上杉幸太郎と六等分の思い出   作:Aikk

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風太郎君の学級委員回です…。後半はオリジナル回


第七十五話 不良少年と学級委員な次男坊

「よう 風太郎今年も同じクラスだな」

「朝方見たが、お前の名前なかったぞ?」

「教師から新手のいじめを受けた」

「怖いな世の中」

「何があるかわかんねーよ」

 

教室で黄昏る弟に声をかけた

何処か憂鬱そうにも見えたが、杞憂に終わる。表情一つで分かるさ

内心では五つ子と同じクラスだったのが嬉しかった 兄には一目でわかる

俺も人の事は言えない立場だ、そっと口を閉じよう

 

 

 

『中野さん本当五つ子なんだねー』

『すげー可愛い』

『お近づきになりたい!』

 

 

 

その話題の五つ子だが、クラスの注目の的となっている

見慣れない人からすれば、全員が揃った姿は物珍しい 数人の生徒が彼女たちを囲むように同じような質問ばかりを投げ掛ける…。やれやれと言った表情でやり過ごす五人は気苦労が絶えんな…。

つうか見世物扱いだな…。

 

「何が楽しいのか…。」

「確かに見慣れれば、普通だからな」

「同じなのは顔だけにしてくれ」

「照れ隠しだな」

 

素直になれよとブーメランが顔面に突き刺さる

口に出せば軽い論争だ 今は、控えよう

 

「トイレでも行ってくるか」

「俺もちっとばかし用事あるし その前にトイレでも…。」

 

 

五つ子程じゃないけど年子でもシンクロする事は多々ある

やることなす事 考える事は変わってきたけど結論は何時も同じ

意味合いが異なる事が多いだけだ

 

三年の教室の中ある程度は把握したし便所の位置も覚えておくか…。

 

 

「退いてくれ」

「すんません 歩行の妨げになるんで」

 

席の位置関係上後ろから行った方が、早いのだが、如何せん…。

五つ子鑑賞会と凄く面倒なことになっている。物珍しいって気持ちは、誰しも持ち合わせるが、もう少し相手側の気持ちと周りに配慮して欲しいな…。

 

 

(ぞろぞろと並んでるなぁ…。)

 

 

クラスの何人かが 風太郎に『中野さんに興味があるの』と声をかけるが…。

ザ無愛想な弟は『トイレ』の一言で、そのまま直進。俺も俺で『もう少し周りに気ー配れ』と注意

言い方ぁ!と内心思いつつも確かに…。あのままいられるとすげー邪魔なんだよ

 

 

「あの二人感じ悪ー」

「片方は暴力事件起こした人でしょ? 何か嫌だね同じクラスってのは」

 

 

(まーだ 噂してる奴いるのかすごく暇なんですね)

 

三年生の卒業式にも乗り込んで大暴れと噂に尾ひれまでついている

何処まで拡張されていくんだあの噂は…。

こんだけ広がると弁解する気もでねーな

まぁ…あの噂よりも俺は俺でやらんと行けない事もあるし 無視無視

 

 

「コータロー…。」

「彼の態度もですが、幸太郎君もわざと憎まれ役を演じる必要もないのに…。」

「やっぱりまだ引きづってるんだねコータローは…。」

 

 

通り過ぎざまに二人の視線を感じたが、こっちも忙しい何かあれば後程

 

(さーて四葉と話せる機会があれば良いんだけどな…。)

 

 

風太郎の現状だけでも何とかしてやりたい

先に出て行った弟君の今後を兄なにり不安を抱きつつ打開策を練っており、一応は布石は打ってある後は、必要な人材 中野四葉 彼女とどう会話するか…。

 

(スマホ使えるようになってんだ…。さて 送るか…。)

 

 

軽く目配せをした後テスト以降に復活したスマホ操作 四葉に『廊下に来てくれ』と一報

 

(お お兄さんから…。まさかあの事で相談が!)

 

「おーっと すみません おトイレです!」

 

「って 四葉まで急にどうしたのよ」

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

 

ホームルームまでまだ時間はある トイレと適当な理由で出て来たが

本当は、四葉を呼び出す口実だ、廊下の先階段近くで待機中

 

暫く待てば、きょろきょろと辺りを警戒する怪しいうさちゃんリボンが現れた

 

「悪いな…。話の途中によ」

「いえいえ 実は困っていたんで助かりました」

「おーそれは良かった…。まぁあいつらも五つ子が珍しいんだろうが大概にしろ」

「あっははお兄さんは相変わらずですね…。それで何で私を呼び出したんですか?」

「おう実は、お前に折りいって頼みがあるんだ…。結構重大な事さ」

 

(やっぱり あの事だ お兄さん怒ってるのかな?)

「あのすみま…。」

 

「お前と風太郎で学級委員になって欲しい 頼めるか?」

 

「すみません ごめんなさい…。って あれ学級委員?」

 

こいつは何を謝ってるんだ? まさか学級委員が嫌だったとか…。

だが本人も予想外な回答に驚き何度か復唱している

うーんと表情を変え考え出す…。怪しい

 

「あの…。一体なぜ 私と上杉さん何ですか」

「このまま行けば…。風太郎は孤立する。あいつには楽しい気持ちで終わって欲しい…。四葉もそこは同意見だろ?」

「確かにクラスでは悪目立つしてますからね 上杉さんは…。」

「そういった事は、俺の分野だ…。あいつはお勉強出来るが口と性格が悪いだけだ」

「お兄さんも大概ひどい事を言いますね」

「事実だ…。でもそれが全てじゃない お前知ってるだろ? 

 あいつは林間学校でも最後までやり切った…。何でもかんでも一人でやる癖があんだよ」

(お兄さんが言っても説得力皆無ですよ…。)

 

「風太郎には、悪いとは思ってるが、あいつには学級委員になってもらう

 あいつのイメージを良いものに変える作戦だ」

「確かに…。でも上杉さんが自分から立候補する絵ずらが浮かびませんよ」

 

林間学校の際も余った。俺が風太郎と実行委員をやらされる結果に終わった

もし俺があのまま来なかったら一人でやろうと無理をする

四葉という人間は気配り上手だ、風太郎のサポートに打ってつけ

 

一度は二乃の線も考えたが今のあの子にはとてもじゃないが任さられない

それにだ…。俺の話を真面目に聞くとは思えない

五月も似た理由だ…。『そういった事は自らやるべきです』と正論ぶつけられる

 

 

「だから お前だ…。 お前が先ず女子の学級委員として立候補し 風太郎を男子として指名して欲しい」

「な なるほどその手がありましたか!」

「ここだけの話…。担任は顔見知りだ 話は通してある融通は聞かせるって」

「お兄さんは何者なんですか…。時々不思議に思います」

「ん? ただの家庭教師補佐だ お前の性格を利用して悪い 頼めるか?」

「私は大賛成です 実は考えていた事なので」

 

四葉は周りをよく見る

どんな時でも動けるようにしており そのせいで勉強にも身が入らない事が多く

何度風太郎は泣かされたか…。でもその性格が今度は風太郎を救う

あの部長にあんだけ言っておいて俺も人の事言えんな…。

 

「よし…。話は終わりだ 風太郎に良い一年を送らせてやろうぜ」

「はい 不詳中野四葉 頑張ります!」

「その意気だ…。さて戻りますかー」

「お兄さんは…。お兄さんは良いんですか?このままで!」

「俺? 別に中野姉妹や風太郎に真弓ちゃんと話せればそれで良いしさ」

 

今更だ。ここ二年で立った噂は未だ消える兆しもなし

和之にはああ言ったが、当時の三年生と違い今の三年生は俺の詳しい事情を知らん

どうにか頑張ってみようとは…。考えてはいる暫くは様子見だ

 

 

「別に諦めたってわけじゃねーよ…。だから心配すんな 今は風太郎を最優先だ」

「は…。はい わかりました あのお話はこれだけですか?」

「なーにか、俺に隠し事でもあれば話は別だけどな?」

「い いえ わわたしが お兄さんにか 隠し事なんて」

 

何故か、食い下がらず話を引き延ばす四葉

様子がおかしい…。慌てだし 汗も掻きだす目線が俺とは合わない

まさか本当にこいつが、犯人なのか…。

 

例の手紙を読んだ犯人候補の一人が四葉

 

三玖曰くあの後脱衣所に入った人間は、彼女と一花だけ それ以外は見てないと…。

もし読んでいたのならこの反応も可笑しくはない

 

(こいつはアタリだな……………………はぁ)

 

どうすっかなー…。問い詰める気はないし 本人から言いだすまで俺は聞くつもりはない

だからこのまま四葉は解放する でも一応そう一応は忠告だけしておこう

 

(もし…。見たのなら誰にも話さないでくれ)

 

「お お兄さん!」

「さーて 教室戻るぞー」

 

ポンポンと頭を叩き不安を抱かせないよう俺も作り笑いで、その場をやり過ごす

教室に向かうまで、口を閉じる四女さんは、何か言いたげだったが、胸にしまっておいて欲しい

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

 

「頼んだぞ 四葉…。」

「はい了解です」

 

ずい

 

「何が了解なの四葉…。」

「み 三玖急に出てこないでびっくりするよ」

「コータローと何を話してたの」

「何でもないよ…。三玖が心配するような事は…。」

(耐えろ 四葉手紙の事は誰にも言うな)

 

教室に入り 別れ際に軽く伝える

タイミングが、良い事に三玖が待ち伏せしていた タイミングのいい待ち伏せって何だよ?

風太郎の件もだが、手紙の件をこれ以上他人に知られる訳には行かん

四葉が確定した今 残すは一花のみだがあいつがボロを出すとも思えんしな

 

三玖に詰め寄られる四葉は何とか切り抜け そそくさと自分の席まで戻る

 

「コータロー…」

「別になんもねーよ…。 」

「そんな言い方中野さんが可哀そうだよ」

 

結託した女子生徒に絡まれた

普段と変わらんつもりだがこいつ等には暴言に聞こえたと一回耳鼻科に行け

適当にあしらってさっさと戻るか…。

 

 

「はぁ…。くっそ面倒だな 和之に見られたらまた怒られる」

「兄がどうしたんですか先輩?」

「うわって! 急に話しかけるなよ」

「同じクラスなんで私は遠慮しませんよー」

「へいへい そーですか」

 

2年の時は別のクラス

それ以前は学年すら違った 懐いてくれるのは先輩としては嬉しい限り

この後輩も、もう少し距離感を大事にすべきだな…。

まぁ…。彼女には重要な場面で助けられてる事が多し あんまり強く言えない…。

 

 

「真弓ちゃんもさっさと席座れー ホームルーム始まるから」

「仕方ないです では後程」

「はっははは 元気だな」

 

三年生の始めとなると席順も以前とは違う

俺の隣には、もーあのお節介な後輩はいない いなくなったらいないで寂しく感じるのは、気の迷いだな…。 

 

 

(もう少しで風太郎の誕生日だ シャキッとしろ 上杉幸太郎)

 

 

 

今後を考える間に園田のおっさんが教室へとやってきた

いざホームルームというタイミングで四葉が元気よく手を上げる

 

「なんだ 中野ー」

 

「このクラスの学級委員に立候補します!」

 

「ほー 説明の手間が省けるな 誰か他にやりたい奴はいるかー」

 

そんな物好きはそうそういない

中学生時代から高校2年の初めまで学級委員をやってきた俺から言わせれば一種の雑務担当だ

あれやこれやと役員をやらされるやりたくない代名詞

誰もが優等生を支持する出来レースだ…。

 

ただ嫌でも目立つそれは誰しもがその人間を覚えるという事

いまいち影を薄くする風太郎にはこの先大切な思い出として学級委員を頑張ってもらいたい

 

それに流石園田先生だ…。話を聞かず手を上げる生徒の話もちゃんと耳を貸す

相変わらず問題児の扱いはお手のもだな…。

 

「皆さん困ったら私になんでも言ってくださいね!」

 

ちら

 

(雑なアイコンタクトを送るなー)

 

「じゃあついでに 男子も決めておくかー 誰かいないか?

 立候補はいないか」

 

「誰かいませんかー」

 

四葉がわざとらしくクラス中を見わたし

一花は恥ずかしそうに顔を伏せる

 

ここからが問題だ…。

女子は簡単に決まった男子はそうも行かん先ほど言ったように雑務を任さられる仕事を

自分から名乗り出すのは限られている…。

立候補が消えた今 残るは推薦 多数決という…。俺がこの世で一番苦手としている決議だ

 

そしてこのクラスのなかで誰もが推薦する人間はただ一人 武田だ

朝方掲示板を覗いた時に武田の名前が記載されていおり

俺が少し教室を空けた間に五つ子にがっつく男子どもを一声で納得させた

俺の場合は睨めば似たような現象が起きるが五月や三玖に叱られるからなるべく避けている

 

 

案の定クラスは武田の話題で持ち切り

誰もが武田の名前を呼ぶ そう呼ぶだけだ 誰一人として自分から手も上げない

誰かが動かない限り行動も出来ない…。

ここがチャンス あいつの性格ではみんなが名乗ればならば僕が引き受けようと

芝居がかっている でも残念だったな…。

 

(四葉 いけ)

 

こくり

 

 

「私 学級委員にピッタリな人知ってます!!」

 

 

女子の学級委員である四葉の声で更にクラスは盛り上がる

武田コールは徐々に強まり 今か今かと待ち望む中…。

 

彼女は彼を指定した

 

 

「上杉風太郎さんです!」

 

『『えっ……………………』』

 

 

彼女の一声でクラスはざわめき後ろの席の風太郎は体を揺らす

『何故だぁ』と小さく呟く声

だがまだ一押し足りない

ここで四葉以外が手を上げず 他の人間が武田を推薦したならば

そのままなし崩し的に武田に軍配が上がる

 

 

「先生 自分も上杉風太郎くんが良いと思います」

 

「なっ…幸太郎 お前!」

 

そう最後の一声は俺だ

全員が全員…。文句を言えない人間となれば俺だろ 

手を上げ園田のおっさんに風太郎が良いと声を出す

 

ここで推薦2票

誰も動かなければ風太郎の当選は確実

他の奴らは、武田武田という割に手も上げない

自分で発言もしない 思うだけでは何もならない…。

 

 

「上杉と中野の2票か…。他に立候補する奴は いないか?

 いないのなら 他の係も決めるぞ」

 

「先生 俺はやるとは言ってません!」

 

「諦めろ 風太郎…。」

 

「お おまえ」

 

ぐぬぬぬと拳を握る弟

この流れは覆せないと判断し それ以上の抵抗はやめた

 

悪いな風太郎…。確かに勉強は大事だ お前にとってそれが一番だろ

でも勉強以外も学ぶべきだと俺は、常々思っている

根の良いお前だきっとクラスを引っ張っていける…。こんなやり方しか出来ず悪い

 

その後は適当に進み 風太郎も物凄く不満そうな顔のまま無事に学級委員に抜擢

一応は園田のおっさんから『経験者のお前が二人をサポートしてやれ』

推薦したからには責任は取る…。

今回が初めてとなる二人 学級委員のいろはを教えれば円滑に事が進むだろう

 

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

ホームルームも終わり 授業も滞りなく行われ

現在は昼休み 後ろでずっと呪いの呪文を俺に唱えていた風太郎は『この野郎』と文句を言って

何処かへと行ってしまう

放課後にでもやるべき事を教えてやるか…。

 

 

「さーて 俺はその間に…。」

 

風太郎がいない今 俺に出来るのは

あいつの誕生日プレゼントを考える事だ 悲しい事にうちの弟は欲しいものは何ですか

『金 具体的には借金返済後ある程度不自由なく暮らせる額が欲しい』

すげーリアルな事を言ってくるほど夢がない

 

適当に持ってきた雑誌を見ても風太郎の好みとはかけ離れている

あいつは余り派手な物は好まん…。 昔は派手だったけどな…。

 

「まったく もう少し兄が困らない物を要求しろ…。」

「なーにが 困らないものなの? コータロー君」

「!…。ほんと 後ろから声をかけるな」

「ごめん ごめん 何かずっと唸ってたからついつい」

 

手を合わせて軽い謝罪を述べる一花

名前で席順とは困ったもんだ 後ろから声をかけられてばかり

正直心臓が持たん…。

じーっと俺の顔を見ればにっこり笑顔

まじでこいつは何しに俺の所に来たんだ…。

 

「ようがないなら 席つけー」

「いやー せっかくコータロー君と同じクラスだからお話でもと」

「俺は特にないぞー 勉強なら後で見てやる 今は個人的な理由で忙しくてな」

「雑誌何て珍しいね 普段は求人広告眺めてるのに」

「偶にはいいだろ? んで要件はそれだけですか」

「あのー コータロー君に聞きたいんだけどさ」

「何ですかー 一花さん」

 

なんだ急に…。

 

 

「フータロー君って何が好き」

「お金 勉強 」

「あの そう言う事じゃなくてもとっと具体的なものとか…。」

「あーそういう事か、お前らもあいつにプレゼントをやるのか 風太郎は果報者だねー」

「今の言い方は流石にバレるね うん フータロー君にはお世話になってるし何かないかなーと」

「と言われてもな 聞いてもお金としか言わん弟だ」

「だからコータロー君もずっと唸ってたのね」

「そういう事…。クッソ いっそのことアイツの好きな麦茶をパックで買って叩きつけるか」

「お兄ちゃんも大変だねー」

「年に一度の記念日だ…。ちゃんと考えやらねーとな…。はぁー学食いくか」

 

考えても答えは出ない…。同じ場所に留まれば見えてくる事も見えないとよく言う

誕生日プレゼントも似たようなもんだろ

 

「記念日か…。」

「なんだ一花? 暇なら一緒に行くか?嫌なら別に良いけどさ」

「あっ…。うん行くよ」

「まぁー三年生の始まりでも俺のお昼は味気のないパンだけどな」

「お姉さんが奢ってあげようか?」

「大丈夫だ…。腹に入ればどれも同じー」

 

食えれば同じというスタンスは…。変わらん

それに自分のやりたい事を決めたと話している彼女から奢られるのも考えもんだ

 

「そう言えば、コータロー君に返す物あったんだ」

「? 何か貸してたっけ」

「それは放課後のお楽しみと言う事で…」

 

 

ーーーーーー

 

ーーーー 

 

ーー

 

 

 

結局放課後まで何の進展もなし 勉強会は無く

二人に学級委員にとって大事な心構えを教えさっさと下校

同じくプレゼントで頭を悩ませる 四葉を除いた面々と行動している

 

あいつが欲しいものは分からんまま

よくよく考えれば俺は毎年毎年…。何をあげていたんだろう

 

考えれば考える程頭が痛くなってくる

 

「コータローでも分からないんだね」

「弟が現実主義者過ぎる…。お金が欲しいのは俺もだよ」

「上杉君と同じ事言ってますね…。」

「何だかんだアンタらも兄弟なのね…。」

「お小遣いやる年でもねーしな」

 

三玖が、それとなく風太郎に誘導尋問を行った結果

お金 体力 睡眠 運気アップ

最後のはどうしろと言うんだ…。

 

「運気の上がる壺でも買ってやるか」

「怪しい壺とか詐欺くさいからやめなさい」

「へいへい」

 

 

考え込むうちに彼女達のアパート前までついてしまった

つく前には決まるだろうと俺が浅はかだったな

五月や三玖が部屋に入っていかないかとお招きしているが丁重にお断りしよう

 

「誕生日プレゼントを選ぶため幸太郎君の意見も参考にさせて頂きます。」

「俺のは参考にならん 嫌いな食べ物は生魚 あとアイツはコーヒーも苦いから苦手らしい」

「何という…。」

「要らん情報だったな…。取り合えずはあまり考えず…。きっと喜んでくれるだろうなってものが一番だ…。 ようは真心だ!!」

 

『『アバウトだ!!』』

 

何とも曖昧な答えだ…。誰でもそうだ

考えが、纏まらなければ自分が送ってあげたい物 下手に着飾る必要はないと思う

まぁ逃げの一手に近いな…。でもそれもありだ…。趣味に合わせようと考えれば痛い目を見る

何事も自分のできる範囲が大切なのだと…。身の丈と言う有難い言葉が、この世には存在する。

 

 

「そう言えば 一花…。俺に返す物があるって言ってたな…。」

「あぁー おみくじ」

「おみくじ?」

「コータロー君の新年のおみくじだよ 実は私が拾ってました」

「一花まだ彼に返してなかったんですか…。」

「渡す暇と…。忘れてました ごめんなさい」

「良いよ別に あんなアバウトなおみくじ擬きなんて」

「良いからまってて 直ぐ取ってくるからさー」

 

 

あの日無くした。おみくじをまさか一花が拾っていたとは少々驚きだ

『部屋の前で待っていて』と言われその場で待機

別に今更な気もするが、せっかく拾ってくれたんだ素直に受け取ってあとは煮るなり焼くなり

俺の自由だ…。 

 

 

「まじで俺も存在忘れてたな…。」

「悪いとは思ってますが実は…。私も見てしまいました」

「私も…。何か不思議な内容だった」

「あれは最早占いだ…。年明けから最悪だよ」

 

笑って流してくれ…。思い出すだけで馬鹿らしくなる

今年は俺に取って最悪で最高な一年…。予期せぬ再会が俺を待っている

とてもじゃないがおみくじに書く様な内容ではない

 

一花が部屋に入り暫く経った。一向に来る気配はなく玄関前で持っている…。

一花が持っていた…忘れていた…

つまりは、あの汚部屋と化したあの場所の何処か…。時間もかかるわな…。

『おーいまだ』一花に一声かける…。

直ぐに『待ってて―』と返事は変える バイトまでまだあるし待つか…。

 

「あったー はいコータロー君 これ」

「わざわざすまんな…。じゃまた明日ー」

「コータロー君は今からバイト?」

「えっ?そりゃ勿論 さっさと帰って晩飯食べたらバイトだな」

「相変わらずだね…。無理はしないでねコータロー」

「ありがとな…。じゃ今度こそさいならー」

 

 

渡された紙切れには

くだらない俺の今年の運と大凶と書かれたまったくご利益が無さそうな不吉な品

どう処理するか家に帰って決めるか…。

 

 

(今は先ず 風太郎の誕生日にあいつのサポートだな…。やることに事欠かねーな)

 

 

 

アパートを出て道に出る

このまま真っ直ぐ家に帰ろう

今日もバイトが俺を待っている

そんな悠長に構える俺に神様はとんでもない贈り物をくれた

 

 

「なーにがおみくじだ…。」

 

改めて見直したそれにケチをつける

何度も見てもアバウトな内容に実は紛れ込んでいた偽物ではと

疑いの間差しを向けていた

アパートの前あと一歩でそこを出る瞬間に後ろから懐かしい声がした…。

 

 

 

この時 俺が取るべき行動は一つ 何も見なかった 何も聞かなかった

何もなかった事にしさっさと帰る…。それが最適解だった

 

 

 

でも…そうしなかった…。出来なかった

 

 

 

 

「あれ…。もしかして 幸太郎かい…。?」

 

「えっ…。」

 

その声はひどく懐かしく俺の頭に残る

何でここにいるのだと俺の中では自問自答

ふり返って自分の瞳で確かめる

 

確かに聞きなれた声だ でもその容姿は俺の知っているあいつとはまるで違っていた

美しく誰もが見惚れるその容姿…………。だが確認すべきだ…。本当にあいつなのかを

 

「お…。おまえ…。坂下なのか」

 

「坂下か…。うんそうだね 君の中では『まだ』坂下なんだね」

 

坂下紡木(さかしたつむぎ)…。何でお前がここにいる」

 

 

実に2年ぶりの再会だ

俺が事故に遭って入院する前に電話をした最後の相手

 

『そう言えば、坂下何で髪切ったんだ?』

『意味はないよ…。ただ長い髪は死ぬほど嫌い…。それだけさ』

『そ そうなんだ…。(でもずっと伸ばしてたのに何でかな?』

 

坂下紡木が特徴的だったショートヘアをやめ。あれだけ嫌っていた髪を腰ほど伸ばしている。その姿はまるであの頃の中野姉妹を彷彿とさせた………。

戸惑いを隠せない俺とは、対照的に彼女はあの日と何ら変わりない態度で再会の挨拶を述べている…。

にっこりと微笑むその姿は誰もが心を撃ち抜かれるだろうが、俺にはそう見えない……。 まったくよぉ…冗談きついぜ…。

 

 

「今の私は…。雨宮紡木(あまみやつむぎ)…。色々あってそう名乗ってる やっと会えたね幸太郎」

 

 

『恋愛運 今年は最悪で最高の一年です 予期せぬ再会があなたにあるでしょう

 

  それはある意味あなたの今後を左右するものです

 

  名前の最後がか行の人物には気をつけましょう その人物があなたの運命の人物かも』

 

 

おみくじなんてクソくらえ そんな事思ってたらこれだ…。

まじで俺の人生バグだらけだよ…。

 

坂下紡木(さかしたつむぎ)と言う名前で答え雨宮紡木(あまみやつむぎ)と言う知らない苗字を名乗るこの女…再会を喜び浮かべた笑みか、はたまた俺を嘲るものか…。

 

どちらにせよ高校三年の初日で俺は詰みを言い渡された…………。

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