで きっとコータロー君は二乃を応援する 祝福する 自分が出来る事なら何だってする…………それが引き金になりかねない)
彼に言う前に自分に相談してくれた事を一花は心底安心した
何が引き金で彼が動くか、三玖が動くかもわからない
だから とめないと 二乃はここでとめる
彼と同じく風太郎にも恩があるここまで自分達を先導した一人だ、本当なら二人は報われるべきだ…でも今だけは許して欲しい
「だからって好きになったって…………そんなの都合が良すぎない?」
きっと今の姿を幸太郎が見たのなら幻滅されている 最低な姉だ
応援してくれる彼に会わせる顔がない でも彼の為にもこの関係は現状維持が最善な選択
その筈…………みんなそう望んでいる
(それにこのままだと 本当にコータロー君はいなくなってしまう…………)
「そうよね こればかりは 自分でも引いてるわ だからって 諦めるつもりもないけど
だって これは私の恋だもの 私が幸せにならなくちゃ意味ないわ」
「もしも! その恋で何かが崩れるとしたら…………大切な関係とか」
「うーん…………今の関係……ねぇ そうね 悪いけど無理 強引だけど
その関係や他に好きな人がいても 蹴落としてでも叶えたいと思っちゃう」
(とまらない 恋の暴走機関車だ!! 話も聞いてくれない! 相談って言ったのに!)
最早 聞く耳持たない 自分が何を言っても二乃は二乃自信の気持ちを言うだけで
参考にすらしようとはしない 一方通行 投げたボールは戻ってこない会話のデッドボール
自分ではもう妹を足止めする事は出来ないのだと一花は実感させられた
「あんたと話せて良かったわ やっぱ告白だけじゃ足りないのね」
「何をするつもり……?」
「うーん、手を…決定打にかけるわね…抱きしめて それでもわからないなら…キスするわ!」
(妹が分からない…………)
更に同時刻 五月はたった一人で父親の足止めを未だ続けていた
(幸太郎君 いつまでここでお父さんと話せばよいのでしょう・・・?まだ朝ごはんも食べていないのに……… そろそろお腹が空きましたーーーーー)